メインコンテンツへスキップ
見出し画像

古文赤点の柴犬アンが平安部に入部?

    柴犬アン

    どもども、柴犬アンやで。

    ある朝、風太郎がスマホを持って、台所へ飛び込んできた。

    画像

    アンはそのとき、座布団の上で二度寝の準備をしてた。

    「アン、お前、
    平安部に入ったん?」

    「へいあんぶ?」

    「ほら、ここに名前が載ってるで」

    風太郎が見せてきたんは、ちびたぬきさんの、この記事やった。

    読んでいくと、ほんまに書いてある。

    「さらに、柴犬アンちゃんも
    入ってくださいました」

    「入ってくださいましたって、アン、入部届に肉球押してへんで」

    「けど、もう部員や」

    「合格発表が、試験より先に出てもうた」

    しかも、ちびたぬきさんは、高校で国語を教えてはる先生や。

    アンの背中を、冷たい汗が流れた。

    柴犬やから、見えへんけど。

    「風太郎、平安部って、古文できな入られへんの?」

    「平安文学を読んだり、百人一首を楽しんだり、かな文字を書いたりするらしいで」

    「本格的やん」

    「平安時代の食べ物を調べたり、平安カフェのメニューを考えたりもする」

    「食べ物」

    アンの耳が立った。

    「貝合わせもするらしい」

    「貝、食べるん?」

    「合わせるんや」

    「なんや。開いて食べるんちゃうんか」

    画像

    蹴鞠も候補にあがったらしいけど、そっちは早々にあきらめたと書いてあった。

    これは助かった。

    アンが蹴鞠に参加したら、蹴る前にくわえて持って帰ってまう。

    古文で書かれた活動報告まであった。

    アンには、最初の3行で霧が出た。

    「風太郎。やっぱり入部試験して。実力を見てもらわなあかん」

    「やめといたほうがええと思うで」

    「もう名前まで載ってるんや。平安部の看板に泥は塗られへん」

    「お前、前足でよう泥を塗ってるけどな」

    風太郎はスーパーのチラシを裏返し、竹取物語から5問作った。

    画像

    赤ペンまで用意しよった。

    古文赤点の柴犬アン
    入部試験に挑む

    「いとうつくしうてゐたり」を
    現代語訳しなさい

    アンの答え。

    「めっちゃべっぴんさん、ぬったり」

    「竹の中におはする」の
    「おはする」の意味と
    誰が「おはする」のか答えなさい

    アンの答え。

    「『おはする』は、おはようさん言うこと。竹ん中の寝起きの人」

    「竹の中におはするにて知りぬ」
    とあるが、翁は何が分かったのか

    アンの答え。

    「竹ん中から『おはようさん』て聞こえて、朝になったんが分かった」

    画像

    「子になりたまふべき人なめり」
    を現代語訳しなさい

    アンの答え。

    「この子、たまに人なめるらしいで」

    「妻の嫗」の読みを
    現代仮名遣いで答えなさい

    アンの答え。

    「うちのオバハン」

    風太郎の赤ペンが
    答案の上を走った

    丸は1個も走らんかった。

    答案用紙の上に、大きな「0」が咲いた。

    「アン、0点や」

    「赤ペン、元気すぎひん?」

    「お前の答えが自由すぎんねん」

    「古文にも多様性が必要や」

    「まず正解を覚えてから多様になれ」

    画像

    アンは、座布団の上に腹ばいになった。

    平安部、入部した日に退部かもしれへん。

    古文0点でも部員カードは作れる

    ところがや。

    ちびたぬきさんの新しい記事を読むと、平安部には、その人を平安時代の人物に見立てる「部員カード」があるらしい。

    「風太郎、アンも部員カード欲しい」

    「さっき0点取ったとこやで」

    「0点やからこそ、形から入るんや」

    「勉強から入れ」

    カードを作るために確認してもろたんは、アンのプロフィール、直近の「アンとコエのイロ」、固定記事、社会エッセイ、それから旅物語や。

    古文の答案だけ見たら、雅なところは1本も生えてへん。

    けど、これまで書いてきた物語や記事を見てもろたら、こんなカードになった。

    平安部 部員カード設定

    画像

    note名:柴犬アン
    雅名:声守の君(こえもりのきみ)
    平安人物見立て:紀貫之型

    見立ての由:
    柴犬アンという語り手に身を借り、旅、町の仕事、食べ物、人の痛みを、関西弁の軽みと物語へ変えるところに、別の声をまとって旅を綴った紀貫之の気配があります。見えないコエや言いにくいさみしさを拾い、最後には笑いと帰り道を残す、情と観察の書き手です。

