
【2026年8月】楽天の軍事産業進出|通信・衛星・ドローンとマスクとの対比

2026年の夏、楽天グループは3つのものを同時に手にしました。
通信網と、人工衛星と、AIドローンです。
ばらばらに発表されたので、つながって見えません。6月に衛星の国家プロジェクトに採択され、7月にウクライナの通信インフラ再建の補助金を取り、8月にドイツの攻撃型ドローンを自衛隊に入れる話が出ました。
並べると、ある光景に似てきます。ウクライナの戦場です。
この記事では、楽天が軍事産業のどこまで入っているのかを、公式資料で1つずつ確かめます。そのうえで、もう1人の人物と並べます。イーロン・マスク氏です。
二人は個人的な知り合いで、同じ絵を描いています。スマートフォンを衛星に直接つなぐ、という絵です。ただし描き方が正反対です。 そこに、この話のいちばん面白い部分があると私は思っています。
先に断っておきます。私はこの記事で、楽天の判断を評価しません。良いとも悪いとも書きません。何が起きているのかを、できるだけ正確に並べることだけをします。

上の図が、この記事の地図です。左半分が楽天、右下がマスク氏。どちらの線も、ウクライナのドローンで交わります。 以下、この図を1本ずつ確かめていきます。
📌 この記事でわかること
楽天が2026年に手にした「通信・衛星・ドローン」の3点が、それぞれどこまで進んでいるのか
ドイツ Helsing の攻撃型ドローン「HX-2」とは実際どういう兵器で、楽天は何をするのか
ウクライナの Swarmer が持ち込もうとしている「群れで動くAI」の中身
楽天モバイルの四半期赤字323億円と、国費1,500億円規模のJ-LEOの関係
「通信・衛星・ドローンを一式で防衛省に売る」という筋書きは成立するのか
三木谷浩史氏とイーロン・マスク氏が描いている同じ絵と、正反対の描き方
ウクライナで Starlink に起きたことが、なぜ日本の国家プロジェクトの名前に表れているのか
この構図が、EC事業の側にどう跳ね返ったのか
🎨 この記事の色分けルール
実名の企業と個人について書くので、確定した事実と私の推測を、はっきり分けます。
🟦 確かめられた事実 — 企業の公式発表、官公庁の資料、当事者本人の発言など、出典をたどれるもの
🟨 強く示唆されるが、公式には明言されていない — 複数の事実からほぼ読み取れるが、当事者が言い切ってはいないもの。報道機関が匿名の関係者を根拠に報じたものもここに入れます
🟥 私個人の推測 — 裏づけのない見立て。外れる可能性が普通にあるもの
🟥が付いた部分を根拠に、お金や契約が動く判断をしないでください。
⚠️ 免責(1回目):この記事は公開情報と私個人の見立てで書いています。特定の企業・個人を評価したり、批判したり、推奨したりするものではありません。投資判断の助言でもありません。事実関係は各社の公式発表と一次資料をご自身でご確認ください。
1️⃣ 楽天が2026年に踏み込んだ場所

まず、起きた順に並べます。
◆ 2014年 Viber を買収
🟦 楽天がイスラエル発のメッセージアプリ Viber を買収しました。当時これが軍事とつながると考えた人は、まずいなかったはずです。
◆ 2020年3月 AST SpaceMobile と提携
🟦 楽天モバイルが米国の AST SpaceMobile(エーエスティー・スペースモバイル)と戦略提携します。狙いは、専用アンテナなしで、市販のスマートフォンを衛星に直接つなぐことです。
◆ 2022年〜 ウクライナ支援
🟦 三木谷浩史氏個人がウクライナへ寄付を行い、楽天も基金を通じて支援を集めました。Swarmer のプレスリリースは、楽天の実績として人道支援13億円超を挙げています。
◆ 2026年5月4日 ウクライナの Swarmer が日本参入
🟦 ドローンの自律制御ソフトを作る Swarmer(スウォーマー、ナスダック上場・SWMR)が、楽天グループの支援を受けて日本市場に入る計画を発表しました。
◆ 2026年6月30日 J-LEO に採択
🟦 総務省の「自律性確保に向けた低軌道衛星インフラ整備事業(J-LEO)」の補助対象に、楽天とASTの合弁会社 RAST株式会社を申請代表とする事業が選ばれました。
◆ 2026年7月27日 ウクライナの通信インフラ再建に参画
🟦 楽天シンフォニーが経済産業省の補助金に採択されました。キーウ周辺での Open RAN 屋外検証です。
◆ 2026年8月10日 決算説明会
🟦 J-LEO について「有事の際にも外部環境に左右されず」と資料に明記。一方、この説明会に「防衛」「ドローン」という言葉は一度も出てきません(書き起こしを機械検索してヒット0件)。
◆ 2026年8月17日 ロイターが報道
🟦 ドイツの防衛AI企業 Helsing(ヘルシング)の攻撃型ドローン「HX-2」を、楽天が陸上自衛隊に入れようとしている、と報じられました。
◆ 2026年8月18日 出店企業が1社、退店
🟦 雑誌「通販生活」のカタログハウスが、楽天市場への出店を取りやめると発表。
◆ 2026年8月20日 楽天が認める
🟦 楽天グループは ITmedia NEWS の取材に「事実と相違ない」と回答しました。
💡 ここで押さえたいこと:2014年のViber買収から数えると12年です。この12年は、軍事を目指した12年ではありません。 メッセージアプリ、携帯キャリア、通信ソフトウェア、衛星。どれも民間のビジネスとして始まっています。それが2026年になって、ある一点に集まって見えるようになった。順番はそういう順番です。
2️⃣ ドローン①|Helsing の攻撃型ドローン「HX-2」とは何か

