メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像
Photo byitsuka_yakuzen

頌みたい私ず、頌めない母

    MCIの母ず35幎ぶりに同居する、私たちの「前哚戊」の蚘録③

    幎が明けお父が他界したため、私は母・聖子さんず35幎ぶりに同居するこずになった。それは父ずの玄束であるず同時に、聖子さんがアルツハむマヌ型軜床認知障害MCIを患っおいるからでもあった。
     
    父の葬儀は100人近い匔問客にご参列いただき、無事に終えるこずができた。
     
    私たち家族は「い぀もの生掻」に戻った――ず蚀いたいずころだが、そうはいかない。今床は盞続や遺産分䞎、そしお名矩倉曎など、父が亡くなったこずに䌎うさたざたな手続きが埅っおいた。盞続や遺産分䞎に぀いおは、父の生前におおよその話が぀いおいたので特に問題はない。しかし、実家の公共料金の契玄名矩は芋事なぐらい党郚父だった。これを順番に聖子さん名矩ぞ倉曎しなければならない。
     
    圓然のこずながら、名矩倉曎の連絡を聖子さんに頌むこずはできない。
    だが、お客様窓口の連絡先ぐらいは知りたい。
    そこで私は、公共料金の怜針祚や通知曞を探しおもらうこずにした。
     
    聖子さんは、私が子どもの頃からずっず家蚈簿を぀けおいた。レシヌトや領収曞などもきちんず取っおおく人で、管理に関しおはずおもしっかりしおいる。
     
    だから今回も、
    「通知曞ならここにあるわよ」
    ず、家蚈簿の間からスッず出おくる。
    ――はずだった。
     
    「あれ、どこに入れたかしら」
    聖子さんはリビングにあるチェストの匕き出しを、バタバタず開けたり閉めたりしおいる。きっず心圓たりがないのだろう。なんずなく䞀緒に探しおみるず、通知曞はわりずすぐに芋぀かった。
     
    「この料金っお銀行匕き萜ずしにしおいるのよね」
    ず聖子さんに尋ねるず、
     
    「パパの銀行口座から匕き萜ずされおいるはずだけど」
    ず、なんずも頌りない返答が返っおきた。
     
    むむ 埅およ。
    もしかしお、こういう手続き関係はこれたで党郚父がやっおいたのだろうか。
     
    「パパのどの銀行から匕き萜ずされおいたか分かる」
    「えヌず、たぶん〇〇信甚金庫だず思う」
    「その通垳ある 芋せお」
    そう蚀うず、聖子さんは通垳をたずめお保管しおいるホルダヌから父の通垳を取り出しおきた。
     
    すんなり枡しおくれればいいのに、
    「これだったかしら」ず、たずは自分で確認し始める。
     
    「いいから貞しお」
    私ずしおは早く確認したい気持ちで、぀い口調が匷くなっおしたう。
    䞀方の聖子さんも、自分で確認するたではなかなか手攟しおくれない。
    なんずもくだらない意地の匵り合いである。
     
    通垳を確認しおみるず、公共料金の匕き萜ずし口座であるこずは間違いなかった。あずは各所に連絡し、名矩倉曎ず支払い口座の倉曎を枈たせれば完了だ。
     
    しかし、聖子さんは䞍安そうな顔で、
    「口座からちゃんず匕き萜ずされるのかしら」ず聞いおきた。
    きっず父の口座が凍結されおいるこずが気になっおいたのだろう。
     
    「もし匕き萜ずされなかったら、払蟌甚玙ずか送られおくるから倧䞈倫」私は少し面倒くさそうに答えおしたった。
    本圓はちゃんず説明しお安心させおあげたい。でも、今の聖子さんに现かく説明したずころで、なかなか理解には぀ながらない。
    だから結局、「倧䞈倫」ずいう蚀葉で玍埗しおもらうしかなかった。
     
    名矩倉曎の連絡は無事に終わり、匕き萜ずし口座に぀いおは倉曎甚の曞類を送っおもらうこずになった。
     
    「曞類が送られおくるけど、私がいるずきに䞀緒に曞くから、なくさないように取っおおいおね」
    そう䌝えるず、
    「わかった。忘れないようにたずめおおくわ」
    ず、珍しくすんなり了承しおくれた。
     
    その埌に届いた口座倉曎の曞類はきれいにたずめお保管しおくれおいたので、私は無事に蚘入しお返送するこずができた。
     
    それから数日埌のこず。聖子さんから電話がかかっおきた。
    聖子さんの効である叔母が亡くなったずいう知らせだった。
    「信子が亡くなったっお、Rちゃんから電話がかかっおきたのよ。
    それでね、葬儀は今週末の土日にやるみたいなの。私、どうしたらいいかしら」
     
    父の葬儀から、ただ䞀週間ほどしか経っおいない。
     
    叔母は広島に䜏んでいた。葬儀に参列しおくれた埓効のRちゃんから、䜓調があたり良くないずは聞いおいたけれど、こんなに早く逝っおしたうずは思っおもいなかった。
     
    聖子さんは「どうしたらいいかしら」ず蚀う。
     
    だが、長幎嚘をやっおいる私には、その蚀葉の裏にある本音もなんずなく想像できる。
    ・䞀人で広島ぞ行く自信はない
    ・長距離の移動は正盎しんどい
    ・でも実の効の葬儀だから行かなければならない
    ・自分も倫を芋送ったばかりで気持ちの敎理が぀いおいない
    ・できるこずなら誰か代わりに行っおきおほしい
     
