
AIで仮説を高速化。事業の『うまくいかない』を分解する
「AIを使いたいけれど、自社のどこに使えばいいのか分からない」
「業務効率化はできそう。でも、それが売上や利益につながるイメージが持てない」
「いろいろなAIツールを試しているけれど、結局何から取り組むべきなのか決められない」
企業のAI活用について話を聞いていると、こうした悩みをよく耳にします。
ただ、その前に考えた方がいいことがあります。
そもそも、今の事業の「うまくいかない」は、何によって起きているのか。
売上が伸びない。営業に時間がかかる。成約率が低い。組織がうまく回らない。
こうした状態をそのまま「課題」として捉えるのではなく、結果を分解し、どの数字が動いていないのか、何がその状態を引き起こしている可能性があるのかを見ていくと、次に変えるべき場所が見えてきます。
AIで文章を書く。資料を作る。情報を整理する。
AIを使うことで、できること自体は急速に増えています。
一方で、「AIを使うこと」と「事業が良くなること」は同じではありません。
私は、日本でTikTok Shopが正式にローンチする約半年前から、市場調査、ライブコマース事業の立ち上げ、販売運用まで現場で関わってきました。
正解が公開されていない環境で、配信データを分解し、「なぜ今うまくいっていないのか」「次に何を変えて試すべきか」という仮説を、AIも使いながら作ってきました。
配信時間、商品、構成、価格、配信者などの条件を変えて検証し、その運用を積み重ねた結果、育成アカウントは月商700万円規模まで成長。ライブでは最高同時接続3,000人超、一つの商品で2,000点超を販売したこともあります。
この経験から強く感じているのは、AI導入で最初に考えるべきなのは、
「AIで何ができるか」ではなく、「欲しい結果を得るために、今の何を変えるべきなのか」
ということです。
AIがその答えを自動で出してくれるわけではありません。
ただ、数字や現場の情報を整理し、違いを比較し、「うまくいかない」状態を引き起こしている可能性のある変数を洗い出す。
そして、「次に何を試すか」という仮説を作る。
この部分にかかるコストは、AIによって大きく下げることができます。
この記事では、TikTok Shopの実例と、AIを使って作成した組織診断の事例をもとに、
事業の「うまくいかない」をどう分解し、次に変える場所をどう見つけるのか。その過程でAIをどう使えるのか
について書いています。

AIが事業の重要な部分を動かしている、TikTok Shop
TikTok Shopは、日本ではまだローンチから1年ほどのサービスです。
TikTok Shopでは、どの動画やライブ配信を誰に見せ、どれくらい露出させるかという重要な部分を、推薦アルゴリズムが担っています。
プラットフォーム側が欲しい結果は、TikTok Shop全体の売上を最大化することです。
実際に聞いていたのは、日本市場で売上を最大化するために、アルゴリズムの設定や機能、運用条件を変えながらテストを続けている、という話でした。
国によってユーザーの行動も、コンテンツへの反応も、商品の売れ方も違います。
少なくとも私が関わってきた期間を通して、そのテストは続いていました。毎月、早ければ毎週、アルゴリズムが変わります。
TikTokのような巨大なプラットフォームでさえ、
「この設定であれば日本市場で最も売上が伸びる」
という答えを最初から持っているわけではありませんでした。
では、その中で商品を売る私たちは、どうしていたのか。

売る側にも「正解」は公開されていない
プラットフォーム側と同じく、売る側の私たちにも「こうすれば売れる」という正解はありませんでした。
2024年12月に市場調査からライブコマース事業を立ち上げましたが、当初は売れる商品も、時間帯も、配信構成も手探りでした。
当初は売れる商品も、時間帯も、配信構成も手探りでした。
そこで、売上の結果だけを見るのではなく、売上に至る途中の数字を分解して見るようにしていきました。
実際に見ていたのは、入室率、平均視聴時間、商品クリック率、商品クリック後の購入率、1,000視聴あたりの売上などです。
これらの数字を利用して、次回に何を変えてテストするか検討します。
例えば、
入室率が低ければ、同じ商品を午前・午後・夜と時間帯を変えて比較する。
商品クリック率が低ければ、商品を出すタイミング、最初のフック、トークを変える。
商品はクリックされているのに購入率が低ければ、価格やクーポン、商品の魅力の伝え方、説明の説得力を見直す。
「何を確かめるために、次に何を試すのか」という仮説づくりを、AIで高速化していました。
複数の配信データをAIに比較させ、「クリック率は高いのに購入率が低いのはなぜか」といった差分から仮説候補を出してもらい、実際に何をテストするかは数字と現場を見て決めていきます。
AIが出した仮説に理論上は検証する価値があっても、実際に実行可能かどうかは人間が現場を見て判断します。
配信する商品や順番、配信者も変えながら結果を比較し、テストデータを一次情報として蓄積します。
さらに、見るべき数字をKPIとして整理し、週次で振り返る運用にしていきました。誰を育成し、誰に工数をかけるかという人の配置も見直しています。
その積み重ねで、育成アカウントは月商700万円規模まで成長しました。
ライブでは最高同時接続3,000人超、一つの商品で2,000点超を販売したこともあります。
もちろん、「この時間帯だったから売れた」「このトークが正解だった」と、一つの要因だけで説明することはできません。
この経験で作ったのは、売れる施策そのものではなく、
欲しい結果を分解し、数字からボトルネックの仮説を立て、次に変える場所を決める運用でした。

