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リバヌサむド■■南には犁止事項が3぀ある 四〇䞉号宀 【䞭里 亜郜里】

 自分が倢を芋おるのは分かっおいる。

 わたしは真っ暗な空間にいお、背埌から迫っおくる䜕䜓もの黒く焊げた人間から逃げおいる。

 党身が炭のようになっお、所々ひび割れお生焌けの赀い肉が裂け目から芋える。錻が欠けた真っ黒な顔面に癜濁した県球がぎょろぎょろず動き、焌けお舌がボロボロになった口腔を倧きく開けお、前に突き出した二本の腕を蠢かしお迫っおくる。

 焌け焊げた人間がゆっくりず远いかけお来る。わたしはあず少しで远い぀かれそうな皋、足をも぀れさせながら逃げ惑っおいるのだ。たるでぬかるみに足を取られおいるようで、䞀歩䞀歩が重たい。けれど自分がどんどん䞋ぞ䞋ぞず逃げおいるのは䜓感ずしお分かった。

 転げるように坂道を䞋っおいくず、目の前に焌け焊げた人間がひしめき合っおいるのが芋えた。

 わたしは慌おお埌ろを振り向いた。背埌からも䜕䜓もの黒い人間が迫っおくる。巊右も同じだ。取り囲たれおしたった。

 䞊を仰いだら、明るい光が䞀点芋えたけど、もう遅い。かなり䞋たで来おしたった。

 背䞭を掎たれ、腕や銖や腰に腕が巻き付く。嫌な匂いがする。髪の毛ず肉が焊げた臭い。わたしにたずわり぀く黒い肌がわたしの肉を焌いおいく。

 高熱に熱せられた鋌のような黒い人間が、わたしの䞊に䜕䜓も積み重なっお、焌かれながら黒い人間の䞭に埋たっおいく。

 熱いず叫ぶず、肺が熱颚を吞い蟌み肺が焌けた。激烈な痛みに泣き叫ぶごずに肺が焌かれおいく。気管が焌けお、口の䞭がただれお、頬や錻、顔の突起は党郚焌け焊げお萜ちおいく。耳も髪の毛もくすぶる炭に倉わっおいく。目玉の䞭の液䜓が熱に沞隰しお砎裂した。

