
桜結び〜きみにとどけたいもの〜【16】あとがき
『桜結び 〜きみにとどけたいもの〜』
この物語に込めた想い
この物語は 私の妹と その息子である甥っ子の存在から生まれました
妹は若くして乳がんを患い 自分の命と深く向き合いながら 甥っ子が3歳のときに静かに旅立ちました
いま甥っ子はまだ「ママは病院にいる」と信じているかもしれません
あるいは 本当の事に気づきはじめていて それでもたしかめることができなくて 苦しんでいるかもしれません
でもいつの日か 甥っ子が本当のことを知りたいと思う日が やってくるはずです
その時には 妹がどんなふうに生き どれほど深く彼を愛していたのかを伝えたい
その想いが この物語のはじまりでした
同時に 私自身や 母をはじめとした家族友人たちのなかにある 「なぜ 彼女が……」という無念を そのまま心に閉じ込めておくことができなかったのです
妹は 決してあきらめませんでした
苦しみの中でも希望を手放さず さいごまで前を向いて生きました
その姿を物語にのこすことで 彼女の生きた証が 静かにたしかに 甥っ子のなかに息づいていく——そんな未来を願って 書き続けてきました
物語を綴るうちに 気づいたことがあります
この物語は 甥っ子や妹を知る人たちだけのものではなく きっとどこかで誰かの背中にそっと触れるような “今を大切に生きる” きっかけにもなるかもしれない——ということです
妹が人生で何度も語っていた言葉があります
『当たり前のように続いている日々こそ、ほんとうは一番かけがえのないものだよ』
何気ない笑顔 ささやかな幸せ
そのすべてが 奇跡の積み重ねでできていると 彼女は最後まで教えてくれました
この物語に込めた想いが 誰かの心にそっと灯りますように
そして 妹が生きた意味が 誰かの中で静かに息をしてくれたら それ以上に嬉しいことはありません

——この物語が
愛を伝えきれなかったあの日の『あなた』に届きますように
そして 未来を生きるすべての『きみ』へ
さかもとあい