ここがいちばん誤解されている部分なので、詳しく書きます。
Helsing はどういう会社か
🟦 2021年3月、ドイツ・ミュンヘンで創業しました。創業者はゲーム開発者、ドイツ国防省の元職員、機械学習エンジニアの3人です。
🟦 2026年7月13日、18億ドルを調達し、企業評価額は180億ドルに達しました。欧州の防衛テック企業として過去最大級の資金調達です(CNBC ほか報道)。
🟦 報道によれば、GPSに依存しないAI攻撃ドローンを月1,000機を超える規模で生産しています。2026年2月には、ドイツ連邦軍から HX-2 について初期2億6,900万ユーロ、枠組みで最大14億6,000万ユーロの契約を得たとされます。
🟦 そして重要な点。Helsing はウクライナに実際にドローンを供給しています。 2026年1月時点で、月あたり数百機のHX-2をウクライナへ納入していたと報じられました。
つまり、日本に来ようとしているのは「実戦で使われている兵器そのもの」です。試作品でも、コンセプトでもありません。
HX-2 の中身
Helsing の公式サイトの製品ページは、タイトルからして "HX-2 – AI Strike Drone" です。訳せば「HX-2 ― AI攻撃ドローン」。公表されている特徴を挙げます。
◆ 分類
電動のX字翼を持つ精密誘導弾(precision munition)。ドローンという言葉から連想する偵察機ではなく、自分ごと目標に当たって終わる兵器です。
◆ 射程
最大100km級。目視の届かない距離の目標に届きます。装甲車両や火砲を狙う想定が公式に書かれています。
◆ 電子戦への耐性
ここが最大の特徴です。原文を引用します。
`Onboard artificial intelligence ensures that HX-2 is immune to hostile electronic warfare (EW) measures through its ability to search for, re-identify and engage targets even without a signal or a continuous data connection.`
日本語訳:機上の人工知能により、信号や継続的なデータ接続がなくても、目標の捜索・再識別・交戦ができるため、HX-2 は敵の電子戦手段の影響を受けません。(出典:Helsing 公式サイト HX-2 ページ)
通信を切られても飛び続けて、自分で目標を見つけ直す。 これが「AI攻撃ドローン」と呼ばれる理由です。
◆ 群れで動く
Altra というソフトウェア基盤を介して、複数のHX-2が群れ(スウォーム)として動きます。1人のオペレーターが群れ全体を操作します。
◆ 人間の関与
ここは誤解されやすいので、原文で引用します。
`A human operator stays in or on the loop for all critical decisions.`
日本語訳:重要な判断はすべて、人間のオペレーターが関与し続けます。(出典:同上)
🟦 「AIが勝手に攻撃を決める兵器」ではない、というのが公式の説明です。完全自律ではありません。ここを落とすと不正確になるので、はっきり書いておきます。
⚠️ ただし、「関与し続ける」の中身は公表されていません。 1機ごとに人間が引き金を引くのか、群れ全体に対して一度許可を出すのか。ここは公式サイトの記述からは読み取れません。私はここが最大の論点だと考えています(🟥 これは私の見立てです)。
日本での現在地
🟦 陸上自衛隊は HX-2 の実証試験を実施中で、試験は2026年9月末まで続く見通しです。導入の可否は、その結果を見て検討されます。試験の用途、評価項目、想定する調達規模は公表されていません。
3️⃣ ドローン②|ウクライナ Swarmer の「群れで動くAI」
Helsing が兵器そのものなら、Swarmer は兵器を束ねるソフトです。
🟦 Swarmer は2026年5月4日、楽天グループの支援を受けて日本市場に参入する計画を発表しました。ウクライナ発、ナスダック上場(SWMR)。
🟦 実績として挙げているのは、2024年4月以降、ウクライナで10万回以上の実戦ミッションを支援したというものです。8インチ級の使い捨てドローンによる、自律的な「探索して当てる」運用の実演にも成功したとしています。
⚠️ この「10万回」は、企業の実績値として発表された数字です。ただし、その1回1回が現に続いている戦争の中の出来事だという点は、書き添えておきます。この記事では、この数字を技術力の証明としても、批判の材料としても扱いません。 事実として、そういう経緯を持つ技術が日本に来ようとしている、という確認にとどめます。
🟦 一方で、見落とされやすい点があります。プレスリリースに書かれた日本での用途は「研究・セキュリティ・インフラ・産業」です。 軍事用途に限定した書き方はされていません。
そして、なぜ楽天なのか。リリースには理由が明記されています。
🟦 Rakuten Viber のウクライナでの普及率98%。そして人道支援13億円超。
楽天とウクライナのつながりは、防衛から始まったのではありません。 順番としては、メッセージアプリと人道支援が先にありました。ここは何度でも確認しておきたい点です。
4️⃣ なぜウクライナなのか|戦争が生んだドローン大国

