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古文書|せりふ三題噺

    自分は何のために働いているのだろう?
    最近、わからなくなっていた。

    そんな時、蔵を整理していたら、桐の箱が出てきた。
    中身は、和綴じの古文書。
    江戸後期、数えてみると五代前の当主が書いたものらしい。

    完璧ではないが、私にも読むことができる。
    大学で学んだことが、こんなところで役に立つとは思わなかった。

    商いの記録、天候の覚書、家族のこと。
    淡々とした記述が続く。
    日照りの年の苦労。
    子を亡くした年の、たった一行の空白。

    最後のページに、こうあった。
    「我が一生、地平線の彼方を目指して歩み続けたり」
    そして、すぐ下に。
    「子孫に伝うべく、書き記すものなり。
    いかなる思いを抱くものなりたるや」

    私は思わず、声を出して笑った。
    二百年前のご先祖様が、問いかけてきている。
    「で、感想は?」と。

    高祖父の父、ひいひいひいおじいちゃんが急に身近に感じられた。

    縁側に出た。
    雨が降り出していた。
    傘を差して、庭に降りた。

    私の地平線はどこだろう。
    五代前のこの人も、同じ雨を、同じ庭で見たのかもしれない。
    私は、問いへの答えを、まだ言葉にできずにいる。





    はらとけいさんのせりふ三題噺に参加します。

    今回は以下のお題の中から、セリフだけをいただきました。
    ▼今週のお題
    ■セリフ 「で、感想は?」
    ■三題 ・傘 ・グミ ・地平線



    #せりふ三題噺 #傘グミ地平線 #共創
    #で感想は #地平線 #傘 #ショートショート #短編小説 #創作 #家族


     
     
     
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