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Photo bynote39kyone

『心の置きどころ』 時間のループを生きる:過去の私を抱きしめたら、未来の私がそこにいた

     もしも、今この瞬間に、誰にも言えない孤独や足がすくむような不安に襲われている人がいるとしたら、私はその人に、少し奇妙で、けれど絶対にあなたを裏切らない「時間の秘密」を話したいと思う。

     時間は、過去から未来へ向かって一列に、生真面目に進むだけのもの。私たちは誰もがそう教えられて育つ。昨日の次に今日があり、今日の次に明日が来る。時計の針は右回りにしか進まないし、流れた水は元には戻らない。だからこそ私たちは、過ぎ去った過去を悔やみ、まだ見ぬ未来の不安に怯えながら、砂時計のくびれのような狭い「現在」を必死に生きている。

     けれど、本当にそうだろうか。私たちの「意識」というやつは、驚くほど簡単に時間を飛び越えてしまうのではないか。

     

     数年前、私は人生のどん底にいた。何をやっても上手くいかず、自分の選択のすべてが間違っていたように思えて、夜が来るのが怖かった。布団の中で丸まりながら、「どうしてあの時、違う道を選ばなかったんだろう」と、過去の自分を責め続けていた。

     そんなある夜、ふと思ったのだ。
     今こうして責め立てられている「過去の私」は、一体どんな気持ちでいただろう、と。

     その瞬間に脳裏に浮かんだのは、数年前の、ある分岐点に立って震えていた自分の姿だった。彼は彼なりに、限られた情報と、ボロボロの精神状態の中で、必死に考えてその道を選んだのだ。誰も味方がいない中で、孤独に耐えながら、未来の私のために必死にバトンを繋ごうとしていた。

     そうに気づいたとき、胸の奥が締め付けられるように痛むと同時に、猛烈な申し訳なさが湧いてきた。過去の自分を責めていたのは、他ならぬ「今の自分」だった。裏切られたような顔をして、過去の傷口を抉っていたのは私自身だったのだ。

    「もういいよ」
     私は暗闇の中で、声に出して呟いていた。
    「もう自分を責めなくていい。あの時のあなたは、本当に一生懸命やった。間違っていなかったよ。今の私が、ちゃんと全部引き受けるから。大丈夫だから」

     不思議な感覚だった。数年前の記憶の中の自分が、張り詰めていた肩の力をふっと抜いて、小さく微笑んだような気がした。過去の自分を許し、励まそうと決意したその瞬間、私の心を満たしていた冷たい霧が、一気に晴れていくのを感じた。

     

     そして、涙を拭った私の頭に、ある一つの電撃のようなロジックが閃いた。

     私が今、時空を超えて「過去の自分」を熱く励まし、抱きしめたのだとしたら。過去のあの瞬間にいた私から見れば、それは「未来の自分」が、時空を超えてエールを送り届けてくれたということになる。

     ということは、だ。

     今、この瞬間にボロボロになって、未来が見えなくて、立ち尽くしている「現在の私」の元にも、同じことが起きているのではないか。

     私が今、どれほど孤独で、周囲に誰も理解者がいないように思えたとしても、実は絶対に私を裏切らない、最強の味方がすでに背後に立っている。それは、「さらに未来の私」だ。

     いつかこの暗闇を通り抜け、振り返ったときに、「あの時の自分がいたから、今の私がある」と、愛おしさを込めて今の私を抱きしめようと決意している未来の私。その未来の私が放った温かい眼差しやエネルギーを、今の私は直感的にキャッチしているからこそ、私は今、こうして「生きていよう」と思えているのではないか。

     因果関係が、一瞬でひっくり返った。
     過去が現在を作り、現在が未来を作るのではない。
     「未来の私の決意」が、現在の私を支え、生かしているのだ。

     

     この視点を持つようになってから、私の世界は一変した。
     相変わらず人生にはトラブルも起きるし、落ち込む日もある。けれど、心に致命的な穴が空くことはなくなった。なぜなら、自分がどんなに惨めな状態にあっても、「未来の私は、もうこの経験をどうやって愛おしもうかと考えている最中なのだ」と確信できるからだ。

     世の中の多くの人は、この時間の美しい対称性に気がついていない。時間は一方通行だと信じ込み、未来を「まだ見ぬ不安な白い霧」のように恐れている。

     けれど、本当の時間は円環であり、双方向だ。あなたが過去の自分を救おうと決めたその瞬間に、未来のあなたがあなたを救うためのループが完成する。意識の次元において、私たちは決して一人きりで時間を旅しているわけではない。

     もし今、あなたが暗闇の中にいるなら、どうか思い出してほしい。
     あなたの背中をそっと押しているその温かい手は、他でもない、いつか全てを乗り越えた「未来のあなた」の手なのだ。その励ましは、祈りのような確信を持って、すでにあなたに届いている。








     
     
    みなさんこんにちは。私は、元検視官で現在はFIRE生活をしている「ユル」です。警察官人生で約3000体のご遺体と向き合いました。死者の方々を師として学んだ「今を大切に生きること」などを徒然なるままにお伝えできればと思っています連絡先a1013hpa@gmail.com

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