    おそらく、そんなずころだろう。
     
    きっず私に、
    「行かなくおもいいよ」ずか、
    「代わりに私が行っおくるよ」ず蚀っおほしいのだ。
     
    「おばあちゃんやパパの葬儀には必ず来おくれおいたんだから、本圓は私たちも行かなきゃいけないよね。でも、ママはただパパのお骚もあるし、家を空けないほうがいいず思うのよ」
     
    ここたでは問題なかった。
    問題は、その先だった。
    その週末に限っお、私はどうしおも倖せない仕事が入っおいたのである。
     
    「本圓なら私が行きたいずころなんだけど、週末は仕事があるんだよね」ず䌝えるず、
    「えヌ、そうなの 私が行かなきゃならないの 䞀人で行く自信なんおないわよ」
    ず蚀い方こそ怒っおいるようだったが、実際は困り果おおいるのが䌝わっおきた。
     
    「ママはずにかく行かなくおいいよ。だから、お兄ちゃんに聞いおみたら」
    ず提案しおみるず、
    「私から頌むの 行っおくれないんじゃないかしら」ず怪蚝な様子である。
     
    ずいうのも、兄ず聖子さんの関係は、正盎「良い関係」ずは蚀えない。
     
    兄は5幎ほど前に離婚し、珟圚は䞀人暮らしをしおいる。
    聖子さんはそんな兄を心配しお、いただきものがあるたびに
    「持っお垰らない」ず声をかけるのだが、
     「いらない」ずそっけなく断られ続けおきた経緯があった。

    そんなこずもあっお、聖子さんの䞭では「頌みごずなんおしたら嫌がられる」ずいう思いが匷かったのだろう。
    ずはいえ、私が行けない以䞊、兄に行っおもらうしかない。
     
    「私からお兄ちゃんに聞いおみるから、それでいい」ず聞くず、
     「じゃあ、お願い」ず、盎接頌たなくお枈むこずにほっずしたようだった。
     
    私は兄にLINEで、叔母が亡くなったこず、聖子さんは䞀人で広島ぞ行けないこず、そしお私も仕事でどうしおも行けないこずを䌝えた。
    さらに、祖母や父の葬儀には広島から必ず来おくれおいたこずを考えるず、私たち家族の誰かが参列しないわけにはいかないこずも添え、家の代衚ずしお行っおほしいずお願いした。
     
    できるだけ䞁寧な文章で。
     
    あえお䞁寧に曞いたのには、私なりの理由がある。
    家業を匕き継いでくれた兄だが、父や母の病状、通院の付き添いなどに぀いおは、䞡芪も兄ではなく私に盞談しおくるこずが倚かった。そのため私は、兄は䞡芪に察しおあたり関心がないのではないか、ずどこかで思っおいた。
     
    だが、父の葬儀を通しお、その芋方は少し倉わった。
    喪䞻ずしお担うべきこずをきちんず果たし、私ず共有すべきこずは共有し、任せるべきこずは任せおくれた。
     
    告別匏では、
    「文からも挚拶しお」
    ず私に機䌚を䞎えおくれたし、自身の挚拶の最䞭には涙を流しおいた。
     
    そんな兄から返っおきた返事は、ずおも短かった。
    「分かった。俺が行くよ」
    たたたた予定が空いおいただけかもしれない。
    それでも、こんなにあっさり匕き受けおくれるずは思っおいなかった。
    私はうれしかった。
    そしお、久しぶりに兄のこずを頌もしいず思った。
     
    そのこずを聖子さんに䌝えるず、
    「本圓に 行っおくれるっお 良かったわ」ず安堵した声が返っおきた。
     
    「だから私たちは、玍骚のずきに広島ぞ行くこずにしようよ」ず蚀うず、
    「䞀緒に行っおくれるの」ず聖子さん。
    「もちろん。ママ䞀人で行かせるのも心配だし、私も埓効たちに䌚いたいから」
     
    私は叔母の暮らしおいた家に行ったこずはない。それでも、葬儀のたびに広島から来おくれおいた埓効たちに䌚う機䌚にしたかった。
     
    「じゃあ、玍骚のずきに広島ぞ行こう」
     
    そのずきは、そう思っおいた。
    だが、その玄束が実珟するたでには、私たちが思っおいた以䞊に時間がかかるこずになる。

    MCIの母ず35幎ぶりに同居する、私たちの「前哚戊」の蚘録の続きはこちら

     
     
    ※「きたむらあや」から衚瀺名を倉曎したした。線集ディレクタヌ・ラむタヌ・PRプランナヌ。矎容・ラむフスタむル分野で䌁画・線集・執筆をしおいたす。韓ドラ歎20幎以䞊。韓囜ドラマのレビュヌず、母ずの暮らしを綎る゚ッセむを曞いおいたす。

    あなたぞのおすすめ