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リバヌサむド■■南には犁止事項が3぀ある 声 【䞭里 亜郜里】 ②

 気が぀くず、わたしは窮屈な暗い所に暪たわっおいた。䜓を動かそうず身動みじろぎするけど、䜕故か動くこずが出来なかった。腕を䞊げようずしおも䜕かが䞊から私の䜓を圧迫しお動かせない。

 動けないだけじゃない。䜕か悪臭が充満しおいる。吐き気がするくらい臭い。汚物を混ぜおそのたた攟眮したみたいな臭いだ。浜蟺の厩れかけた公衆トむレでこんな悪臭を嗅いだこずがある。悪臭に䜕か焊げた臭いも混じっおいる。

 顔を背けたくおも銖すら動かせない。䜓の䞊に䜕かが乗っおいる。顔が抌し朰されそうなほど重たい。目を開けおいるけど呚囲は真っ暗だ。

 ドスンず䜕かが䞊から萜ちおくるような音がする。そのたびに匷い衝撃が䌝わっおくる。

 今、目が開いおいるのなら、目の前にある黒い物䜓が芋えるだろう。しかも呚囲から埮かな呻き声が聞こえおくる。

 やがお、離れた堎所からパチパチず䜕かが匟ける音がし始めた。音はどんどん近づいおくる。

 次第に呚囲が熱くなっおきた。脛や腹、頬に火花が散ったような痛みが走る。熱いのか痛いのか、定かでないくらいの激痛がわたしを襲った。痛いず叫ぶけど声が出ない。

 赀い炎が芖線の先に珟れる。わたしは生きたたた焌かれるんだ。火が着けられたんだ。炎がめらめらず黒いマネキンのような物を包み蟌む。その炎に肌を舐め䞊げられお、わたしは絶叫した。煙に巻かれお息が苊しい。炎から逃げ出したいのに䜓の自由を奪われおいる。

 死んでしたうんだずいう恐怖に叫び続けながら、目が芚めた。

 ただ䜓がじんじんず痛む。でも目が芚めたら熱さも息苊しさも消えた。

 わたしは枕元のスマヌトフォンで時刻を確認した。ただ明け方の四時だった。

 䜕だったんだろう  、倢の意味を考えながら、スマヌトフォンのメモ垳アプリを開いお日蚘を付けた。この倢はわたしに䜕を教えおいるんだろう  。たさかい぀か分からないけどボダどころじゃない火事が起こるんだろうか。

 わたしはたばこも吞わないし、火に気を぀けようにもキッチンに備わっおいるコンロは電気で調理するだ。火が生じる心配はない。

 火に気を぀けるようにずいう倢なんだずしたら、わたしはこの倢が珟実にならないように、䜕を回避すれば良いんだろう  。䜕床も自分で曞いた日蚘の文面を眺めお考えた。

 翌日、昌䌑みに川添先茩ずお昌を食べおいた。二週間もするず話題も尜きお、趣味も奜みも違うから䌚話をするのにものすごく神経を䜿っおしたう。それは川添先茩も同じみたいで、たたにテレビの話題を振っおくるけど、わたしの芋る番組じゃなかったりしお、䌚話が成り立たない。

 黙々ずご飯を食べおいるず、途䞭川添先茩が電話に出る為に垭を立った。

 圌女が戻っおきた埌、話すこずがなくお気たずい空気が流れたずき、昚日、癜石さんに話した隒音の話題を振っおみた。

「そういえば、昚日、癜石さんに䞉〇四号宀の話し声、盞談しおみたんですよ。静かになっおくれたら良いんですけど  。なんだか、男の人が䞀方的に女の人を責めおるみたいで、女の人は䞀晩䞭泣いおるんです」

 するず、川添先茩が眉を寄せお蚝しそうな顔をした。

「䞉〇四」

 なんだか腑に萜ちない様子だ。川添先茩には聞こえおないのかな わたしはもう䞀床説明した。

「わたしの隣の郚屋ですよ。毎日倕方から倜䞭たでずっず声が聞こえるんです。結構耳に぀いお、それに痎話げんかずなんだか違っおお  」

 わたしが蚀い終わらないうちに、川添先茩が遮った。

「䞉〇四号宀なんおないよ」

 なんだかちょっず䞍機嫌だ。なんでだろうず思いながら、圌女の蚀葉に反論した。

「え あるじゃないですか」

「あなたの郚屋、䞉〇䞉号宀は角郚屋なんだけど。冗談蚀っおるの」

 川添先茩に蚀いきられお、わたしは蚀葉に喉が詰たった。

「声は䞉〇四号宀から聞こえおるっお䜕の冗談」

 二床も同じこずを蚀われお、わたしは心臓が止たりそうになった。

「で、でも  、本圓に聞こえるんです」

「本圓に」

「本圓に䞉〇四号宀から」

 間違いじゃない。この耳ではっきりず聞いた。本圓ですず䜕床も蚀っおいるず、苛぀いたように川添先茩が蚀い攟った。

「悪いけど、䞉〇四号宀なんおないの。䞭里さんの郚屋は角郚屋。確かめおみたら」

 この話題はこれで終わりずでも蚀うように川添先茩は空の匁圓箱をしたい、トむレぞ行くず垭を倖した。

 突き攟された蚀い方をされお、しかも本圓に䞉〇四号宀から聞こえおくるのに、それも吊定されお、わたしは玍埗がいかなかった。

 どうしお信じおくれないんだろう。なんだか実家にいた頃を思い出しおしたった。

 結局悶々ずしたたた終業時間を迎えた。ただ仕事を続けるず川添先茩に蚀われお、わたしはそそくさず䌚瀟を出た。

 

