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第六話 ガラスの工房(4)

    4. 帰り道

    帰り際、ヒナはモカに言った。
    「また来るね」
    モカはしっぽを振った。
    「器ができたら来るから」
    しっぽが大きく振れた。
    リクが「待ってるよ」と言った。
    モカに言っているのか、ヒナに言っているのか、わからなかった。
    「りっくんも?」とヒナは聞いた。
    リクはすこし間を置いた。「まあ」と言った。「うん」
    ヒナはそれを聞いて、なんとなく笑った。

    車に乗った。
    シローが運転して、ヨーコが助手席で、ヒナは後ろのチャイルドシートに座った。
    木の箱はもう空だった。
    ガラスはミナコさんに預けてきた。
    「楽しかったね」とヨーコが言った。
    「うん」とヒナは言った。
    「モカかわいかった」
    「うん」
    「りっくんちょっとチャラかったね」
    「ママもそう思った?」とヒナは言った。
    「思った」とヨーコは言った。「でもモカのこと好きそうだったでしょ」
    「好きそうだった」
    「そういうひとだよ」
    シローが前を向いたまま「チャラいって言っちゃだめだぞ」と言った。
    「パパも笑ってたじゃん」とヒナは言った。
    シローは何も言わなかった。
    ヨーコがくすくす笑った。

    山が遠ざかっていった。
    緑が少なくなって、家が増えて、ビルが見えてきた。
    ヒナは窓の外を見ていた。
    目がだんだん重くなってきた。
    モカと走ったのと、山の空気と、車のゆれと。
    全部がいっぺんに来て、ヒナは目を閉じた。
    「ヒナ、寝た」とヨーコが言った。
    シローはルームミラーを見た。
    チャイルドシートの中で、ヒナが眠っていた。
    頭がすこし傾いて、口が半分開いていた。
    「草ついてる」とシローは言った。
    「モカと遊び倒したから」とヨーコは言った。
    しばらく、しずかだった。
    高速に乗った。
    エンジンの音がすこし変わった。
    「いい一日だったね」とヨーコは言った。
    「そうだな」とシローは言った。
    窓の外を、山がゆっくり流れていった。

     
     

    a-ya

     
     
    ・幼女の小さな日常をほんわかつづる長編物語 ・趣味の着物にまつわるあれこれコラム ・日々の違和感や理想とのズレをポツポツ綴る、ポジティブとは真逆の諦観エッセイ の3本の柱で書いてます

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