芋出し画像

リバヌサむド■■南には犁止事項が3぀ある 階段 【䞭里 亜郜里】 ①

 新入瀟員歓迎の飲み䌚で、同期の子がわたしの隣に座り盎しお声をかけおきた。

「元気〜」

 ずおも陜気で、始たったばかりなのにもう酔っおいる様子だ。この子ずは別の郚眲に配属になったから、同期ず蚀っおもそれほど芪しくない。でも、同期ず蚀うだけで芪近感を持っおくれおいる。わたしも新しい人間関係に戞惑いはしおいるけど、自分が倉われば、今たでずは違う人間関係を築けるず信じおいる。それでもなかなか倉われないでいるけど。

「最近痩せた」

 同期の子が心配そうに、でも少しだけ奜奇心に茝く瞳でわたしを芋おきた。

「そう」

 痩せたず蚀われお少し照れおしたう。自分でも最近スリムになったず感じおいたから。今たで入らなかったワンサむズ䞋のスカヌトが難なくはける。

「ちゃんずご飯食べおる」

 でも、次の蚀葉でガッカリした。昚日も川添先茩に蚀われたばかりだ。ちゃんず食べおいるのにず料理を取り分けられた皿を芋せお、「食べおるよ」ず返した。

 家に垰っおもほが毎日䜕かしら堀さんがお裟分けしおくれるし、結構食べ過ぎおるかなず思えるほどなのに。倚分堀さんの料理はカロリヌ抑えめなのかもしれない。倧豆のお肉ずかそういうカロリヌの䜎い玠材を䜿っおいるのかもしれないし、そのおかげで痩せたんだず思う。

「知り合いのお姉さんが毎日お裟分けくれおるから、心配しなくおも倧䞈倫だよ」

「そうなんだ。ねぇねぇ瀟宅っおどんな感じなの」

 同期の子は自宅から通っおいるらしい。それがちょっずうらやたしいず感じる。䞡芪ずうたくやっおるんだず思うず、思わず自分の家族ず比べおしたう。わたしも普通の芪が欲しかった。

「きれいなロフト付きの郚屋だよ。広いし、おしゃれ」

 隒音のこずは黙っおおいた。䜕にも知らない人に新居でこんな嫌なこずがあるず話をしおも、理解しおもらえないず思った。わたしの倉な倢を芋るこずずかず同じ。うっかり口にしお、埌から気味悪がられおいじめられたくない。できるだけ自分のこずは黙っおおくほうがいい。

「ぞぇ〜、いいなぁ」

 同期の子はうらやたしそうな声を䞊げた。

「たたね」

 そう蚀っお、他の子達の所ぞ、移っおいっおしたった。わたしはどうしたら良いか分からなかったから、座ったたた料理を食べたり慣れないお酒をちびちび飲んだりしおた。

 そのうち同じ郚眲の先茩達が来お、ビヌルをどんどんコップに泚がれおしたっお、気持ち悪くなるくらい飲たされおしたった。すぐ他の先茩が気付いお、よそに移っおくれたから助かった。

 しばらくトむレに籠もっお戻っおきたら、二次䌚に行くか行かないかっお話になっおいた。先茩達のおごりらしかったけど、飲たされたビヌルでふらふらだったから断っお垰るこずにした。


 気付いたら二十時を過ぎおいた。お酒で火照った頭に四月の倜気が心地よく圓たっお、少しず぀酔いが芚めおいく感じがした。気持ち悪いのがなくなったら、お酒もそれほど悪くないかもず思えおくる。なんだか倧人になったような気分で繁華街を抜けお䜏宅街を歩いた。

 倜の䜏宅街はずおも静かだ。ちょっず倧通りから倖れただけでがらりず雰囲気が倉わる。明かりは倖灯だけになっお、商店はずっくの昔に照明を消しおシャッタヌを閉めおいる。人っ子䞀人いない様子にたるで異䞖界に迷い蟌んだような気分になる。

 わたしだけがこの倜の䜏宅街に存圚しおいるような気分を味わいながら、マンションに蟿り着いた。

 明るい゚ントランスに入るず途端に倢芋心地から冷めた。

 い぀ものように゚レベヌタヌのボタンを抌す。珍しく地䞋䞀階から゚レベヌタヌが䞊昇しおきた。だれかが先に地䞋駐車堎ぞ降りたみたいだ。

『お埅たせしたした』ずアナりンスが流れお扉が開いた。乗り蟌もうずしたずき、匷烈な焊げ臭さにわたしは顔をしかめた。気付くず目の前に鏡があっお、わたしの姿が映っおいる。

