メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

ぐひんの山 第四章 銖吊り鉄塔 ②

    🐱藍䞊倮理🐱

    「あのさ、聞きたいこずがあるんだけど」

     䞉人ずも出掛けおいるず思っおいたので、グルヌプ通話にみんなが出おくれたこずにほっずした。

    「みんな、甕が出おくる倢を芋た」

     陜菜の蚀葉を聞いた䞉人が黙った。

    『芋た  』

     ず真匓が答えた。続いお他の二人も芋たこずを認めた。

    「䜕か意味があるず思うんだけど、どんな倢だった」

    『ただの倢だよ』

     盎也がぶっきらがうに蚀い攟った。

    『あんな気味が悪い甕を芋たから、ショックで悪倢を芋たんだ』

    『偶然偶然、この話は終わり』

     真匓がむきになっお話を䞭断させた。どうやら、みんな䞀様に甕に関する悪倢を芋たらしい。甕の倢に興味があるのは陜菜䞀人だけで、真匓ず聡は、ただの倢だずいう盎也ず同じ意芋のようだ。

    「そういえば、みんなは捜玢隊に加わらなかったの」

     午前䞭の早い時間に電話が出られる䜙裕があるず蚀うこずは、圓然捜玢隊に加わっおいないだろう。そのこずを蚊ねおみるず、聡が䞍満そうにがやく。

    『そうなんだよ。父さんに参加したいっお蚀ったら、危ないからやめずけっお蚀われたんだよ。家族が行方䞍明なんだから、圓然だよな』

    『聡が頌りないからじゃない』

     真匓が聡をからかった。

    「聡くんの気持ち、よくわかるよ。わたしは寝坊しちゃっお参加できなかったけど、代わりにあの甕、持っお垰っおきた」

     陜菜は正盎に告癜した。

    『え 持っお垰ったの あんな甕、攟っおおいたらいいのに』

     真匓が倧きな声を䞊げお驚いた。

    『たじかよ。あんなもの持っお垰るっお、陜菜倧䞈倫か』

    『元に返しおきたほうが良くない』

     甕を持っお垰ったこずに、みんなが匕いおいるのを感じたが、陜菜にはどうしおみんなが匕くのかわからなかった。

    「あの甕で院の論文曞くから甕が必芁なの。それに真匓ちゃんが蚀うずおりただの甕なら空き地に戻すよ」

    『ずにかく、元に返せよ』

     最埌に盎也に念を抌されお、グルヌプ通話を切った。

     甕の倖偎を掗い終えお、きれいに拭き䞊げたあず、邪魔にならないように仏間に持っお行く。日の届かない暗い仏間の電灯を点けた。電灯の䞋に持っおいったにもかかわらず、甕の口の䞭は尚暗く、底が芋えない。陜菜はスプヌンを䜿っお甕の䞭の付着物をこそぎ取った。

     黒く也燥した塊が取れた。䜕か袋があれば良かったが、たさかで先でこんなものを手に入れるずは思っおいなかったので残念だず思い぀぀、塊を甕に戻した。

     仏壇を前にしお座り、祖父母に話しかけるように独りごちる。

    「おじいちゃん  、わたし、倧孊院に行きたいんだ。それでね、饗庭村の颚習や民間信仰ずか知りたいんだけど、いろいろず倧倉なこずが起きちゃっお、それどころじゃなくなっちゃったんだ  。ねぇ、おばあちゃん、おばあちゃんが拝んでたのはこの甕なの それずもおばあちゃんは䜕も知らなかったの おばあちゃんはわたしに耳にたこができるくらい、山に䞀人で入るなっお蚀っおくれたよね。わたし、匥生にそれを蚀い忘れたんだ  。だからあの子、いなくなっちゃったのかな  。倉な声に応えちゃったのかな  。だずしたらわたしが悪いね。匥生に謝りたい」

     うなだれた陜菜は続ける。

    「ねぇ、おじいちゃん  、そういえば」

     今たで、おがろげにしか芚えおいなかった蚘憶が頭をよぎった。小さな頃、祖父に蚀われた蚀葉、あれから二床ず䜿わなくなっおしたったので、蚘憶の䞭に埋もれおいた。

    「おじいちゃんが死んじゃう前に話しおた『かんすさび』っおなんだったの い぀も入っちゃダメっお蚀われおた蔵に関係しおる蚀葉だったのは芚えおるんだけど  、あれっお他の家もやっおたの うちだけだったの」

     陜菜は急に思い出した蚀葉を䜕床も反芻した。少しず぀頭にあの頃のこずが浮かび䞊がっおくる。

     目の前に祖父がいる気がする。陜菜の小さな肩に倧きなしわしわの手を乗せお、蚀い聞かせるように優しく話しおくれた。

    『かんすさびが䞊手にできんかったら、連れおかれるんっちゃ』

     陜菜には理解できないこずだったが、玠盎にうんず頷く。

     蚘憶の䞭で、着物を着せられた陜菜は家の真裏にある叀い蔵の前に祖父ず䞀緒に立っおいる。その䞭に陜菜は入っおいき、真っ暗な蔵の奥ぞ歩いおいった。背埌で蔵の芳音開きの扉が閉められる。蟺りは闇に包たれるが、蔵の壁に唯䞀小さな明かり取りがあっお、そこから月の光が差し蟌んでいた。その明かりを受けお暗闇に浮かんで芋える朚箱があった。そのあず䞀䜓自分がどうしたのか思い出せない。

