
ハッカーハンター・シリーズ/Act.3/AIクライム 第九章 崩壊と復旧
第九章 崩壊と復旧
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金曜日の深夜。梶原と安藤がサーバールームに入った。その夜は、まだ誰も異変に気づいていなかった。
梶原はAIサーバーのコンソールにログインし、あらかじめ用意されていた破壊プログラムの実行タイマーを設定した。即時実行ではなかった。日曜日の深夜二時に起動するよう、スケジュールが組まれた。土日の間は誰もサーバールームに入らない。月曜の朝、社員が出社した時にはすべてが終わっている。そういう設定だった。
安藤はその横に立っていた。梶原がキーボードを叩く音を聞いていた。何も言わなかった。コンソールの画面に表示されるコマンドの意味を、安藤は理解していた。理解した上で、止めなかった。
二人は十五分ほどでサーバールームを出た。
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二日後の日曜日、深夜二時。東海精機の本社棟は無人だった。
サーバールームの中で、AIサーバーのプログラムが起動した。まず、バックアップサーバーに接続した。通常のバックアップジョブと同じ認証情報を使って、バックアップデータへのアクセス権を取得した。バックアップデータの暗号化が始まった。元のバックアップを暗号化で上書きしていく。最初に、復旧の手段を潰した。
次に、業務サーバー群への攻撃が始まった。ファイルサーバー、メールサーバー、グループウェアサーバー、経理サーバー、人事サーバー、購買データベース、製造管理サーバー。ランサムウェアに偽装された暗号化プログラムが、各サーバーのデータを順番に暗号化していった。外部からの攻撃に見せかけるため、プログラムは海外のIPアドレスを経由した通信を偽装する痕跡をログに残した。
暗号化は、音もなく進んでいた。サーバーのアクセスランプが規則的に点滅している。それ以外に、異変を示すものは何もない。低く唸る空調音の中で、システム内部のデータだけが、一つずつ別の姿へ変えられていった。
午前四時。暗号化がサーバー群に波及し始めた。各サーバーに接続されたネットワーク経由で、社内LANに繋がったパソコンにも暗号化の範囲が広がっていった。電源が入ったまま週末を越したPC、スリープ状態のPC、ネットワークドライブに接続されたPC。月曜の朝を待たずに、社内の端末にも被害が及んだ。
午前五時。暗号化処理は、ほぼ終わりを迎えていた。東海精機のサーバー群と、ネットワークにつながる端末の大半で、データはすでに復号キーなしには開けないものへ変わっていた。バックアップサーバーのデータも暗号化済み。通常であれば、復旧は不可能だった。
サーバールームでは、アクセスランプの点滅が収まり、静寂が戻っていた。空調の音だけが、暗い部屋に響いていた。
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