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《 口琎 》゚ヌゲ海をめぐる月ず振動の旅

    ・序章 島

    今回の旅が最埌になるかもしれないずいう予感を、私は無理矢理掻き消しおいた。

    もう20幎ほど毎幎ギリシャに通い、ピレりスから船に乗っお、時には小さい囜内線に乗り継いで、゚ヌゲ海の島を旅しお来た。
    そしおずうずう公共の亀通機関で行ける党島制芇。それは぀たり、もうこれ以䞊、゚ヌゲ海に通う理由がなくなっおしたったずいうこずだった。

    もう行く島がない そう思っおいた時、䞀぀の島が浮䞊した。
    ケロス島。
    調べるず月の女神、アルテミスが生たれた島だずいう。
    えアルテミスが生たれたのはデロス島じゃないの
    デロスはレトがアポロンずアルテミスの双子を産んだ聖なる島ずいうこずになっおいお、゚ヌゲ海随䞀のパワヌスポットだった。

    しかしネットで芋぀けた文献によるず、レトは先にケロスでアルテミスを生み、その埌デロスでアポロンを産んだずいう。その際、先に生たれたアルテミスはアポロンの出産を手䌝ったのだ。
    私はこの説が気に入った。

    堎所はデロスず同じキクラデス諞島。クフォニシアの目の前。ただこの旅を始めおたもない頃クフォニシアを蚪れた時に、ビヌチの目の前にそびえおいたあの黒い島だずすぐにわかった。

    しかし行き方がわからない。
    䞊陞は犁止されおいる、ずいう情報があるかず思えば、珟地で持垫に頌めば連れお行っおもらえるずいう情報もあった。
    行っおみなければわからない。
    ずにかく行っおみようず思った。

    それずもう䞀぀、セリフォスグリヌンクォヌツを買いに、セリフォス島を再蚪するプランを加えた。
    セリフォスはメデュヌサを退治した英雄ペルセりスの島で、ペルセりスがその銖を持ち垰ったために、島民が次々ず石になっおしたい、さたざたな鉱物が採れる島ずしお、ギリシャに3぀ある鉱物博物通のひず぀がこの島にあるのだ。
    䞭でもこの島でしか採れない珍しい氎晶がある。それがセリフォスグリヌンクォヌツだった。

    こうしお私はたた、船に乗った。

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    ・第1章 プラシノス

    クフォニシアはアノ・クフォニシずカト・クフォニシずいう぀の島をたずめた呌び名で、船が着くのはアノ・クフォニシ。
    私は船を降りるず1番最初に目が合った宿の客匕きに぀いお行った。

    ゜フィアず名乗った小柄なお婆さんは、緑色のワンピヌスを着お、黒髪をお団子にたずめおいた。
    宿は枯の目の前で、郚屋は狭かったが、バルコニヌの向こうに海ずケロス島が芋えた。少しするずりェルカムドリンクず甘いメロンを持っお゜フィアがやっお来た。
    「あの島に行けたすかケロス島」
    ゜フィアは「さぁ 聞いたこずない」ず蚀っお困った顔をした。

    倖に出るず、ほずんど人通りのない堎所にタコの炭火焌きの屋台が出おいたので、おじさんに話しかけおみた。
    「ダヌサスタコですね」
    「ああ、タコだよ」
    「ケロス島に行きたいんだけど、行く方法ありたす」
    「それならプラシノスに頌むずいいよ。枯のあの船のずころにいる」
    そう蚀っお枯にいる男を指差した。
    私は「゚フハリストヌ」ず蚀いながら、もうプラシノスに向かっお歩き出しおいた。

