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Photo byskyblue74

【゚ッセむ】空が青いなんお

    六月の空を芋䞊げるず、い぀も少しだけ、たちの悪い冗談に付き合わされおいるような気分になる。

    ​䜎く垂れ蟌めた灰色の雲が街をどんよりず包み蟌み、ねっずりずした湿気が肌にたずわり぀くかず思えば、次の瞬間には雲の切れ間から、目の眩むような匷烈な日差しが突き刺しおくる。梅雚ず倏。二぀の季節が互いの領分を譲らぬたた、空の䞊で激しく入り亀じっおいる。

    ​「私が小さい頃は、ここたで暑くなかったのにな」

    ​街路暹のわずかな朚陰に逃げ蟌みながら、誰に蚀うでもなくそんな蚀葉が口を぀いお出た。蚘憶の䞭にある幌い頃の六月は、もう少し穏やかで、しずしずず降る雚の冷たさにどこか安堵するような、静かな季節だったはずだ。それがどうだろう。近幎の倏の始たりは、あたりにも唐突で、いささか暎力的すぎる。ただ身䜓が暑さに慣れおいないこの時期の盎射日光は、容赊なく䜓力を削り取り、人間の心たでじわじわず内偎から焊がしおいく。

    ​じっずりず汗ばむ銖筋を拭いながら、私はひず぀、深く息を吐き出した。このたたどんよりずした空暡様ず、容赊ない酷暑の板挟みになっお、貎重な䌑日を憂鬱な気分のたた終わらせおしたうのは、あたりにも勿䜓ない。男が自分の時間を䞍機嫌に過ごすこずほど、無駄なこずはない。

    ​こういう、どうにもならない季節の倉わり目の気怠さを吹き飛ばすには、荒療治が必芁だ。私の頭の䞭に、ある䞀぀の明確な答えが浮かびあがった。

    ​スパむスだ。それも、ずびきり硬掟で、刺激的なや぀がいい。

    ​気分の向かうたたに車を走らせ、倚賀城垂ぞず向かう。目指すのは、かねおから気に入っおいる「SARU CURRYサルカレヌ」だ。

    ​店内に䞀歩足を螏み入れた瞬間、䜕皮類ものスパむスが耇雑に絡み合っお生たれた濃厚な銙りが、䞀気に錻腔を突き抜けた。その銙りを胞いっぱいに吞い蟌むだけで、さっきたで身䜓の芯にこびり぀いおいた重たい梅雚の気怠さが、早くも薄れおいくような気がする。

    ​迷わず泚文したのは「スパむシヌチキンカレヌ」だ。

    ​運ばれおきた䞀皿は、朔く、そしお矎しかった。䞁寧に盛り付けられたカレヌの䞭心に鎮座するのは、独特の深みのある色合いをした叀代米。倚賀城ずいう歎史ある土地の息吹をそのたた圢にしたようなこの叀代米が、この店の䜇たいをいっそう匕き締めおいる。

    ​さっそくスプヌンを入れ、カレヌず叀代米を䞀緒に口に運ぶ。

    ​「  矎味い」

    ​思わず小さく声が挏れた。口に入れた瞬間に広がるのは、単なる「蟛さ」ではない。カルダモンやクミン、コリアンダヌずいった様々なスパむスが絶劙なバランスで䞻匵し合い、立䜓的な旚味ずなっお抌し寄せおくる。そしお、じっくりず煮蟌たれたチキンのゞュヌシヌな旚味が、そのスパむスの波をしっかりず受け止めおいる。

    ​䜕より玠晎らしいのが、叀代米ずの盞性だ。癜米よりも䞀段ずプチプチずした心地よい食感ず、噛むほどに広がる特有の銙ばしさが、スパむシヌなカレヌのルヌず芋事に調和する。スプヌンを進める手が止たらない。

    ​食べ進めるうちに、身䜓の内偎からじんわりず熱が湧き䞊がっおくるのが分かった。額や項ににじむ汗は、倖気の䞍快な湿気ずは党く違う、身䜓の芯が目芚めた蚌拠の、爜快な汗だ。スパむスの刺激によっお脳内が芚醒し、梅雚の憂鬱が綺麗に掗い流されおいく。

    ​䞀皿を綺麗に平らげ、冷たい氎を䞀杯飲み干した時、私は完党に、自分を取り戻しおいた。

    ​店を出お、思わず「あ、」ず声を䞊げた。

    ​車に乗り蟌もうずしお芋䞊げた空は、さっきたでのゞメゞメずした灰色を完党に脱ぎ捚おおいた。そこに広がっおいたのは、突き抜けるような、鮮烈な青。

    ​「空が青いなんお、圓たり前のはずなのにな」

    ​そう思いながらも、スパむスで満たされた今の私の目には、その青さがい぀も以䞊の茝きを持っお映った。入道雲の赀ちゃんのような、真っ癜で力匷い雲が点々ず浮かんでいる。それはもう、完党に「倏の空」そのものだった。

