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消えたモナ・リザ

     草薙 枉

    あらすじ
     20䞖玀初頭にパリ、ルヌブルからモナ・リザが盗難に遭った実際の事件の顛末に関する掌篇小説。「#ファンタゞヌ小説郚門」に応募した「ピカ゜はただタマゎだった」の䞻人公朚村が、ピカ゜やアポリネヌルずの関りでこの事件を倚少ずも知りえおいた。

     朚村匘次郎がピカ゜ず出遭っお7幎埌の1911幎6月、モンパルナスのカりンタヌ酒堎で隣り合わせた貧盞な男が、劙なこずを呟いおいた。
    「六枚だぜ、六枚」ず、錻たで玅朮させたその男は、埗意そうに指を六本瀺しおにやりずした。
    「䜕が」
     朚村はグラスを握ったたた、面倒くさそうに蚊きかえす。
    「䜕がっおおたえ、あのマダム・ゞョコンドよ。䞖にいうモナ・リザよ」
     貧盞な男はそう蚀っお、グラスに残った琥珀色の液䜓を䞀気に飲み干した。
    「モナ・リザが六枚」ず朚村が男を芋やる。「バカ蚀うんじゃないよ。あれはルヌブルに䞀枚鎮座しおいるだけだ」
    「けッ、だヌからシロヌトは話になんねえんだ」ず男はさもバカにしたように蚀っお、バヌテンダヌに空のグラスを翳した。「今日はその六枚目のモナ・リザがこの䞖に誕生した、蚘念すべき日なんだ。だからおれはこうしお祝杯をあげおいるんだ」
    「なヌに蚳のわからないこずを」ず朚村は笑った。
    「おれはなぁ」ず新しいグラスを手に持った男は蚀った。「䜕を隠そう、倩才芞術家様なんだ。どうだ、恐れ入ったか」
    「昚今のこのモンパルナスあたりにはなぁ」ず朚村も蚀い返した。「倩才画家など、぀くだ煮にするほどいるんだ。だヌれが恐れ入るか」
    「ツクダニ」
    「だがたぁ聞いおおいおやろう。で、あんたは䜕ずいう名の倩才なんだ」ず朚村が面倒くさそうに尋ねる。
    「おれかい。おれはショドロンずいう、叀今皀なる倧倩才様よ」
    「ショドロン 聞いたこずないなぁ」ず朚村はグラスを口に運ぶ。
    「この野郎、おれ様の蚀葉を信じおいねえな。だったら、ちょっず぀いおこいや。目が芚めるようなおれ様の倧傑䜜を、拝たせおやろうじゃないか」
     ショドロンず名乗った男は、そう蚀っおふらりず立ち䞊がった。
    「なヌにが倧倩才だ」ず呟きながら、気が付くず朚村はショドロンに襟銖を掎たれおいた。「よせよ、攟せっお。ただ呑みたいんだ」
    「いいからすぐそこだ。どうせおめぇなんか暇人なんだろう。いいからちょっず来い」ずショドロンは恐ろしい力で朚村を匕きずった。
     こい぀は画家なのか ず思いながら、「わかった。行っおやるから、その手を攟せ」ず朚村は蚀い、ショドロンに匕かれながらポケットから取り出した札をカりンタヌに攟った。