ここを飛ばすと、楽天の動きが「たまたま」に見えてしまいます。
今のウクライナは、世界で最も濃密なドローン産業の集積地です。 それも、戦争によってそうなりました。
4年で起きたこと
🟦 数字が異様です。
◆ メーカーの数
2022年のロシアによる全面侵攻の前、ウクライナのドローンメーカーは約7社でした。それが今は約500社とされています。
◆ 生産量
FPVドローン(一人称視点で操縦する小型機)の生産は、2022年に年3,000〜5,000機でした。2025年には約300万機。2026年は約450万機の見込みとされます。
◆ 生産能力
ウクライナの防衛産業の設備能力は、年800万〜1,000万機規模と報じられています。
🟦 ウクライナの国防相は、同国が戦術用および長距離ドローンの生産で世界最大になったと述べています。
3年で生産量が約1,000倍。これは平時の産業育成では起こりません。毎日使われ、毎日壊され、毎日改良される環境が作ったものです。
ドローンが戦況そのものを動かしている
生産量が伸びただけではありません。戦い方が置き換わっています。
⚠️ 先に注意書きです。以下の数字は交戦当事国であるウクライナ側の発表・集計にもとづくものが中心です。戦時下の発表は、どちらの側のものであれ独立検証が難しく、そのまま確定した事実として扱えません。すべて🟨(強く示唆されるが、独立検証はされていない)として読んでください。 そして、ここに出てくる数はすべて人の生死に関わる数だという点も、書き添えておきます。
🟨 ウクライナ側の説明によれば、戦場で相手に与える打撃の80%以上がドローンによるものになっています。2025年春の時点では約70%とされていたので、割合は上がり続けていることになります。
🟨 攻撃の届く距離も伸びています。ウクライナの長距離ドローンは、2026年前半にロシア国内の697の目標を攻撃したとされ、報道ではロシアの石油精製能力の43%が一時的に止まったと伝えられました。2026年8月には、国境から2,400km以上離れたオムスクの製油所への攻撃も報じられています。
🟨 生産計画も引き上げられ、2025年の約400万機から、2026年は700万機を目標にしているとされます。
なぜこれが「巻き返し」と呼ばれるのか
🟥 ここからは私の見立てです。
ウクライナは、戦車の数でも、兵員の数でも、砲弾の数でも勝てません。 国力に差がありすぎます。
それでも押し返せている理由として説明されているのが、この構図です。
◆ 安いものを、大量に、速く改良する
1機あたり数万円のFPVドローンで、はるかに高価な装甲車両や火砲を狙う。費用の非対称です。
◆ 前線と開発現場が直結している
朝に前線で効かなかった手が、その日のうちに設計へ戻る。ソフトウェア企業の開発サイクルが、そのまま兵器の改良サイクルになっています。
◆ 群れにして、人手を節約する
Swarmer が持ち込もうとしている自律制御は、まさにこの部分です。1人で何機も動かせれば、人員の差を埋められます。
⚠️ ただし、これで戦争が終わりに向かっているわけではありません。 ドローンは相手も同じように使います。国連の報告は、ドローンの普及によって民間人の危険がむしろ増えていることを指摘しています。技術の話として「うまくいっている」と書くことと、戦争の帰結を評価することは、まったく別です。この記事は前者しか扱いません。
🟥 そして、ここが日本にとっての意味です。世界で最も速く改良されているドローンの技術が、いま輸出可能な商品になりつつある。 楽天が接点を持ったのは、その入口です。
「中国に匹敵する」を正確に言うと
ここは分けて考える必要があります。ウクライナと中国は、同じ土俵で競っていません。
◆ 中国が握っているもの:部品と民生市場
🟦 DJI は消費者向け・商用のマルチローター市場で70%超のシェアを持つとされ、2025年に世界で検知されたドローンの83%以上がDJI製だったという集計もあります。
さらに重要なのは部品です。🟦 小型リチウムイオン電池、モーター、フライトコントローラー、カーボンフレーム、無線モジュール、レアアース磁石。この層は中国がほぼ押さえています。
ある調査は、この状況をひと言でまとめています。
`Assembly has moved; the component layer largely has not.`
日本語訳:組み立ては(中国の外へ)移った。だが部品の層は、ほとんど移っていない。(出典:ドローンのサプライチェーンに関する調査報告)
◆ ウクライナが握っているもの:量産と、実戦での改良速度
🟦 一方でウクライナが持っているのは、実際に使われた回数と、そこから学ぶ速さです。Swarmer の「10万回以上の実戦ミッション」も、Helsing の「月数百機を納入」も、この環境があってこその数字です。
そして、ウクライナ自身も中国に依存している
🟦 ここが皮肉な部分です。ウクライナ製とされるドローンも、機体フレーム・バッテリー・カメラ・モーター・無線の多くは中国の工場で作られたものだ、と指摘されています。2023年には、キーウがDJIの Mavic の世界生産の60%を買っていたという推計もあります。
🟦 そして2024年9月1日、中国はウクライナとロシアの双方に対し、ドローンと部品の輸出規制をかけました。対象にはフライトコントローラー、カーボンフレーム、モーター、無線モジュール、航法カメラが含まれます。
この非対称が、記事全体の縦糸です
🟥 ここからは私の見立てです。
「部品もインフラも、誰かに握られている状態から抜け出したい」 ——これが、いま各国が同時に抱えている課題です。
そう考えると、いくつかの点が一本につながります。
日本がドイツの Helsing を選ぶ理由の1つは、中国製の部品や機体に依存しない選択肢であること
HX-2 が「GPSに依存しない」「通信を切られても動く」を売りにしているのは、握られている前提で設計されているから
日本の衛星プロジェクトの名前が「自律性確保に向けた低軌道衛星インフラ整備事業」であること
握られたくない、という一点で全部つながっています。 この視点は、後半のマトリクスでもう一度出てきます。
5️⃣ 楽天の役割は「つくらない」

ここを正確に押さえないと、話が大きくずれます。
🟦 楽天は兵器を製造しません。 楽天グループが ITmedia NEWS に説明した役割は、国内の販売窓口と、防衛省への導入支援です。
日本の防衛調達の制度は複雑で、海外のスタートアップが単独で入るのは難しい。そこをつなぐのが楽天の役目、という位置づけです。Swarmer のときも、日本での実証を支援した立場でした。
つまり構図はこうなります。
◆ つくる
Helsing(ドイツ)/Swarmer(ウクライナ)
◆ つなぐ
楽天グループ ― 販売窓口・導入支援・政府との調整
◆ 買うかどうか決める
防衛省・自衛隊
🟥 私の見立てでは、この「つくらない」という選択は、たまたまではありません。楽天が持っているのは製造能力ではなく、日本市場への到達力と、政府との折衝能力です。 そこだけを差し出す形になっています。この点は、後で出てくるマスク氏との対比で効いてきます。
ただし「関わっていない」わけではない
⚠️ 一方で、「製造しないから関与が薄い」と読むのも正確ではありません。
🟦 楽天が担うのは、日本に入れるかどうかの入口です。ここが開かなければ、HX-2 は自衛隊に届きません。仲介は、機能としては小さくありません。
🟥 私は、ここが今回の一件でいちばん議論されるべき点だと考えています。つくる責任と、つなぐ責任は、同じではないが、どちらもゼロではない。 そういう種類の話です。
6️⃣ 衛星|J-LEO と「有事の際にも」

