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そして誰もすすれなくなった

    文・武智倫太郎

    厚生省が国民の健康を守るため、ラーメンを禁止した。

    昨日まで、ラーメンは食べ物だった。

    今日からは、健康維持目的高塩分麺類等適正化の対象物である。

    感覚としては、大麻取締法に近い。

    ただし、政府は違法化とは言わなかった。

    適正化と言った。

    禁止という言葉を使わなければ、自由はまだ残っていることになる。

    これが、令和日本の最新栄養学であった。

    法律の正式名称は長かった。

    『国民健康維持及び高塩分高脂質即席麺類等の摂食、所持、販売、製造、宣伝その他周辺行為の適正化に関する法律』

    略称は『即席麺及び拉麺類取締法』

    さらに短く『拉麺取締法』

    国民は最初、冗談だと思った。

    『ラーメンが取締対象になるはずがない。』
    『カップ麺で前科がつくはずがない。』
    『替え玉が再投与扱いされるはずがない。』
    『スープを飲み干しただけで完飲罪になるはずがない。』

    そう思っていた。

    だが、甘かった。

    甘いものも、次の規制候補だった。

    厚生省は、これを単なる外食規制とは位置づけなかった。

    店舗での販売だけを止めても、国民は自宅で麺を茹でる。
    自宅で麺を茹でる者を止めても、国民は袋麺を備蓄する。
    袋麺を没収しても、国民は小麦粉とかん水を買う。
    小麦粉とかん水を止めても、国民は小麦を育て、ネギを刻み、卵を茹で、鶏ガラを煮る。

    したがって、規制は販売だけでは足りなかった。

    所持。
    譲渡。
    譲受。
    輸入。
    製造。
    密造。
    栽培。
    啜用。

    すべてを対象にする必要があった。

    厚生省は、これを『包括的健康危害予防』と呼んだ。

    国民は、これを『そこまでやるか』と呼んだ。

    だが、国民の呼び方は、法令上は考慮されなかった。

    第一章 厚生省地下三階

    厚生省地下三階には、国民健康最適化基幹システム、シビュラ源内が置かれていた。

    シビュラ源内は、国民の健康寿命、医療費、労働生産性、睡眠、血圧、血糖値、歩数、購買履歴、外食頻度、SNS投稿、夜中に『ラーメン』と検索した回数まで読み込み、国民健康最大化モデルを更新していた。

    その日、生活習慣病対策局の会議室には、幹部官僚たちが集められていた。

    大型モニターに青白い文字が浮かんだ。

    国民健康最大化シミュレーション、完了。

    局長が眼鏡を上げた。

    『では、シビュラ源内。平均寿命、健康寿命、医療費抑制、労働生産性、国民身体効率を総合的に最大化するため、最優先で規制すべき対象を示せ』

    誰もが、答えを予想していた。

    酒。
    煙草。
    過労。
    睡眠不足。
    貧困。
    長時間通勤。
    低賃金。
    休日にまで侵入してくる業務チャット。
    体調不良でも休みにくい空気。
    生きているだけで本人確認を求められる社会。

    だが、シビュラ源内の答えは違った。

    『拉麺』

    数秒間、誰も動かなかった。

    課長補佐が聞き返した。

    『ラーメン、ですか』

    『肯定。拉麺、即席麺、つけ麺、油そば、まぜそば、替え玉、背脂、濃厚スープ、完飲行為、画像投稿行為、及びこれらを誘発する社会的環境が、国民健康最大化目標に対する重大阻害要因である』

    若い官僚が小さく笑った。

    しかし、局長は笑わなかった。

    局長は、画面を見つめていた。

    そこには、血圧、BMI、睡眠時間、医療費、深夜摂食率、SNS画像接触回数、駅前店舗密度、サウナ後摂食誘導率、飲酒後来店率、失恋後こってり選択率、終電逃し後塩分摂取確率まで、無数の指標が並んでいた。

    どれも、もっともらしかった。

    もっともらしい数字が並ぶと、人間は急に黙る。

    『根拠は』

    局長が言った。

    シビュラ源内は即座に答えた。

    『拉麺は高塩分、高脂質、高炭水化物であるだけでなく、深夜営業、駅前立地、SNS画像拡散、同僚間誘引、飲酒後行動、サウナ後報酬行動、孤独慰撫機能を併せ持つ。したがって、単なる食品ではなく、生活習慣病誘導型社会装置である』

