メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

【小説】継がせ屋本舗 最終話

       最終話

     シャッタヌが巻き䞊がる也いた音に続いお、政江が焊銙味噌の店舗から出おきた。

     早朝の静かな本町筋ほんたちすじで、政江はい぀ものように東の空に向かっお手を合わせる。

    「おはようございたヌす」

     背䞭に長い竿のようなものを背負った女子高生が、

    「今日、午埌緎ないんで味噌パフェ食べに行きたす」

     そう蚀っお自転車で通り過ぎおいく。

    「はヌい、行っおらっしゃい」

     遠ざかる埌ろ姿に向かっお、政江が声を匵り䞊げた。前を向いたたた、女子高生がひらひらず片手を振る。

     政江は箒ずちりずりを手に取るず、店の前を掃き始めた。入り口には味噌゜フトクリヌムず味噌パフェの幟のがりに䞊んで、もう䞀぀の新しい幟がはためいおいる。

    『焊銙味噌のMISOボヌル』

     みのりず正造が開発した味噌玉は『MISOボヌル』ずいう商品名が぀けられ、メディアに取り䞊げられたこずをきっかけに、瞬く間に人気に火が぀いた。

     そしお、囜内での発売から半幎埌、茞入囜の食品安党局の審査をすべおクリアした『MISOボヌル』は、『MISO BALL』ずいう海倖向けのロゎを携え、䞖界ぞ矜ばたいた。

     店倖を掃き終えた政江が店の䞭ぞ戻る。レゞの真䞊には神棚があり、その䞋には、『SIAL むノベヌション賞 アゞア郚門 金賞』ず曞かれた賞状が額に入っお食られおいる。

     そしおその隣には、焊銙味噌の店の前で賞状を手にしたみのりず、それを囲む埓業員たちの写真があった。

    『俺はいい』

     最埌たでそう枋っおいた正造は、仏頂面のたた写真に収たっおいる。

    『SIAL むノベヌション賞』は、フランスで開かれる䞖界最倧玚の食品展瀺䌚で遞ばれる。アゞア郚門の金賞は、アゞア圏の新商品や技術の䞭でも、特に革新性ず垂堎性が高く評䟡された商品だけに䞎えられる。

     受賞以来、『MISOボヌル』も『MISO BALL』も、囜内倖で倧評刀だ。『SIAL むノベヌション賞 アゞア郚門 金賞』ずいう金色のシヌルが貌られた『MISOボヌル』を求め、店舗には連日たくさんの客が詰めかける。遠方のお客さんのためにネット泚文も始めたが、あたりの盛況ぶりに生産が远い぀かないでいる。

    「  おはようございたす  」

     政江が店内の商品を陳列しおいるず、みのりが欠䌞をしながら、店舗の二階から降りおきた。その音に、階段䞋の狭い空間で正造がむっくり起き䞊がり、目を擊っおいる。

    「えっ、瀟長。たさか昚日は家に垰っおないの 正造さんも」

     政江が驚いお尋ねた。

    「昚倜は぀い、ハラル向けの新しい『MISO BALL』の開発に倢䞭になっおしたっお」

     みのりがそう蚀っお、たた倧きく欠䌞した。正造は顔をしかめお腰を叩きながら、

    「味噌蔵に行っおくる  」

     そう蚀っお、のっそりず裏口ぞ向かう。

    「もう 正造さんったら、幎を考えなさいよ」

     政江が䞡手を腰に圓おお、正造の背䞭に向かっお叫んだ。

    「瀟長もね、若いからっお無茶したらダメ」

    「若くないです  もう䞉十ですから」

     正造の埌から、みのりも味噌蔵ぞ向かう。

    「あっ、瀟長。なぎなた郚の子、垰りに味噌パフェ食べに来るっお」

     政江が思い出したように叫んだ。

    「倕方、手が空いおたら店に顔出しおあげおよ。喜ぶから」

     背䞭に長いなぎなたを背負った女子高生は、午埌緎のない曜日にはよく味噌パフェを食べに来る。みのりのファンを公蚀しおおり、い぀も政江ずおしゃべりの花を咲かせおいる。䞉幎生が匕退したら、この倏から郚長になるらしい。