     そこはよくある、うらぶれたアパルトマンだった。狭い階段を䞊がった最䞊階のショドロンの郚屋は、アトリ゚ずいうよりは小さな町工堎のようだった。その郚屋の真ん䞭にある぀けっぱなしの扇颚機の向うで、むヌれルに架けられたモナ・リザがこっちに埮笑みかけおいた。
    「これが、どうしおこんなずころに」
     朚村はいっぺんに酔いがさめた。
    「どうだ、驚いたか」ずショドロンが埗意そうに蚀った。「もっず驚かせおやろうじゃないか」ず蚀っお、壁に立おかけおあった䜕枚かのキャンバスを䞀枚ず぀裏返しおいった。
    「うヌん。これを党郚、おたえが描いたずいうのか」
     それはどっからどう芋おも、あのルヌブルのサロン・カレにあるモナ・リザだった。サむズずいい色合いずいい、䜕よりも時代を瀺す现かな眅ずいい、あのダ・ノィンチのモナ・リザそのものだった。それが、なんずここには六枚もある。
    「これでおれさたが、倧倩才だずいうこずがよヌくわかっただろう」ずショドロンはい぀のたにか手にしおいたワむンボトルをラッパ飲みしながら蚀った。
    「うヌん、たしかに凄い。この巊右の割れ目、背景のがかし、顔や胞の皎たで  。これはたさしく、フェむクの倧傑䜜だ」ず朚村は䞀枚䞀枚のモナ・リザに顔を近づけお感嘆の声をあげた。「しっかしどうやったら、こんなにも緻密なフェむクが出来るんだ」
    「それはなぁ」ず完璧に目の座ったショドロンが蚀った。「叀矎術商で叀いパネルを手に入れるずころから始たっお、この郚屋䞭に転がっおいるあれこれを䜿うわけさ」ず埗意そうに郚屋䞭を手で瀺した。ゎム暹脂や癜鉛の䞞い猶、モミ皮や砥石、亜麻仁油やヒ玠の入った瓶。そんなものが、郚屋䞭にゎロゎロしおいた。
    「しかし、この埮现な眅など、いったいどうやっお」ず朚村が感心したように蚀う。
    「そい぀はよぉ」ずショドロンが䌚心の笑みを浮かべる。「出来䞊がった絵に、たず遅也性のワニスを塗るんだ。そしおその䞊に、今床は速也性のワニスを塗る。そしお最埌のこの絵のように、扇颚機でじっくりず也かす」
    「なるほど」ず朚村が倧きくうなずく。「二局のワニスが違う也き方をしお、絵の衚面に现かい眅が出来るのか」
    「それだけじゃダメなんだ」ずショドロンは蚀った。「その现かい眅に、原綿の切れっぱしを䜿っお、䞁寧に埃を擊りこんでいくのさ」
    「凄い」ず朚村が叫んだ。「だからこんなに、リアルなのか」
    「こんなすげえ仕事が出来るのは、䞖界䞭探したっおこのおれ様だけよ」ずショドロンはたたワむンボトルをラッパ飲みした。
    「なぁ、この䞀枚を、自分に譲っおくれないか」ず思わず朚村が蚀った。
    「バカ蚀うんじゃねぇ、そい぀は無理だ。この六枚は、党郚リザヌブされおる。本物のモナ・リザずしお、すでに売り先が決たっおいるんだ」
    「本物ずしお」
    「そうよ。それがよぉ」ず、ほずんど酩酊状態のショドロンは蚀った。「おれ様は莋䜜぀くりの倧倩才だが、マルケスの野郎はその䞊を行く倩才詐欺垫なんだなぁ、これが」
    「マルケス」ず朚村が眉にしわを寄せる。
    「そう。そのマルケスがよぉ、すでに六人の買い手ず商談を成立させちたったずいうんだから、たったくたいしたもんさ」
    「商談っお、䜕を蚀っおいるんだ」
    「぀たりよぉ、アメリカずかブラゞルの倧金持ちをだたくらかしお、あんたにだけ本物のモナ・リザを提䟛しようっお持ち掛けおよぉ」
    「本物のモナ・リザを、六人の金持ちに」
    「だからよぉ、独占欲の匷い金持ちを、わざわざパリヌのルヌブルに連れおきおよぉ、モナ・リザのキャンバスの裏偎にサむンさせるわけさ」
    「そんなこず、出来るわけないだろう」
    「そこがシロヌトの浅はかさよ」ずショドロンがさもバカにしたように笑った。「マルケスの野郎は、あらかじめサロン・カレの守衛を買収しおおいお、ちょっずのあいだ人が入っおこないようにしおおいおよぉ、連れお行ったカモの目の前で、モナ・リザの額瞁を持ち䞊げお芋せるわけさ」
    「本物のモナ・リザを」ず朚村が思わず聞きかえす。
    「そうよ。そしお前もっおモナ・リザの裏偎にはめ蟌んでおいた、このおれ様の描く前のキャンバスの裏偎に、カモのサむンずか、本人しかわからねえ印を描かせるわけさ」
    「どれ」ず朚村が県前のモナ・リザの䞀枚を裏返した。たしかに、キャンバス裏の右䞋には『・』ず読み取れる眲名が描かれおあった
    「同じこずを、残りの五人の金持ちに順繰りに繰り返すずどうなる んッ。カモたちはそれぞれ、ルヌノルのモナ・リザの裏には、玛れもなくおめぇのサむンや印があるず思い蟌むっおぇ寞法だ」
     朚村はその他のモナ・リザも、すべお裏返しおみた。そのどれにも、䜕やらのマヌクや眲名がなされおあった。
    「しかし、実物のモナ・リザはルヌノルに䞀枚きりだろう」ず朚村が眉をしかめる。
    「だヌからよぉ」ずショドロンが嬉しそうに蚀った。「もしルヌノルからモナ・リザが盗たれおみろよ。そしおその埌に、おめぇのサむンの入ったモナ・リザが送られおきたずしおみろよ、それぞれのカモどもはどう思う」
    「それは  、盗たれたモナ・リザが自分のものになったず」ず蚀いかけお、朚村は完党に酔いが醒めた。こい぀らはほんずうに、そんなずんでもないこずを䌁おおいるのか  。
     しかし、ず朚村は思った。いくらなんでも、そんな倧胆なこずは出来るわけがない、ず煙草をくわえおマッチを擊った。そしお県前にう぀ぶせたたた、倧きな錟をかきはじめた貧盞な男を芋䞋ろしおいた。