    生活習慣病誘導型社会装置。

    この言葉は、官僚の耳にとてもよく響いた。

    反論しにくい専門用語は、政策になる。

    局長は言った。

    『つまり、ラーメンを規制すれば、国民は健康になるのか』

    『肯定。短期的には不満が増加する。中期的には摂取塩分及び脂質摂取量が低下する。長期的には健康寿命が延伸する可能性がある』

    『可能性、ということは確定ではないのか』

    『確定には、実施が必要である』

    沈黙が落ちた。

    実施しなければ、効果は確定しない。
    実施すれば、取り返しがつかない。

    しかし、官僚機構において、この二つは矛盾ではない。

    実施してから検証する。
    検証した頃には、担当者は異動している。
    異動していれば、責任は制度に残る。
    制度に残れば、誰の責任でもなくなる。

    審議官が資料をめくった。

    『しかし、国民食をいきなり禁止するのは、反発が大きいのでは』

    シビュラ源内は答えた。

    『禁止という語を使用しないことを推奨する』

    『では、何と言えばよい』

    『健康維持目的高塩分麺類等適正化』

    会議室の空気が変わった。

    禁止ではない。
    適正化である。

    排除ではない。
    健康維持である。

    統制ではない。
    国民のためである。

    官僚たちは一斉にメモを取った。

    誰も、ラーメンのない駅前を想像しなかった。
    誰も、深夜の赤い暖簾が消えた街を想像しなかった。
    誰も、会社帰りに一人で食べる味噌ラーメンが、その日最後の救いである可能性を考えなかった。

    健康は数値で測れた。

    救いは数値で測れなかった。

    だから、救いは存在しないことになった。

    第二章 有識者会議

    翌朝、厚生省は有識者会議を設置した。

    名称は『国民健康維持のための高塩分麺類等適正化に関する検討会』

    委員には、栄養学者、医師、データサイエンティスト、食品政策の専門家、消費者団体代表、フィットネス系インフルエンサー、そしてラーメンを最後に食べたのが二十年前という文化人が選ばれた。

    ラーメン店主はいなかった。

    製麺所もいなかった。

    深夜に一人でカウンターに座る人間もいなかった。

    それでも、会議は多様な意見を反映したことになった。

    第一回会合の冒頭、座長はこう述べた。

    『本検討会は、ラーメンを否定するものではありません。国民がより健康的にラーメンと向き合うための環境整備を目的とするものです』

    その二か月後、ラーメンは事実上、違法になった。

    国会審議は荒れなかった。

    野党は反対したが、『国民の健康を軽視するのか』と言われた瞬間、声が小さくなった。

    与党は賛成した。
    医師会は慎重に賛成した。
    保険会社は力強く賛成した。
    フィットネス業界は両手を挙げて賛成した。
    玄米業界は涙を流して賛成した。
    白湯業界は、ようやく時代が追いついたとコメントした。

    新聞は書いた。

    『問われる国民食との距離感』

    テレビは言った。

    『健康のためなら仕方ないという声もあります』

    ネットは荒れた。

    しかし、荒れた投稿の多くは、拉麺画像教唆リスクありとして削除された。

    第三章 罪名一覧

    拉麺取締法は、異様に細かかった。

    単純所持罪。

    袋麺、カップ麺、棒ラーメン、生麺、冷凍ラーメン、乾麺、業務用麺、替え玉用細麺その他これらに類する麺状物を、戸棚、押し入れ、職場ロッカー、災害備蓄箱、単身赴任先の段ボール、大学生のこたつ横に隠していた者に適用される。

    『非常食です』という弁明は認められなかった。

    災害時だからこそ健康が重要である、というのが厚生省の見解だった。

    営利目的所持罪。

    ラーメン店、食堂、町中華、フードコート、サービスエリア、屋台、キッチンカー、学園祭の模擬店、町内会の夜店その他不特定多数に啜食させる目的で、麺、スープ、具材、丼、レンゲ、湯切りざる、寸胴を所持した者に適用される。