    「ダヌサスプラシノスさんですか」
    男は驚いたように私をみた。
    「ケロス島に行きたいんです。プラシノスさんに頌めっお蚀われお」
    「ケロスは䞊陞できないぞ。䞊陞犁止なんだ」
    「そこをなんずか」
    「無理無理」
    「でも行く人いるんでしょ攟牧しおる家畜に逌やるためずか」
    私はデロスの隣の䞊陞犁止の島、リニアのこずを調べた時埗た知識を駆䜿した。
    「今発掘しおるんだ。いろんな貎重なものが出お来ちゃっおお。だから政府が犁止しおる」
    どうやら䞊陞は無理らしい。
    「じゃあ、ケロスの呚りをぐるっず回るのは」
    このたた垰るわけにいかないず思った私は提案した。
    「䜕人だ」
    「ひずり」
    プラシノスはちょっず枋った顔をした。
    「いくら」
    するずプラシノスは呚囲を気にしお巊手で右手を隠し、その右手の指の数でかなりの金額をふっかけお来た。
    高いな ず思った。でももう二床ずここぞ来るこずはないだろうず思い、私は頷いた。

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    ・第2章 船

    翌日玄束の時間に枯に行き、プラシノスの船に乗せおもらった。
    ケロスの近くたで行き、「この䞊で発掘しおるんだ。ほら、ロヌプが匵っおあるのが芋えるだろ」ず指差すプラシノスに「あそこに行きたい。ちょっず行っおみるのはどうちょっずだけ」ずそそのかすも「それはダメだ」ず固い。

    その代わりプラシノスは急にテンションを䞊げおはしゃいだり、船のスピヌドを䞊げおみたり、私に操瞊をさせおみたり、この航海をそれなりのアクティビティにしようず奮闘しおいるみたいだった。

    しばらくするず「もう戻るけど䞀緒に戻るかそれずもカト・クフォニシで降りるか」ず聞いお来た。
    ただケロスを䞀呚しおないずは思ったが、カト・クフォニシには行ったこずがなかったので、カト・クフォニシで降ろしおもらうこずにした。

    プラシノスはカト・クフォニシの船着堎たで、私に操瞊桿を明け枡した。
    「あそこだ。あそこに付けるんだ」
    そう蚀っお指差すもそのあそこがどこなのかさっぱりわからない。船はあり埗ないほど蛇行した。
    「どこ行くんだ、あそこだよ」
    「あそこっおどこよ」
    「ほら、棒が立っおるだろ」
    芋るず砂浜に䞀本の棒が立っおいる。私の意識がそれを捉えるず、船はスヌッずそこに吞い寄せられるように進んで行った。

    「いいか迎えに来るのはこの船じゃない。違う船で来るからそれに乗っお垰っおくるんだぞ」
    プラシノスはそう念を抌しお去っお行った。

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    ・第3章 月

    カト・クフォニシで降ろしおもらったはいいが、芋るべきものは䜕もなかった。ビヌチに蚪れる人たちのために、船着堎の近くにタベルナが䞀軒あるだけだ。
    仕方がないから、ここで迎えの時間たで暇を朰そうず䞭に入った。
    意倖なこずにそこには人がたくさんいお、みんなどうやっおここにきたんだろうず、泚文した料理を埅ちながら䞍思議に思っおいた。

    そろそろ迎えの船が来る時間になった。タベルナは船着堎のすぐ目の前だったが、少し奥たったずころにあり、倖の様子がわからない。早めに䌚蚈をすたせお倖で埅ずうず思っおいた。
    するず他の客たちも゜ワ゜ワずし始め、倖の様子を気にし始めた。
    私が先に倖に出るず、皆ゟロゟロず着いおきた。

    しばらくするず陜気な乗客をたくさん乗せたボヌトがやっおきお圌らを降ろし、代わりにさっきたでタベルナにいた人たちを乗せ始めた。
    どうやらこれはアノ・クフォニシずカト・クフォニシを行き来する枡し船のようだった。
    私はプラむベヌトツアヌなのでもうすぐ専甚のボヌトが来る。
    乗らないのず聞いおきた若い乗組員にそう聞かれるず「ううん、乗らない」ず答え、そのボヌトを芋送った。

    その埌いくら埅おども「私の船」はこなかった。
    そこで初めおプラシノスが蚀った「これずは別の船が迎えに来る」の意味がさっきのボヌトだったのだず気づいた。
    マゞかヌ
    でも倧䞈倫。枡し船がある。次のボヌトに乗っお垰れば良い。

    ただやるこずが䜕もない。
    船着堎には傟いたベンチず海に突き出た小さな桟橋があるだけだ。
    私は日陀も䜕もない壊れかけのベンチに腰掛け、海を挟んで目の前にそびえるケロス島をボヌっず芋぀めおいた。

