
短歌と日記🍎19
母の日が嫌いなわたし感謝なら殺さなかったわたしにしなよ
感謝することなどなくて母親のLINEをブロックする春の朝
しあわせは食卓にある君の手がつくる料理をしあわせと呼ぶ
湯気の立つ蒸籠の向こうにいる人に救われていてキャベツがあまい
***
母の日が嫌いだ。
毒親育ちで、母親が死ぬまで実家には帰らないと決めている。
「自分がされて嫌なことはしません」という理由の反出生主義で、結婚はしているが子どもは作らないと決めている。
(こういう「されて嫌なことはしない、連鎖は断ち切る」というのを「サイクルブレーカー」と呼ぶとフォロワーさんに教えてもらった。なんだか格好いい)
不祝儀袋を買いにハンズに寄ったところ、案の定「母の日フェア」のコーナーができていて、視界に入れないようにしながら買い物を済ませた。
「あれはわたしと関係ない」「やりたい人はやればいい」
そう言い聞かせて視線をそらす。
毒になる親なら最初からいないほうが良かったと思う。
母の日という単語を見かけた日はたいてい機嫌が悪い。
夕飯の席で
「お香典袋買いにいったら母の日フェアみかけて“むきゃーっ!”ってなっちゃった」
と言ったら、夫は蒸籠の蓋をあけながら、
「私も今日スーパー行ったら母の日フェアを見たんだけど、チョコとかのお菓子の横にサントリーの角瓶がめちゃくちゃ積んであって…あのスーパーの母親への解像度すごいなって思ったよ」
と言った。
「ほろよいとかではなく、角瓶!?」
「うん、しかも売れてて補充してた」
それを聞いてけらけら笑いながら蒸籠の野菜をつつく。
今日は蒸籠でむした温野菜がメインだ。
こうやって何でも笑い話に変えてくれる人だから、やはり選んで正解だったと思う。
わたしの家族はこの人と犬だけだ。
「おいしそうに食べるね」
にこにこしながら夫が言う。
家でまともなご飯が出てくることがまだ嬉しい。
実家にいた頃に何を食べていたか覚えていない。
たぶん家にろくに寄り付かなかったので、ほとんど外で適当に済ませていたのだろうけど。
「おいしいからね」
今日はお出汁が違うんだよ、と説明する夫にふんふんと相槌を打ちながらお吸い物を飲み込んだ。