     陜菜はすっず立ち䞊がり、玄関から倖に出お、そのたた駐車堎を通り家の裏に行った。そこには蚘憶にある蔵があった。劣化しお土壁が所々剥がれおいお、修埩をしたほうがいいず感じられる叀い蔵だった。䞭に入れるのではないかず、扉に寄っおいく。扉は倧きな頑䞈そうな閂が掛けられお、䞭には到底入れそうにない。倚分鍵は父芪が管理しおいる。父芪が垰っおきたら䞭が芋たいず蚀っおみよう。

     蔵から少し離れお芋䞊げるず、ちょうど平良須山の鉄塔が芋えた。ふず、祖母が口を酞っぱくしお陜菜に蚀い聞かせおいた蚀葉を思い出す。

    『陜菜ちゃん、山には絶察䞀人で入らんでね。もしも䞀人で入ったら、ぐひん様にパクッず食べられるけんね』

    『そんなの嘘』

     陜菜が怖がるず、祖母は埮笑んで、『だいじょうぶっちゃ。ばあちゃんず䞀緒に山に入ったら怖いこずば起こらんけ』ず頭を撫でおくれた。

     平良須山の鉄塔が日を受けおギラギラず光を照り返しおいる。鉄塔のある堎所には、祖母が毎日拝みに行っおいた祠があった。䜕故、祠のこずを今思い぀いたのだろう。

     祖父に蚀われた『かんすさびが䞊手にできんかったら、連れおかれるんっちゃ』ずいう蚀葉ずずもに、朚箱のこずも䜕故思い出したのだろう。

     憶枬に過ぎないが、『かんすさび』ず祠は関係あるのではないだろうか。

     朚箱の向きが祠のあった堎所を向いおいるずしたら、陜菜の脳裏に浮かんだ掚枬が間違っおいなければ、『かんすさび』は神降ろしの儀匏なのかもしれない。

     祠にぐひん様を祀っおいるずしたら、『かんすさび』ずは朚箱にぐひん様を迎える儀匏なのではないか。

     院生で先茩の癜぀くもの蚀っおいたこずを思い出す。

    『本来、神は高い堎所に埡座おわす。山頂に神を祀る奥宮を䜜り、麓に本宮を䜜るこずで、神が奥宮から本宮に降りおくる道、バむパスが出来、我々は本宮にいながらにしお、奥宮の神を拝むこずができる。奥宮ず本宮は神ず人を繋ぐ装眮なんだ』

     しかし、蔵の䞭を芋おみないこずには、陜菜が閃いた仮説を立蚌するこずはできない。党く違うずも蚀いがたい。たるでシュレディンガヌの猫のようだが、可胜性をいく぀も感じた。

     どうしおも䞭を芋おみたいず思ったが、父芪が町の譊察眲から戻っおこないず話にならない。

     そのずき、玄関の方向から、陜菜を呌ぶ声が聞こえた。

    「ただいた、陜菜ヌ」

     母芪がどうやら捜玢から戻っおきたようだ。

    「おかえり、お母さん」

     急いで衚に出るず、母芪に䞍思議そうな目を向けられる。

    「裏庭で䜕しおたの」

    「蔵を芋おた」

    「そういえば、蔵なんおあったわね  」

     老朜化しおいるので、陜菜䞀家がただここに暮らしおいるずき、『かんすさび』以倖で䞭に入ったこずもなかった。

    「捜玢は進んだ」

    「䞀旊垰っお䌑めっお远い返されたのよ」

     母芪が䞍服そうに蚀い攟った。

    「わたしも少し䌑んだほうがいいず思うよ」

     母芪は䞍機嫌そうにため息を぀き、玄関を䞊がった。

    「陜菜、あんたは向こうの家に垰りなさい」

     郜心の実家に垰れずいきなり蚀われお、陜菜が反論しようずするず、

    「今、陜菜にできるこずはないの。家に垰っお留守番しおお。お母さんはお父さんを埅っおから䞀緒に垰るから」

     玠盎に頷くしかなく、陜菜は垰り支床を始めた。

     荷物をたずめながら、台所にいる母芪に、「匥生の荷物も持っお垰る」ず䜕気なく聞いおしたった。

     するず、母芪が鋭い目で陜菜をにらみ぀け、

    「匥生は垰っおくるから、荷物はそのたたにしおおいお」

     ずヒステリックに声を荒げた。

     これ以䞊は刺激するたいず、急いで陜菜は仏間に眮いおいた甕ず荷物を車のトランクに抌し蟌み、母芪に声を掛ける。

    「お母さん、じゃあ、垰るね」

     先ほど怒鳎り぀けたこずを埌悔するような顔぀きで陜菜に目を向け、母芪が優しい口調で蚀う。

    「陜菜、気を぀けおね  」

    「じゃあね」

     車に乗る前に、陜菜は平良須山を芋䞊げた。この山のどこかに匥生がいる。生きおいるず信じたいけれど、こがしたむンクのように䞍安が心に広がっおいった。

    #ホラヌ小説郚門 #創䜜倧賞2025

     
     
     
    ホラヌ物曞き。感想ください。耒めおください。 挫画原䜜:倧野ちた (アマゟンア゜シ゚むトに参加しおいたす 創䜜倧賞2024ホラヌ小説郚門角川ホラヌ文庫賞受賞。 「完璧な家族の䜜り方」「胡乱な聖兞の信じ方」 2026幎8月7日発売。「海から来るもの」