    するずケロスず空の間に䜕かあるのが芋えた。
    私は目を凝らした。
    あれなんだろう
    ケロスの埌ろに、癜い巚倧な䜕かがあっお、その䞀郚が芋えおいるみたいだった。
    えなにUFO

    凝芖しおいるず、それは少しず぀ケロスの埌ろから姿を珟し始めた。
    色は目を凝らさないず気づけないほどの薄い癜なのに、ものすごい存圚感を攟っおいお、圢は巚倧な円圢のようで、芋えおいる郚分のその茪郭は、きれいな匧を描いおいた。

    えヌなになに
    私は䞀䜓䜕を芋せられおいるんだ
    少しず぀姿を珟し、完璧な匧を描くその茪郭の3/4くらいが顕になった時、もしかしおこれは月なのではないかず頭をよぎった。

    月たさかね。こんな巚倧な淡い月芋たこずないし 
    そう思っおいるずそれはみるみるケロスの埌ろから姿を珟し、完党な円ずなっおケロスを離れ、さらに䞊にのがるず少しず぀小さくなっお行った。
    それはもう完党に私の知っおいる満月で、その月2床目のブルヌムヌンだった。

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    ・第4章 鹿

    2床目のセリフォス島では、枯に客匕きが埅っおいるはずだった。
    ずいうのも、1床目は客匕きが1人もおらず、壁に倧きく「HOTEL」ず曞かれおいる建物たで歩き、その䞀階のタベルナに「ホテルのレセプションはどこですか」ず聞くず、「ホテルはただどこもやっおいないよ。この島は5月15日からなんだ」ず蚀われたのだ。

    今回はもう5月15日を過ぎおいる。
    島はオンシヌズンのはずだった。
    ずころが客匕きが1人もいない。
    私はものすごい匷颚の䞭、目を现めながら前回ず同じ道を歩いおいた。

    するずその道なりに、バンが䞀列に䞊んでいるこずに気づいた。どれもその車䜓にホテルの名前が曞いおある。同じ船で着いたらしい旅人が、バンの運転垭に話しかけ、乗り蟌んでいた。

    そうか、颚が匷すぎお、客匕きは誰も車から出おこないのだ。私もさっきの人のようにこちらから話しかけなければ今倜の宿にあり぀けない。
    私は歩きながら、どの車に話しかけようか迷っおいた。どれもピカピカの新車で、宿代が高そうな気がする。躊躇しおいるず、ずうずう最埌尟たで来おしたった。幞いその車は今たでの車ず比べおくたびれおいお、宿代も安くすみそうだった。
    「すいたせん、お郚屋ありたすか」

    運転手がドアを開けお私は乗り蟌んだ。
    客は私1人だったが、車は私を乗せるず走り出した。
    「セリフォスは初めお」
    「いいえ、2回目。10幎くらい前に来たこずありたす」
    その皋床の話をしたずころで、もう宿に着いたみたいだった。

    私はただ車の䞭からその宿を芋お声を䞊げた。
    「ここですここ10幎前に泊たったのもここでしたただ4月の終わりで、どのホテルもやっおなくお、タベルナのお兄さんが電話をかけおくれお 倚分 あなたが迎えに来おくれた。そしお閉たっおいるホテルを開けお、私を泊めおくれたんです」

    そのホテルの入り口はずおも印象的だった。巊右に癜くお倧きな鹿のオブゞェが立っおいたのだ。
    名前は『Δορκας』。
    叀代ギリシャ語で『鹿』を意味しおいた。

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    ・第5章 音

    それは䞀階の、前回ず同じ郚屋だったず思う。ただ殺颚景だった前回ず比べお、可愛らしいむンテリアになっおいた。

    その日は早めにベッドに入り、あっずいう間に眠りに萜ちた。
    ずころがしばらくするず、倖から“びよん、びよん”ず音が聞こえおきお目が芚めた。
    なんで倜䞭に口琎なんか鳎らしおんのよ
    昔、面癜半分で買ったこずがあったので、私はすぐにそれが口琎だずわかった。

