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リバヌサむド■■南には犁止事項が3぀ある 䞉○四号宀 【川添 矎海子】

 埌茩が気味の悪いこずを蚀う。矎海子は亜郜里のこずを䞍快に思い始めおいた。最初は気が匱くおずなしい子だず感じおいたけれど、蚀動がおかしい。やけに顔色も悪い。

「最近痩せた ダむ゚ットでもしおるの」

 ただ入瀟しお十䞃日しか経っおないけれど、目に芋えお亜郜里がや぀れおきおいる。ちゃんず食事をしおいるか気になっお、矎海子は蚊ねた。

「ダむ゚ット しおないですよ。䞉食ちゃんず食べおたすよ」

 ほらず亜郜里が食べかけの匁圓の䞭身を芋せた。

 量が極端に少ないずかでもないようだ。ただ、研修䞭の教育係ずしお亜郜里の䜓調管理も矎海子の責任になるず思ったから、ダむ゚ットしおいるのかず聞いたのだ。

 や぀れおいるが、本人が食事をちゃんず摂っおいるずいうのなら、それを信じるほかない。

 話すこずもないので黙々ず匁圓を食べおいるず、机に眮いたスマヌトフォンが急にバむブしだした。画面を芋たら、ラッキヌルヌムの癜石からだ。

 䜕の甚だろうず垭を離れお廊䞋に出る。

「もしもし」

『川添さんのお電話でしょうか お䞖話になっおたす。ラッキヌルヌムの癜石です』

 癜石から電話があるのは初めおだった。䞀䜓䜕事だろうず矎海子は身構えた。

「䜕ですか」

 するず、癜石が蚀いにくそうな口調で、『すみたせん。他の䜏人の方から倜䞭に話し声がするずいう盞談を受けたしお、䜕かお心圓たりがありたしたらご協力願えたせんか』ず蚀っおきた。

「それっお、わたしがうるさいっおこずですか」

 身に芚えのないこずで泚意され、矎海子は蚀い返した。

『そういうわけではありたせんが、もしお心圓たりがありたしたらず蚀うこずで  』

「どううるさいんですか。䜕がうるさいか教えおもらえないず、協力も䜕も出来ないず思いたすよ」

 倚少き぀めに蚀い返しおおかなければ、隒音の䞻が矎海子だず断定されおしたう。

『男女の話し声だそうです。おそらくテレビか䜕かではないかず思うんですが  』

「倜䞭たでテレビは芋おいたせん。䜕か勘違いじゃないですか。わたしじゃないですよ」

『そうですか  、倧倉倱瀌をいたしたした。川添さんも䜕かありたしたらい぀でもご連絡ください。それでは倱瀌いたしたす』

 癜石が端はなから矎海子を疑っおいるのが気に食わなかった。もっず䜕か蚀っおやりたかったが、昌䌑みを身に芚えのないこずで浪費しおしたうのは嫌だったので、さっさず通話を切った。もし受話噚で電話を受けおいたら、顧客や営業にはしないような荒っぜさで電話を切ったかもしれない。こういうずき、スマヌトフォンでは感情を盞手に䌝える手段がない。そんな些现なこずでストレスを感じる。

 憀慚しながら亜郜里の隣の垭に座る。匁圓を広げお手䜜りのご飯を口に頬匵った。

 䜕も喋らない亜郜里に気を遣っおテレビの話題を振るが、亜郜里はバラ゚ティ番組を芋ないらしい。共通点がなさ過ぎお、䌚話が途切れがちになっおきた。

 そんなずき、急に亜郜里が思い出したように口を開いた。

「そういえば、昚日、癜石さんに䞉〇四号宀の話し声、盞談しおみたんですよ。静かになっおくれたら良いんですけど  。なんだか、男の人が䞀方的に女の人を責めおるみたいで、女の人は䞀晩䞭泣いおるんです」

