
インド② 観光できなかった話
一夜明け、あまりにうるさい車のクラクションと鳥の声で起こされた。
昨夜は気づかなかったけれど、ホテルは植民地時代のイギリスが建てた歴史ある建物で、さすがの美しさだ。



5000円くらいでこのクオリティーなら昨日のことは水に流してやってもいい。
いや、やっぱり許せない。
葛藤しつつも朝食を食べ、街へ繰り出す準備をする。
別にコルカタに何か目的があるわけではないが、ホテルにこもっていては何も経験値にならないし、こんなカオスなインドに慣れることはできない。
がんばるぞ!
まず手始めに、ホテルの近くにある博物館に行ってみる。

インド博物館。冷房のある部屋はほとんどなく、蒸し暑くてつらかった。化石から歴史資料、スパイスの標本や鉱物まで雑多になんでもござれなのが最高にインドしている。
街を少し歩いたところで、買い食いをしてみることにした。
この時の私は頭がおかしいので、露店でラッシーを、屋台でパ二プリを買ってみた。


パニプリは、パニプリパパドという薄い生地を揚げて中を空洞にしたものに、サワーソースとトマトソースと生野菜などをつめてスープをかけたものである。
もうね、ぜっっっっっっったいに食べないでほしい。
アジアの屋台飯で食べてはいけないものランキングがあるとしたら、
1 生野菜
2 常温の肉・乳製品
3 未開封ペットボトル以外の水
4 ふたのかかっていないソース
5 氷
6 人気の無い店の作り置きおかず
だいたい上位ランカーはこれらだが、パニプリはこれらのうち3つか4つくらいにあてはまる。日本人なら95%腹を下すことになるだろう。
おいしかった。
買い食いをして歩いて行くと、やたら日本語が上手なインド人の青年が話しかけてきた。
「あなたは日本人ですか?」
前提知識としてこういうインド人は危ないと知っていたので、スルーしようとしたが、無視してもついてくる。内心少しは良い人であってほしいという気持ちもあって、立ち止まって
「はい、日本人ですが、なんですか?」
と言うと、嬉しそうに色々しゃべり出した。
日本に暮らしたことがあること、日本人が大好きであること。そして最後に、
「もてなしたいのでお店にきてほしい。でなければホテルを教えてほしい。もっとあなたを知りたい。」
だと。
アウトーーーーーーー!!!!!
ここからは戦いだ。
「必要ありません。急いでいますのでさようなら」
と言い残し、足早に去ろうとするも、追ってくる。
このままだと本当にホテルに連れて行ってしまうというところで、私のホテルの3つ手前のホテルの最上階がカフェになっていることを思いだし、そのホテルの敷地に逃げ込んでまくことができた。
その後もその男はホテルの入り口付近をウロウロし、私が出るのを待っていたようだった。
2時間半くらいして、あきらめたのか姿が見えなくなり、念のためもう30分時間をつぶしてホテルにもどったが、頭の中は恐怖でいっぱいだった。
翌日。今度こそ市場などを見に行きたい!と勇気をふりしぼってホテルから出ると…
いる。
昨日逃げ込んだホテルの前に、昨日私につきまとった男が、いる。
今出たら、宿泊しているホテルがばれてしまう。
私はそっとホテルの部屋に戻り、ひとしきり泣いた。
入国前から始まり今に至るまで、何もうまくいかなくて、知らない男は怖いし、もうどうやってこの国を好きになったら良いかわからなくなってきた。
バラナシにも行けない。
もういい、もういい…。
こうして、わずか2日半で私のインド旅は幕を閉じたのでありました。