
ハプニングから生まれた朝ごはん
この日、私は休み、夫は出勤だった。
どちらかが休みの日は、ちょっといい朝ごはんを作ってあげるのが定番になっている。
前日から、朝ごはんはホットケーキにすると決めていた。
暑い日が続いた5月下旬、よく晴れた日に布団を干して、布団カバーも洗濯した。
もう使うことはないだろうと、綺麗に畳み、収納袋に片付けて、代わりにタオルケットを出した。
それがここ数日、雨で気温が下がり、肌寒い。
タオルケット1枚では凍えてしまう。
しかし、一度片付けた布団を出すのはどうしても嫌だ。
無駄な抵抗として、長袖のパジャマを着て、タオルケットに包まりながら寝ている。
そのせいで、朝の早起きもできていない。
何をやっているんだろう。
この日も「さむい〜」と言いながらタオルケットに包まっていたため、予定より15分ほど起きるのが遅くなってしまった。
あわててボウルと材料を取り出し、ホットケーキの生地を混ぜる。
なるべく早く出来上がるように、フライパンを2枚出して同時に火をつける。
すると、ものの3秒でピーッと音が鳴った。
我が家のガスコンロは、弱火にしすぎると勝手に火が消えてしまう。
そのせいかと思い、もう一度火をつけようとした。
しかし、火がつかない。
今かよ。
ガスコンロの電池が切れたのだ。
もう半年くらい警告ランプがついていたが、全く切れる気配が無かったから放っていた。
我が家に替えの電池は無い。
ひとつのコンロなら、まだ火がつく。
これで焼ける分だけ焼いてみよう。
火をつけて数分経つと、ピーッと鳴って火が消える。
火をつけては消え、を繰り返しながら、2枚焼けた。
3枚目を焼いていると、10秒で火が消えてしまうまでになった。
なんとか焼けたようだが、心配なので、電子レンジで1分加熱した。
さすがにもう無理だ。
あと1枚分の生地が残っているが、とてもじゃないけど焼き切れそうにない。
「電池買ってくるよ」と夫が言ってくれるが、出勤前の夫をコンビニまで走らせるのも申し訳ない。
夫を送り出すのと一緒に、電池を買いに行くか。
でも、それから焼き直すのもめんどくさいな。
その時ひらめいた。
ホットケーキミックスでクッキーやスコーンを作ったりしてるんだから、ホットケーキもオーブンで焼けるのではと。
スマホで調べると、予想通りオーブンでホットケーキを焼くレシピが紹介されていた。
残っていた生地を耐熱容器に入れて、180度のオーブンで20分。
夫には、フライパンで焼いたホットケーキを食べてもらった。
その夫を横目に、夫が淹れてくれたコーヒーを飲みながら、オーブンホットケーキが焼き上がるのを待った。
ピーピーピー。
オーブンを開けると、ふんわり膨らんだホットケーキが現れた。
端っこはカリッと焼けていて、バターを乗せるとじゅわぁ〜ととろけた。
ああ、なんだかいつもより美味しそう。
こういう、いつもと違うことをすると「え〜ずるい、俺も食べたい」と言う夫。
出発の時間ギリギリだったが、夫は歯磨きをせずに待っていた。
焼きたてのホットケーキを一口頬張った。
想像以上に熱かったらしいが、「これもおいしい」とにんまり笑って、いそいで歯磨きをして家を出ていった。
ベランダから夫に手を振って見送り、フライパンを洗い、洗濯物を干した。
それから、ちょうどよく冷めたオーブンホットケーキをゆっくり食べた。
夫が淹れてくれたスペシャルティコーヒーも、焙煎から時間が経って苦味が増し、私好みの味になっている。
私はスペシャルティコーヒーについてあまり詳しくないので、間違っていたら教えてほしい。
最高の朝時間だ。
しかも、オーブンホットケーキはフライパンで焼くより手間もかからず、洗い物も少ない。
ハプニングが、新しい朝ごはんをひとつ教えてくれた。