 䜕を蚀っおるんだろうず、矎海子は眉を寄せお亜郜里を芋た。亜郜里の郚屋は角郚屋で、䞉〇四号宀などない。

「䞉〇四」

「わたしの隣の郚屋ですよ。毎日倕方から倜䞭たでずっず声が聞こえるんです。結構耳に぀いお、それに痎話げんかずかじゃなくお  」

「䞉〇四号宀なんおないよ」

「え あるじゃないですか」

「あなたの郚屋、䞉〇䞉号宀は角郚屋なんだけど。冗談蚀っおるの」

 䞉〇四号宀なんおない、亜郜里の郚屋は角郚屋だずいくら蚀っおも、受け入れようずしなかった。ずおも頑固だ。もう少し柔軟に先茩の蚀葉を聞いたほうが良いず矎海子は苊々しく思う。

「声は䞉〇四号宀から聞こえおるっお䜕の冗談」

 隒音のこずを癜石に盞談したのは亜郜里なのだ。癜石の倱瀌な電話にむか぀いたが、䞀番腹が立぀のは亜郜里だ。

 圚りもしない䞉〇四号宀から倜䞭になっおも声が聞こえおくるのだず、亜郜里がわざわざ矎海子に話しおくる。これは遠回しに矎海子がうるさいずいう嫌味なのか。

「で、でも  、本圓に聞こえるんです」

「本圓に」

 䜕蚀っおるんだろう。粟神的に䜕かおかしくなっおいるのだろうかず、じっず亜郜里を芋おいるず、亜郜里が匱々しい口調で続けた。

「本圓に䞉〇四号宀から  」

「悪いけど、䞉〇四号宀なんおないの。䞭里さんの郚屋は角郚屋。確かめおみたら」

 少し匷めに蚀ったらすっかりむくれおしたったのか、午埌の仕事䞭、亜郜里に矎海子が声をかけおも聞こえおないのかたびたび無芖された。

 矎海子は腹を立おながら、平静を装っお亜郜里に仕事の内容を教えた。しかし、本圓ならすぐにでも亜郜里を怒鳎っお、癜石に有りもしないこずを吹聎したず謝らせたかった。

 矎海子は断じお倜䞭に隒ぐようなこずをしおいない。

 そういえば、䞉〇䞉号宀に䜏んでいた前の䜏人も同じこずを蚀っおいた。

 その女性は矎海子に盎接苊情を蚀いに来た。

『ちょっず、すみたせん。あの、倜䞭倧きな声で話すのやめおもらえたせんか』

 女性は開口䞀番、矎海子にこう蚀った。

『はぁ』ず矎海子は目の前の女性の人栌を疑った。『いきなり䜕を蚀っおるんだ』喉元たで出かかった蚀葉を呑み蟌み、柔和な顔぀きで返す。

『倱瀌ですけど、勘違いじゃないですか』

 するず、女性は食っおかかるような勢いで蚀い぀のる。

『勘違いじゃないですよ。珟にそっちから男の人の声を聞こえおくるんですよ ここ女性限定で男性をマンションに呌んだらダメなの知っおるでしょう』

 矎海子はむっずする。

『男性なんお郚屋に䞊げおたせんよ』

 匷めに蚀うず女性はひるみ、語気を荒げお喋るのをやめた。

『本圓に寝られないくらいうるさいんですよ』

『そんなこずわたしには関係ない』ずいう蚀葉が出そうになったが、ぐっず堪えた。

『男の人が女の人を責めおるのか、女の人の泣き声がうるさいんです。ごめんなさいごめんなさいっお䞀晩䞭聞こえおくるんです。本圓に男の人はいないんですか』

 女性がぐぐっず銖を䌞ばし、目を皿のように芋開いお郚屋の䞭を芗いおくる。気味悪く感じた矎海子は開けおいたドアを閉めようずした。それを女性が閉めさせないように足をドアの隙間に突っ蟌んだ。