ドローンの次は衛星です。
J-LEOとは、総務省の「自律性確保に向けた低軌道衛星インフラ整備事業」の略称です。 日本国内で運用・管理する低軌道衛星の通信網を作る、という国のプロジェクトです。
🟦 2026年6月30日、この事業の補助対象が決まりました。申請の代表はRAST株式会社。楽天と米国の AST SpaceMobile の合弁会社です。楽天モバイルが共同提案者として入っています。
楽天自身が「有事」と書いている
🟦 2026年8月10日の決算資料(p.49)に、狙いがこう書かれています。
「衛星の保有・運用の権限等を有しており、有事の際にも外部環境に左右されず、日本国内の通信インフラを優先的かつ安定的に維持できる強固なレジリエンスの実現を目指す」
🟦 三木谷CEOは同じ説明会で、こう述べています。
「衛星の方は、これはもう国土強靱化(中略)AST SpaceMobile は今後、本当に過疎地域、そして海上における唯一のサービスとなる可能性もありますし、お国のために様々な形で使っていただけるようなサービスになるとともに、日本国籍の低軌道衛星が初めて実現するという極めて重要な重責を担っている」
「有事」「お国のために」「日本国籍の低軌道衛星」。 これは災害対策の言葉づかいであると同時に、安全保障の言葉づかいでもあります。
⚠️ ただし、J-LEO は軍事調達ではありません。 総務省の通信インフラ整備事業です。ここを混ぜると事実がずれるので、はっきり分けておきます。
⚠️ 補助金の金額について:報道では「1,480億円」「1,500億円規模」と数字が分かれています。決算説明会にも「1,500億円規模」という表現は出てきますが、これは記者の質問の中の言葉です。楽天が発表した数字ではありません。この記事では確定した事実として扱わず、報道ベースで1,500億円前後とだけ書きます。
🟦 なお、2026年第4四半期からの商用サービスと、J-LEO事業を通じたインフラは別物だと決算資料に明記されています。J-LEO側の詳細は「決定次第、開示予定」とされています。
7️⃣ 通信|Open RAN とウクライナの再建
3点目です。ここは地味ですが、実は要になります。
🟦 2026年7月27日、楽天グループは公式リリースで、楽天シンフォニーが経済産業省の補助金に採択されたと発表しました。
正式名称は長いのですが、そのまま書きます。「令和6年度補正 グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(ウクライナ復興支援・中東欧諸国等連携強化)」です。
🟦 内容は、キーウ周辺の4G LTEネットワークでの Open RAN 屋外検証。連携先はウクライナの通信事業者 Kyivstar(キーウスター)、連携機関は楽天モバイルです。事業費の総額は約7.1億円、補助金の申請額は最大3.5億円です。
Open RAN(オープンラン)とは、無線基地局の中身の仕様を、メーカー間で共通化する考え方です。 いろいろな会社の機器を組み合わせて使えます。特定のメーカーに縛られません。
🟥 ここでも同じ言葉が出てきます。特定のメーカーに握られない。 壊れた通信網を早く組み直せるのは、その結果です。
そしてこの検証を、現に戦争が続いている国でやっているという点は、技術的にも意味があります。実験室では作れない条件です。
8️⃣ 3点が揃った|通信・衛星・ドローン

ここまでを1枚にします。
◆ 通信
楽天モバイル(携帯網)/楽天シンフォニー(Open RAN・ウクライナで実地検証中)
◆ 衛星
AST SpaceMobile との合弁 RAST / J-LEO(国の事業に採択)/ 市販スマホと衛星の直接通信
◆ ドローン
Helsing(攻撃型ドローン HX-2・国内販売窓口)/ Swarmer(群れの自律制御・日本参入を支援)
🟨 この3つを同時に持っている日本企業は、他に見当たりません。 通信キャリアはドローンを持たず、防衛関連メーカーは携帯網と衛星を持ちません。楽天は「たまたま」3つを持ってしまった、という状態です。
そして、この3点はウクライナの戦場の構成そのものです
🟥 ここからは私の推測です。
ウクライナで起きたことを、機能で分解するとこうなります。
地上の通信が壊される → 衛星でつなぐ → その回線でドローンを運用する → AIが群れを束ねる。
楽天が持っている3点は、この並びに一対一で対応します。似すぎているというのが、この記事を書こうと思った出発点でした。
「一式で防衛省に売る」という筋書きは成立するか
🟥 これは完全に私の仮説です。公式発表はどこにもありません。
通信網と衛星とドローンを、ばらばらにではなくパッケージとして防衛省に提案する。もしそれが可能なら、楽天は「海外製品の代理店」から「システムの供給者」に変わります。単価も、継続性も、まったく別の事業になります。
筋書きとして成り立つ材料は、確かにあります。
🟦 材料1:楽天自身が J-LEO について「有事の際にも」と書いている
🟦 材料2:三木谷CEOが「お国のために様々な形で使っていただける」と述べている
🟦 材料3:HX-2 は「通信を切られても動く」ことを売りにしている=通信環境とセットで語られる兵器である
🟦 材料4:日本の防衛省はドローンに大きく張っている。防衛力整備計画では2023〜2027年度の5年間で無人アセットに約1兆円が見込まれ、2026年度予算案では「SHIELD」に1,001億円が計上されています
それでも、この仮説にはいくつも穴があります
自分で潰しておきます。
◆ 穴1:J-LEO は軍事調達ではない
総務省の通信インフラ事業です。衛星の使い道を防衛省が決められる建て付けにはなっていません。ここを混ぜると事実がずれます。
◆ 穴2:楽天は製造しない
パッケージで売るなら、統合の責任を誰が負うのかが問題になります。仲介者のままでは、そこは引き受けられません。
◆ 穴3:防衛調達はパッケージを買う仕組みになっていない
装備品ごとに要求性能があり、別々に審査されます。「一式でお願いします」が通る世界ではありません。
◆ 穴4:そもそも HX-2 が採用されるかも未定
実証試験は2026年9月末まで。入口すらまだ開いていません。
🟥 だから私の結論はこうです。「パッケージ販売」は、現時点では成立していません。 ただし、材料だけは全部そろってしまった。その事実自体は動きません。ここから先に進むかどうかは、これから出てくる発表を見るしかない、と考えています。
9️⃣ モバイルの赤字と、国費1,500億円

