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Cloudflare Q1決算|読むAIと動くAI

    エージェントAI経済シリーズ #3

    5月7日引け後にCloudflareの決算が出た。
    売上は前年比34%増の6.40億ドル。利益もアナリスト予想を超えた。

    同じ日、同じ「ウェブインフラ」のカテゴリにいるAkamaiも決算を出した。Akamaiは1998年創業のCDN(ウェブを速くする技術)の元祖で、Cloudflareの先輩格にあたる。売上は前年比6%増。だがAI企業との18億ドル、7年の大型契約を発表した。

    翌朝。Cloudflareはマイナス24%。
    時価総額にして約3.3兆円が一夜で消えた。Akamaiはプラス28%。

    成長率が6倍以上高い会社が叩き売られ、6%成長の老舗が急騰した。

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    市場は「契約書」を買い、「設計図」を売った。Akamaiが見せたのは18億ドルの署名済み契約。アナリストがExcelに入力できる数字だ。Cloudflareが見せたのは「AIエージェント時代に向けた構造転換」という設計図。1,100人のレイオフと、まだP/Lに1円も乗っていない料金所の構想だ。

    前編と後編で、Cloudflareが建てようとしている「エージェント経済の料金所」について書いた。後編の最後に、5月7日の決算で前提を検証すると約束した。

    前編 / エージェントAI経済シリーズ #1

    後編 / エージェントAI経済シリーズ #2

    数字は出揃った。売上は◎。
    NRR(既存顧客の利用拡大を示す指標)は118%で、前四半期の120%から微減。粗利率はNon-GAAPで72.8%。前年同期の77.1%から4.3ポイント低下し、明確に下向きのトレンドが続いている。後編で「粗利率は注視が必要」と書いたが、その通りになった。撤退条件にはかかっていない。だがコア昇格の条件も満たしていない。握り続ける理由はあるが、握る力を強める理由はまだない。

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    ここまでは、予想の範囲内だった。

    市場が嫌ったもの

    暴落の理由を一言で言えば粗利率だ。

    Cloudflareの株価には「成長しながら利益率も上がっていく」というストーリーが織り込まれていた。市場がCloudflareの売上1ドルあたりにつけた値段は、同業Akamaiの約7倍。この途方もないプレミアムは「利益率が大きく拡大する」前提でしか成り立たない。

    その前提が崩れた。
    Non-GAAP粗利率72.8%は、会社が目標にしていた75〜77%を割り込んだ。しかも売上原価は前年比59%増。売上の伸びの1.7倍の速さでコストが膨張している。

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    重ねて、CEO Princeは全社員の20%にあたる1,100人のレイオフを発表した。一部の業務や役割は、AIによって根本的に再設計できる段階に入ったと説明し、社内のAI利用が3ヶ月で600%増加したこと、エンジニアの97%がAIツールを使っていることを数字で示した。Prince自身の表現を借りれば「手動ドライバーから電動ドライバーに変わった」。これは効率化の話ではない。Cloudflareという会社そのものの設計変更だ。

    市場は、その「設計変更」の意味を消化しきれなかった。
    Q2ガイダンスがコンセンサスをわずか100万ドル下回ったことも重なり、年初来26%走ってきた株価は、一気に逆方向に振れた。

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    ここまでが「SaaS成長銘柄」の物差しで測った話だ。成長率は鈍化していないのにマルチプルが剥がれる。SaaS投資家にはよくある光景かもしれない。

    だが、私が引っかかっているのは別のことだ。

    私が見ていた料金所

    前編と後編で、Cloudflareの「料金所」について書いた。
    AIクローラーがウェブを読むたびに課金するpay-per-crawl。エージェントが匿名のまま支払いを行うx402プロトコル。エッジ上でAI推論を走らせるWorkers AI Cloud。

    これらを「エージェント経済の通行料」と呼び、Cloudflareが道路と料金所の両方を押さえにいっている、というのが前2本の骨子だった。

    5月7日の決算を読み込みながら、ある疑問が浮かんだ。

    私が注目していた料金所は、Cloudflareが一番強い場所なのか。

    pay-per-crawlの最大の問題は、支払う側の動機だ。OpenAI、Anthropic、Googleにとって、学習データのコスト増は致命的になりうる。今まで無料で読めていたウェブを有料化されたら、AIモデルの訓練コストが跳ね上がる。Princeもこの問いに対して「何に変わるかはまだオープンクエスチョンだ」と認めている。

    x402も同じ構造を抱えている。x402 FoundationにはAWS、Google、Visa、Stripeが参加した。これがCloudflare独自規格ならCloudflareは強く抜ける。だがLinux Foundation配下のオープン標準になれば、Cloudflareは「参加者の1社」になる。標準が普及するほど、Cloudflare固有の取り分は薄まる。

    ここまで考えて気づいたことがある。

    前2本の記事で描いた料金所は「AIがウェブを読む行為」に課金するモデルだった。だがCloudflareが本当に強い場所は、そこではないかもしれない。

    この先で考えるのは、Cloudflareの料金所が本当はどこに建つのか、という問いだ。前編と後編で描いた構図を私自身が修正する。


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    構造を読む仕事をしている。AI・半導体・米国株を、決算資料と一次情報から「構造」で読み解くnote。誰が何を売り、どこで利益が出て、何がボトルネックかを図にする。強気も弱気も等距離で扱い、外れた見立ても書き残す。なんとなくの判断を、データと論理で上書きしていく。

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