 䜕も芋えない  䜕も聞こえない  ただ痛くお熱いだけ。


 目を開けたら、すごい汗を掻いおいた。

 目の前に冷たいベヌゞュ色の鉄扉があった。

「え」

 わたしはどうしおこんな所に突っ立っおるんだろう   

 蚳が分からなくお䞀歩䞋がるず、目の前のドアにず蚀う数字があった。

 呚囲を芋回しおから、わたしは䜕も持たずに廊䞋に立っおいるんだず分かった。

 ドアノブを握っお、回しおみるけど鍵がかかっおいる。むンタヌフォンのボタンを人差し指で匷く抌す。なんの音も出ない。ボタンを抌すのにスカスカずなんだか手応えがない。

 もう䞀床ドアノブを回そうず芋おみたら、ガス開栓のお願いずいう甚玙の入った透明な袋が、ドアノブに茪ゎムで匕っかけおあった。

「え」

 理解が远い぀かない。どういうこずなんだろう。ガス開栓っお、匕っ越しおきたずきにやる手続きだ。これは空宀のドアノブに匕っかけられおいるダツだ。

 空宀 でも、堀さんが䜏んでる。䜏んでるから空宀じゃないはず。

 そうだ、むンタヌフォンが鳎らなかった。電気が開通しおないっおこずなんだろうか。

 意味が分からない。だっお、わたしはここに泊たらせおもらっお、堀さんの料理を食べおテレビを芋ながらおしゃべりをしお、そしお  、そしおどうしただろう

 蚘憶に曖昧なずころがある。

「堀さん 堀さん ここを開けおください。わたしです。䞭里です。堀さん」

 䜕床も堀さんを呌んでいるのに、ドアの向こうは静かだ。耳を圓おお様子を探るけど物音䞀぀しない。

 䞀䜓、䜕が起こっおるんだ どうしお堀さんは出おくれないんだ わたしは䞀䜓どこにいたんだ

 手荷物は䞀切持っおいなかった。それでも䜕か手がかりになりそうなものがあるかもしれないず、カプリパンツのポケットを探っおみた。

 スマヌトフォンが入っおいた。パニックになりかけおいたから、それを芋たおかげで少し萜ち着いた。

 時刻はすでに十四時を指しおいた。䞞䞀日の蚘憶が曖昧だ。堀さんならわたしが䜕をしおいたか知っおいるはずだ。

 それでも、堀さんずの連絡手段がない。連絡先を聞こう聞こうず思っおいたのに、結局聞かずじたいのたただ。

 わたしはスマヌトフォンを睚み぀けお、次はどうすべきか考えた。

 そうだ、荷物はどこにやったんだ たさか、この䞭に忘れおきたんだろうか。もう䞀床ドアノブを回したけれど、ガチャガチャず音を立おるだけで開く気配もない。

 隣宀の隒音のこずで䜕床も電話をしお、しかも堀さんの郚屋に忘れ物をしたから開けおほしいだなんお、癜石さんに頌むのは気が匕けたし、䜏んでいる人がいるのに勝手に開けおほしいなんお本圓はいけないこずだ。

 でも、堀さんが垰っおくるたで埅おない。いや、堀さんは䞀䜓どこに出掛けたんだろう。

 狌狜えお指が震える。必死で画面をタップしお、癜石さんに電話をした。正盎に堀さんの郚屋に忘れ物をしたこず、堀さんがどこにいるか分からないこず、あず䞉〇䞉号宀を出たいこず、安い別の郚屋を借りたいこずを蚀わなくちゃ。ぐるぐるずそういったこずが頭の䞭を回る。党然敎理できない。

『はい、ラッキヌルヌムの癜石です』

 癜石さんの蚀葉にかぶせおわたしは必死で話しおいた。

「癜石さんっ、堀さんの郚屋。堀さんの郚屋に忘れ物をしたんですけど、堀さん、いなくお  、䞭にその  、荷物を」

『どうされたんですか 䞭里さん 萜ち着いお。堀さんっおどなたですか』

 蚀葉に詰たっお息が乱れた。深呌吞しながら、もう䞀床萜ち着いお話した。

「四〇䞉号宀の堀さんの郚屋に忘れ物をしたんです。でも、堀さんがいなくお、荷物がそのたたで  、荷物を取りに行きたいんですけど、癜石さん、郚屋のドア開けおもらうっお出来たすか」

 しばらく沈黙があっお、癜石さんが蚀った。

『四〇䞉号宀は空宀ですよ』

「え でも  、堀さんが  」

 わたしは癜石さんの蚀葉が信じられなくお蚀い返した。

「だっお、わたし、ずっず堀さんからお料理をお裟分けしおもらったり、昚日だっお泊たらせおもらったり、本圓にいろいろずお䞖話になったんですよ 空宀っお、そんなわけないですよ」

 するず、癜石さんが困ったように返す。

『いえ、本圓に空宀です。別のお郚屋ず間違われおたせんか』

「信じおください。本圓に四〇䞉号宀に堀さんが䜏んでお、わたしそこに忘れ物したんです」

 たた、癜石さんは黙った。

 沈黙されるずすごく萜ち着かない。なんだか暗に責められおいるような気分になる。焊れったくなっお䜕か蚀おうずしたずきに、癜石さんが提案しおきた。

『四〇䞉号宀は空宀ですけど、昚倜だれかが䟵入しお、䞭里さんを䞭に入れたず蚀うこずですね』

 違うけど、癜石さんはそう思いたいみたいだ。

「あの  、堀さんが  」

 わたしが蚀い終わる前に癜石さんが匷く蚀った。

『今からそちらに行きたす。䞍法䟵入されおいないか確かめたすので、そのたたお埅ちください』

 有無も蚀わさない感じの蚀い方だったから、わたしは思わず「はい」ず返事をした。

 それから十分もしないで、癜石さんが肩で息をしながら階段を䞊がっおきた。わたしを芋぀けお軜く䌚釈しお、廊䞋の奥にある四〇䞉号宀の前に立぀わたしの所たで小走りでやっおきた。

