
私が生きようと思ったのは
私が生きようと思ったのは、
戦争が嫌いだと思ったから
理不尽な大人に呆れたから
「うちの子なんて」が許せなかったから
そんな世の中を変えたいと怒り狂ったから
誰かの役に立ちたかったから
輪の中に堂々と入っていたかったから
身を削っても削っても、難しかったけど
私が生きようと思ったのは、
受け入れられなかったから
役に立てない私
迷惑をかけずに生きられない私
どんどん頭が悪くなる私
そんな自分を逃さずボコボコにしたかったから
私が生きようと思ったのは、
あとのことを想像したから
生きることをやめたあとの私を
知る人が可哀想でならなかったから
おまえのせいだ
と中年くらいの男性の声が頭の中で怒鳴ってきて、
私はその"声"がとても怖かった
眠るのも、眠らないのも怖かった
眠れなかった、眠りすぎた
私が生きようと思ったのは、
忘れん坊になったから
お風呂もご飯も
服の選び方も
家の出方も
包丁の場所も
日付と時刻の読み方も、わからなくなったから
何も感じなくなったから
私が生きようと思ったのは、
なんで生きなくてはいけないのか、わからなかったから
700日かけて探しても、生きる理由は見つからなくて
それなのに、
死は負のエネルギーを生むらしい
ということだけ、わかったから
負のエネルギーを発する権利を持っていなかったから
生きることだけを、自分と約束したから
私が生きようと思ったのは、
私に残された場所があと1つになったから
ここでうまくやれなかったら人生終わりだ
と思ったから
それでもまだ、親の願いを叶えたかったから
私が生きようと思ったのは、
いくつか歳を重ねたから
気がつくと1月、また1年と
瞬く間に時は過ぎて行ったから
生きようとしなくても生きていったから
私が生きようと思ったのは、
生きがいと居場所をすべて失ったと思ったから
どうしたって迷惑な自分が憎くて
生きていたくないと思ったから
消えたくて、もう全部やめにしたくて
最初から無かったことになりたくて
カフェのトイレの
便器もチャイルドシートも
死に場所に見えた時
震えた身体は確かに、
"死にたくない"
と言っていたから
消えたい私の後ろに隠れて
生きたい私が泣いていて
そんな甘えた情けない私を
抱きしめることに決めたから
ただ生きるとだけ、自分と約束したから
私が生きようと思ったのは、
私が捉える全てが信じられなかったから
捉えるものに“宇宙”と名付けて
私に、私だけの“宇宙”を作ったから
この世に正しいも間違いもないと知ったから
正しく生きようなんて無理
それなら、
面白く生きようと思ったから
しばらく、何も感じなくなっていたから
消えたい気持ちが帰ってきた時に
"おかえり、待ってたよ"
と思えたから
私が生きようと思ったのは、
己の無力さを知ったから
欲しがられていたのは私のもちものじゃなくて
私自身と知ったから
私が生きようと思ったのは、
全然うまくやれなかったから
全然うまくやれなかったけど
その経験は、私や誰かが、うまくいく日のためだから
余白を持つことを忘れていたから
不足の美しさに気づいたから
できないことを見つけた時は、
どんぐりを見つけた時みたいに
嬉しそうに叫んでみようと思ったから
私が生きようと思ったのは、
周りに合わせられなかったから
なりたい私になればいい
自分らしさを探すために、小さなワクワクを集めて良い
と思ったから
いつだって時代は人を追いかける
そういう時代を先駆けていけば良いと思ったから
私が生きようと思ったのは、
親に感謝できなかったから
まだ心から、産んでくれて、育ててくれてありがとうと
思えていないから
私が生きようと思ったのは、
道端のお花がツツジと答えられなかったから
中学の理科の教科書の1ページ目
まだ知りたいことがあると気づいたから
私が生きようと思ったのは、
神社に行った時、
神様に「よく来たね」と言ってもらえた気がしたから
私が生きようと思ったのは、
夕暮れに足が急いだから
収めた街と夕焼けと、1番星に
鼻奥が弾んだから
私が生きようと思ったのは、
柔軟剤にあなたが香ったから
私を抱きしめた時の嬉しそうな香りを、思い出したから
あなたが楽しいと言ったから
私がただここいることに意味があると
教えてもらったから