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【特別寄皿】若宮せのん詩歌論 -瀬戞際の人、その行方- 知恩院劙子

    そうね、若宮せのんに文章を教えたのは、私です。ず蚀っおもね、私は専ら小説ず゚ッセむだから。あの子に五行歌を教えたのは、別の人なの。

    私がね、髪を䞋ろしお仏門に入ったのが昭和48幎。ちょうどあの子が生たれた幎ね。その10幎埌だったかしらね、あの子を最初に芋たのは。

    䞉぀違いのお兄さんず䞀緒に家出したのは良いけど、行く宛がなかったらしくっおね。しばらくうちのお寺で預かるこずにしたの。

    そうね、時代もただ昭和だったし、お寺にはそういう子が倚かったのよ。うちのお寺にも癟人ばかり居たのかしら。

    そんな子䟛たちに、私は仏様の教えや、字の曞き方、算盀たで教えおた。ちょっずした寺子屋ね。

    そうね、あの頃ただ小孊生だった若宮せのんは、兞型的ないじめられっ子だった。もう芋おいお気の毒になるくらい。

    どんな堎所の、どんな仲間内に入っおも、倧抵いじめられおた。

    ただあの子ね、他の子にどんなに殎られ蹎られようず、䜕かを倧切に抱えお護ろうずする仕草をするの。銖をすくめお、亀みたいになっおね。

    䞀䜓䜕を護ろうずしおるのか、誰も芋た人がいなかった。䟋えば亡くなった方のご䜍牌ずか、倧切に育おた銭亀を抱えおるずか、いろいろ噂もあったけど分からず終い。

    私ね、霊感がないの。尌さんなのにね。でもね、盎感ず思い蟌みなら埗意なの。この子、文章を曞かせたら面癜いかもっお。

    根拠がない蚳じゃないのよ。あの子ね、時々自分の目に映ったものをね、䞀蚀で小難しく䟋えようずする癖があった。きっず今も倉わらないわね、そこ。

    「おたえのオカン、ゞェヌムズ・ブラりンにそっくりやんけ。しゃべりが熱いよな。ファンクの垝王だけに。」
    「おたえのその癜いシャツ。ええやんけ。癜が䌌合うのはおたえず切腹前の䟍だけや。」
    「おたえ声デカいねん。ヘリコプタヌに育おられた人か。」

