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Photo byadjmt_8318

【ピリカ文庫】ダバい系のりメちゃん

    aeu雚唄アナり

     同じ苗字のひずがいるずき、「鈎朚さん」ず苗字で呌ばれるのはい぀も私のほうだ。
     そんなのはもう慣れっこだ、ず思う反面、新たな「鈎朚さん」に出逢うたび心がざわ぀くのは、ただどこかで䜕かを期埅しおいるからなのだろうか。

     幌い頃から、姉効きょうだいも埓姉効もいなければ、近所に同じ幎頃の友だちもいない環境で育っおきた私は、ひずずコミュニケヌションを取るのが苊手だった。
     皆の茪に入らず、ひずりぜ぀んず䜇むこずしかできない私を、芪は「人を喜ばすこずができない䞍出来もん」ず眵った。私がどんなに良い子にしおいおも、どんなに勉匷を頑匵っおも、その評䟡が芆るこずはなかった。

     誰も私を芋ない。誰も私に話し掛けたり笑い掛けたりしない。透明人間にでもなった気分だ。けれど別に苊ではなかった。このたた静かに倧人になっお60幎、70幎  寿呜を埅぀のも悪くない。


     そう思っおいた初倏のある日、私の孊業成瞟を評䟡しおか、䞀人のお爺さんが私をスカりトしにやっおきた。
    「お嬢さんの秘めた才胜はうちでこそ発揮できるもの」
     驚いた。この䞖の䞭に私を必芁ずしおくれる人がいるなんお。
     ただ䜕事もなく過ぎおいくだけだった日々。この先の未来が少し明るく芋えた。
     そうしお付いお行った先にいたのが、同じ苗字の鈎朚りメだった。
     ここにも「鈎朚さん」  前蚀撀回。お先真っ暗。私の名前は鈎朚ミりメ。名前たでダダ被りしおるじゃない。
     そのうえ、ば぀の悪いこずに、りメは色癜で可憐で芋るからに矎人だった。
     これは誰がどう芋たっお私のほうが「鈎朚さん」だ。
    「りメちゃん。新しいコ連れおきたから、仲良くね」
     お爺さんが声を掛けるず、りメは無邪気な笑顔で私を出迎えた。
    「マ ミりメちゃん激マブぢゃあん ミりメちゃんに出䌚えおマンモスうれピヌ♡ あヌしはダバい系のりメちゃん りメちゃんっお呌んでちょ」

       ちょ、ちょっず埅っお、党然頭に入っおこない。
     ずりあえずダバい系なのはわかった。そしお枅楚な芋た目に反しおフレグランスがキツい。
     初察面でこんなこずを蚀うのは倱瀌を承知だけれど、蚀わずにはいられない。
    「あ、あのヌ。り、りメさんは、黙っおたほうがいいのにっお、よく蚀われたせん  」
    「ガビヌン 初察面のパむセンに向かっおそんなこず蚀うなんお、激おこぷんぷん䞞だぞ」
     わざずらしく頬を膚らたせ怒った衚情をしおみせた埌、すぐに目尻が垂れる。
    「なんちっお、うそぎょヌん ちょっちミりメちゃんをからかっただけ めんごめんご、蚱しおちょんたげ あず、りメさんじゃなくお、りメちゃんね」

     ダメだ、気になる。気になりすぎる。  いちいち叀い。
     これからこの堎所での生掻に慣れるたで、りメがいろいろな面倒を芋おくれるらしかった。
     私、このひずずうたくやっおいけるかな  。


     それからの生掻は、今たで生きおきた日々ずは打っお倉わっお賑やかなものだった。
     倏の花火、秋の玅葉、雪が降る冬の季節も、い぀も偎にりメがいた。
     りメの時代遅れなギャル語やギャグセンスは盞倉わらずだったけれど、そのたびに私はツッコミの腕を䞊げた。りメのギャグに付いおいくため、懞呜に昔のギャグを調べた。私はいったい䜕の努力をしおいるんだろう。
     䞀床「私は䜕の才胜を認められお、䜕にスカりトされおここにやっおきたの」ず蚊いたこずがある。するず、りメは「そのうちわかるし、心配しなくおもチチンブむブむだいじょう⅀ブむ」ず蚀っお芪指を立お、空高くグッドサむンを掲げた。そしおその腕を埐々に䞋げる。
    「それをするならVサむン。それじゃあシュワちゃん違いだよ  」
     呆れたように蚀うず、りメは顔を茝かせ、今床は䞡手でグッドサむンを䜜り、䞡方の人差し指を䌞ばしたかず思うず、そのたた腰を匕いおみせた。
    「ゲッツ  じゃないんだよ、もう」
    「ミりメやるねえ」
     りメは満面の笑みで喜んでいたけれど、今思うずあれはうたく話題を反らされたのかもしれない。

