
これは、発情に近いと思った。
明確にしたいことがあり、けどそれができていない感覚。むずむず、そわそわ、ぞわぞわして、気道のあたりがこそばゆい。体の中が痒くて、だけど体の中だから、爪を立てて掻けないような感覚だ。
歩きスマホで耳に合う曲を探す。Bluetoothから聞こえる曲が、耳の穴に刺さったイヤホンのゴムの隙間から、空気と共に逃げていく。これじゃないこれじゃないこの曲じゃ心を掻けない。ぴったりこない。
とにかくむず痒い。ムラムラ、という擬態語を、欲情以外に使っていいのだろうか。使いたいから使う。ムラムラして堪らないのに、満たされない。まるで、おかずにちょうどいいアダルトビデオを見つけられないような気分だ。私はアダルトビデオはきもくて好きじゃないけど。
この欲求不満は、間違いなく春のせいだと思う。春の空気と日差しが、私の感度を上げる。心地よくて、同時に永遠に物足りない。
新しく好きな俳優が見つかった。いまが春じゃなきゃ、きっと惚れていなかった。
ムラムラを引きずって、渋谷を歩いた。駅に上がるエスカレーターの前で、イチャつくおじさんとおばさんを見た。胸が「空間」になった。これは多分、男性がイきたくないときに、自分の母親の顔を思い浮かべた時の感情に近いのではないだろうか。「空間」。
イった後が賢者ならば、イケる前に「空間」になるのは、自我のないクリボーになったような気分。
クリボーになるなら、マリオに殺されたい。風船を踏み割るようにパン!と一瞬で殺されたい。
殺されたいといえば。ここ10年、死にたい日が過半数だったように思う。けれど、楽しい日は一日以上の価値を持っていたので、全然余裕で生きている。
生きてしまうよね、死にたくても満たされなくても。未来に生まれる映画が観たい。
こんなことを書いていたら、ムラムラが少し落ち着いてきた。けれど音楽や、あの俳優を思うと湧いてくる。脳みその中心から、サーモグラフィーの赤のところが湧いて出てくるような感覚がして、白目を剥きたくなる。
射精みたいに自分の心を表す言葉を吐きたい。
射精みたいに自分の心を表す言葉を吐きたい。
そういうことなんだ、ずっとムラムラしてるのは。
溢れるように、文章を書きたい。
自分の吐いた文章で溺れ死ねるくらい、文章を吐きたい。