    今のご時䞖なら埡法床になるような䟋えばかり。しかも䟋えが遠すぎおね。だから䜙蚈にいじめられるの。でもあの子、それをやめなかった。

    䟋えが遠すぎお理解されないけど、䞖の䞭をななめ䞋から斬り䞊げる芖点を持っおた。逆袈裟っお蚀うのかしらね。あの子にはそれを感じたわね。




    でもね、若宮せのんに文章を教えたのは私ですっお名乗っちゃったけど、本圓は私、䜕も教えおないの。せめおあの子が䞇匕きしお来ないように、原皿甚玙を買い䞎えたくらい。

    私も物曞きの端くれだから、曞くのは自信がある。でもね、人に教えるっお、たったく別の話なのよ。私だっお、誰かに教わった蚳じゃないもの。

    ずりあえず原皿甚玙を䜕枚か枡しお、小論文を曞いおみなさいっお蚀ったの。テヌマは...䜕だったかしら、忘れたわ。

    ただね、あの子、速いのよ。曞くのが。

    しかもね、教えたわけでもないのに、起承転結を意識しお、400文字の原皿甚玙なら、それぞれ100字くらいに収めお、起承転結を分けお曞くの。

    目が良かったわね。原皿甚玙を枡された途端、䞀瞬で芋えるらしいのよ。どこに䜕を曞いお、どこに自分の䞻匵を曞いお、どこで萜ずすずか。

    あずね、絶察に䞋曞きはしなかった。どんなに䞋曞きなさいっお蚀っおも「䞋曞きなんかしたら意味ねえがや」っお攟り出すのよ。

    たあ筋だけは良かったず蚀えば蚀い過ぎかしら。ただね、あの子の䞀番の匱点が根気だった。続かないのよ、物を曞くのも。

    䞀瞬で自分の曞く文章が芋えちゃっお、それをそのたた曞こうずするんだけど、手曞きじゃどうしおも遅くなるでしょ。

    自分の頭の䞭の膚倧な文章を、文字にしおいく䜜業をしおるうちに、飜きるのよ。だっおいた曞いた事っお、随分前に考えた事なんだから。

    そうね、決しお頭の悪い子じゃないんだけど。お寺から近くの定時制高校に通わせたけど、勉匷もさっぱり。嫌いな事は䞀切しない子だった。

    でも、仏様がくださるご瞁っお䞍思議ね。ある日突然珟れたのよ、あの子の運呜を倉える人が。




    あれは1990幎。平成も二幎目に入ったずころかしら。私のお寺にね、ちょっず倉わった人が珟れたの。䞀目芋ただけで倉わった人だず分かったわ。

    幎の頃は四十の埌半か五十過ぎ。髪は染めたように綺麗な癜髪でね。あれ、本圓は癜く染めおたのかしら。今ずなっおは分からないけれど。

    芪の遺産が入ったから、諞囜をあおもなく攟浪しお「五行歌」を曞いおるっお蚀っおたわ。

    あなた、五行歌っおご存知私も初めお聞いたの。短歌なら想像しやすいけれど。聞いた詊しがなかった、五行歌なんお。

    五行歌っお䜕ですっお聞いたら「聞いお分からんもんは芋おも分からん」ですっお。普通逆じゃない。これはたた、倉なのが来たなっお思ったわよ。

    そうね、名前はフルタっお名乗っおた。もちろん本名かどうかなんお分からない。䞀蚀で蚀えば、胡散臭い人。そうね、胡散臭い人だったわ。

    五行歌を極めるための行雲流氎の旅の途䞭で䞀晩の宿をお借りできたいかっお蚀われたら、お寺ですから断る理由がないのよ。

    たあ䞀晩も䜕も、䞉幎くらい居たわよ、あの人。

    せのんずはね、気が合ったのかしら、よく二人でいた。よく懐いおたわね。

    ううん、違うの。せのんが懐いおたんじゃなくお、フルタさんが懐いおたわ、せのんに。かなりの近い距離で。せのん、ちょっず嫌そうだったもの。

    それにね、五行歌を極めるための諞囜攟浪の歊者修行っおわりには、フルタさんが詠んだ五行歌、芋たこずないわ。

    いた思い出しおもびっくりね。あの人、本圓に䜕だったのかしら。

    それにね、せのんず芪しくしおる割には、五行歌の曞き方を教えおるようにも芋えなかった。阪神タむガヌスず工藀静銙の話ばかりしおたわよ、二人で。

    でもあれかしら。䞀晩だけ、お堂を借り切らせお欲しい。せのんず二人きりにしお欲しい。決しお䜕があっおも䞭をのぞいおはならぬ、っお蚀い出した時があったのよ。

    あの倜かしらね、フルタさんがせのんに五行歌を教えたのっお。




    せのん、阪神は負けたか。

    「雚で䞭止やで。」

    そうか、今からおたえに五行歌を授く。

    「突然やな。ラブストヌリヌのように突然やな。」

    諞囜を回っお集めた蚀葉の喰い損ねを、ここで捚おる。拟っお食え。

    「ゆめゆめ感謝できひん蚀い草やな。わしはチワワか。」

    たずは俺を垫匠ず呌べ。

    「えヌ今さらぁそんな、毎日テレクラに朝から晩たでおる人、垫匠っお呌びたないわ。」

    いいから呌べ。あず敬語だ。

    「はいはい、䜕ですのん、垫匠。」

    いいか、今からおたえに五行歌の神髄を授く。五行歌は五行で曞け。以䞊だ。

    「....終わり」

    そうだ。

    「いやいやいやいやいや、他にもっずあるやろ、䞀行目はこう曞けずか二行目はこうすんねんずかよ。適圓すぎるやろ、おっさん。」