「AIで何ができるか」を考える前に、事業の変数を探す
企業のAI導入も、私は同じだと思っています。
先に決めるべきことは、「AIで何をしたいか」ではなく、事業として何を良くしたいのかです。
例えば、欲しい結果が「営業利益を増やすこと」だったとします。
いきなり「営業にAIを使おう」と考えるのではなく、見込み客探し、企業調査、提案、商談、見積もり、追客などに分解する。
すると、
「企業調査に人手を使いすぎている」
「期待値の低い案件を追い続けている」
「優先順位を決めるまでに時間がかかっている」
といった、利益に影響している可能性のある場所が見えてきます。
そこで初めて、「ここを変えるために、AIは使えるだろうか」と検討できます。
AIで安くなったのは、「正解」ではなく「仮説を作るコスト」
AIが事業の正解を教えてくれるわけではありません。
ただ、大量の情報を整理する。条件の違いを比較する。見落としている可能性を挙げる。複数の仮説を出す。
こうした、事業改善のための前工程は、大幅に速くなりました。
私は、AIによって安くなったのは「正解」ではなく、「仮説を作るコスト」であると考えています。
「なぜうまくいかないのだろう」と考え続けるところから、
「この3つが問題の原因候補かもしれない。では、どこから何を試すか」
までを速く進めることができます。
AIによって、仮説の候補を広げ、比較し、次のテストに進むまでの時間を大きく短縮できるようになりました。これが、事業改善におけるAIの大きな価値の一つだと考えています。

AIで作成した組織診断を社内でテストした時の話
この考え方は、ライブコマース以外でも役立てることができました。
私は以前、上長から、
「売上も右肩下がりで、部署内の雰囲気も悪い。うまくいっていないから、どうにかならないか」
という相談を受け、AIも使いながら16問の組織診断を試作したことがあります。
何が問題なのかがまだ漠然としており、仮説を立てるための情報も足りませんでした。
そこで最初に考えたのは、何を見れば、その組織で起きていることを構造として捉えられるのかです。
そこで、性格や満足度ではなく、
意思決定が後から覆されていないか。
行動や成果と評価がつながっているか。
判断に必要な情報が流れているか。
責任や判断の境界が曖昧になっていないか。
といった、仕事を取り巻く条件を見る診断ツールを、AIを使って設計しました。
実際にテストすると、現場からは「うまくいっていない理由が言語化されてすっきりした」という反応があり、
一方、結果を見た責任者から返ってきたのが、
「それで、どうしたら売上は上がるの?」という言葉です。
ここで、組織の状態を構造的に説明できることと、欲しい事業成果につながる変数を見つけることは別だと気づきました。
そこで診断結果を、過去の営業データや案件ごとの成果と合わせて見直し、
意思決定が途中で無効になるなら、決裁の流れを見直す。
評価と成果の接続が曖昧なら、KPIを見直す。
情報や責任の境界に問題があるなら、その流れや役割を変える。
「売上が下がっているから営業量を増やす」とすぐに施策へ飛ぶのではなく、欲しい結果との関係から、見るべき場所を捉え直したということです。
その後、リソース削減がうまくいき部署は縮小しましたが、以前より少ない人件費で、それまでの売上水準を維持できる体制になりました。
複数の条件を同時に変えているため、個々の施策と結果の因果関係までは断定できませんが、
私にとっては、欲しい結果を明確にすると、見るべき変数そのものが変わると実感した経験でした。
見えている課題と、変えるべき場所は同じとは限らない
TikTok Shopの運用と、社内テストした組織診断。
一見すると全く違う仕事ですが、共通していたことがあります。
目の前に見えている問題が起こっている場所と、本当に変えるべき場所は同じとは限らないということです。
例えば、AI導入を検討するときには、
「問い合わせ対応に時間がかかっているから、AIで返信を作ってストックしておこう」
と、目の前に見えている業務から対策を考えがちです。
しかし仮に、時間がかかる理由が文章を書くことではなく、時間がかかる本当の理由が、文章を書くことではなく、返信に必要な情報が社内に散らばっていることだったとしたら、
AIを使って文章生成をストックしても、本質的な問題は解決していません。
だからこそ、AIを選ぶ前に、欲しい結果から逆算して、どこを変えるべきかを探すことが必要です。
私は、その順番が重要だと考えています。
今ある課題を、AIでどう改善につなげるか
すでに事業や業務があり、今ある課題を整理しながら、AIを業務改善や事業の成長につなげたい方へ。
公式LINEでは、今ある事業や業務の課題を確認し、どこにAIを使えるのか、何から取り組むべきかを一緒に整理しています。
「AIを使いたいけれど、自社の場合はどこから手をつければいいのか分からない」
「業務効率化だけではなく、売上や利益につながる使い方を考えたい」
という方は、ぜひご相談ください。