「軍事進出は、モバイルの赤字改善の鍵なのか」——この問いを、数字で見ます。
まず、赤字はどれくらいか
🟦 2026年度第2四半期の楽天モバイル(すべて決算資料より)。
◆ 売上収益
1,013億円(前年同期比 +11.9%)
◆ Non-GAAP営業損益
△323億円(前年同期の△390億円から67億円の改善)
◆ ネットワーク関連の設備投資
当四半期393億円。2026年度の年間計画は2,000億円で、期初計画から変更なし
🟦 一方、グループ全体は好調です。連結売上6,655億円(第2四半期として過去最高)、そして2020年第2四半期以来となる親会社所有者帰属の四半期純利益の黒字化(77億円)を達成しています。
つまり、グループは黒字化したが、モバイル単体はまだ四半期300億円級の赤字。これが現在地です。
防衛そのものは、赤字改善にほぼ効きません
🟥 ここは私の見立てですが、根拠を書きます。
◆ 理由1:仲介の手数料は桁が違う
HX-2 の販売窓口として得られる収益は公表されていません。ただ、陸自の調達規模も未定の段階です。四半期300億円の赤字を埋める桁には、まず届きません。
◆ 理由2:決算で一言も触れていない
🟦 8月10日の決算説明会に「防衛」「ドローン」は0件です。投資家に説明する材料として扱われていません。 収益の柱として見込んでいるなら、触れないほうが不自然です。
◆ 理由3:黒字化の説明が別のところにある
🟦 三木谷CEOが決算で挙げた要因は、金融セクターの成長、モバイルを加えた顧客獲得の「三本の矢」、そして「AIを使い倒していることによる業務効率化」でした。防衛は出てきません。
効くとすれば、こちらです
🟥 ただし、まったく無関係とも言えません。 効き方が違います。
楽天モバイルの年間設備投資計画は2,000億円。ここに、J-LEO の国費が報道ベースで1,500億円前後の規模で入ってきます。
⚠️ 念のため——この2つは同じ財布の話ではありません。 J-LEO は衛星と地上設備の整備を対象とする別事業で、楽天モバイルの基地局投資を国が肩代わりするものではありません。
🟥 それでも、意味はあると考えています。本来なら全額自社で背負う衛星インフラの構築費用に、国の補助が入る。 決算資料の言葉を借りれば「資本効率を最大化し衛星通信領域への事業機会を拡大」です。
赤字を埋めるのではなく、次の投資を軽くする。 これが、いちばん正確な言い方だと私は思っています。
質問への答え
🟥 「軍事進出はモバイル赤字改善の鍵か」への私の答えは、「鍵ではないが、無関係でもない」です。
兵器の仲介収益 → 赤字改善への寄与は、現時点でほぼ見えない
J-LEO の国費 → 衛星インフラの自己負担を軽くする。ここは効く
ただし J-LEO は軍事調達ではない → 「軍事で黒字化」という言い方は正確でない
🟥 そして、もう1つ。国策事業の担い手になること自体に、金額に表れない価値があります。 周波数、規制、電波行政。通信事業者にとって、国との距離は事業条件そのものです。ここは数字にならないので、私も断定できません。そういう見方もある、という程度に受け取ってください。
🔟 三木谷浩史とイーロン・マスク|同じ絵を、逆に描いている

ここからが、この記事のもう半分です。
⚠️ 免責(2回目):この章は、公開情報と本人の発言、そして報道をもとにした私個人の見立てです。両氏および両社の経営判断を評価するものではありません。特に他社の役員に関する記述には、報道機関が匿名の関係者を根拠に報じ、本人が否定しているものが含まれます。そのまま事実として受け取らないでください。
10-1|二人は、知り合いです
🟦 三木谷氏は自身のコラムで、マスク氏との交流を語っています。マスク氏が東京でカラオケに行きたいと言い、実際に一緒に行って歌ったこと。そのあとテスラのモデルSを日本でどう売るかを少し話したこと。「六本木で会うときは飲んでカラオケをしているだけ」と言いつつ、テスラやTwitterの経営について直接相談を受けたこともあると明かしています。
つまり、世界最大の衛星通信網を作った人物を、三木谷氏は個人的に知っています。 これは、この後の話の前提として押さえておく価値があります。
10-2|同じ絵を描いている
二人が向かっている先は、驚くほど同じです。
地上の基地局に頼らず、手元のスマートフォンを直接、宇宙とつなぐ。
◆ マスク氏の側
SpaceX が Starlink の Direct to Cell を進めています。🟨 各種集計によれば、2026年時点で650機を超える対応衛星が軌道にあり、22の国と地域でサービスが提供されているとされます。
◆ 三木谷氏の側
楽天モバイルが AST SpaceMobile と組み、2026年第4四半期の商用サービス開始を目指しています。🟦 2025年4月には、日本国内で市販スマートフォンによる衛星経由のビデオ通話に成功しました。
同じ絵です。しかし、描き方が正反対です。
10-3|違い①|衛星の設計思想