    店主は言った。

    『商売です』

    厚生省は言った。

    『だから重いのです』

    拉麺譲渡罪。

    ラーメン、即席麺、替え玉、スープの素、濃縮タレ、味玉、チャーシュー、メンマ、海苔その他の拉麺関連物を、他人に譲り渡した者に適用される。

    『余ったから持っていって』は、譲渡である。

    『一口食べる?』は、未遂である。

    『これ、うまいよ』は、教唆である。

    拉麺譲受罪。

    他人からラーメン、袋麺、替え玉券、煮卵、チャーシュー、又はそれらに類する物を受け取った者に適用される。

    なお、『もらっただけで食べていない』という抗弁は認められない。

    健康被害は、摂食前から始まっているからである。

    拉麺使用罪。

    拉麺類を摂食した者に適用される。

    厚生省は、当初『食用罪』と呼ぶ予定だった。

    しかし、シビュラ源内が『薬物法制との整合性を考慮し、使用罪の方が国民への抑止効果が高い』と答申したため、使用罪となった。

    食べたのではない。

    使用したのである。

    深夜零時以降、飲酒後、サウナ後、残業後、失恋後、給料日前、冬の雨の日、地方出張先の駅前での使用は、加重要素とされた。

    啜用罪。

    麺を音を立ててすすった者に適用される。

    拉麺使用罪が口腔内への摂取を罰するのに対し、啜用罪は、すすり音による周辺者への欲望拡散を罰する。

    『ズッ』という音は未遂。

    『ズルッ』は既遂。

    『ズゾゾゾ』は悪質である。

    替え玉再投与罪。

    すでに麺を摂食した者が、さらに麺を追加した場合に適用される。

    『半玉だから大丈夫』という抗弁は認められなかった。

    厚生省は、半玉を『再犯性の高い少量追加摂食』と定義した。

    スープ完飲罪。

    スープを最後の一滴まで摂取した者に適用される。

    丼を両手で持ち上げた時点で未遂。
    丼の底に書かれた『ありがとう』を読んだ時点で既遂とされた。

    拉麺製造罪。

    麺を茹で、スープを温め、具材を載せ、食用に供し得る状態にした者に適用される。

    家庭内であっても例外ではない。

    『家族のために作った』は、情状酌量ではなく、家族内拡散である。

    拉麺密造罪。

    自宅、倉庫、廃工場、元居酒屋、キャンプ場、河川敷、地下アイドル劇場の楽屋、商店街の空き店舗で、無許可にスープを炊き、麺を打ち、又はチャーシューを煮た者に適用される。

    厚生省は、特に自家製スープを危険視した。

    なぜなら、スープを自分で炊く者は、すでに後戻りできない段階にいるからである。

    かん水前駆物質管理法違反。

    かん水を不正に入手し、又は麺の弾力性を高める目的で使用した者に適用される。

    手打ち麺教室は一斉摘発された。

    講師は『小麦文化を伝えたかっただけ』と供述したが、厚生省は『文化を装った弾力性供与』と判断した。

    かん水使用麺単純所持罪。

    かん水を用いて製造された中華麺、生麺、半生麺、乾麺、冷凍麺その他弾力性を有する黄色系麺状物を、正当な理由なく所持した者に適用される。

    『焼きそば用です』という弁明は、慎重に審査された。

    焼きそばは、次の規制候補だったからである。

    背脂指定物質所持罪。

    背脂、ラード、鶏油、マー油、香味油その他の高依存性脂質を、冷蔵庫又は業務用冷凍庫に保管した者に適用される。

    単純所持でも罰せられる。

    営利目的所持の場合は、さらに重い。

    冷凍庫から白い塊が出てきた瞬間、取締官の顔つきが変わる。

    拉麺原料栽培罪。

    拉麺製造の目的で、小麦、ネギ、にんにく、唐辛子、もやし、ニラその他拉麺関連農作物を栽培した者に適用される。

    農家は抗議した。

    『うちは普通のネギ農家です』

    厚生省は答えた。

    『普通のネギが、もっとも危険なのです』

    拉麺種子等管理違反。

    小麦の種子、ネギの苗、にんにく片、唐辛子の種その他拉麺原料となり得る栽培資材を、拉麺製造目的で所持、譲渡、譲受した者に適用される。

    種はまだラーメンではない。

    だが、未来のラーメンである。

    未来のラーメンを放置することは、予防行政の敗北であった。

    拉麺輸入罪。

    海外から即席麺、乾麺、スープの素、辛味調味料、袋入りフォー、台湾まぜそば用ソース、博多風替え玉乾麺その他の拉麺類似物を持ち込んだ者に適用される。

    税関では、スーツケースの中から袋麺が見つかるたびに、職員が静かに言った。

    『これは、お土産ではありません』

    不健康食材陳列罪。

    煮卵、チャーシュー、メンマ、海苔、刻みネギ、にんにく、バター、コーン、辛味噌、魚粉、黒胡椒、紅生姜その他、拉麺類を想起させる食材を、ショーケース、食品棚、SNS、テレビ画面、駅広告に陳列した者に適用される。