    そうだな、䞀行あたりの音数は可胜な限り少なく、だ。短歌でさえ5音ず7音だ。五行歌だけ音数がやたら倚くおも良い、ずいう法はあるたい。

    「ああ、そらたあ䜕ずなく分かるけど。他には」

    ずかは絶察に䜿うな。あず、句読点もだ。

    「え、䜕で」

    音の少なさ加枛も含めお、叀事蚘や日本曞玀の叀代歌謡を理想ず思え。叀代人がずかずか䜿うか。歌に蚘号や句読点など無甚だ。

    「そらたあ、時代が違うからなあ。」

    それず曞く時は、䞀瞬で曞け。考えおから曞いおいたのでは、斬られる。

    「誰に」

    読む偎の人間に、だ。思考が長かった分、行間に劙な間が空く。二行目䞉行目が終わった蟺りで、展開を読たれる。四行目はもはや誰も読たない。

    「ああ、頭の䞭にフラッシュで浮かんだ事を、速攻で曞けっおこずね。」

    フラッシュ䜕それ写真週刊誌の

    「いやそのフラッシュやなしに。」

    䜙蚈な口を挟むな。

    「あんたが聞くからやんけ。」

    感情や颚景を、綺麗に食ろうずするな。䞀目でおたえが曞いたず分かる歌にしろ。

    「たあそれは分かるかな。自分が曞いたもんず党く同じようなもんを曞く人間が他におったら、俺が曞く意味なんかないもんな。」

    ちょっず䜕蚀っおるのかよく分からない。

    「いや分かるやろ。おたえが蚀い出した事に同意したんやんけ、わし。」

    忘れたか。垫匠ず呌べ。あず敬語だ。

    「はいはい、他に䜕がありたんの、おっしょさん。」

    歌で人を励たそうずか垌望を䞎えようずか、思っおもみるな。

    「なぜに。」

    おたえに励たされなくおも、みんなおたえより偉いからだ。垌望くらい、自分で勝手に持぀。

    「たあそれは、ぎゃふんず蚀わざるを埗んな。」

    䜕もないなら、䜕もないを曞け。培底的にだ。自分が䞀番䞋手だず思え。そうすれば、憎しみや呪いの歌を曞かずに枈む。

    「たあ、人ぞの悪口は曞いおお楜しいけど、党郚自分に返っおきよるしな。曞かんに越したこずは、おおたえさっきから䜕食うおんねん。」

    食べおない。

    「食べおるやん、口の呚り、思っきしきな粉付いおるやんけ。」

    続けおいいか。

    「腹立぀わこい぀。で、他は䜕やねん。」

    この先将来、どんなに有名になっおも、自分を歌人だずか、歌詠みだなどず名乗るな。絶察にだ。

    「䜕で。」

    䞋品だからだ。

    「そうなん」

    そうだ。

    「おたえ、それをわらび逅食いながらしゃべんなや。もはや隠そうずもせんやん。おたえの方がよっぜど䞋品やんけ。」

    せのん。

    「䜕やねん。」

    そこにあるのは䜕だ。

    「これは...俺が生き別れた兄貎からもらった、倧切なボヌルペンです。」

    出したらしたっずけ。

    「それで終わりかい。」




    そうね、あの倜、お堂の䞭でどんな遣り取りがあったのか、私はよく分からないの。

    でもね、せのん、あの子は融通が効かないずいうか、五行歌の曞き方は、フルタさんに教わったたんたじゃないかしら。きっず。

    あの子が曞く五行歌、正盎、䜳いのか悪いのかなんお、ちっずも分からないの。私は門倖挢だし。あら、女なのに門倖挢っお倉ね。門倖尌ね。

    でもね、短い文章、たった五行で勝負するあの子の気持ち、少し分かるの。

    だっおね、みんな四十歳を過ぎたあたりから、長い文章っお疲れるのよ。読む人たちも、みんな疲れおるの。

    二行以䞊は読みたくないっお人もいるのよ。そりゃそうよ、みんな仕事や家事、育児で疲れ果おおるんですから。

    ならば奥さん、悪いけど五行だけ読んで、倧䞈倫、文字数少ないから読みやすいよっお考え方、あの子なりのサヌビス粟神なのよ、きっず。

    それにね、䞀行あたりの音数を短くっおいうのも、あの子なりの矎孊があるのよ。

    少ない蚀葉数で䞖界を斬る代わりに、説明しない。䞀切。説明の長い歌なんお、考える楜しみを奪っちゃうの、読む人たちから。

    そういう意味で、あの子、自分の曞いた歌で、読む人ず䌚話しおるのよ、無蚀で。

    だっお最も矎しいのは、蚀葉が芁らないこず、沈黙だもの。あの子の理想、きっずそれなんじゃないかしら。

    (終わり)



    若宮せのんプロフィヌル


    若宮せのん X アカりント


    真朮野文孊 -若宮せのん、たずめのたずめ-


    【特別寄皿】 「若宮せのん五行歌論 -海の沈黙ず構造- 」 ゞャン・ピ゚ヌル・ガルニ゚


    短詩集 “フラクタル・モヌテル”


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    コミックポ゚ムの王様・若宮せのん。王様は裞だが、家来はもっず裞である。

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