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商品企画課異世界転生物語―ナユタヅチ街道録―#11 第一章 十一節 骨スープと熱い湯

     ねぐらに着いてから、機嫌よくヨドが熱湯を沸かしている。
     ツメイナバは石台に寝かされている。
     私はヨドが何をしようとしてるかは分かっている。
     正直見たくない。
    「コユキが料理したらこいつももっと旨くなるんじゃないか?」
     私はその問いに答えない。
     ヨドはツメイナバを排水溝の所に連れていき、手際よくお湯をかけていく。
     私は見たくないのに、何故か目をそらすことが出来なかった。
     鍋のお湯がなくなった。
     ヨドが棚から短剣を取る。
     次の瞬間、皮の中から肉が出てきた。
     ヨドは淡々とモツの処理をする。
     そこにはもう食材しかなかった。
    「コユキ、後は頼んだ。」
     ヨドにしてはかなりご機嫌な声で私を見つめた後、ベッドに横たわった。
     私はゴクリとつばを飲み込んだ。
     覚悟を決めて肉と骨の前に立つ。
     思わず両手を合わせて、目を瞑る。
     まずは自分の短剣を洗う。
     そして、肉を食べやすいサイズに切る。 
     ……臭くない
     鍋に水を入れ、火を入れる。
     そこに肉が所々着いた骨を沈めた。
     塩をひとつまみ。
     しばらく弱火で煮込んでいく。
     ……本当は何か香草が欲しいけど仕方ない
     肉も加えて煮込む。
     グツグツ煮えてくる。
     そこに少し余ってた緑色のトマト、白い瓜、さらにパンも入れる。
     ……白いご飯食べたいな
     煮込んでる間に残りの黒いキャベツに塩をかけて揉み、お皿に盛り付けた。
     そうしてると鍋が十分煮立った。
     鍋に塩と砂糖を加え、味を調整する。
     少し味見すると、ちょうどいい塩加減だった。
     ……こんな所かな。
     棚に木製のお椀を見つけた。
     大き目のスプーンで鍋の中身をお椀に入れる。
    「ヨド、出来たよ。」
     私が料理している間に、ヨドは既にテーブルと椅子の準備を終え、椅子に座っていた。
     私はお椀と皿を並べ、向かいに腰掛けた。
    「ほう、いつもは塩焼きだけだったんだが、汁物か。」
     ヨドがズズっと汁を飲む。
     続いて具も口に入れる。
    「うまいっ!」
     私も食べる。
     ……ハグッ、ズズッ
    「美味しい!」
     骨でとった濃厚な出汁と野菜の酸味が効いて美味しい。
     お肉もしっかりとした味だけど、固くなく口の中でとろけていく。
     ヨドは美味しそうに一心不乱に食べている。
     キャベツもシャグシャグ食べている。
    「あんまり野菜食べないんだがこれ旨いな。」
    「いや、野菜は食べないとダメだよ。」
    「私は肉さえ食べれれば良いかな。」
     モグモグ食べながらヨドが少しめんどくさそうに言う。
    「ちゃんと美味しい野菜私が作るよ。」
    「コユキが作ってくれるのなら喜んで食うぞ。」
    「わかった。ちゃんとしっかり食べれるものを作る。」
     ……私がヨドの栄養管理担当か

     あっと言う間に食べ終わって、後片付けをしていた。
     ヨドは満足そうにベッドに横たわっている。
     ……生ゴミどうすればいいんだろう?
    「ヨド、骨とかどうすれば良いの?」
    「後で捨てに行くから置いといて。」
     少し面倒くさそうにヨドが言う。
    「教えてくれたら私が捨てに行くよ。」
    「わかった。一緒に行くぞ。」
     ヨドはまた少し面倒くさそうに返事をして、ムクリと立ち上がった。
    「ちょっと食べすぎたなぁ。」
     ヨドはお腹をさすって言う。
     廃棄する物を汚れた革袋に入れてねぐらを出る。
     ヨドと一緒に商店の集まる通りの外れまで来た。
     そこに金属製のかなり大きな建物があった。
    「ここがゴミ収集所になってる。」
     建物の外側に蓋があり、ヨドがそれを開けると「ギィー」と少し金属音が響いた。
     私はその中に汚れた革袋を放り込んだ。
     それを確認した後、ヨドが蓋を閉める。
     再び「ギィー」と鳴った。
    「この中に入れた物はどうなるの?」
    「私も知らん。燃やされるんじゃないか。」
    「ふぅん。」
     ふとヨドを見ると服に血が付いている。
     多分解体した時に着いた物だ。
    「ねぇ、ヨド。」
    「なんだ?」
    「ヨスミシにはお風呂無いの?」
    「ある……」
     ヨドにしてはなんだか歯切れが悪い。
    「じゃあ、お風呂行こうよ。」
    「いや、私は行かない。」
     ヨドは直ぐに拒否した。
    「なんで?結構汚れてるみたいだし、身体綺麗にしたくない?」
    「したくないこともないが……」
    ……?
    「熱いんだ。」
    「え?」
    「この集落はゴレドンが多いんだが、風呂もあいつら好みになっている。あいつら熱い湯が好きなんだ。私は熱いのは苦手だ。」
     ヨドが強い口調でそう言った。
     ……熱いのか
     私はどれくらい熱いか興味が出た。
    「じゃあ、私一人で行くよ。」
     そう言うと、珍しくヨドが沈黙した。
     ひと時置いてヨドが言う。
    「熱いぞ?」
    「うん、でもどれくらい熱いか確かめたい。」
    「わかった。そこまで言うのなら、行けばいい。風呂までは連れてってやる。」