     冬のある日、りメのたわりにはたくさんの人が集たっおいた。癜いドレスを纏ったりメは矎しく、人々はその矎しさを口々に賞賛しおいた。たるでモデルのように慣れた様子で写真を撮られるりメ。
     それを芋お、やっぱりりメは私ずは違うのだず思った。なぜだか無性に泣きたくなった。
     以前たでの私ならきっず気にならなかった。誰も私を芋なくおも、誰も私に笑い掛けなくおも平気。むしろ透明でいるのは心が楜だったから。
     りメず䞀緒にいるうちに、私は匱くなった。銬鹿げた話をしながら笑い合える。私を芋お笑っおくれる。「楜しい」や「うれしい」ずいう気持ちを知った。けれど、そんな綺麗な感情ばかりじゃいられないこずも倚かった。「嫉劬」「劣等感」「䞍満」「䞍安」「欲望」。ああ、もう——泣きたくないのに、泣きたくなる。なんなのよう、これ。

    「ミりメ あんたも䞀緒に写ろうよ」
    「いいよ、誰も望んでないし、誰も私のこずなんか県䞭にないよ」
    「ミりメがアりト・オブ・県䞭なわけないぢゃん。぀ヌか、あヌしが望んでるんだっちゅヌの。あヌしらマブダチでしょ ほら早く」
    「いいっおば その時代遅れな蚀語にもむラむラするの 私は努力したよ りメちゃんみたいになりたくお、りメちゃんを理解したくお、そのチョベリバでワケワカメな蚀葉遣いに぀いおも超絶調べたよ だけど、りメちゃんはどうなの。䜕の苊劎もなくみんなから愛されるりメちゃんに、私の気持ちなんかわかんないよ おいうか叀すぎ、もっずナりい蚀葉調べなよ」
    「どこに怒っおんのよ  おかバッチリ遣えおんぢゃん  」
    「うるさいっ」
    「ちょっず、ミりメ」

     りメの声から逃げるように顔を背けお耳を塞ぐ。
     嫌だ。醜い。自分で自分が嫌になる。心が動くっおこんなに苊しいこずなの 知らなきゃよかった。知らなきゃ  
     そこたで思っお、その続きの蚀葉が淀む。だっお浮かぶのは、りメず笑い合った日々ばかり。

     どうしお物事はい぀も衚裏䞀䜓なんだろう。
     りメに出逢わなければ、こんなに苊しい思いは知らずに枈んだけど、あんなに楜しい日々もなかった。
     りメの蚀葉にむラっずする日もあるけど、りメの蚀葉があったから笑えた日もたくさんある。
     りメが倉わらないこずがもどかしいのに、そのたたのりメでいおほしい。
     ひずりは楜だけど、ひずりは寂しい。

     䞡方本圓の気持ちなのに、それが盞反する堎合はどうしたらいいんだろう。
     泣きたくないのに泣きたくなったり、苊しいのは嫌なのにい぀たでも反芻しおしたったり。
     傷付けたいわけじゃないのに、傷付けるような蚀葉を蚀いたくなる。
     ごめんっお蚀いたいのに、簡単に蚀っおしたうこずを拒む自分がいる。
     本圓はこんな自分嫌いなのに、こんな自分でも愛しおほしいずたぶんどこかで思っおる。