🟨 以下はアナリストや専門メディアの集計にもとづく比較です。公式の横並び発表ではないので、そのつもりで読んでください。
◆ Starlink:小さい衛星を、大量に
1機あたりのアンテナは小さい。そのかわり数で押します。当面できるのはテキストと軽いデータが中心とされます。
◆ AST:巨大なアンテナを、少数
1機あたりのアンテナが桁違いに大きい。🟨 ASTのアンテナは Starlink の Direct to Cell 用アンテナの35〜40倍規模とされ、Block 2 機は約2,400平方フィート(テニスコート約9面分)の位相配列アンテナを展開します。狙いはブロードバンドです。
🟨 一方、機数では大差がついています。2026年初頭時点で AST は7機、2026年中に最大60機の計画。Starlink は650機超。打ち上げ能力を自前で持っているかどうかの差が、そのまま出ています。
10-4|違い②|垂直統合か、仲介か

ここが、この記事の核心だと私は思っています。
◆ マスク氏=全部自分でつくる
ロケットを自分でつくる。衛星を自分でつくる。回線を自分で売る。車もつくる。AIもつくる。サプライチェーンを縦に貫いて、他人に依存する部分をできるだけ減らすのがこのやり方です。
強みは速さと独立性。弱みは、判断がひとりに集まることです。
◆ 三木谷氏=つくらずに、つなぐ
衛星は AST がつくる。ドローンは Helsing と Swarmer がつくる。楽天が出すのは、日本の通信網、顧客基盤、政府との折衝力、そして販売の入口です。
強みは、自分でつくらなくていいこと。ゼロから兵器産業や宇宙産業を立ち上げるより、圧倒的に速く到達できます。弱みは、自分では止められないことです。 相手が供給をやめれば終わります。
🟥 私の見立てでは、この違いは性格の差ではなく持ち駒の差です。マスク氏にはロケットがあり、三木谷氏にはロケットがない。かわりに三木谷氏には、日本市場と楽天経済圏があります。それぞれが持っているものを差し出しているだけ、とも言えます。
10-5|そして、ウクライナが二人を分けた
ここは慎重に書きます。
🟦 まず確定していること。Starlink はウクライナで、地上インフラが壊れても使える通信網として決定的な役割を果たしました。 ドローンの運用にも深く関わっています。
🟨 そのうえで、報道があります。ロイターは2025年7月25日、匿名の関係者3人の話として、2022年秋のヘルソン州での反攻の最中に、マスク氏がベリスラフ付近の Starlink の通信を止めるようSpaceXの技術者に指示したと報じました。前線の部隊が接続を失い、ドローンと砲撃の連携が乱れたとされます。
⚠️ マスク氏は、この種の指摘を否定しています。 2024年3月には X(旧Twitter)で「We would never do such a thing」(我々は決してそんなことはしない)と投稿しました。匿名情報源にもとづく報道と、本人の明確な否定が並んでいる状態です。どちらかを事実として確定させることは、私にはできません。
🟥 ただし、確定していなくても、この報道が世界に与えた影響は現実に存在します。 それはこういうものです。
一民間企業、さらに言えば経営者ひとりの判断が、国家の軍事作戦に影響しうる。
真偽がどうであれ、各国の政府がそのリスクを検討し始めたという事実は動きません。
10-6|だから、事業の名前が「自律性確保」になっている
ここで、日本の話に戻ります。
🟦 総務省の事業の正式名称をもう一度書きます。
「自律性確保に向けた低軌道衛星インフラ整備事業」
🟦 そして楽天の決算資料の言葉。「衛星の保有・運用の権限等を有しており、有事の際にも外部環境に左右されず」。
🟦 三木谷CEOの言葉。「日本国籍の低軌道衛星が初めて実現する」。
「自律性」「保有・運用の権限」「日本国籍」。 3つとも、同じことを別の角度から言っています。
🟥 ここからは私の推測です。この事業が名指ししていない相手は、Starlink です。
日本の携帯大手は、圏外対策で海外の衛星サービスに頼る構図になっています。そこに「日本が保有・運用の権限を持つ衛星網を」という国の事業が立ち上がった。決算説明会でも、記者が「国としてもスターリンクに代わる国産の衛星インフラの選択肢を持たせるという意義」と前置きして質問しています。
⚠️ これは記者の質問の中の言葉であって、楽天や総務省が「Starlink対抗」と公式に述べたものではありません。 ここは分けておきます。
🟥 それでも、私にはこう見えます。三木谷氏は、マスク氏が作った仕組みの強さも、その危うさも、いちばん近くで見られる位置にいた人物の1人です。 友人としても、競合としても。そこから出てきた答えが「日本が権限を持つ衛星網」だとしたら、筋は通っています。
10-7|対比を1枚に

◆ 衛星の作り方
マスク氏:小型を大量に。ロケットも自前
三木谷氏:巨大アンテナを少数。打ち上げは他社に依存
◆ つなぐ相手
マスク氏:利用者に直接売る(自社ブランド)
三木谷氏:各国の携帯キャリアに乗せる(楽天モバイルもその1つ)
◆ ドローン
マスク氏:SpaceX は軍事衛星や打ち上げは担うが、攻撃型ドローンは手がけていない
三木谷氏:つくらない。欧州とウクライナのメーカーを日本につなぐ
◆ 意思決定
マスク氏:本人に集中。速いが、ひとりの判断が国家の作戦に届きうると議論された
三木谷氏:国の事業の枠組みの中。遅いが、判断が分散する
◆ 国家との距離
マスク氏:米政府の重要な取引先であり、同時に緊張関係も抱える
三木谷氏:総務省の補助事業の担い手。国の側に組み込まれる形
🟥 まとめると、こうなります。マスク氏は「国家に依存しない民間」をつくった。三木谷氏は「国家が依存できる民間」になろうとしている。 同じ技術で、向きが逆です。
これが正しいかどうかは分かりません。ただ、いま起きていることを一番よく説明できる見方だと、私は思っています。
1️⃣1️⃣ 補足|判断を迫られた日、報道の言葉はまだ揺れていた