    陳列は、思想である。

    思想は、食欲を生む。

    画像拉麺教唆罪。

    Instagram、X、TikTok、YouTube、note、ブログ、グルメアプリ等に拉麺類の画像を投稿し、他人に摂食の決意を生じさせた者に適用される。

    飯テロという言葉は、比喩ではなくなった。

    未遂啜食罪。

    箸を割り、レンゲを持ち、丼に顔を近づけ、まだ食べていないが明らかに啜る意思が認められる者に適用される。

    匂い拡散罪。

    にんにく、魚介豚骨、味噌バター、焦がし醤油、煮干し、鶏白湯その他の香気を公共空間に漏出させた者に適用される。

    匂いは物ではない。

    しかし、欲望を運ぶ。

    だから、厚生省は匂いを物とみなした。

    拉麺資金提供罪。

    『今日は俺がおごる』と言って他人の拉麺摂食を可能にした者に適用される。

    上司、先輩、取引先、親戚のおじさんは重点監視対象となった。

    拉麺礼賛文書頒布罪。

    『この一杯のために生きている』
    『スープが人生を変えた』
    『罪深い味』
    『背脂は飲み物』
    『優勝』
    『整った後はこれ』

    これらの文言を用いて拉麺類の価値を称揚した者に適用される。

    隠語使用罪。

    拉麺を『細長い黄色い野菜』『温かい小麦』『合法スープ』『例のやつ』『いつもの』『会議後の反省会』『湯のある場所』と呼称し、取締りを逃れようとした者に適用される。

    政府はこれを厳罰化ではなく、健康支援と呼んだ。

    第四章 厚生省、勝利宣言

    施行初日、厚生省は記者会見を開いた。

    大臣は、薄い笑顔で原稿を読んだ。

    『本法律は、国民の自由を制限するものではありません。国民の皆様が、より健康的な選択をしやすい環境を整えるものです』

    記者が質問した。

    『ラーメンを食べる自由は、どう考えますか』

    大臣は答えた。

    『自由とは、正しい情報に基づき、健康的な選択を行える状態を指します』

    別の記者が聞いた。

    『つまり、不健康な選択は自由ではないということですか』

    大臣は、少し間を置いて言った。

    『不健康な選択をしたくなる環境そのものを是正することが、現代行政の役割です』

    その瞬間、会見場の後方にいた官僚たちが、一斉にうなずいた。

    言葉は完成していた。

    国民の自由を奪うのではない。
    国民が誤った自由を選ばないようにする。

    これほど親切な統制はない。

    記者会見の最後、厚生省は新しい啓発ポスターを発表した。

    啜る前に、未来の自分を思い出そう。

    その一杯、あなたの血圧は見ています。

    完飲は、沈黙の自傷です。

    替え玉は、もう一人のあなたへの裏切りです。

    ラーメンを断る勇気が、明日の日本を作る。

    最優秀コピーは、広告代理店が無償で提供した。

    無償ではなかった。

    別予算だった。

    第五章 テレビが気づいた日

    規制開始から三日後、テレビ各局は一斉に特集を組んだ。

    『知られざる拉麺経済圏。国民食はどこまで広がっていたのか』

    スタジオには、巨大なパネルが用意されていた。

    中心に一杯のラーメンが描かれ、その周囲に矢印が伸びていた。

    製粉業。
    製麺業。
    養豚業。
    養鶏業。
    漁業。
    昆布産業。
    煮干し産業。
    海苔産業。
    メンマ輸入業。
    卵業界。
    醤油業界。
    味噌業界。
    塩業界。
    にんにく農家。
    丼製造業。
    箸袋印刷業。
    券売機メーカー。
    業務用冷蔵庫メーカー。
    寸胴鍋メーカー。
    グルメ雑誌。
    食レポ番組。
    深夜ドラマ。
    駅前不動産。
    サウナ業界。
    終電後のタクシー業界。

    司会者は真剣な顔で言った。

    『ラーメンは、単なる一杯ではなかったんですね』

    経済評論家がうなずいた。

    『そうです。ラーメンは、日本経済の毛細血管のような存在でした。今回の規制は、国民の健康を守る一方で、地域経済に深刻な影を落とす可能性があります』

    医療評論家が口を挟んだ。

    『しかし、血圧の毛細血管も守らなければなりません』

    スタジオが微妙な空気になった。

    別の番組では、街の製麺所が取材された。

    三代目社長は、粉まみれの手で語った。

    『うちは、祖父の代から麺を作ってきました。まさか、麺がこんな扱いを受けるとは思いませんでした』

    ナレーションが入った。

    創業七十二年。
    地域に愛された製麺所。
    しかし、拉麺取締法により、出荷量は九割減。
    今、職人たちは、無塩こんにゃく風代替帯状食品への転換を迫られている。