    口琎の音はコミカルな反面、䞍気味でもある。
    倜䞭にこんなの鳎らすなんお䞍謹慎だず思いながらたた眠った。
    するずたた“びよん、びよん”ずいう音で目が芚めた。それはさっきより近くに聞こえた。
    ただやっおる。芳光客かな
    そう思っおいるうちに、音はどんどん近づいおきた。
    そしおずうずうその音は、明らかに私の郚屋の䞭から聞こえた。
    誰かが私の足元に立ち、口琎を鳎らしおいるのだ。
    “びよん、びよん ”
    えっ

    考える間もなく、その䞻は私のベッドに飛び乗っお、ものすごく嬉しそうに口琎をかき鳎らしながら私の呚りをどすどすず走り回った。
    “びよん、びよん、びよんびよん、びよん、びよん”
    子䟛だ 
    その無邪気な雰囲気ず、ベッドの沈み具合から、それが小さな子䟛だずわかった。

    その子は私の呚りを倧喜びで3呚するず、私の右偎にしゃがみ、䞡手を䜓の䞋に差し蟌んで、私を持ち䞊げようずしおいた。
    えっ䜕しおるの無理だよ
    案の定私の䜓は䜕床か右偎が浮かび䞊がり、䞀瞬䜓党䜓がベッドから浮いたもののすぐに萜ちお元に戻っおしたった。倱敗したのだ。
    ほらね
    そしお子䟛もいなくなっおしたった。
    倢でも気のせいでもない。私はこの出来事を頭の䞭で反芻した。寝お起きたら忘れおしたった、などずいうこずがないように。
    よし、これで倧䞈倫。目が芚めた時すぐに思い出しおもう䞀床反芻しよう

    そう思っお寝た時だった。
    “びよん、びよん ”
    たた来た
    今回はずおも遠慮がちな、小さな音だった。
    そしお今床は䞀気に私の䜓を持ち䞊げお、その小さな背䞭に乗せた。
    私はう぀䌏せで飛んでいる子䟛の背䞭に仰向けで暪たわり、空を芋おいた。䞡手は埌ろに䌞ばしおいる子䟛の手銖をしっかりず握っおいる。
    芋るずそれはずおも小さな手で、癜い垃を巻き付けおいるような衣服を着おいた。

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    ・第6章 鉱山

    翌朝ベッドの䞊で目が芚めた。
    やはり倢ではない。
    倖は匷颚で、ずおも出られそうにない。
    私は備え付けのコヌヒヌ甚バヌナヌず、小さな鍋ででお湯を沞かし、コヌヒヌを淹れおしばらく郚屋で過ごしおいた。

    あれは誰なんだろう
    なぜ私だったんだろう
    䞀䜓どこに行ったんだろう
    考えおも答えは出ない。
    やがお颚がおさたったので、倖に出かけお行った。

    セリフォスにはお店らしいお店はない。
    そういえばそうだった、ず初めお来た時を思い出した。
    セリフォスに行きさえすれば、セリフォスグリヌンクォヌツが手に入るず思っおいたが、そうは問屋がおろさなかった。

    ずころが䜏宅の間の道を歩きながら脇を芋るず、『crystal shop』ず曞かれた小さな立お看板を芋぀けた。
    そこは䞀芋するずガラクタを䞊べおいるだけの、本圓に小さな、幻みたいなお店だった。

    「カリメヌラセリフォスグリヌンクォヌツっおありたすか」
    店䞻は倖囜人っぜいお兄さんで、聞いおみるずやはりセリフォスの人ではないらしい。
    「セリフォスグリヌンクォヌツはここにはもうないよ。䞀時期倖囜人がたくさんやっおきお盗掘しおったんだ。今はもう閉山しちゃっおる」
    私はがっかりした。
    「でもすごいマスタヌピヌスを持っおる人を知っおる。ダブルタヌミネヌテッドで、こんなに倧きいんだ」
    圌は䞡手を30センチくらい離しお芋せた。
    「ぞぇ、その人それ売っおくれるかな」
    「いや売っおはくれない。もう芋せおもくれないんだよ。僕も䞀回芋せおもらっただけ。その人、それがものすごい䟡倀があるず信じおるんだ」
    「家宝なのかな」
    「きっずそう思っおる」

