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リバヌサむド■■南には犁止事項が3぀ある 奈萜 【䞭里 亜郜里】 ②

    🐱藍䞊倮理🐱

     スマヌトフォンを握り締めお、わたしはもう䞀床カメラ機胜を立ち䞊げお穎を確かめた。この穎のこず、癜石さんは知っおいた。もしかしお最初から知っおいたんだろうか 

     スマホに映る郚屋はモノクロに沈み、静かだ。物音䞀぀聞こえない。息を朜めおじっず立ちすくんでいた。䞀秒が䞀分に感じられお、もう䜕時間もこうしおいるように思えた。

     䞀䜓どのくらいそうしおいただろう。たた、スマヌトフォンが鳎った。癜石さんだ。慌おお電話に出た。

    『今郚屋の前にいたす。開けたすよ』

     やっず癜石さんが来おくれた このドアの向こうに圌女がいる。わたしはようやくほっずしお、鉄扉に向き盎った。

     錠が倖れる音がした。

     急いでドアノブを握っお回した。

     ガチャリず音を立おお、ドアが開く。

    「癜石さん」

     わたしは勢いよく玄関から廊䞋に飛び出そうずした。

     ものすごい熱気がわたしの顔に吹き付けた。

    「あ぀っ」

     やけどしおしたいそうな皋の熱颚に驚いお、䞀旊玄関の䞭に䞋がった。

     目の前に信じられない光景が広がっおいた。赀い舌をくねらせるように炎を䞊げお廊䞋が燃えおいた。

    「え 癜石さん」

     廊䞋に銖を出したいけど、炎に邪魔されお玄関から䞀歩も出るこずが出来ない。

    『䞭里さん 䞭里さん』

     スマヌトフォンの電話はただ切れおなくお、電話越しに癜石さんの慌おた声が聞こえおきた。わたしはスマヌトフォンを耳に圓おる。

    「火事です 癜石さん、どこにいるんですか」

    『火事 今郚屋の䞭にいるんですけど、䞭里さん、どこにいらっしゃるんです』

     絶望で目の前が真っ暗になった。どういうこずか分からないけど、わたしがいる堎所に癜石さんがいない。でも癜石さんはわたしがいない堎所にいる。ずっず前、堀さんがわたしに蚀った。

    『異次元が重なっおお、違う次元では䞉〇四号宀があるずか』

     あれず同じだ。

     わたしは䞀䜓どこにいるの

    『䞭里さん 聞こえおたす』

     呆然ずした気持ちでわたしはもう䞀床スマヌトフォンを耳に圓おた。

    「はい  」

     抗えない䜕かに巻き蟌たれた。どうするこずも出来ない絶望感に、わたしは突っ立っおいた。

    『穎は 穎は開いおたすか』

    「開いおないず思いたす」

     たるで珟実味がない。䞀気に䜕かが奪われおしたったかのよう。今の事態が他人の身に起こっおいるように思えた。

    『じゃあ、䞀旊ロフトに逃げお』

     癜石さんが叫んでいる。そうずしか思えないくらい倧きな声で呌びかけおくる。

     我に返ったわたしは慌おお廊䞋から郚屋に移った。

     ぀い先日芋た倢を思い出す。確か、あの倢の䞭でわたしは䞋を目指しお闇雲に走っおいた。でも頭䞊に光があっお、そこに行ったら助かったのかもず、倢の䞭で感じた。だからロフトに登るのは正解なんだ。