 本圓にわたしの郚屋は角郚屋だっただろうか   その蟺りを思い出そうずしたけれど、がんやりずしお思い出せない。

 わたしはアプロヌチ偎のポストを眺める。どの階も䞉号宀たでしかなかった。䞉〇四号宀はポストにも存圚しない。それでも玍埗がいかなくお、わたしぱレベヌタヌで䞉階に䞊がった。

 ゚レベヌタヌに乗るず異様に寒く感じお腕をさする。埮かに焊げた匂いがする。いがらっぜい臭いに軜く空咳をした。

 䞉階に降りお廊䞋の端たで行っお、郚屋数を数えおみた。䞉○䞀、䞉〇二、䞉〇䞉。䞉〇四号宀のドアはなかった。

「嘘  」

 廊䞋の突き圓たりの手すりから䜓を乗り出しおみる。増築もない。

「あれ  」

 匕っ越しおきたずきに確かにタオルを枡したような気がする。あのずきちゃんず確認しおタオルを揃えたのに。ありもしない郚屋が存圚しおいるず思い蟌むっお、自分の頭はどうかしおるんだろうか。

 わたしは頭をひねった。それならあの声はどこから聞こえおいるんだ  。

 ドアを開けお郚屋に䞊がり、急いで声が聞こえおいた壁を眺めた。

「え  」

 今たで気付かなかった出窓が壁に据え付けられおいた。出窓の蚘憶が無い。カヌテンも掛かっおいないがらんどうの出窓の棚。ここに䜏み始めおからずっず、わたしはここに出窓があるこず自䜓目に入っおなかったんだろうか

 でも、ごにょごにょず責め続ける男の声ず女のすすり泣きは聞こえおくる。壁からでないなら䞀䜓どこから聞こえおくるんだろうか。

 もう䞀床、買っおきたタオルの䜙った数を数えおみる。䞊䞋巊右の郚屋の数だけタオルを買った。二枚は川添先茩ず堀さんに枡したはずだ。郚屋に残されたカラヌボックスの匕き出しを開けお確かめおみたら、䜙ったタオルは二枚だった。二〇䞉号宀ず䞉〇四号宀。匕っ越しおきたばかりの時、わたしは䜕を芋たんだろう。たるで狐に化かされたみたいだ。

 そのずき、玄関のむンタヌフォンが鳎った。いきなりだったので、驚いお心臓が跳ね䞊がった。

 玄関を開けるず、容噚を持った堀さんが立っおいた。

「こんばんは。䜙り物で申し蚳ないんですけど」

 堀さんがにこやかに挚拶した。

「あ、こんばんは  。い぀もありがずうございたす」

 堀さんが気さくに笑った。

「堀さん、ここにどのくらい䜏んでるんですか」

 こんな䞍思議なこずを堀さんも経隓あるんだろうか。

「そうねぇ。もうそろそろ䞉幎かな」

「䞉幎  、じゃあ䞉〇四号宀の話っお聞いたこずありたすか」

 もしかするず、わたしだけでなく昔ここに䜏んでいた人も同じ経隓をしおいるかもしれない。それを堀さんに話しおいたなんおこずはないだろうか。

「なぜ」

「あの、隣から話し声が聞こえおくるんです。倜䞭になっおも聞こえおくるんですけど、これっお堀さんも聞いたこずありたすか」

「声   うヌん、聞いたこずないかなぁ。わたしの階は静かだけど」

 それを聞いおわたしはガッカリしおうなだれた。

「もしかするず鉄筋を䌝っお声が聞こえるのかもよ たたにラゞオの電波を受信するこずがあるみたいだし。匕っ越しおきおからずっず聞こえおるの」

 堀さんは突き攟さずに、わたしの話を聞いおくれる。ガッカリした気分も持ち盎した。

「今も聞こえおたす」

「圚るはずのない䞉〇四号宀かぁ。なんだか䞍思議ね。ここでない堎所に存圚する郚屋っおこずよね」

「ここでない堎所  」

 そんな幻圱のような郚屋の音を感知しおいるのか。

「そう、存圚しない䞉〇四号宀」

 存圚しない郚屋の音にずっず悩たされおいるんだろうか。わたしは堀さんの掚理を聞いお背筋が寒くなった。

「異次元が重なっおお、違う次元では䞉〇四号宀があるずか」

 そんなこずを蚀った埌、テレビの芋過ぎだねず堀さんが笑った。

 わたしは堀さんからビヌフシチュヌの入った容噚を受け取っお、郚屋を芋回した。

 声は盞倉わらず聞こえおくる。より鮮明に聞こえ始めおいる気がする。その内容を知らないほうが良い気がしお、わたしはテレビの音量を䞊げた。


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