
1日で2度泣いた日
私は映像関連の仕事をしているのだが
映像の仕事をはじめたばかりの頃
インターネット経由で
結婚式の撮影の仕事をしたことがあった。
もちろん、まったくの他人の結婚式だ。
背景を知らない2人なのだから
感動する訳もないと思っていたし
粛々と仕事をしよう!そう思っていた。
だけど泣いた、結構泣いた。
知らない誰かの物語にも
ちゃんと感動出来るのだ。
カメラのモニターが滲む
ピントは合っているはずなのに
全てがボケて視える。
その間もオートフォーカスは
機械的に顔を追い続けていて、とても頼りになる。
結婚式で一瞬も気の抜けない状況
リアルタイムで慌ただしく動く中
休憩など取れるはずもないまま1日が過ぎたが
自分が撮影した素材が式場に流れ
たくさんの人が感動している光景に
終わってみると心地良い疲れが
ジワっと体を駆け抜ける。
担当者も喜んでくれたし
またお願いしたいと好感触だったので
『ぜひ、お願いします、お疲れさまでした』
『お疲れさま!ありがとう!』といった具合に
儀式的な仕事終わりの挨拶を済ませたのだが
私にとってはまだ、大事な話が残ってる。
日払いのはずがなかなかその話にならないのだ。
まだなにかあるの?という顔をして
こちらを見ているので
慎重に言葉を選び確認してみると
『試用期間はギャラは出せないんだよ
言ってなかったっけ?ごめんね。』
・・・。
遠い場所までの交通費や当日の経費を考えれば
駆け出しの身にしてみればかなりの痛手だ。
当日、もう一人カメラマンがいて
2人体制でやってるものだと思ってたのだが
違ったらしい。
『本来は全て1人でやるものだから
1人で出来るようになったらギャラ渡すね!
それまで頑張ってみて!』
まだ駆け出しということもあって
それはそうなのかもしれないけど、、
素材までしっかり使用しておいてゼロとは、、。
と喉元まで出かけた言葉を飲み込んだ。
映像の世界ってそういうものだよ?と
足早に去っていく担当者の顔に
そうハッキリと書いてあったからだ。
知らない土地、初めての現場
早く1人前になりたい、やり場の無い気持ち
帰り際、予報外れの雨までついたフルコースが
やりきれない感情を煽ってくる。
知らない誰かの華々しい祝いの席の裏で
私は1人泣いた。