見出し画像

職人は『弟子』は取れても、『部下』は取れない。

地方企業の採用支援をしていると、採用がうまくいかない理由を「若者が来ないから」「地方だから」「知名度がないから」と考えてしまうことが多い。

もちろん、それも一つの理由だと思う。

ただ、いろいろな企業の採用に関わっていて感じるのは、地方企業の採用が難しい理由は、もっと社内側にもあるということだ。

それは、

「人を採用した後に、育てる環境がなかなかない」

ということ。

現場の人は、採用も教育も「兼務」している

地方の中小企業では、採用専任の担当者がいる会社の方が珍しい。

現場の人は現場の仕事で手いっぱい。

その中で採用もやり、新しく入ってきた人の教育もする。
当然ながら、教育の仕組みをつくるところまで手が回らない。

そして、もう一つ大きいのが、

そもそも自分自身が「育ててもらった経験」があまりない

ということだと思う。

仕事は先輩の背中を見て覚える。
分からないことは自分から聞く。
失敗しながら覚える。

そうやって育ってきた人に、

「今の若手に合わせて育成してください」
「1on1をしてください」
「目標設定をしてマネジメントしてください」

と言っても、簡単にできるものではない。

経験したことがないものを、いきなりやれと言われても難しい。

マネジメントされた経験がない人が、マネジメントするのは難しい。

これは誰かが悪いという話ではない。

人の問題というより、仕組みの問題だと思っている。

職人は「部下」ではなく「弟子」を取る

そして、地方企業には職人気質の人が多い。

ここも採用を考える上ですごく重要だと思う。

少し極端な言い方をすると、

職人は「弟子」は取れるけれど、「部下」を取るのが苦手だ。

弟子というのは、自分のやり方や価値観を教えて、それについてきてもらう存在。

だから、自分と相性が良くて、価値観も近い人であれば育てられる。

人数も1人、2人くらいなら面倒を見ることができる。

一方で「部下」は違う。

人数が増えてくれば、自分と価値観が違う人も入ってくる。

仕事に対する考え方も違う。

成長スピードも違う。

コミュニケーションの取り方も違う。

その一人ひとりに合わせながら、仕事を任せ、成長を支援しなければならない。

つまり、

弟子を育てることと、組織として人をマネジメントすることは、似ているようで全然違う。

だから職人気質の人が多い企業ほど、採用人数を増やしていくのが難しいのではないかと思う。

採用は「募集」する前から始まっている

採用というと、

求人票をつくる。
採用サイトをつくる。
SNSで発信する。
合同説明会に出る。

といった「人を集める活動」に目が向きやすい。

もちろん、それも大切。

教育の仕組みをつくることも大切だし、継続的に会社のことを発信することも大切。

ただ、それ以前にかなり重要なのが、

会社に新人を受け入れる雰囲気があるか。

だと思う。

新しい人が入ってきたときに、

「仕事を教えてあげよう」
「困っていたら声をかけよう」
「若い人を育てていこう」

と現場側が思っているかどうか。

ここが整っていない状態で採用だけ頑張っても、入社した人が定着しない。

そして、この「受け入れる雰囲気」をつくるには、結構時間がかかる。

だから、まず若者と接する機会を増やす

では、どうすればいいのか。

僕は、いきなり採用を成功させようとするのではなく、

まず企業と若者が接する回数を増やすこと

がすごく大切だと思っている。

会社見学でもいい。
インターンシップでもいい。
職場体験でもいい。
大学生とのプロジェクトでもいい。

そもそも若者と話す機会がなければ、お互いの価値観が違うことにすら気づけない。

最初は、

「最近の若いやつは何を考えているか分からない」

と思っていた人も、何度も学生と接していると少しずつ変わってくる。

「あいつ結構頑張るな」
「意外とちゃんと考えてるじゃん」
「若いやつも可愛いもんだな」

と。

息子や娘を見るような感覚に少しずつ近づいていく。

そうすると、

「まあ、面倒見てやるか」

という気持ちが生まれてくる。

この変化は、採用サイトをつくるだけでは生まれない。
実際に人と接することでしか生まれないものだと思う。

会社見学は、実は社員教育でもある

もう一つ面白いのが、会社見学やインターンを受け入れること自体が、社員のトレーニングになること。

学生が会社見学に来れば、自分の仕事を説明しなければならない。

「この仕事って何をやっているんですか?」
「なんでこの仕事を始めたんですか?」
「この仕事の面白いところは何ですか?」

いろいろな質問が飛んでくる。

普段、自分の仕事について説明する機会なんてほとんどない人でも、学生が来れば説明しようとする。

これが新入社員だったら、

「まず自分で考えてみて」

と言ってしまうような質問でも、学生だったら不思議と丁寧に答えたりする。

そして、それを何度も繰り返していると、自分の仕事を言語化する力がつく。

人に説明する力がつく。
質問に答える力がつく。
相手に合わせて話す力がつく。

これって、まさに新人を育成するときに必要な力でもある。

つまり、

インターンシップや会社見学は、採用の入り口であると同時に、企業側の人材育成・マネジメントのトレーニングでもある。

「就活」よりもっと手前で出会う

企業と学生が出会う場というと、どうしても就活になってしまう。

スーツを着て、
会社説明をして、
志望動機を聞いて、
選考して、
合否を決める。

でも、それだけではもったいないと思う。

もっと手前でいい。

一緒にイベントをやる。
仕事を少し体験してもらう。
会社を見てもらう。
ご飯を食べながら話す。
学生と社員が何か一緒に考える。

そんな、

「まだ就活ではない関係」

をもっと増やしていくことが大切なんじゃないかと思っている。

学生側も企業を知ることができる。
企業側も今の若者を知ることができる。

そして企業の中に、「若い人を受け入れる力」が少しずつ育っていく。
採用というと、どうしても「どうやって人を集めるか」に目が向く。
でも地方企業の採用を本当に変えていくためには、

人を集めること以上に、人を受け入れ、育てられる会社をつくること。

そのためにも、企業と若者がもっと日常的に関われる機会を増やしていきたい。

採用活動は、人を採るためだけの活動ではない。
会社そのものが、人を育てられる組織に変わっていくための活動でもある。
僕はそんなふうに考えています。

いいなと思ったら応援しよう!