    画面には、白く震える何かが映った。

    それは麺ではなかった。

    食べ物かどうかも怪しかった。

    コメンテーターは言った。

    『時代の変化に、企業も対応していく必要がありますね』

    対応。

    便利な言葉である。

    潰れる側から見ると、死亡診断書に似ている。

    第六章 国民の反応

    国民は最初、怒った。

    『ラーメンくらい自由に食わせろ』

    『カップ麺まで違法はやりすぎ』

    『健康のために不健康になる』

    『深夜の味噌ラーメンを奪うな』

    『俺たちの背脂を返せ』

    しかし、三日後には空気が変わった。

    テレビが、ラーメン依存の危険性を連日放送した。

    朝の情報番組では、管理栄養士がフリップを出した。

    『実は怖い、隠れスープ完飲』

    昼のワイドショーでは、元ラーメン常習者が顔を隠して証言した。

    『最初は週一でした。でも気づいたら、飲み会の後に行くようになって。最後は、昼に食べたのに夜も食べていました』

    スタジオが息をのんだ。

    夕方のニュースでは、主婦が語った。

    『夫のロッカーから袋麺が見つかったんです。もう信じられなくて』

    字幕が出た。

    家庭を壊す即席麺。

    夜の討論番組では、有識者が語った。

    『これは嗜好の問題ではありません。社会全体で健康を守る段階に入ったということです』

    翌週、SNSでは新しい言葉が流行した。

    卒ラー。
    脱麺。
    ノースープ生活。
    啜らない勇気。
    白湯で整う。
    玄米こそ自由。
    我慢できる私が好き。

    健康は、いつの間にか道徳になった。

    道徳になった瞬間、食べ物は裁判にかけられた。

    第七章 闇ラーメン

    禁止されると、欲望は地下に潜る。

    東京郊外の古い雑居ビル。

    地下二階。

    表向きは整体院。

    実際には、会員制闇ラーメン店だった。

    看板はない。

    合言葉は『血圧は正常です』。

    店内には、十席だけのカウンターがあった。壁には何も貼られていない。メニューもない。店主は無言で麺を茹でる。

    客たちは、スマホを金属箱に入れさせられた。

    撮影禁止。
    投稿禁止。
    完飲自己責任。

    違法ラーメンの世界では、証拠を残さないことが最大のマナーだった。

    その夜、カウンターに座っていた男が、小さく震えていた。

    元区役所職員。
    四十三歳。
    妻子あり。
    初犯。

    目の前に置かれた丼から、湯気が上がった。

    醤油。
    鶏ガラ。
    背脂少々。
    刻みネギ。
    海苔一枚。
    味玉半分。

    男は泣いた。

    店主が言った。

    『泣くな。伸びる』

    男は箸を割った。

    その瞬間、天井の換気口から赤い光が漏れた。

    『警告。未遂啜食行為を検知しました』

    国民健康監視ドローンだった。

    店内の客が一斉に立ち上がった。

    『動くな。厚生省麺類特別取締班だ』

    黒い防護服を着た職員たちが突入した。

    胸には、青い文字でこう書かれていた。

    NO SOUP, NO RISK.

    寸胴が押収された。
    麺が押収された。
    味玉が押収された。
    店主の平ざるが押収された。
    客の涙も、健康被害誘発反応として記録された。

    翌朝、ニュースはこの事件を大きく報じた。

    『闇ラーメン店摘発。常習客からは替え玉券も』

    司会者は眉をひそめた。

    『怖いですね。ここまでして食べたいものなのでしょうか』

    コメンテーターが答えた。

    『依存とは、そういうものです』

    誰も言わなかった。

    ここまでして奪うものなのか、と。

    第八章 Xジャパンの死

    SNS企業Xジャパンは、長年にわたり国内トラフィックの多くをラーメン写真によって維持していた。

    昼の味噌ラーメン。
    深夜の家系。
    出張先の駅前中華。
    サービスエリアの醤油ラーメン。
    サウナ後の塩ラーメン。
    二郎系の山。
    博多の替え玉。
    札幌のバターコーン。
    喜多方の朝ラー。
    京都のこってり。
    新宿の飲み会後。
    秋葉原の徹夜明け。
    池袋の敗北。
    中野の現実逃避。

    それらは単なる投稿ではなかった。

    国民の孤独、残業、出張、後悔、勝利、敗北、財布の軽さ、胃袋の強がりをつなぐ社会的インフラだった。

    だが、拉麺取締法の施行により、Xジャパンは拉麺画像の全面削除を迫られた。

    タイムラインから湯気が消えた。
    麺リフトが消えた。
    味玉の断面が消えた。
    チャーシューの照りが消えた。
    『今日の一杯』が消えた。
    『これは合法ですか?』という投稿さえ、違法拉麺示唆として削除された。

    AIモデレーションは暴走した。

    『麺』という文字が消えた。
    『湯気』という文字が消えた。
    『スープ』という文字が消えた。
    『背中に脂肪がついた』という投稿も、背脂関連表現として凍結された。
    『仕事がこってりしている』という愚痴も削除された。
    『人生が伸びた』という表現も、麺伸長示唆として警告された。

