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冬の夕映え|青ブラ文学部

    四時四十分。

    冬の日は短い。
    四時を過ぎれば、もう街は夕暮れの気配に包まれる。

    「早いわね」
    母が呟いた。窓の外、空がオレンジ色に染まり始めている。

    「そうだね」
    私は編み物の手を止めた。母も同じように、毛糸から目を離して窓を見ている。

    冬の夕映えは、夏の夕焼けのような力強さはない。
    秋の夕暮れのような静謐さもない。
    ただ、淡く、儚く、すぐに暗闇に飲み込まれてしまう。

    「お父さんが好きだったわね、この時間」
    母が言った。

    父は三年前に亡くなった。
    「冬の夕方は特別だって、よく言ってたわ」

    私は頷いた。
    覚えている。父は冬になると、よく窓辺に立って外を眺めていた。

    「何が特別なの?」
    子供の頃、聞いたことがある。

    「儚いからだよ。お前にはまだちょっと難しいかな?」
    父は言った。
    「すぐに暗くなっちゃうだろう? だから、この瞬間を大事にしたくなるんだ。」

    その意味が、今ならわかる。

    冬の夕映えは、長くは続かない。オレンジ色の空は、あっという間に紫に変わり、やがて藍色に沈んでいく。

    「四時四十五分」
    母が時計を見て言った。

    そう。父は冬のこの時間になると決まって窓辺に立った。
    外回りの仕事から帰ってきて、コートも脱がずに。

    「一日の中で一番美しい時間だ」
    父は言っていた。

    私は立ち上がって、窓辺に向かった。母も私の隣に来た。
    空が、刻一刻と色を変えていく。オレンジから、ピンクへ。ピンクから、紫へ。

    「きれいね」
    母が小さく言った。

    私は頷いた。
    冬の夕映えは、待ってくれない。夏のようにゆっくりと暮れていくのではなく、急ぎ足で夜に向かっていく。

    「お父さん、今も見てるかしら」
    少し震える声で母が言った。

    「見てるよ。きっと」
    そう言って、私は母の手を取った。冷たい手。

    二人で見つめる空は、もう藍色に変わり始めている。
    父が愛した時間。 私たちが受け継いだ時間。

    四時五十分。

    夕映えが消えていく。
    サヨナラだ、明日のこの時間まで。





    山根あきらさんの企画に参加させて頂きます。



    #青ブラ文学部 #冬の夕映え
    #共創 #ショートショート #私の作品紹介
    #AI小説

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