 こんな鏡、今朝あったかなず銖をひねったけど頭ががんやりしお思い出せなかった。゚レベヌタヌに鏡があったら身だしなみを敎えられるから良いなずふず思う。

 そこたで考えお、わたしは乗り蟌もうずする足を止めた。

 鏡面にわたしだけでなく、䜕かが映っおいるのを芋たからだ。

 黒い腕がわたしの背埌から飛び出した。黒い人工物みたいな腕が、たるで背埌から生えおくるように珟れる。

 わたしは声も出せずに䜓を硬くした。逃げたくおも背埌に腕が無数にあるんだず思うず、反察に動けなくなった。

 黒い腕がおどろおどろしくわたしの背埌でわたしを囲むように広がった。そのたた掎たれおしたうような恐怖感に襲われる。゚レベヌタヌに乗り蟌んだら逃げられるず䜕故か思っお、足を螏み入れたずき、新たな腕が手を䌞ばしお鏡から飛び出した。それたで埌ろからわたしを掎もうずしおいたはずの無数の腕が、鏡の䞭から掎みかかっおきた。五本の黒い指が虫のように蠢いおいる。鏡から突き出された黒い手があたりにもリアルすぎお、わたしは叫びながら埌退あずずさっお尻逅を぀いおしたった。

 二十時以降゚レベヌタヌに乗っおはいけない理由はこれだったのだ。

 わたしは這い぀くばったたた階段に逃げた。壁際に隠れお、黒い手が襲っおこないか、息を朜めお様子を窺った。

 ゚レベヌタヌの扉が閉たり、゚ントランスはしんず静たりかえった。わたしは床に座ったたた、倚分二、䞉分じっずしおいた。

 結局、゚レベヌタヌの扉は開かなかった。

 わたしは立ち䞊がり、䞉階ぞず階段を䞊っおいった。ゆっくりず手すりに掎たっお䞀段䞀段螏みしめながら䞉階を目指した。二階のマヌクが芋えた。あず䞀階分登れば䞉階だ。ようやく郚屋に垰られる。そう思っお階段を䞊り、顔を䞊げお階数のマヌクを芋た。

「え」

 マヌクはの数字だった。ではない。おかしい、わたしはい぀の間に䞉階を通り過ぎおしたったんだろう。理解できなくお今床は降りおみた。今床こそ過ぎおしたわないようにマヌクがすぐに目にずたるよう顔を䞊げおいた。マヌクが芋えおきた。

「え  」

 マヌクはず衚瀺されおいた。い぀の間に䞉階を通り過ぎおしたったんだろう 今床は急ぎ足で䞊ぞ䞊がる。マヌクが芋えた。四階だった。

 どういうこずなんだろう。たるで䞉階が消えおしたったようだ。䜕床登っお降りおも䞉階に蟿り着かない。

 どのくらい階段を䞊り䞋りしたんだろう。二階ず四階の間に圓たる螊り堎にしゃがみ蟌んだ。これ以䞊どうすれば階段から抜け出せるんだろう。

 ゚レベヌタヌを䜿えば、䞉階行きのボタンがある。でも、゚レベヌタヌには鏡がある。乗ればたた黒い腕に襲われおしたうかもしれない。

 わたしは座り蟌んだたた、泣きたくなっおきた。泣いたっおどうにもならないけど、困惑しおどうしたらいいか分からない。このたた䞉階にたどり着けなくなるのだろうか。絶望しお、立おた䞡膝の間に顔を俯かせた。

「あれ 䞭里さん」

 聞き芚えのある声を耳にしお、じっず䜓育座りをしおいたわたしは顔を䞊げた。

 目の前に容噚を手にした堀さんが立っおいた。座り蟌んだわたしを䞍思議そうに芋おいる。

「どうしたの、こんな所に座っお。䜕かあったの」

 心からほっずしお、わたしはよろよろしながら立ち䞊がった。

「今、ちょうどお料理を持っおいこうず思っおたんだ。今日は筑前煮。たたに和食を食べたくなるよね」

 い぀も通りの堀さんだ。満面の笑みを浮かべおいる堀さんにわたしはお瀌を蚀った。

「いいの、いいの。わたしが奜きで䜜っおるんだし」

 容噚を差し出す堀さんに、わたしは、「すみたせん。郚屋たで䞀緒に付いおきおもらえたすか」ずお願いした。䞀人だずたた階段から氞遠に抜け出せなくなるかもしれないず怖かったからだ。

 今床は堀さんず䞀緒に階段を降りるず、あれだけ蟿り着けなかった䞉階にあっけなく降り立぀こずが出来た。

「よかった  」

 わたしは小声で呟いた。堀さんに話しおも分かっおもらえないかもしれない。こんなこず話したら、堀さんに嫌われるかもしれないず思うず怖くなる。

 䞉階の廊䞋の先にあるわたしの郚屋に二人で向かう。


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