     ヨドがゴミ捨て場からそんなに遠くない銭湯まで案内してくれた。
    「ここだ。外で待っててやるから行ってこい。」
    「え?ヨド帰ってていいよ。自分で帰るから。」
    「いや、気にせずゆっくり入ってこい。」
    「わかった。なるべく早めに出るよ。」
     そう言って銭湯の中に入ると、番台に女性のゴレドンが座っていた。
    「いらっしゃい。三ディルね。」
     私の頭の上から声をかけてくる。
     お金を払って女性用の脱衣所に入った。
     ……ゴレドンばかりだ!
     私はちゃっちゃと衣類を脱いで、つい身体をひそめて洗い場に入った。
     ムワッとした熱気が身体を包んだ。
     やはりここもゴレドンばかりだった。
     浴槽に近づいてしゃがむ。
     そっと手を入れてみる。
     ……熱っ!!!
     ……なにこれ?熱湯じゃん!
     しかし周りのゴレドンたちは平気で浴槽に浸かっている。
     お湯からのすさまじい熱気を感じる。
     少し水で薄めないと入れない。
     周りを見渡す。
     しかし、水なんてどこにも無い。
     ……マジで!?
     ……無理、やっぱり無理
     浴槽近くの熱気で少し頭がクラクラしてきた。
     ……やばい、出よう!
     足に力を入れて立ち上がる。
     ぐらりと視界が揺れた。
     ……あ……
     視界が急激に暗くなっていく。私はその場に倒れて、そのまま意識を失ってしまった。

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    (コユキ、まだ出てこないな。もしかして、案外熱い湯が平気だったか。)
     銭湯の外で壁に背を預けながら、ヨドはそんなことを考えていた。
     しかし、なんだか風呂の中が急に騒がしくなる。
     嫌な予感がする……
     「おい、ヒュマの嬢ちゃんが倒れたぞ!」という大きな声が脱衣所の向こうから聞こえた瞬間、ヨドの身体は勝手に動いていた。
     番台をすり抜け、躊躇なく女性の脱衣所へと踏み込む。
     ゴレドンの女性達が騒いでる。
     そこには真っ赤になって倒れている裸体のコユキの姿があった。
    「コユキっ!」
     慌てて駆け寄る。
    「女将、水を、それと冷やした布をくれっ!」
     ゴレドンの女将がドタドタと走って行って、一分も経たないうちにドタドタと戻ってきて、水と布をヨドに手渡した。
     コユキの頭に冷やした布を被せる。
     水を口に少しだけ含ませる。
     三分ほど経っただろうか。
     コユキが目を覚ます。
    「あ……ヨド……」
     ヨドが私を見つめていた。
     最初険しかったヨドの表情が少し柔らかくなった。
    「よかった。」
    「そうだ……私お風呂の中で倒れちゃって……。ヨド、ごめんなさい。」
    「いいんだ。」
     ヨドの表情が少し苦しそうだった。
     しばらくして私は落ち着き、服を着て、介抱しようとしてくれたゴレドンたちと女将に頭を下げた。
     ヨドも一緒に頭を下げてくれた。
    「あまりヒュマの人こないのに、あたしも気づくべきだったよ。すまんねぇ。」
    「いえいえ、私が入ってみたかったんです。すみません。」
    「しかし、ヒュマってのはあれで熱いのかねぇ。もう少し温度を上げようかと思ってたんだけどねぇ。」
     それを聞いてゾッとしてしまった。
     ヨドも少し顔が強張っている。
     私は深々と頭を下げてから、ヨドと一緒に立ち去った。
    「どうだった、ゴレドン風呂は?」
    「無理だった。もう二度とあそこには行かないよ。」
    「あぁ、そうしてくれると助かる。」
     ヨドが少しため息をついた。
     ヨドが言ったことは本当だった。
     私は二度と無理はしないと心に決め、ヨドと並んでねぐらへ戻った。 


     
     
    Age M'fin(Music Final Project) ピアノ弾き。作曲、DTM、小説、お菓子作り。 感動したものを何かの形にしたくて創作しています。 趣味:ゲーム、マンガ、音楽鑑賞、創作全般

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