 それにはさすがの矎海子もぎょっずした。

『ちょっず、䜕するんですか』

 女性は郚屋の䞭を、『䞭に男性いたすよね』ず芗き蟌んでくる。

『いい加枛にしお䞋さい。譊察呌びたすよ』

 さすがに䟵入されそうで怖くなった。

『そんなにうるさいなら、ラッキヌルヌムに蚀ったらいいじゃないですか』

 散々抌し問答をしお、女性は䞉〇䞉号宀に枋々戻っおいった。矎海子は、その埌ろ姿をドアの隙間から確認しお閉めた。

 矎海子は二十歳でオリ゚ント株匏䌚瀟に就職しおから、五幎間この瀟宅に䜏んでいるが、倉な泚意事項以倖はずおも䜏みやすいず思っおいる。女性限定なので結婚しおいる䜏人はいないし、独身の䜏人ばかりなので適床な距離を眮くこずも出来る。干枉されない生掻に満足しおいるずいうのに、最近ずっず䞉〇䞉号宀の䜏人に安寧を乱されおいる。

 䞉〇䞉号宀の女性は他の䜏人ずかなり芪密にしおいるらしく、廊䞋で立ち話しおいるのをよく芋かけた。

 䜕の話をしおいるのか耳をそばだおおみるず、『い぀もお料理ありがずうございたす』ず話しおいる。料理を枡しおいる女性も、『党然。もらっおくれお助かっおたす』ず䜜りすぎた料理をお裟分けしに来おいるようだ。盞手は、たたに階段で芋かける女性で、どうも䞊階に䜏んでいるようだった。

 しかし、その女性を芋かけなくなっおから、䞉〇䞉号宀の女性がどんどん目に芋えおや぀れおいった。結局粟神を病んで、䌚瀟を蟞めお田舎に垰ったそうだ。

 䞉〇䞉号宀は亜郜里が入居しおくるたで半幎近く空宀のたただった。このマンションの瀟宅は空宀が倚い。知っおいる限り、二〇䞉号宀は長らく空宀だ。

 䞋手するずこのマンション自䜓空宀が倚いかもしれない。ポスティングされたチラシが溜たっおいるポストを芋お、倚分そうだず矎海子は芋圓を぀けおいる。

 䞉〇䞉号宀の前の䜏人が蚀っおいた隒音のクレヌムは、おそらくマンション党宀の䜏人が抱えおいる問題だろう。でなければ、䞀階の掲瀺板に『倜間は静かに』ずいう泚意事項が貌り出されるわけがない。芁するに隒音で嫌な思いをしおいるのは、亜郜里だけではないずいうこずだ。


 い぀もながら仕事が終えるのは十九時過ぎ。買い物をしお、マンションに垰り着くのが二十時を回った頃合、泚意事項のこずもあっお、矎海子は長いこず゚レベヌタヌを利甚しおいない。健康の為に習慣で階段を䞉階たで䞊る。

 矎海子は自分の郚屋の鍵を開け、暗い郚屋の電気を付けた。明るい郚屋からさっず蟠わだかたっおいた圱が消える。゚コバッグをテヌブルに眮き、着替える為に掗面所ぞ行った。

 玄関を入っおからずっず、がそがそず声が聞こえおいる。声は䞉〇䞉号宀偎の壁から挏れ聞こえる。五幎も経぀ず、ずいぶん話の内容も分かるようになるのだなず、着替えお郚屋のテレビを付けた矎海子は、がんやりずビヌルのプルトップを開けお飲んだ。

 矎海子は亜郜里がバラ゚ティを芋ないこずやドラマもそれほど奜きではないのを知っおいるから、テレビの音じゃないこずはわかっおいる。

 隒音の発生源は䞉〇䞉号宀だ。それがきっずマンション党䜓に響いおいるのだ。そんなふうに矎海子は劄想しおいる。ただ、それを亜郜里に指摘したら、圌女はショックを受けるだろう。

 この音を亜郜里が出しおいるずは思っおいない。なぜなら、前の䜏人の時から聞こえおいるからだ。聞こえるはずのない話し声。でも矎海子にだけ聞こえおいるわけではないので幻聎ではない。

 矎海子はテレビのリモコンを手に取り、ドラマにチャンネルを倉えた。ボリュヌムを少しず぀䞊げおいくず、がそがそず聞こえおいた話し声は、テレビの音にかき消された。

#創䜜倧賞2025 #ホラヌ小説郚門

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