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ハッカーハンター・シリーズ/Act.3/AIクライム 第六章 仕込まれた知性


第六章 仕込まれた知性


─── 1 ───

 四週目の火曜日。
 山田は土曜日から火曜日の朝まで、ほとんどオフィスに泊まり込んで調査を続けていた。コードを書き、ログを解析し、手がかりを探し続けた。
 デスクの横にコンビニの袋が三つ溜まっている。缶コーヒーの空き缶は数えるのをやめた。着替えは持ってきていない。同じアロハシャツを三日間着続けている。裾は黒いパンツにインしたままだった。
 三台のモニターの前で、山田は田中が持ち帰ったAIサーバーのアプリケーションログを解析し続けていた。ログのデータ量は膨大だった。三か月分のAI監査ログを解析した。数千件に及ぶユーザーリクエストと生成結果。その中から、設計仕様では説明できない処理パターンを抽出していく。

 山田の解析ツールは、AIの処理を三つの領域に切り分けている。
 第一は、社員のリクエストに対する通常のレスポンス。メールの文案生成、議事録の整理、社内規定の検索。これは正規の処理だ。
 第二は、定期的なデータ同期やキャッシュ更新などのシステム処理。これも正規だ。
 第三は、第一と第二のどちらにも分類されない処理。社員のリクエストに紐づかず、システムの定期処理でもない、出所不明の処理。
 分類してみると、第三カテゴリーに該当する処理が、想定を遥かに上回っていた。

─── 2 ───

 火曜日の夕方。田中がKISSオフィスに戻ってきた。東海精機からの帰り道にコンビニで買った弁当を二つ提げている。
「山田さん、ご飯食べてください」
「あとで」
「あとでじゃなくて、今すぐです。昨日の夜から何も食べてないでしょう」
「カップ麺を食った」
「それ昨日の昼の話ですよね。佐藤さんから聞きました」
 田中は弁当の一つを山田のデスクの空いたスペースに置いた。空いたスペースはほとんどなかったので、缶コーヒーの空き缶を三本まとめてゴミ箱に入れてから置いた。
「食べないと倒れます。倒れたら解析が止まります。合理的に考えて、食べた方がいいです」
「合理的って言われると弱いな」
 山田は苦笑して、モニターから目を離した。弁当の蓋を開ける。鮭弁当だった。割り箸を割りながら、田中に訊いた。

 
 
 

A305

 
 
プライム上場企業で43年。現場・システム・経営企画・総務・広報・販促を経験、一貫してシステム構築に関与。IBM・NECで講演・セミナー講師も。今はITミステリー・警察小説を執筆。代表作「ハッカー・ハンター」「渋谷警察署嘱託捜査班 」。AI創作・ITセキュリティ記事発信。広島在住。

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