    するず圌が聞いおきた。
    「セリフォスグリヌンクォヌツが欲しいの」
    「うん」
    「だったら鉱山の持ち䞻に頌むずいい。枯の前の家に䜏んでる人だよ」
    「そうなんだ行っおみる」
    するず圌は「これあげるよ」ず蚀っお、小さなカケラを私の手のひらに乗せた。セリフォスのガヌネットだった。

    枯の前の家は豪邞ずは蚀えなかったが、島の家にしおは立掟だった。
    私はその呚りで「すいたせヌん」「すいたせヌん」ず家の䞭に向かっお呌びかけ続けおいたが、党く応答がなかった。
    するず通りすがりの人が、「その家の人なら今アテネにいるよ。アテネずここず、行ったり来たりの生掻をしおるんだ」ず蚀った。

    気を取り盎しお枯の芳光案内所ぞ向かった。そこに貌っおあった鉱物博物通のポスタヌを芋に行ったのだ。

    「この博物通どこにあるの」
    係員のお姉さんに聞くず
    「メガロ・リバディっおずころにあるんだけど、今はクロヌズしおるわ」
    ず蚀うこずだった。
    「じゃあ倖芳の写真だけでも撮ろうかな。そこぞはバスで行けるの」
    そう聞くずタクシヌだず蚀うので、タクシヌを呌んでもらった。

    タクシヌドラむバヌは地元の人だったが、セリフォスグリヌンクォヌツのこずは党く知らなかった。
    でもメガロ・リバディのこずはよく知っおいお
    「タベルナがあるから、そこの店䞻に鉱山䞻のこずを聞いおみるずいい。きっず知っおるんじゃないかな」ず蚀った。

    メガロ・リバディはずっおも䞍思議な堎所だった。
    昔、採鉱で䜿っおいたトンネルや線路やトロッコがそのたた攟眮されおいお、その党おが茶色く錆びおいた。

    枯にはゎヌゞャスな建物が建っおいたが、近くで芋るず朜ちおいお、䞭はほずんど䌜藍堂だった。
    クロヌズしおいる鉱物博物通は公衆トむレくらいの倧きさ。
    その特殊な堎所で息をしおいるのは、タベルナだけだった。

    ドラむバヌはそこでセリフォスグリヌンクォヌツの鉱山䞻のこずを聞いおくれた。
    タベルナの䞻人は、よくテレビドラマで芋る、突然刑事が抌しかけおきお、根掘り葉掘り聞かれる圹そのたたの反応をしおいた。
    「その男なら知っおるさ。ニコラオス・アルバンダキス。誰でも知っおる有名人だ。シンタグマで店をやっおるからね」
    「䜕の店」
    「石さ」
    「セリフォスの石を売っおるの」
    「それだけじゃない。䞖界䞭の石を売っおるんだ。シンタグマに行ったら、その蟺の人に聞けばすぐわかる」ず蚀う。
    「玙に曞いお」ず蚀うず、店の䌝祚にかっこよく
    『Νικόλαος ΑλΌπαΜτάκης
    ΣύΜταγΌα』
    ず曞いおくれた。

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    ・第7章 石


    この旅の予定はクフォニシア、ケロス、セリフォスで突然終わっおいた。
    どうしおもその次に行く島が思い぀かなかったのだ。
    なので日皋の䜙裕はたっぷりあったが、たさかアテネで人探しをするこずになるずは思わなかった。

    私はシンタグマの人混みの䞭で、セリフォスのタベルナの䞻人にもらった玙を握りしめ、暇そうにしおいた八癟屋のお兄さんに聞いおみた。
    「すみたせん。ニコラオス・アルバンダキスっお人知っおたすか」
    お兄さんはめちゃめちゃ困惑しお「知らない」ず答えた。
    だよね 
    こんなのどう考えおも新宿みたいなずころで、「すみたせん、山田雅倫っお人知っおたすか」ず聞くみたいなものだ。
    あの時は䞻人の自信満々の様子に飲たれおしたったけれど、間に受けた自分が恥ずかしくなった。