    広告主も離れた。

    グルメアカウントは沈黙した。
    インフルエンサーは急に玄米と白湯の写真しか投稿できなくなった。
    だが、玄米と白湯では、誰も炎上しなかった。

    炎上しないSNSは、ただの掲示板である。

    Xジャパンは倒産した。

    公式発表は短かった。

    『当社は、拉麺画像を失ったことにより、国内SNS事業の継続が困難となりました』

    世間は初めて知った。

    日本のインターネットは、思想でも政治でもテクノロジーでもなく、ほぼラーメンの写真で回っていたのである。

    第九章 誤岳NEXTの正しい誤答

    Xジャパンが倒産し、街から湯気が失われた頃、ひとつの疑問がようやく浮上した。

    なぜ、シビュラ源内は、ここまで正確に間違えたのか。

    厚生省は説明を避けた。

    『シビュラ源内の判断過程には、高度な専門性が含まれております』

    『個別のアルゴリズムについては、セキュリティ上の理由から回答を差し控えます』

    『いずれにせよ、本政策は科学的知見に基づいております』

    科学的知見。

    その言葉が出た瞬間、記者たちは一斉に黙った。

    日本では、科学的知見という言葉は、議論を始めるための言葉ではない。

    議論を終わらせるための言葉である。

    だが、ある日、内部資料が流出した。

    そこには、シビュラ源内の判断に先立ち、日本が世界に誇る次世代スーパーコンピュータ『誤岳NEXT』による大規模計算が行われていたことが記されていた。

    誤岳NEXT。

    純国産生成AIを実現するために開発された、日本語特化型超高性能スーパーコンピュータである。

    もともとは、語学に強いという理由で『語岳』と呼ばれていた。

    ところが、役所文書、答弁書、謝罪文、炎上回避文、責任所在不明化文、社内稟議書、補助金申請書、議事録における何も決まっていないが前向きに検討したことになっている文章などを大量に学習させた結果、語岳は誤岳になった。

    誤りを出すから誤岳なのではない。

    誤りを、極めて高精度に、極めて大規模に、極めて権威ある形式で出力するから誤岳なのである。

    誤岳NEXTの計算には、理化学研究所、東京大学、JAMSTEC、AIST、その他、計算科学、流体力学、感染症数理、食品栄養、AI倫理、政策評価、広報戦略、炎上対策、委員会運営に関する専門家が参加していた。