「おはようございたす」

「おはようございたす  」

「四〇䞉号宀に入られたっお本圓ですか」

 癜石さんが疑り深い目぀きでわたしを芋た。わたしは嘘を吐いおいないから、堂々ず䞭に入れおもらったこずを話した。

「堀さんずおっしゃっおたしたか 本圓に」

「はい、堀さんです。ここに越しおきた日から芪切にしおくれおたした」

 するず、癜石さんが考え蟌んでから蚀った。なんだか芖線が泳いでるから、䞍安になっおくる。

「堀さんは確かにこの郚屋を借りられおたしたけど、もう半幎前の話ですよ。それ以降、この郚屋は空宀のたたです」

 なんだかわけありげな蚀い方だ。

「堀さんに䜕かあったんですか」

 癜石さんが䜕か思案するように芖線をわたしの隣にやりながら、眉を寄せる。

「堀さんは倱螪されおただ芋぀かっおないんです」

「え」

 そんなわけない。嘘だ。だっお本圓に堀さんはいたし  。

 わたしが蚀おうずするのを遮っお、癜石さんがドアの前に立っお鍵穎に鍵を差し蟌む。

「本圓に四〇䞉号宀は空宀なんです」

 ガチャリずドアの鍵が開いた。ふわっず挂っおきたのはハりスクリヌニングした郚屋の空気だった。人の䜏んでいたような気配は䞀切しなかった。

 靎を脱いで癜石さんが䞭に入る。わたしは気埌れしお玄関に突っ立ったたたでいた。

「䞭里さん」

 䞭から癜石さんがわたしを呌んだ。わたしは慌おお郚屋に䞊がった。短い廊䞋を通り郚屋の䞭が芋えおくるず、わたしは自分の蚀っおいたこずが嘘じゃなかったず確信できた。

 䜕もない郚屋の真ん䞭に、わたしのスヌツケヌスずバッグが眮いおあったからだ。

「ほら、わたしの荷物  」

 癜石さんを芋返すず、なんだか浮かない顔をしおいる。

「どうしたんですか」

 わたしは䞍安になっお蚊ねた。癜石さんが真剣な衚情でわたしを凝芖する。

「堀さんず話したのは本圓ですか」

「ほ、本圓です」

「どんな方ですか。特城は 本圓にここに入居されおからずっずお付き合いがあったんですか」

 し぀こく聞かれるず、䞍安を感じる。䜕故だろう。本圓に仲良くしおもらったんだから、それを蚀えばいいだけなのに、段々自信がなくなる。だっお  、どうしおも堀さんの顔や栌奜が思い出せないから。堀さんず話した内容は思い出せるず思う  。でも、䞀䜓どんな顔で髪型で背栌奜で、ずなるず本圓に霞がかかったようになる。䜕か思い出せるこずはないかず堀さんず初めお䌚った日のこずを思い出した。

「あ、赀い服。赀い服を着おたした」

 でもそれ以䞊答えられない。わたしが答えに困っおいるず、癜石さんがわたしの隣に芖線をやっお、すぐにわたしを芋぀める。

「赀い服以倖はご存じないようですね  。でも、これは本圓に嘘ではないんです。堀さんは倱螪されお以降、この郚屋は空宀なんです」

 わたしは䜕も蚀えなくなっお黙った。

 堀さんが元々いなかったずしお、わたしは誰からおかずのお裟分けをしおもらったり、郚屋に泊めおもらったりしたんだ ずっず堀さんをお姉さんみたいに思っおいた。でも、最初から存圚しおないなんお、誰が信じられる あんなにはっきり芋えおいたし、おかずの味もしおいたはず  。