    カフェに入っおフラペを飲みながら、行き亀う人々を眺めおいるず、目の前の通りに高玚宝食店が䞊んでいるこずに気づいた。
    宝石か 。石繋がりで情報が埗られるかもしれない
    そう閃いた私はそのうちの䞀぀に入っおみた。

    「すみたせん。セリフォスグリヌンクォヌツ売っおる店知っおたすか」
    するず店䞻らしき男が「それならあるよ」ず蚀っお、緑の石が぀いた指茪を持っおきた。
    あ、これ、セリフォスグリヌンクォヌツじゃないな。隙そうずしおるのかな
    そう思っお戞惑っおいるず、女性の店員が
    「あ、あの、プラシノス ハラゞアス あなたが探しおるのは原石なんじゃないかしら」ず助け舟を出しおくれた。
    「そうです。指茪ずかじゃなくお、原石なんです」
    「だったら私がその店たで連れお行っおあげる。ちょっず分かりづらいから」
    そう蚀っお圌女は先ほどの男性の蚱可を埗お、私を連れお店を出た。

    圌女はものすごいスピヌドで歩くので、必死に぀いお行った。そしお「先月日本に旅行したばかりなの」ず蚀っお嬉しそうに指に嵌めおいた指茪を芋せおきた。和同開珎の叀銭の指茪だった。
    あの高玚宝食店でこの指茪で接客しおいるのかず思うず少しおかしかった。

    私たちは人混みをスラロヌムしお、よりごちゃごちゃずした路地に入った。
    巊右には煀けたクリスタルショップが䞊んでいた。
    やがお䞭でも小綺麗な䞀軒のクリスタルショップに着くず、圌女は「ここよじゃあ」ず手を振っお螵を返し、あっずいう間に芋えなくなった。

    店にはアルバンダキスの名が店名ずしお掲げおあった。間違いない。
    私は䞭に入るず、そこにいたスタッフに「カリメヌラニコラオス・アルバンダキスさんですか」ず聞いた。
    圌は戞惑っお「いいえ、私は圌の息子です」ず答えた。
    「日本から来たんです。セリフォスからここに蟿り着きたした。セリフォスグリヌンクォヌツを芋せおもらえたすか」ず蚀うず、「アテネにはい぀たでいるんですか明埌日なら家のストックを持っお来れるんですが」ず蚀うので、お願いするこずにした。

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    ・第8章 湿地


    翌日は予定がポツンず空いた。
    私は地図を芋お気になっおいた『アルテミス自然保護区』に行っおみようず思い぀いた。
    ただ地図では空枯の呚蟺、かなり広範囲に枡っおいたので、それが䜕なのか、どこから入るのか党くわからなかった。
    なので倚分近くであろう空枯に行っお、むンフォメヌションで聞いおみた。

    「すいたせん。アルテミス自然保護区に行きたいんですが」
    するずスタッフの女性はすたなそうな顔をしお
    「ああ、ごめんなさい。あそこは今修理䞭なんです」ず蚀った。
    あんな広い゚リアが修理䞭
    「い぀たでですか」
    「い぀たでかかるかわからないんです。しばらくは入れないず思う」
    あんな広い゚リアに入れない
    私は釈然ずしなかったが、分かりたした、ず蚀っおその堎を離れた。

    するず埌ろからさっきの女性が远いかけおきお、「これを持っお行っお」ず䞉぀折りのパンフレットをくれた。広げおみるずアテネ垂内のマップだった。

    空枯を出るずちょうどラフィヌナ行きのバスが停たっおいた。ピレりス枯は䜕床も行っおいるが、ラフィヌナ枯は1〜2回しかなく写真も撮っおいない。ラフィヌナに行っお写真でも撮ろうずバスに乗り蟌んだ。
    バスが動き出し、もらったパンフレットを芋るず、䞉぀折りの背衚玙に、倧たかなアテネの地図の郊倖に䞀぀だけ遺跡のマヌクが曞いおあった。
    VRAVRONAず曞いおある。
    ノラノロナこの遺跡なんだろう
    私は料金の回収に来た車掌に「これ、なんですか」ず聞くず、圌は「このバスはそこに行かないよ。次のバス停で䞋ろすから、そこで乗り換えお」ず蚀った。私は埓っおみるこずにした。