小さい話ですが、無視できないので書いておきます。
8月18日の報道を見比べると、HX-2 の呼び方が媒体によって食い違っています。
◆ 「迎撃用ドローン」と書いた例
🟦 ITmedia NEWS の8月18日の記事は、「楽天グループが迎撃用ドローンを手掛ける独Helsingと提携するとの報道」と書いています。東京新聞の見出しも「迎撃用ドローン」でした。
◆ 「攻撃型ドローン」と書いた例
🟦 ロイター、財経新聞、日本ネット経済新聞は「攻撃型ドローン」。そして同じITmediaも、8月20日の記事では「攻撃型ドローン」に変わっています。
◆ 公式はどちらか
🟦 すでに書いたとおり、Helsing の公式製品ページは "HX-2 – AI Strike Drone"。攻撃型が正しい、というのが公式の位置づけです。
「飛んでくるものを落とす」と「こちらから撃ちに行く」では、受け取り方が変わる人もいるはずです。
🟥 メディアを責めたいのではありません。速報の初期に用語が固まりきらないのは普通に起こります。押さえたいのはこちらです。
この件について何かを判断した人の多くは、事実が確定する前に判断しています。
💡 確認の仕方は簡単です:当事者企業の公式サイトの製品ページを1回開く。今回もそれで「攻撃型」と確定できました。所要1分です。日本語のニュース記事より、そこが一番早く、一番正確でした。
1️⃣2️⃣ EC事業への跳ね返り|1社が、翌日に出ていった

ここまで軍事と衛星の話をしてきました。最後に、地上の話を1つだけ。
🟦 2026年8月18日16時50分、雑誌「通販生活」のカタログハウスが、楽天市場への出店を取りやめると発表しました。出店は2026年3月なので、約5か月での退店です。
🟦 判断の根拠として示されたのが、同社の「商品憲法」です。そこにはこう書かれています。
「できるだけ核ミサイル、原子力潜水艦、戦闘機、戦車、大砲、銃器のたぐいは販売しない」
🟦 同社は、今後は自社のウェブサイトを利用してほしい、と案内しています。
この判断を、私は採点しません
その会社の理念と、その会社のお客様との関係の話だからです。 外から良い悪いを言う種類のものではないと考えています。
かわりに、構造だけを取り出します。
🟦 観察できる事実として言えること
◆ 判断が速い
報道の翌日に発表しています。社内で長く議論した形跡は、外からは見えません。
◆ 基準が先にあった
売上でも手数料でもなく、あらかじめ文章になっていた社内の基準に照らしています。
◆ 受け皿があった
自社のウェブサイトという逃げ道が、もともとありました。
🟥 この3つが揃っていたから、翌日に決められたのだと思います。逆に言えば、どれかが欠けている店は、同じ速さでは動けません。
ほとんどの店には、たぶん何も起きません
🟥 ここは正直に書きます。
🟦 楽天グループの2026年度第2四半期の国内EC流通総額は1.5兆円、前年同期比プラス5.3%。売り場としての力は落ちていません。
🟥 今回の件で実際にダメージが出るのは、理念や思想を前面に出して集客している店に限られると私は見ています。オーガニック食品、フェアトレードの雑貨、書籍まわり。お客様が「何を買うか」だけでなく「誰から買うか」を見ている店です。
価格と納期で選ばれている店には、まず効きません。お客様が最安値と在庫しか見ていないなら、モールの経営方針は購入判断に入ってきません。
それでも、1つだけ準備しておく価値があるもの
🟥 規模に関係なく起こりうるのが、「楽天で買うのをやめようと思うのですが」という声が、モールではなくあなたの店に来ることです。
答え方を決めていないと、担当者がその場で作ってしまいます。そこだけは、先に決めておく価値があると思います。
方針は3行で足ります。
モールの経営判断について、賛成も反対も申し上げない
お客様の考えは、そのまま受け止めてお礼を伝える
自社サイトという選択肢だけ案内し、引き止めない
引き止めると、賛否のある話題に店が乗ってしまいます。選択肢を出すだけにとどめる。 これが一番角が立たない形だと考えています。
【あなたなら、どうする。】
1️⃣3️⃣ 自己反論|この読みが外れていたら