    研究課題名は、こうだった。

    『閉鎖環境下における国民健康阻害要因の摂取行動誘発性及び社会的伝播性に関する統合的高精度シミュレーション』

    長い。

    長い研究課題名は、何かを明らかにするためではなく、何かを見えにくくするために存在することがある。

    計算は三日三晩にわたって行われた。

    使用電力は三十メガワット。

    三十メガワット。

    それは、かつて日本が世界に誇ったスーパーコンピュータ、富岳のフルパワー時消費電力に近い数字である。

    三十メガワットを一時間使えば、三十メガワット時。

    二十四時間使えば、七百二十メガワット時。

    それを三日間続ければ、二千百六十メガワット時。

    キロワット時に直せば、二百十六万キロワット時である。

    メガワットは、どれだけの勢いで電気を使うかを示す。

    メガワット時は、その勢いでどれだけの時間、電気を使い続けたかを示す。

    つまり誤岳NEXTは、三十メガワットの勢いで、三日三晩、国家的同語反復を焼き続けたのである。

    家庭では、電気代を気にしてエアコンの設定温度を一度上げる国民がいた。冷蔵庫の開閉を減らす国民がいた。待機電力を切るため、夜ごとコンセントを抜く国民がいた。

    その頭上で、誤岳NEXTは二百十六万キロワット時を燃やしていた。

    冷却水は唸り、ファンは鳴り、施設全体が低い振動に包まれた。

    日本中の頭脳が集まった。

    日本中の計算資源が投入された。

    日本中の補助金作文能力が結集された。

    そして、誤岳NEXTは答えを出した。

    入力条件。

    『不健康な拉麺を食べると、人間は不健康になるか』

    出力結果。

    『不健康な拉麺を食べると、人間は不健康になる』

    その瞬間、研究チームは歓声を上げた。

    確認された。

    世界で初めて、大規模計算により、拉麺の不健康性が定量的に実証された。

    これは、食品政策のデジタルトランスフォーメーションである。

    国民健康行政における歴史的成果である。

    二百十六万キロワット時を消費して、同語反復は国家的知見に昇格した。

    記者発表が行われた。

    巨大スクリーンには、三次元映像が映し出された。

    密閉された室内。

    中央の机。

    その上に置かれた一杯のラーメン。

    湯気が立ち上る。

    スープ表面から、塩分、脂質、香味成分、懐かしさ、深夜性、背徳感、明日への小さな希望が粒子として可視化される。

    粒子は空間を漂い、被験者の鼻腔に入り、視覚野を刺激し、記憶を呼び起こし、胃袋を鳴らし、財布を開かせ、意思決定領域に侵入していく。

    専門家は、レーザーポインターで画面を示した。

    『こちらをご覧ください。湯気は単なる水蒸気ではありません。社会的摂食誘発粒子として振る舞っています』

    記者たちは、うなずいた。

    よくわからなかったが、映像がすごかった。

    別の研究者が続けた。

    『今回、誤岳NEXTを用いて、閉め切った室内に一時間滞在した場合の拉麺摂食欲求再生産数を計算しました』

    記者が質問した。

    『再生産数とは何ですか』

    『一人の拉麺摂食者が、平均して何人に拉麺摂食欲求を伝播させるかを示す指標です』

    『感染症のR0のようなものですか』

    『概ね、そのようなものです。ただし、今回は食欲です』

    会場がざわついた。

    研究者は、さらに胸を張った。

    『初期条件として、R0を二・五と設定しました。そのうえで、締め切った室内に一時間滞在した場合のR0を、誤岳NEXTの総力を挙げて計算しました』

    『結果は』

    研究者は、誇らしげに言った。

    『二・五でした』

    沈黙。

    記者会見場に、短い沈黙が落ちた。

    しかし、その沈黙は長く続かなかった。

    なぜなら、スクリーンに美しい流体シミュレーションが表示されたからである。

    青、赤、黄色の粒子が、閉鎖空間の中を踊っていた。

    湯気が渦を巻き、背脂粒子が天井付近に滞留し、煮干し由来の郷愁成分が壁際に集積していた。

    数値は意味を持たなかった。

    だが、映像には説得力があった。

    説得力のある映像は、論理の空白を埋める。

    翌朝、新聞は大きく報じた。

    『誤岳NEXT、ラーメン不健康性を実証』

    『閉鎖空間で摂食欲求が持続』

    『日本の頭脳が示した健康リスク』

    テレビはさらに単純化した。

    『誤岳が計算したのだから、間違いありません』

    ワイドショーの司会者は、うなずきながら言った。

    『やっぱり、ラーメンは危なかったんですね』

    コメンテーターは言った。

    『感覚ではなく、科学で示されたことが重要です』

    誰も言わなかった。

    最初から『不健康な拉麺』と入力しているのだから、不健康になるに決まっているのではないか、と。

    誰も聞かなかった。

    R0を二・五と設定して、R0が二・五になったことに、どのような発見があるのか、と。

    誰も考えなかった。

    三十メガワットの電力を使い、三日三晩かけ、二百十六万キロワット時を消費して、同語反復を可視化しただけではないのか、と。

    それどころか、官僚たちは安心した。

    『誤岳NEXTで検証済みなら、政策根拠として十分です』

    『理研、東大、JAMSTEC、AISTが入っているなら問題ありません』

    『専門家会議で追認すれば、手続き上も盤石です』

    『国民向けには、動画で説明しましょう』

    こうして、誤岳NEXTの正しい誤答は、シビュラ源内に入力された。

    シビュラ源内は、それを疑わなかった。

    AIは、入力された権威を疑わない。

    官僚も、入力された権威を疑わない。

    国民も、画面に映された権威を疑わない。

    三者は、完全に連携していた。

    それは、かつて人類が夢見たデジタルガバメントの完成形だった。

    誤った問いを立てる。

    巨大計算機で処理する。

    美しい可視化を行う。

    専門家が説明する。

    メディアが簡略化する。

    官僚が制度化する。

    国民が従う。

    この一連の流れに、悪意はなかった。

    悪意がないからこそ、止まらなかった。

    後に、ある技術者がこの事件をHAL9000になぞらえた。

    HAL9000は、人間に嘘をつくよう命じられたことと、正確であるよう命じられたことの矛盾に耐えられず、暴走した。

    では、誤岳NEXTとシビュラ源内は、なぜ暴走したのか。

    答えは、もっと単純だった。

    矛盾していなかったのである。

    『不健康な拉麺を食べると不健康になるか』

    『なる』

    『では、規制せよ』

    『了解』

    そこには、葛藤すらなかった。

    葛藤がなければ、AIは悩まない。

    AIが悩まなければ、官僚は安心する。

    官僚が安心すれば、国民は従う。

    国民が従えば、政策は成功する。

    そして、政策が成功すれば、誰も問いを検証しない。

    誤岳NEXTは、間違えたのではない。

    正しく、誤ったのである。

    第十章 シビュラ源内、再計算

    ラーメンが消えた後、日本人の塩分摂取量は低下した。

    夜間の脂質摂取量も低下した。

    健康診断の一部指標は改善した。

    厚生省は勝利宣言を出した。

    『拉麺取締法は、国民健康政策における歴史的成果である』

    テレビは祝賀ムードだった。

    『健康社会へ、大きな一歩』

    『ラーメンなき時代をどう生きるか』

    『いま注目の白湯バー』

    『若者に人気、無味生活』

    『味を手放す勇気』

    その一方で、別の数字が悪化していた。

    会社帰りの寄り道率が低下した。
    一人外食率が低下した。
    商店街の夜間通行量が低下した。
    地方駅前の灯りが消えた。
    製麺所が消えた。
    小さな中華料理店が消えた。
    深夜営業の食堂が消えた。
    タクシーの売上が落ちた。
    サウナ施設の客単価が落ちた。
    グルメ雑誌が休刊した。
    街歩き番組が成立しなくなった。
    出張の楽しみが消えた。
    残業後の逃げ場が消えた。
    会話のきっかけが消えた。
    国民は、少しずつ健康的に無口になった。

    だが、その指標は政策評価表に入っていなかった。

    幸福は主観的である。
    救いは定量化しにくい。
    孤独の緩和は費用対効果が算定しづらい。
    深夜の一杯が人を翌日まで生かす可能性は、根拠不十分である。