    ​゚アコンを匷めに蚭定し、車を走らせる。窓の倖を流れる景色は、匷い日差しを济びおキラキラず茝いおいる。カレヌを食べる前はあれほど疎たしく思えた暑さが、今は䞍思議ず、ドラむブの最高の盞棒のように思えおくるから䞍思議だ。

    ​倚賀城から、仙台の卞町ぞず車を進める。目指すは「ナッツワヌルド」だ。

    ​ここは、様々なお菓子やナッツ類が驚くほど手ごろな䟡栌で賌入できる、知る人ぞ知る店だ。こぢんたりずした、少し狭い店内に䞀歩入るず、限られたスペヌスに所狭しず䞊べられた商品の数々に圧倒される。

    ​「今倜はどう過ごそうか」

    ​そんなこずを考えながら、棚ず棚の間の现い通路をゆっくりず進む。ここは定番のスナック菓子だけでなく、枋い也物類のラむンナップも実に充実しおいる。ずらりず䞊ぶ珍味や干物、お぀たみ系の也物を眺めおいるず、目移りしおしたっお歩みが進たない。この少し手狭な空間で、自分だけのお気に入りを探し出す宝探しのような時間が、劙に男心をくすぐるのだ。

    ​あれもいい、これもいいず迷いながら、私はポテトチップスず䞀緒に、今倜の最高の盞棒になりそうな也物もいく぀かカゎぞず攟り蟌んでいった。

    ​買い物を終えお自宅に戻る頃には、倕方の穏やかな光が街を包み蟌み始めおいた。

    ​シャワヌを济びおさっぱりずした郚屋着に着替え、よく冷えたリビングの゜ファに深く腰掛ける。手元に甚意したのは、ナッツワヌルドのあの狭い通路で芋぀け出した、倧袋のポテトチップスず、滋味深いお぀たみの也物。そしお、冷蔵庫の奥できんきんに冷やしおおいたノンアルコヌルビヌルだ。

    ​もずもず、私はそれほどお酒が匷くない。進んでアルコヌルを䜓に流し蟌みたいわけではないけれど、䞀日の終わりに「プシュヌ」ず猶を開け、冷たいグラスに泚ぐあの独特の空気感や、喉を鳎らすひずずきは昔から奜きだった。だからこそ、今の時代にノンアルコヌル飲料のクオリティが䞊がっおいるこずは、私にずっお小さな救いであり、莅沢な喜びでもある。

    ​グラスに泚いだ黄金色の液䜓の䞊で、癜い泡がシュワシュワず匟ける。それを䞀気に喉ぞず流し蟌む。

    ​「くぅヌ、生き返る」

    ​アルコヌルは䞀滎も入っおいなくおも、この喉越しず「お酒を飲んでいる」ずいう時間の雰囲気だけで、男の倜は十分に満たされおいく。すかさず、ポテトチップスを䞀枚口に攟り蟌む。パリッずした食感ずずもに広がる絶劙な塩気が、ノンアルコヌルのキレをさらに匕き立おる。続いお、買っおきた也物を少しず぀口に運ぶ。噛めば噛むほどに染み出す濃厚な旚味が、アルコヌル無しの喉を心地よく刺激し、深いリラックス感をもたらしおくれる。これでいい。いや、これがいいのだ。

    ​テレビの画面に目をやる。今倜は楜しみにしおいたサッカヌの詊合がある。もし詊合の展開が膠着しお退屈になったら、途䞭でテレビを切り替えお、最近やり蟌んでいるゲヌムの続きを再開しおもいい。お酒で頭ががんやりするこずもないから、ゲヌムのシビアな操䜜だっお思いのたただ。むしろ、ノンアルコヌルのほうが䌑日の倜を隅々たでクリアに味わい尜くせるような気さえしおくる。

    ​誰にも邪魔されない、誰の目も気にしない、自分だけの時間。

    ​「空が青いなんお」ず、昌間は少し斜に構えお芋䞊げた空だったけれど、その青空の䞋をあちこち動き回り、矎味しいものを食べ、あのお店で奜きなお菓子や也物を買い蟌んできたからこそ、この静かな倜の時間が䞀局愛おしく感じられる。

    ​倖はすっかり暗くなり、昌間の喧隒が嘘のように静たり返っおいる。六月の颚が、カヌテンをわずかに揺らしお郚屋に入っおくる。梅雚のゞメゞメも、倏の暑さも、今の私にずっおはもう遠い䞖界の出来事のようだ。

    ​手元には矎味しいお菓子ず也物、そしおお酒の雰囲気を完璧にたずった冷たい飲み物。目の前にぱンタヌテむンメント。

    明日からのこずなんお、今は䜕も考えなくおいい。

    ​也物をもう䞀口噛み締め、ノンアルコヌルビヌルをすする。

    これ以䞊ない、最高に莅沢な䌑日が、ゆっくりず曎けおいく。

     
     
    ゚ッセむ、小説。 趣味のスポヌツ、音楜、読曞を綎りたす。 旅やグルメも少し。

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