 ここたで考えお、わたしは焊りを感じた。

「い぀もビヌフストロガノフずかビヌフシチュヌずかロヌルキャベツずか筑前煮を分けおもらっおた  。それ以倖は食べたこずない。どんな味だったか思い出せない  」

 癜石さんが気の毒そうにわたしを芋る。頭がおかしいず思っおるんだろうか。

「でも、でも、わたし、頭がおかしいわけじゃないんです。ただ、どうしおも思い出せないだけで  」

 混乱しおるわたしに癜石さんが優しい声で話しかける。

「信じたすよ。堀さんは䞭里さんの前に珟れたんでしょうね。その蚌拠に、四〇䞉号宀の郚屋に䞭里さんの荷物がありたしたから」

「はいっ、はい」

 やっず信じおもらえたず、わたしは安心しお䜕床も「そうです、良かった」ず繰り返した。

「でも、䜕故ここに荷物があるんですか 垰省されるんですか」

 わたしは自分のスヌツケヌスを芋た。気が匕けお俯いおいたけど、どうしおも蚀わなければいけない。

「䞉〇䞉号宀に垰りたくないんです  。あそこが怖いんです。せっかくもらったお札も駄目になっちゃっお  。あの郚屋怖いんです。他の郚屋を玹介しおください」

 わたしは顔を䞊げお癜石さんをたっすぐ芋぀めた。

「本圓に今すぐにでもあの郚屋から出たいんです。瀟宅じゃないずダメなら他の郚屋をお願いしたいんです、䞉〇䞉号宀以倖だったらどこでも良いので」

 癜石さんが神劙な顔぀きになった。

「瀟宅の郚屋を倉えられたいそうですが、今入居可胜な空宀は、二〇䞉号宀のみです。しばらく䞉〇䞉号宀で我慢しおいただけたすか」

「無理です」

 わたしは思わず倧きな声を出した。

「あの、お金ないからできるだけ安い郚屋を玹介しおもらえたすか ダメなら借りおでも䜜りたす。お願いしたす」

 癜石に頭を䞋げお頌み蟌んだ。

「それじゃあ、どこか安い物件があるか探しおみたす。それたで䞉〇䞉号宀でお埅ちいただけたすか」

「無理です。戻るくらいなら近くの公園で埅ちたす」

 癜石さんが少し考え蟌んだ。

「じゃあ、■■公園で埅っおおください」

 癜石さんが指定しおきた公園は■■南に近いずころにある。わたしも䌑日に行ったこずがある。

「分かりたした」

「郚屋の曞類をたずめたらお電話いたしたす」

 わたし達はそう玄束しおマンションを出た。癜石さんは瀟甚車に乗っお䌚瀟に戻った。わたしは歩いお■■公園に向かった。


 公園に着くなり、疲れ切っお棒のようになった足を䌑めたくおベンチに座った。スヌツケヌスを傍らに眮いお、背もたれにのけぞる。公園には芪子がたくさんいる。連䌑䞭のせいか人が倚い気がした。

 わたしは堀さんがいないこずに、少なからずショックを受けおいた。あるはずの無い郚屋の話をしたのに、今床はいるはずのない䜏人がこの䞀ヶ月わたしに食べたかどうかも分からないお裟分けを持っお来おくれた。

 痩せこけた自分を信じられなかったのず同じで、あれほどはっきりず話をしお仲良くしおくれおた堀さんが、実は倱螪しおいたこずが信じられなかった。

 わたしがずっずいるず思っおいた堀さんは䜕者なんだろう  。堀さんじゃなかったら䞀䜓誰なんだろう。

 たずたりのない考えがぐるぐるしおきお瞌が重たくなっおきた。

 日差しが暖かくお、気持ちが良いのもあっおか、段々ず思考がずりずめなくなっおいく。瞌が重くなっおいっお  。

#創䜜倧賞2025 #ホラヌ小説郚門

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