    属性:犬・声・灯
    称号:見えぬコエの拾ひ手
    得意わざ:コエのイロ見立て
    奥義:モモイロ帰り道結界
    装備:赤き水玉首布/声色絵巻/旅の真鍮鈴

    をかし度:★★★★★☆ 5/6
    あはれ度:★★★★★☆ 5/6
    いみじ度:★★★★☆☆ 4/6
    ことのは力:★★★★★★ 6/6
    観察眼:★★★★★★ 6/6
    つづける力:★★★★★★ 6/6

    似合ひの一首:

    しのぶれど
    色に出でにけり
    わが恋は
    ものや思ふと
    人の問ふまで

    平兼盛

    画像

    隠した思いが「色」に出て、それを誰かが見つけて問う歌。「コエのイロ」の世界と重なります。

    ひとこと:
    「言えへんコエも、ここでは色になるで。」

    画像

    「風太郎、大変や」

    「どないしたん」

    「アン、紀貫之型やて」

    「ええやん」

    「古文0点やのに
    紀貫之さんと同じ型へ
    入ってもうた」

    「本人やのうて、紀貫之型や」

    「紀貫之さん、ほんますんません」

    「謝る前に『土佐日記』読め」

    「そこから始めなあかんの?」

    「紀貫之型を名乗るなら、せめて表紙くらい見とけ」

    画像

    風太郎が、カードの能力値を指で追った。

    「をかし度5。あはれ度5。いみじ度4。ことのは力と観察眼とつづける力は6や」

    「風太郎、おかしいで」

    「何がや」

    「古文0点やのに
    ことのは力6や」

    「古文の知識と、言葉を届ける力は別もんやろ」

    アンは、もう1回カードを見た。

    言えへんコエを見つけること。

    誰かが飲み込んだ「助けて」を、色や物語にすること。

    事件や旅が終わったあとに、帰れる場所を残すこと。

    古文の助動詞は分からん。

    「なめり」を見たら、誰かをなめる話やと思ってまう。

    それでも、アンが書いてきた言葉を見て、「ことのは力6」とつけてくれた人がおる。

    「風太郎」

    「なんや」

    「アン、胸張って入部してええかな」

    「ええやろ。もう名前載ってるしな」

    「せやった。入部拒否する権利、アンになかったわ」

    それに、部員カードは作っても作らんでもええ。

    「入部しました」と名乗らんでもええ。

    毎日活動せんでもええ。

    平安文学を読んだり、百人一首を楽しんだり、きれいな月を見たり。

    今日はとりあえず「いみじ!」と言うだけでも、活動になるらしい。

    画像

    平安部は、点数を競う部やなかった。

    知ってる人だけが入れる場所でもない。

    知らん言葉に出会って、なんやこれと笑う。

    月を見て、昔の人も同じ月を見たんかなと思う。

    貝合わせを、貝を食べる会やと勘違いする。

    そっから始めてもええ部やった。

    夜になって、屋根の向こうから丸い月が出た。

    アンは縁側へ出て、月を見上げた。

    「いみじ!」

    画像

    「アン、意味分かって言うてる?」

    「分からへん」

    「古文0点のままやないか」

    「けど、本日の部活動、これにて終了や」

    こうして古文0点、ことのは力6の柴犬は、平安部員として立派な1日目を終えた。

    明日から勉強するかどうかは、いまだ定まらず。

    いみじ!

    画像
    grok版
    画像
    gemini版
     
     
     
    マニアを卓越して、柴犬変態を目指しています Shiba Inu novel / talking dog / Animal Fiction

    あなたへのおすすめ