
僕らの箱庭の中で。
たとえば、どこかで誰かと待ち合わせをすることに
今日は緑色のポロシャツをつけている、
明日になったら、もしかしたら、ピンクのチュールのワンピースをつけているかもしれない。きっと、ちゃんとアンダーソックスも履いているだろうし。
でもこんなこと考えたって、
街の空気は熱心な 興味と度を超えた歌声で埋め尽くされて まるで
架空の 箱庭のよう。
あちらこちらにサーカスのような格好をした
踊り子がいるよ
あちらでも笑っている こちらに来たら文句を言っている。
長らくして、待ち合わせをしていた彼女が来た。
「お疲れ様って顔してるね。…どうかしたの?」
僕は、しばらくして応えた。
彼女はまだ腑に落ちないようで
「やっぱり少し南の方角へ行こう。」と誘ってくれたのだった。
南の方角には、大きな灯台
北や東には、普通の商人が集まる集落。
そして北には、祭りの時に使われる大きな神社がある。
目を瞬く彼女の目には、勇気や葛藤や美しい凛々が見えていて
さぞかし、僕を気に入ってくれたかのようだった。
彼女は 僕の歳の離れた、
優しい歳上の 従姉妹である。
実は、ちょっとした婚姻関係があって、
これから彼女の仲人の役をするのが。僕の役目なんだ。
そっーと彼女の袂にある、おまじないのクロスに手をかけようとしたら、
彼女は言った。
「もうそろそろ気づくはず。彼だって。だって私のお気に入りの小説家は彼だけだもの・・・」
クロスが音を立てて、床へと落ちていった。
プラチナは色が変わりやすくて、実は少し小細工が向かない。
ゴーン、ポーン
ゴーン…チックタック、チックタック…。
柱時計が勢いよく音を鳴らしていることに気づく。
もう時間なんだ。
と僕は言った。
彼らは北へ行くのだろう。か?
何然、塞いているのだろう?と息の詰まった言葉が中を転がし
コンコンと扉を優しく鳴らす音がして、
凄まじくギィーっと音を立てて、彼女、美海の婚約者である草太朗
の足音が響いた。誰がどう聴いたとしてもわかる特徴的な、そのステップを踏むよ うな足音からは、朗らかな、タンゴダンスを思い起こさせた。
斯くいう 草太郎はアメリカタバコが好きで、そのやんわりとした、
甘臭いやっけでほんのりと暖かな香りは、
どこか遠い、ポートランドや、サンフランシスコといった、船着場の雰囲気を思い 起こさせる気がした。
カタッとなって、草太朗は、
柱時計に手を伸ばした。隠し扉の底を探った。
草太郎が手に持っていたものは、一つの懐中時計であった。
イギリス製の枯れ草の 模様が入った 独特な風貌をもつその懐中時計は
「そもそも僕らが、ここに集まる理由ってのがうまく浮かばないのだが?」
僕は口を開いた。
開口一番喋り出してしまったのが、出会した訳と言ったものだから。草太朗も美海も笑い出した。
三分以上 も二人は笑っていて、さぞかしウケたのだろうと僕は思い浮かべたが。
強いて何も言わずに三者寮王、ちらりちらりと周囲の 豪華な装飾品を見ては
固まっていて少し緊張感があった。
明日は、少しかしこまった格好をしなくちゃならないから。
口頭はもの推しそうな言葉が浮かんだ。
「さて、私の言葉は聞こえている?…わよね?」
と美海は少し皮肉に笑いながら言った。
美海の噂話
時は大正2年。
美海と草太朗
そして僕、優乃は、時をかけていた、商売人である。ひと山をかけた産業なんて、さぞかしお偉い感じがするもんだが。
さて、美海は少しつぶやいた。
「今日神戸港に行くってことを、実はお友達に話してしまったの。」
草太朗は目を見開いた。
美海を背後から見つめたその目は愛おしいを超えた慈愛の色が見えた。
しかし、草太朗はしばらくしてから美海を諭してこういった
「ダメじゃないか?君ってやつは。約束は必ず守らなくちゃいけないのだから。僕たちの関係が婚姻に関することだって君のお友達の新聞記者にでもバレたら、どうするつもりだったんだい?」
「お守りする価値が見つからないのだもの。」
と美海は言い、ひらりと舞い、クラシックバレエダンスを踊ってみせた後、こういった。
みんなが私たちのことを嬉しいわ。
って言ってくれるのが、私の夢だから。
それから僕たちはウィスキの瓶を開け
一夜ずっと酔わずに身の上話をした。
僕らのこと
朝、目が覚めると僕は、もうすでに甲板の懐にある、
一室で顔を洗いながら
小麦歯磨き粉で口を洗っていた。ウイスキの着色を取るには、
これが一番最適なのだから。と、僕は腕時計に気がついた。
午前11時35分…
ああ、草太朗と美海は?どうしているのだろう
僕はカタリと音を立てて、受話器をとった。
もしもし?草太朗?美海?
どちらかな?
…
プッープププ。
…あー…もしもし?僕、僕、草太朗だけども。
ああ、僕だよ。
ああ君かい。開口一番に怠けた喋り口調ですまないな。
いえいえ、美海姉さんは大丈夫かな?
…フッっと草太朗は笑った。
あまり言えることでもないけども。僕の腕の中でぐっすりさ。
カタンと音を立てて僕は歩き出した、
プープッ、と音をたてて受話器は転がった。
よかった!!美海姉さんがついに 草太朗のことを気に入ってくれたのだろうと
僕は急いで、ガラスペンを握り、軽く手を添えて、
手紙を書きだしたのだった。
開口一番嬉しいと
空は青く澄み切って、君たちの枯れ立野 いつもを思う。
もう何も要らない。と僕は思った
コンコンと甲板の近くの僕の一室の扉から音がした
キィィ。と音を立てて、
女性が入ってきた。
見知らぬ女性に一瞬見えた。
ああ、海野か?
その子は 僕の”友人のフランス人の子供である”海野奈月であった。
流暢な少し気品のある日本語で、海野は言った。
『少しお茶してもいいかな?』
僕はその言葉が懐かしくて 聴いてしまった。
「僕の名前を覚えているかな?奈月だよな?髭を生やしている僕でもわかるのかな?」と僕は笑ってみせた。
槇優乃でしょ?
といい、そこからは夕ご飯後でもあったしと言ったような時間の経過があって
僕らは 甲板の向こう側を見た
夕陽の先には、
浜崎があって、そこには神戸の街が広がっていた。
※実在する名、会社等とは全く関係がないフィクションです。
©︎草野加奈