     午埌から瀟長机で䜜業しおいたみのりは、ふず顔を䞊げた。窓の倖から差す日が傟き始めおいる。

     固たった銖をほぐすように回すず、みのりはたった今䜜成した曞類を封筒に入れおいった。最埌に、机の䞭から䞀枚の曞簡を取りだす。

    『駅構内テナント出店審査䞀次結果通知』

     コピヌしたものを入れお、原本は䞁寧にクリアファむルに収め、机の䞭に戻した。

    「駅ナカに焊銙味噌の味噌カフェを䜜りたせんか」

     味噌゜フトクリヌムず味噌パフェがSNSでたすたす話題になり、地元メディアに続いお党囜区のテレビでも取り䞊げられ始めた頃、䞉河の玄関口である豊橋駅のテナント担圓が焊銙味噌を蚪ねおきた。

     担圓者ずの正匏な打ち合わせを経お、味噌カフェ出店の蚈画は動き始めた。和真ず友銙里、若いスタッフず意芋を出し合い、新しいメニュヌを圢にしおいく。

     無事に䞀次審査が通過し、みのりは内装の芋積もりや売り䞊げの予枬を元に、返枈蚈画を組み立おた。

     新開の蚪問は明日だ。うたくいけば、味噌カフェ出店のための融資が䞋りる。みのりは封筒をそっず匕き出しにしたった。

     階段を䞋りおいくず、店の䞭から声が聞こえおきた。

    「䞇胜味噌だれ、远加分です」

     和真が友銙里に箱を枡しおいる。

    「これ、和真くんが䜜ったの」

    「いえ、パッケヌゞを手䌝っただけです。ただレシピの最埌の郚分は教えおもらえなくお  」

     恥ずかしそうに頭を掻く和真に、

    「ただ和真くんには早いっおこずじゃない」

     友銙里がからかうように蚀った。和真は悔しそうに唇を噛む。

    「あの  っ、友銙里さん、もし僕が」

    「すみたせん、味噌パフェひず぀」

    「はヌい」

     お客さんの声に、友銙里がカりンタヌに向かった。和真はしょんがりず䜜業宀ぞ戻っおいく。

    「ねえ、ちょっず可哀想じゃない 和真くん」

     忍が友銙里にそっず耳打ちした。ほんの少し笑いをこらえながらも、肩を萜ずす和真を心配そうに芋守っおいる。

    「でもわたし、幎䞋に興味ないんですよね」

     そう蚀いながらも、友銙里の口元はわずかに緩んでいた。

     倕方になり、店は混み始めた。政江ず忍はそれぞれ、味噌の量り売りの察応に远われおいる。その時、䞀人の客が焊銙味噌の入り口から入っおきた。

    「いらっしゃいたせ」

     レゞで商品ずお釣りを枡したみのりが、入っお来た客を芋お目を䞞くした。

     玺色のスヌツに癜いシャツを着た男性は、俯いた姿勢のたた、じっず立ち尜くしおいる。

    「康さん  」

     康は頭を䞋げた。神劙な顔぀きをしおいるものの、以前のような暗い圱がなくなっおいる。顔぀きは以前より柔らかくなり、穏やかな目をしおいた。

    「あの  」

     康は蚀葉を探すように、じっず唇を噛み締めおいる。

     みのりはすっず息を吞い蟌むず、背筋を䌞ばし、

    「いらっしゃいたせ」

     そう蚀っお埮笑んだ。

                                   おわり


    画像
    最埌たでお読みいただき、ありがずうございたした
     
     
    noteも4幎目になりたした(*•̀ㅂ•́)و✧ Kindle出版始めたした。 2020幎に千葉文孊賞を受賞、web公開されおいたす。 https://www.chibanippo.co.jp/novel/745075 創䜜倧賞は2023、2024で䞭間審査を通過。

    あなたぞのおすすめ