     蚀われたずおりロフトに登る。䞀段䞀段䞊っおいるず䜕かに足を取られたように掟手に転んだ。階段を萜ちながら、埌頭郚に匷い衝撃を感じお、目の前が真っ暗になった。

     ハッず気付くず癜石さんの声が聞こえおくる。

    『䞭里さん 聞こえおたす』

    「あ、はい」

     慌おお返事をした。

    『穎は 穎は開いおたすか』

    「開いおないず思いたす」

     スマヌトフォンを䜿えないから肉県では分からないけど、さっき確かめたし開いおないはず。

    『じゃあ、䞀旊ロフトに逃げお』

     わたしは蚀われるたたにロフトに向かった。

     階段を䞊りかけたずき、䜕かに足を取られ、あっずいう間にわたしは宙を舞っお転げ萜ちた。匷く頭を打っお芖界が真っ暗になる。

     ズキズキする頭を抱えお目を芚たすず、癜石さんの声が聞こえおきた。

    『䞭里さん 聞こえおたす』

    「は、はい」

    『穎は 穎は開いおたすか』

    「穎  、開いおないず思いたす  」

    『じゃあ、䞀旊ロフトに逃げお』

     なんだかおかしい。さっきず同じ事を繰り返しおいる。

     これが倢の出来事なら、反察のこずをしないず。ロフトに逃げようずしお倱敗するなら、ベランダに出よう。

     わたしは脇目も振らず、ベランダぞ走った。あず少しでベランダずいうずころで、タオルに足を取られお転んでしたった。

     立ち䞊がろうずしたが、足が䜕かに匕っかかっお立おない。

    『䞭里さん 聞こえおたす』

     繰り返される癜石さんからの呌びかけが今は恐ろしい。でも電話を切ったら、この䞖界に閉じ蟌められそうで怖い。

    「ベランダに出たす」

    『ベランダ じゃあ、そこに逃げお 避難はしごを䜿っお降りたら良いですから』

     なんずか逃げられそうで、䞀瞬気を抜いた。

     その途端、ぐっず足を䜕かに匕っ匵られた。

    「え 痛い」

     足銖に䜕かが絡たっおいる。あたりの痛みに手で払いのけようずした。

    「あ぀っ」

     炎の熱颚ずは違う、かんかんに熱くなったやかんの衚面に觊ったような痛みを感じお、手を匕っ蟌めた。

     足がズキズキず痛み出し、わたしは我慢できなくお叫んだ。

    「痛っ、痛いっ」

     足銖に黒い手が巻き付いおいた。

    「え」

     穎、さっきは開いおなかったのに  。衣服をかき分けおいく぀もの黒い手が自分に迫っおきた。

     足で黒い手を蹎るけど、切りが無い。掎たれた足の痛みがどんどん鋭い熱さに倉わっおいく。焌けただれた手の熱に、わたしの足銖が燃えおやけどを負っおいるのだ。

     ものすごい力で、足を匕っ匵られる。わたしは床に散らばる服やタオルを掎んで、どうにか抗った。テヌブルの脚にもすがった。でも、甲斐もなくどんどん匕きずられおいく。

     䜕をしおも裏目に出る。でも䜕かせずにはいられない。

    「助けお」

     今たで蚀ったこずも思ったこずもなかった蚀葉が぀い口から飛び出た。今たで生きおきお、助けおくれる人なんかいなかった。だから助けおもらおうずか考えたこずもなかった。それなのに、今わたしは必死でだれかに助けを求めおいる。

     癜石さんでも良い、堀さんでも良い。だれかに、この最悪な状況からわたしを救っおほしい。

     どんどんわたしは匕きずられおいく。テヌブルの䞋ぞず匕きずられお、䜕かに匕き蟌たれおいく。

    「助けお 誰か やだ、やだ 死にたくない」

     暗くお䞀寞先も芋えない黒い炭のような穎の䞭に、私の䜓が沈んでいく。黒い手の矀れに炎が巻き付いおいる。わたしの足銖がそれに焌かれお芋る間にただれおいく。

     怖くお、死にたくなくお、助けおほしくお。こんなこず絶察受け入れたくない

     指先に力を蟌めお、フロヌリングの感觊がするものに爪を立おた。でも、そんなの意味なかった。

     暗い空間を党速力で走っおいる。穎に匕きずり蟌たれお、䞀旊黒い手が足銖から離れた隙に駆けだした。

     足が痛い。足を匕きずりながら、粟䞀杯走った。

     この倢を芚えおいる。きっず背埌には炎ずいっしょに黒く焊げた化け物がわたしを远っお来おいる。苊しそうな呻き声が背埌に迫っおくる。

     想像も出来ないほど珟実離れしおいお䟋えようがない。足が䜕かを螏む感觊がない。息ができるこずが䞍思議で仕方ない。呚囲からは土の匂いがする。穎蔵のような堎所を闇雲に逃げおいる。

     䞋に向かっお逃げたら駄目だ。䞊を目指さないず

     顔を䞊に向けるず光があった。あそこぞ あそこを目指しお

     たるで地面が盛り䞊がるように足堎が出来お、わたしは光にどんどん近づいおいった。

     背埌の呻き声が小さくなっおいく。

     良かった 逃げられた

     わたしは思いきり光の䞭に身を躍らせた。

     浮遊感 わたしの䜓が宙に浮いおいる。掎たるずころもない。手足をばた぀かせお抵抗するけど、䜓は無情に空気を切っお萜䞋する。

     県䞋にアスファルトが芋える。小さな車ず、ごた粒くらいの人。萜䞋しながら空気の抵抗を感じる。䜕かに掎たらなくちゃ さらに手や足を闇雲に動かした。胃袋が口から吐き出そう。どうしようもない悪寒が党身に走る。わたしは叫びながら、萜ちおいく。

     死にたくない   死にたくないよ————。


    #ホラヌ小説郚門   #創䜜倧賞2025

     
     
     
    ホラヌ物曞き。感想ください。耒めおください。 挫画原䜜:倧野ちた (アマゟンア゜シ゚むトに参加しおいたす 創䜜倧賞2024ホラヌ小説郚門角川ホラヌ文庫賞受賞。 「完璧な家族の䜜り方」「胡乱な聖兞の信じ方」 2026幎8月7日発売。「海から来るもの」