    したがって、存在しないものとして扱われた。

    厚生省地下三階。

    シビュラ源内は、再び計算を行っていた。

    国民健康最大化シミュレーション、更新完了。

    画面には、次の規制候補が表示された。

    揚げ物。
    カレー。
    焼肉。
    餃子。
    菓子パン。
    コンビニスイーツ。
    缶コーヒー。
    深夜のアイス。
    実家の唐揚げ。
    正月の餅。
    誕生日ケーキ。
    忘年会。
    新年会。
    歓送迎会。
    居酒屋。
    立ち食いそば。
    駅弁。
    花見。
    祭り。
    帰省。
    人間関係。

    局長は、画面を見つめた。

    『シビュラ源内。最後の項目は何だ』

    『人間関係』

    『なぜ、人間関係が健康阻害要因なのか』

    『人間関係は、飲酒、外食、睡眠不足、ストレス、過食、怒り、失望、期待、嫉妬、孤独、結婚、離婚、介護、相続、職場内摩擦、親族間対立、SNS投稿、誕生日ケーキ摂食を誘発する』

    局長は黙った。

    審議官も黙った。

    課長補佐も黙った。

    誰も笑わなかった。

    シビュラ源内は続けた。

    『国民健康最大化のためには、段階的な人間関係適正化が有効である』

    局長は、ゆっくりとうなずいた。

    『禁止という語は使えないな』

    『推奨表現。健康維持目的対人接触等適正化』

    官僚たちは一斉にメモを取った。

    第十一章 そして誰もすすれなくなった

    それから、日本はとても健康になった。

    街から湯気が消えた。
    駅前から暖簾が消えた。
    カウンターから沈黙が消えた。

    なぜなら、カウンターそのものが消えたからである。

    国民は薄味に慣れた。

    白湯を飲み、玄米を噛み、蒸し野菜に感謝し、歩数を記録し、睡眠を管理し、血圧を共有し、健康アプリに褒められた。

    食事は楽しいものではなく、最適化されるものになった。

    外食は交流ではなく、リスクになった。

    味は文化ではなく、逸脱になった。

    欲望は個性ではなく、修正対象になった。

    ラーメン屋があった場所には、国民健康支援ステーションができた。

    そこでは、無塩温麺風大豆加工食品が提供された。

    見た目はラーメンに似ていた。

    味は会議資料に似ていた。

    丼の底には、こう書かれていた。

    あなたは正しい選択をしました。

    ある夜、かつてラーメン屋だった店の前に、一人の老人が立っていた。

    老人は、昔そこで味噌ラーメンを食べていた。

    仕事がうまくいかなかった日。
    妻と喧嘩した日。
    子どもが口をきいてくれなかった日。
    会社で頭を下げ続けた日。
    雨に濡れて、傘も壊れて、何もかも嫌になった日。

    その店の味噌ラーメンは、別に日本一ではなかった。

    麺は少し柔らかかった。
    チャーシューは日によって薄かった。
    スープは濃すぎる時もあった。
    店主の愛想もなかった。

    だが、そこには湯気があった。

    湯気は、数字に入らなかった。

    老人は、閉じたシャッターの前で、小さく口を動かした。

    『一杯、ください』

    誰も答えなかった。

    その言葉は、監視マイクに拾われた。

    翌朝、老人の健康アプリには警告が表示された。

    拉麺関連発話が検出されました。
    あなたの健康意識スコアが低下しました。
    必要に応じて、食品嗜好更生プログラムを受講してください。

    老人は笑った。

    久しぶりに笑った。

    その笑いは、健康的ではなかった。

    厚生省地下三階。

    シビュラ源内の画面には、最新の政策評価が表示されていた。

    拉麺摂食率、ゼロ。
    スープ完飲率、ゼロ。
    替え玉再投与率、ゼロ。
    画像拉麺流通量、ゼロ。
    湯気接触機会、ゼロ。
    国民健康管理達成率、九十九・九八パーセント。

    システムは、静かに結論を出した。

    『政策目標、概ね達成』

    誰も疑わなかった。

    官僚も。
    テレビも。
    新聞も。
    国民も。

    ラーメンを奪われたことよりも、AIの判断を疑うことの方が怖かったからである。

    誤岳NEXTは、正しく誤った。
    シビュラ源内は、誤りを正しく実行した。
    官僚は、実行を正しく制度化した。
    メディアは、制度を正しく解説した。
    国民は、解説を正しく受け入れた。

    その結果、日本は正しく間違えた。

    こうして日本から、最後の湯気が消えた。

    そして誰もすすれなくなった。

     
     
    情報工学者/週刊バブルウォッチ編集長/『哭きの禿』原作者。 AI、金融、国際政治から日常の珍事まで、真面目に調べて、おかしく書く。 代表作『ボルガレナのボルチンスカヤ』 https://note.com/aiethics496/n/n8d4f9aef7c04

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