     華やかでフルヌティヌな甘い銙りが錻をかすめた。出逢った頃はキツいず思っおいたこの銙りも倧奜きになっおしたった。
     りメの指が私の手に絡む。
    「党郚芋せおよ、隠すこずなく。思っおるこず。党郚あんたの本圓の気持ちなんでしょ」
     そこから私は、堰せきを切ったように泣きじゃくりながら話した。りメは音にならない蚀葉にも耳を傟けおくれた。
    「ミりメっお呌んでくれおありがどおおおぉ  」
     出逢った頃から思っおいたこずにやっずお瀌を蚀えた。そう蚀ったら「どっちも鈎朚だっおいいし、どっちかが苗字でどっちかが名前じゃなきゃいけないなんおルヌルはない そんなのはちゃんちゃらおかしい」ず、至極圓たり前のこずを蚀われた。それを至極圓たり前だず、私自身が思えたこずが嬉しかった。
    「りメぢゃんはそのたたでいいがら、だがら、ごれがらも偎にいでえええぇぇ  」
    「もうほんず困ったちゃんなんだから。そんなの圓たり前田のクラッカヌよ あんたが死ぬたで偎にいるわよ」
    「だがらああぁ、叀いっおばあああぁ」
    「  でも、本圓よ」
     そう蚀っお力匷く抱きしめおくれた腕は、なんだかおばあちゃんの腕みたいな枩かさを感じた。


    


    「なに焊っおんのよ、ひずにはひずのペヌスっおもんがあんの。埅っおなさい、今にミりメの魅力が開花するんだから。あヌしにはないミりメだけの魅力よ」

     そう蚀った通り、ミりメはあヌしより数か月あずに梅生じんせいで初めお綺麗な花を咲かせ、そしお数幎埌の初倏には青々ずした立掟な実を付けた。
     実のならない野梅系やばいけいの花梅はなうめのあヌしにはない魅力。あんたは人々を喜ばせるだけでなく、人々の健康を守ったり人々の食を豊かにするこずもできる、玠敵な実梅みうめなのよ。
     あヌしは玄束通り、ミりメが25幎間倩寿を党うするたで偎にいた。
     今たでたくさんの実梅を迎え手助けをしおは、そのたびに䌐採され去っおいくのを芋送っおきたけど、あんたずの別れが䞀番蟛い。あんたの所為よ。

     でも、泣き蚀なんお蚀っおられない。あヌしはあヌしの倩寿を党うするために、次の実梅ちゃんを迎える準備をしなくちゃ。幎霢を蚀い蚳にシャバい蚀葉ばっか䜿っおらんないし、ミりメを芋習っおあヌしも最新の若者蚀葉調べたんだから。

    「おヌい、りメちゃヌん」

     倧倉、お爺さんが呌んでる
     え 新しい実梅ちゃんは昚日から来おる
     それガヌチャヌほんたゎメンやで

    「あヌしはダバい系のりメちゃん りメちゃんっお呌んでちょ」





    3,836文字

    たさか再び『ピリカ文庫』ぞお声掛けを頂けるずは倢にも思わず。
    きっずそんな機䌚があるならば、それはもっず私が曞き手ずしお成長した時だず思っおいたので、今の私に曞けるのだろうかず数時間悩みたしたが、結局、恐れより嬉しさが勝っおしたいたした。

    お題『梅』で曞かせおいただきたした。
    文字数自由ずのこずで、もう900文字ほど短いものを曞く予定でしたが、結局こうなる。クラブドスト゚フスキヌの宿呜です。

    『ピリカ文庫』に盞応しい䜜品ではないかもしれたせんが、身に䜙るほどの光栄な機䌚をくださったピリカさん、そしお最埌たでお読みくださった方、ありがずうございたした。


    #ピリカ文庫
    #梅


    補足
    1* 梅の品皮の倚くは「自家䞍合和」ずいう性質をもっおいるため、実梅でも䞀本だけぜ぀りず梅の朚があるだけでは実が぀かないこずがある。そのため近くに別品皮の「授粉暹」を怍えおおく必芁がある。

    2* 梅の朚を芳賞甚ずしお考える堎合70幎100幎以䞊は生育できる堎合もあるが、梅の朚を収穫したい蟲䜜物ずしお考えるのであれば寿呜は25幎ほど。梅蟲家などでは、25幎ほど経぀ず梅の実の収穫が極端に萜ちるため叀い梅の朚を䌐採しお新たに新怍する。

    【参照1*】https://life-info.link/hanaume/
    【参照2*】https://niwaki.info/umenoki-jyumyou#toc8




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    蚀葉ず映画ず人間が奜き。衚珟ず習慣化に興味がありたす。INFJならではの感性で䜜品を掘り䞋げるこず、人生をより良くしおいくこずを日々党力で楜しんでいたす。 奜かれる為ではなく、胞の内で燻る思いをただそのたた蚀葉に乗せたい。けれどそれをスキず蚀っおくれたなら、ずおも嬉しい。

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