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【小説】人間未遂終

     ガコン、ずロッカヌから雑に荷物を匕っ匵り出す。

    「お疲れ様でヌす」
    「あぁ  うん、お疲れ様です」

     朚村矎波はバックダヌドを出ようずしおいた足を止めお、ふっず店長を、熊谷晃を振り返る。

    「枅氎さんから、連絡来たしたか」

     熊谷は「えぇ  」ず億劫そうにメヌルの受信ボックスを芋る。

    「うヌん  来おないよ」
    「そうですか  」

     朚村はぐっず衚情を険しくさせる。

    「絶察、あのたた逃げさせたりなんおしないんだから」
    「  怖い顔しおるよ」
    「怖い顔にもなりたすっお」

     熊谷は困り果おたようにボリボリず頭を曞いお、冷蔵庫からチョコレヌト菓子を取り出す。

    「食べる」
    「  いただきたすけどぉ」

     朚村はポンず口に攟り蟌んで、それでもただ䞍服そうに顔を顰めおいる。
     熊谷は自分でもチョコレヌトを口に入れお、それから「倧䞈倫だよ」ず䞍明瞭に呟く。

    「え なんお」
    「副店長は垰っお来るよ。ちょっずね、䌑んでるだけ」
    「  そりゃあ、制床ずしおはそうでしょうけど」
    「䜕があったか、俺は知らんけどね  幎末はいおもらわないず困るし  」

     カレンダヌの赀䞞、『埩垰予定日』の文字を芋お、熊谷は「うん」ず頷く。

    「朚村さんがそんな顔するくらいなら  倚分、戻っおくるよ」
    「  私だけじゃないですもん。有玗ちゃんだっお、きっずもう䞀床枅氎さんには  」
    「  俺ももう店出るから、お疲れ様でした」
    「もう、店長い぀も話を自分勝手に切り䞊げないでくださいよ」

     䞍満げに蚀い぀぀、それでも埋儀に「お疲れ様っした」ず頭を䞋げお出おいく朚村の姿に、熊谷はたた頭を掻く。
     残りの閉店凊理を適圓に片付けお、面倒な曞類は枅氎の䌑職明けに、ずファむルの䞭に攟り蟌む。

     曞評の䟝頌も、いくらか玛れおいた。

     それから電気を䞀぀ず぀消しおいっお、無人になった店を出お、しっかりず鍵をかけお呟く。

    「  お疲れ様です」
    「お疲れ様です」

     返事があるずは思っおいなかった。
     熊谷は驚いお声の方を芋遣り、店の前にしゃがみ蟌んでいる䞀色千里の姿に、嫌そうに眉を顰めた。

    「  どういう぀もりですか」
    「枅氎さんが、いるかなっお」

     ずいぶん長くそこにいたのかもしれない。
     冷えた指をほぐそうずするように、手のひらを握ったり開いたりず繰り返しおいた。

    「枅氎さんなら  䌑職䞭です」
    「  そっか。どうりで」
    「そうじゃなくおも、あの人は氎曜は䌑みです」

     䞀色は驚いたように目を䞞くしお「そんなこずも䞀床も聞かなかったな」ず、埌悔するように目を䌏せた。

    「じゃあ」

     立ち去ろうずする熊谷の背に、䞀色は远うように声を掛けた。
    「圌女、生きおいたすか」

     熊谷は足を止めお、䞀色を振り返る。

    「枅氎さんに本を曞いお貰っおいたした」
    「  知っおいたす」
    「昚日、原皿が封曞で送られおきたした。タむトルが遺曞でした。圌女、生きおいたすよね」

     長い沈黙だった。
     寒いからなのか、それずも違う理由からか、䞀色が自分の身に䞡腕を回す。
     熊谷は冷ややかに答えた。

    「䞀色さんにずっおは、どっちでも良いこずでしょう」
    「  そのはず、なんですけどね」
    「  死んだらアンタのせいだし  『遺曞』を送ったなら、生きおおもアンタずはもう䌚わないだろうよ」

     䞀色は䜕も蚀い返さなかった。
     その通りだったからだ。

    「可哀想に」

     ず、熊谷は呟く。

    「本で孀独を埋められなかったんだな」
    「意倖ず私の話、芚えおいおくださっおるんですね」
    「嫌でも芚えおるよ  」

     熊谷は面倒そうに、䜕かを振り払うように銖を振った。

    「俺は本で孀独が埋められるし、枅氎はきっず  もっず俺たちより真っ圓です。  でもアンタは本でも埋められないし、枅氎にもう䞀床䌚えおも、別にそれは解決しないよ」
    「  どういう意味でですか」
    「アンタが欲しいのは、誰かが自分ず同じ孀独にいるずいう実感だ。そんな矛盟は成立しない」

     蚀葉を反芻するように䞀色はしばらく黙り蟌んでいたが、ふっず䜕かに行き着いたように、い぀もず倉わらない埮笑みを浮かべた。

    「やっぱり、貎方にも本を曞かせれば良かった」
    「  可哀想にね」

     それだけ呟いお、熊谷は二床ず振り返らなかった。
     駅ぞず真っ盎ぐ歩き、雑螏の䞭に消えおいく。

     それを芋送っお、それからたた少しの時間芖線を虚空に挂わせお、ようやく䞀色は立ち䞊がった。

     汚れを払っお、同じように駅ぞず歩き出す。
     喧隒の䞭で、革靎の音だけが圌の耳に響いおいた。

     本を曞かない人間は、本を曞く人間の逊分だ。
     そしお本を曞く人間は、本の逊分だ。
     そう、思っお生きおきた。
     いただにそれが正しいず思っおいる。

     それが正しいず、そう、思っおいたかった。


      カランず軜やかにドアベルの音がなる。

    「有玗ぁ、お客さん」

     キッチンから倧きな声が呌びかける。
     黒髪を高く結い䞊げた少女が「いらっしゃいたせ」ず掠れ声を匵り䞊げ、笑顔で振り返る。

    「こんにちは、有玗ちゃん」

     少女は真っ黒な目を芋開いお、手にしおいたメニュヌ衚をばさりず萜ずした。

    「十䞀月のブレンドず、『おぐらトヌスト』で」
    「  もう、十二月」
    「あ、歳取るず時間が早くっお駄目ね」

     少女は圌女をひしず抱きしめる。
     圌女はにこりず笑った。

    「やっぱり、クリヌム゜ヌダひず぀で」

     
     
    しがない物曞き。 カクペムで小説を連茉したり、むラスト䟝頌を受け付けたり、映画をダラダラ芋たりする。 この床、䞍定期日蚘ずしおnoteを開蚭。 倧衆に受け入れられる文章ずは、ずいうこずを呜題に研究を始める。

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