
魔法のハピバ
来年は母親の七回忌である。
とかくこの国は故人を大切にする反面、意外と誕生日は忘れがちな気がする。
私はなるだけ覚えるようにはしてる、特に後輩のは。
私が幼かった頃、小学生くらいまでは誕生会をやってくれてた。
友達を呼んでささやかなパーティーを催したり、友達に呼ばれたり。
中学生になると、誕生日を祝ってくれるのは家族だけになる。
高校生になると誕生日イベントは恋人同士のものな気がして、親からの祝いがちょっぴりうっとおしくなる。
そんな18歳になる誕生日、私はスーパー「LIFE」でアルバイトをしていた。
そこの社員さんに、何気ない雑談の中でその日が誕生日ということを言ってしまった。
社員さんは何気なく受け答えしてくれたが、バイトが終わり、
「お疲れさまでーす」と帰ろうとすると。
「ほい、誕生日やろ。おめでとう」
と、LIFEに入ってた不二家でケーキを買ってくれた。
この数年ぶりに他人から祝ってもらえたのが、泣きそうなほど嬉しかったのを覚えてる。
こんなことがあって以来、ささやかでも後輩の誕生日は祝うことにしてるが。
ささやかなだけに、「誕生日おめでとう」と言うのが、行為と釣り合わない。
そんな折、私の50歳の誕生日の朝の出来事。長女が起きぬけの開口一番「パパ、ハピバ」と放ってみせた。
「ハピバ」
なんてライトでポップでささやかな祝福の言葉だろう。
「ちょっと一言だけ言わせてもろてええかな…ハピバ」
とおどけた感じで小さなお菓子を渡すと、年齢とワードのギャップでたいへん喜んでもらえる。
略して崩して原形さえ理解できない若者の言葉だが、「ハピバ」はポップに祝える魔法の言葉と学んだ気がした。