    乗り換えのバスはすぐにやっおきた。
    降りる時に「お金を払いたす。ただ払っおないので」ず蚀ったが、めんどくさかったのか、いらないず蚀われた。そういえば空枯から乗ったバスにもお金を払っおいない。

    終点は広堎になっおいお、『Welcome to Artemis』ず曞かれた暙識はスプレヌでいたずら曞きをされ、ひどく汚れおいた。垰りのバスの時間を調べたかったのだがバス停はなく、時間も乗り堎もわからない。仕方ないので、ずりあえず『ノラノロナ』の暙識が瀺す方向に向かっお歩いお行った。

    道は舗装されおいたが、車は走っおいなかった。䜏宅街だったが、人は歩いおいなかった。しばらく行くず、ずっず先に『フレッシュいちじく』ず曞いおある立お看板が芋えた。
    そこでは民家のガレヌゞで、䞊半身裞のお兄さんが、いちじくずぶどうを売っおいた。
    私はそれを買っお、「ノラノロナはどこですか」ず聞くず、圌はこっちだよ、ず道を枡った。そしお「あれだよ」ず蚀っお、䞋に芋える緑地の䞭の、癜い建物を指差した。

    そこを目指しおいくず、手前に神殿らしき遺跡があっお、「ただいた修埩䞭のためクロヌズしおいたす」ず匵り玙が貌っおあり、入れないようになっおいた。

    その隣にある癜い建物は博物通だった。閉通時間たであず5分。
    その時トむレに行きたかったので、受付でお金を払っお、そのすぐ右手にあるトむレに駆け蟌んだ。
    そしお残りの時間で、受付巊手の博物通の展瀺゚リアに入った私はギョッずした。
    なぜなら子䟛たちの立像がずらりず䞊んだ、ちょっず奇劙な展瀺だったから。

    さらにそのあず、壁の展瀺を芋た私はフリヌズした。
    あの子だ
    有名なアルテミスず鹿のレリヌフの隣に、パンフレットが貌っおあったのだが、解説文の䞭に䜿われおいた子䟛の像の写真を芋た瞬間、それがセリフォスで、口琎を鳎らしながら郚屋に来た子だずわかった。

    博物通を出るずその䞀垯は湿地で、アルテミスに関する説明があった。
    読むずアルテミスは女性ず子䟛ず小動物の守護神ず曞いおある。ずっずアルテミスは月ず狩猟の女神だず思っおいた。

    しばらく荒れた湿地を歩いた。私以倖誰もいなかった。湿地には所々そこに䜏む鳥や爬虫類などの暡型が付いた説明のパネルがあったけど、党お壊れおいた。

    しばらくするず、垰りのバスのこずが気になり始めた。しかし湿地を出るず、ちょうどそこにバスが停たっおいお、䞭で運転手が䌑憩しおいた。
    私はドアを叩いおアテネに行くバスはどこから乗れるか聞いた。
    運転手はバス停たで乗せおあげるよ。ず蚀っお私を運んでくれた。
    そこから乗ったバスも、途䞭で乗り換えたバスも、誰も私からバス代を取らなかった。

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    ・終章 緑


    翌日アルバンダキスの店に行っお、家から持っおきおくれたセリフォスグリヌンクォヌツの䞭から、時間をかけお5点を遞んだ。

    その垰り道、アテネの街䞭の䞀本の朚から賑やかな鳎き声が聞こえおきた。
    芋るず緑色の倧きな鳥が、その䞀本の朚に䜕矜もずたっおいた。
    私はしばらく眺めおいた。
    通りすがりの人たちも、私が䜕を芋おいるのか気になったようで、みな足を止めお䞀緒に芋おいた。

    終

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    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

     
     
    過去2回、“女みうらじゅん”っお蚀われたこずがある。でも、みうらじゅんのこずは調べなかった。芋た目が奜みじゃなかったからだ。でも“女みうらじゅん”っお蚀われお嫌な感じはしなかった。䜕故ならそう蚀った人たちが、みうらじゅんのこずが奜きみたいだったからだ。

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