ここまで🟥をかなり書きました。外れる可能性を、正面から検討します。
外れ方①|HX-2 が採用されずに終わる
十分ありえます。🟦 陸自の実証試験は2026年9月末までで、導入が決まったわけではありません。
そうなれば、この記事の「3点セット」の一角が消えます。そのとき残るもの:衛星と通信の2点は残ります。J-LEO は動き続けます。
外れ方②|3点はつながらず、別々の事業のままで終わる
これも十分ありえます。というより、🟥 確率はこちらのほうが高いと私は見ています。
大企業の事業は、外から見ると一本の線に見えても、中では別々の部署が別々の理屈で動いているのが普通です。「似ている」と「つながっている」は違います。
そのとき無駄になるもの:第8章の仮説だけです。第2章から第7章までの事実は、つながらなくても事実として残ります。
外れ方③|マスク氏との対比が、ただの偶然
🟥 私は「三木谷氏はマスク氏を見て自律性を選んだ」と書きました。これは本人が言っていません。 完全に私の見立てです。
J-LEO の「自律性確保」は、Starlink とは関係なく、単に経済安全保障の一般論として付けられた名前かもしれません。そのほうが自然だ、という読み方も十分に成り立ちます。
そのとき残るもの:二人が同じ絵を、逆の方法で描いているという構造の観察だけは残ります。動機の推測を外しても、設計の違いは事実です。
外れ方④|ウクライナの数字が、実際とは違う
🟥 第4章の戦況の数字は、交戦当事国の発表が中心です。独立検証はされていません。実際より大きく出ている可能性は普通にあります。
そのとき残るもの:メーカー数が7社から約500社になったという産業構造の変化は、複数の独立した報告で一致しています。ここは動きにくい部分です。
まとめると
🟥 この記事で外れやすいのは「つながっている」という部分です。「ある」という部分は外れにくい。
だから読み方としては、こうお勧めします。第2章から第7章までを事実として持ち帰り、第8章と第10章は「そういう見方もある」として置いておく。 それが一番安全です。
1️⃣4️⃣ この記事が向かない場面
正直に書いておきます。
◆ 楽天の防衛事業の是非を知りたい方
この記事は賛否を書いていません。判断材料しか出していません。安全保障の専門メディアのほうが適しています。
◆ 投資判断をしたい方
株価にも業績予想にも触れていません。触れるだけの根拠を私が持っていないからです。
◆ 明日の売上を上げたい方
売上を上げる施策は1つも書いていません。世の中の構造の話しかしていません。
◆ 兵器の性能を詳しく知りたい方
公式サイトに書かれている範囲しか書いていません。それ以上は私に検証手段がありません。
✅ まとめ

長くなったので、要点だけ。
◆ 事実として確定していること
楽天は2026年に、通信・衛星・ドローンの3点を同時に手にしました。ドローンはドイツ Helsing の攻撃型ドローン HX-2 とウクライナ Swarmer の自律制御ソフトで、楽天は製造せず、日本への入口を担います。 衛星は総務省 J-LEO に採択され、資料に「有事の際にも」と明記されています。通信はウクライナで Open RAN の実地検証が動いています。
◆ 強く示唆されるが、公式には言われていないこと
この3点を同時に持つ日本企業は他に見当たらないこと。そして、この3点の並びがウクライナの戦場の構成と一致していること。
◆ 私の推測にすぎないこと
「一式で防衛省に売る」という筋書き。現時点では成立していません。
「軍事進出がモバイル赤字改善の鍵」という見方。鍵ではありません。 ただし J-LEO の国費が衛星インフラの自己負担を軽くする効果はあります。
三木谷氏がマスク氏を見て「自律性」を選んだという読み。本人は言っていません。
◆ 私がいちばん確かだと思っていること
今回のすべてを貫いているのは、「誰かに握られた部品やインフラに依存したくない」という一点です。
中国が部品を握り、ウクライナが量産と改良を握り、Starlink が衛星を握った。
その構図への反応が、名前に出ています。日本の事業は「自律性確保」。HX-2 の売りは「通信を切られても動く」。通信の仕様は「特定メーカーに縛られない」Open RAN。
🟥 全部、同じ話をしていると私は思っています。
⚠️ 免責(3回目):この記事は公開情報にもとづく私個人の見立てです。特定の企業や個人を評価・批判・推奨するものではありません。🟥のラベルが付いた記述には裏づけがありません。また、内容は2026年8月24日時点のものです。陸上自衛隊の実証試験の結果や各社の追加発表によって、状況は変わります。
📚 この記事で参照した情報
◆ 楽天グループ 2026年度第2四半期 決算説明会 資料および書き起こし(2026年8月10日)
J-LEO採択と「有事の際にも」の記述、三木谷CEOの発言、楽天モバイルの売上・営業損益・設備投資、国内EC流通総額、親会社帰属純損益の黒字化
https://corp.rakuten.co.jp/investors/documents/results/
◆ 楽天グループ公式リリース(2026年7月27日)
楽天シンフォニーの経産省補助金採択、Kyivstar との Open RAN 検証、事業費約7.1億円
https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2026/0727_01.html
◆ Helsing 公式サイト HX-2 製品ページ
"AI Strike Drone" の位置づけ、射程100km、電子戦耐性、human-in-the-loop の記述
https://helsing.ai/hx-2
◆ Swarmer プレスリリース(2026年5月4日)
楽天の支援による日本市場参入、ウクライナで10万回超の実績、Viber 98%、人道支援13億円超
https://finance.yahoo.com/sectors/technology/articles/swarmer-partners-rakuten-enter-japans-120000898.html
◆ ITmedia NEWS(2026年8月18日/8月20日)
カタログハウスの楽天市場出店中止と商品憲法/楽天グループの「事実と相違ない」回答と楽天の役割
https://www.itmedia.co.jp/news/article/2608/18/2000000596/
https://www.itmedia.co.jp/news/article/2608/20/2000000654/
◆ ロイター(2026年8月17日)
Helsing と楽天グループの連携、陸上自衛隊への供給を目指す報道
https://jp.reuters.com/economy/ZKGNP2C7YNI53EI7HUU7FZGFBE-2026-08-17/
◆ ロイター(2025年7月25日)ほか各紙
2022年ヘルソン反攻時の Starlink 通信停止に関する報道(匿名情報源)。マスク氏は同種の指摘を否定
◆ 三木谷浩史氏 コラム(文春オンライン)
マスク氏との個人的交流、テスラ・Twitter経営についての相談
https://bunshun.jp/articles/-/59946
◆ 防衛省 令和8年度予算の概要
無人アセット防衛能力への投資、「SHIELD」構築
https://www.mod.go.jp/j/budget/yosan_gaiyo/fy2026/yosan_20260408_summary.pdf
◆ Helsing の資金調達・生産規模、ウクライナのドローン産業統計、DJIのシェアと部品サプライチェーン、Starlink と AST の比較
CNBC、TechCrunch、CSIS、RUSI、ウクライナ国家安全保障・国防会議、各専門メディアの報道および集計にもとづく。いずれも本文中で🟨として扱っています
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