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「それを考えるのが君たちの仕事だ」これは、本当に育成なのか

    批判するだけでは、マネジメントにはならない

    職場で、こんな上司に出会ったことはないだろうか。

    部下が提案すると、

    「ここが甘い」
    「このリスクを考えていない」
    「これでは通せない」

    と、問題点を次々に指摘する。

    そこで、

    「では、どの方向で考えればよいでしょうか」

    と尋ねると、

    「それを考えるのが君たちの仕事だ」

    と返ってくる。

    一見すると、部下の自主性を尊重しているようにも見える。

    しかし、目的も示さない。
    優先順位も示さない。
    どこまでのリスクを許容するのかも分からない。

    その状態で否定だけを繰り返すのであれば、それは育成とは言いにくい。

    上司の正解を当てるゲーム

    この構造では、部下が提案し、上司が否定する。

    しかし、何をもって良い提案とするのか、その判断基準は上司の頭の中にしかない。

    すると、現場は顧客やデータを見るよりも、

    「上司は何を期待しているのか」

    を読むようになる。

    仕事は、次のように変質する。

    本来の仕事
    ↓
    顧客や現場を理解する
    ↓
    課題を分析する
    ↓
    提案する
    ↓
    判断し、実行する

    ところが、基準の見えない上司の下では、

    上司の表情を読む
    ↓
    過去の発言を思い出す
    ↓
    怒られそうな論点を避ける
    ↓
    上司好みの提案を作る

    という流れになる。

    少し皮肉だが、仕事の目的が、

    「良い提案を作ること」

    ではなく、

    「上司の正解を当てること」

    へ変わってしまうのである。

    そして、そのゲームに強い人ほど評価されるようになる。

    自主性と丸投げは違う

    もちろん、

    「自分たちで考えてほしい」

    という言葉が、常に無責任とは限らない。

    上司自身にも正解が見えていないことはある。未知の課題であれば、部下と一緒に仮説を作りながら進むしかない場合もある。

    それでも、上司が示すべきものはある。

    何を目的とするのか。

    何を最優先にするのか。

    現時点でどのような仮説を持っているのか。

    何をしてはいけないのか。

    どこまで部下へ任せるのか。

    どの程度の失敗なら許容するのか。

    何が整えば、次の判断へ進めるのか。

    答えを教える必要はない。

    しかし、考えるための枠組みまで部下に丸投げしてはいけない。

    自主性とは、何も示さず放置することではない。

    目的、判断基準、権限、許容範囲を示したうえで、自ら考えられる余白を渡すことである。

    「止める権限」には、「次へ進める責任」がある

    上司には、提案を承認しない権限がある。

    リスクが高いと判断すれば、止めることも必要である。

    ただし、反対する権限を持つのであれば、

    なぜ止めるのか。
    どこに問題があるのか。
    何を直せばよいのか。
    誰が判断するのか。
    いつ再開できるのか。

    そこまで示して、初めてマネジメントになる。

    「責任回路」として見ると、問題は分かりやすい。

    目的・方向性
    ↓
    判断基準
    ↓
    提案・実行
    ↓
    検証
    ↓
    承認・修正・停止

    否定だけを繰り返す上司は、回路の後半にある「承認権限」や「停止権限」を持ちながら、前半にある「目的設定」や「判断基準の設計責任」を引き受けていない。

    権限は持つ。
    しかし、方向は示さない。

    判断は止める。
    しかし、再開条件は示さない。

    この状態では、部下だけが考え続け、上司は批評者の位置にとどまる。

    だが、上司は評論家ではない。

    判断の回路を前へ進める責任を持つ存在である。

    良い上司は、答えではなく判断条件を渡す

    良い上司とは、すべての答えを教える人ではない。

    部下が自分で考えられる枠組みを作る人である。

    必要な情報を渡す。
    権限の範囲を示す。
    失敗できる幅を決める。
    途中で相談できる場を作る。
    そして、自分が決めるべきことから逃げない。

    批判すること自体は難しくない。

    論理の穴を探し、リスクを挙げ、差し戻すだけなら、ある意味では誰にでもできる。

    難しいのは、その後である。

    批判した後に、次の判断へ進める道を作ること。

    部下が再び考え、提案し、実行できる条件を整えること。

    そこに、上司としての本当の責任がある。

    反対仮説として、あえて厳しく言えば、部下側が十分に考えず、すぐに答えを求めている場合もある。

    だからこそ重要なのは、上司が答えを与えることではない。

    「何を考えれば、次の判断に進めるのか」を明確にすることである。

    批判で会議を止めることはできる。

    しかし、

    マネジメントとは、「止めた後に再び動かす仕事」なのである。

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    Designing what should not proceed(CIA | CFE | MBA) "進めてはいけない判断を設計する" 判断・責任・停止を設計する視点を言語化し、 組織の“見えない意思決定構造”を可視化しています。

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