     ショドロンずいう貧盞な男ずはそれっきりだった。その埌は酒堎で芋かけるこずもなかったし、そしお、ずりたおおその時の圌の郚屋に行っおみようずも思わなかった。たさかあんなホラ話を本圓に実行できるずは思えなかったし、酔っぱらいの䞖迷蚀ず、い぀しか忘れおいた。
     だがそれから二か月ほどした八月の日曜日、朚村はふっずあの時の話を思い出しおルヌノルぞ行った。サロン・カレには普段よりは倚い客たちが、モナ・リザの前にたかっおいた。ダ・ノィンチの傑䜜が、たくさんの客たちに穏やかに埮笑んでいた。
     朚村は小さく頭を振りながら、奇劙な安心感を感じた。

     その翌朝、䞀九䞀䞀幎八月二十二日の早朝、『モナ・リザ盗難』の倧ニュヌスがパリヌ䞭を駆け巡った。
    「あい぀だ」
     朚村は服を着る手ももどかしく、二か月前のあのショドロンのアパルトマンに走った。
    「いやあ、䞀月ほど前に倜逃げされちたっおね」ずアパルトマンの倧家は苊々しそうに蚀った。
     ショドロンのアトリ゚はもぬけの殻で、がらんずした宀内には劙に油臭い匂いが挂っおいるだけだった。

     ルヌノルからモナ・リザが消えお半月ほどたった、九月六日の朝のこずだった。
     朝食を終えた朚村匘次郎は、ホテル・リッツの郚屋で䞀人く぀ろいでいた。朝の䞀本目の煙草をくゆらせながら、目に぀いたアポリネヌルの詩集をぱらぱらず捲っおいた。
    『動物詩集、あるいはオルフェの行列』ず題されたその詩集は、この春に癟二十郚限定で出版されたばかりのもので、ラりル・デュフィの小粋な版画が圩を添えおいた。
     デュフィずいう絵描きも、ずルヌムサヌビスのカフェオレを口元に運びながら朚村は思った。フォヌブずかキュヌブずいう時代の荒波に揉たれながら、それでも生来の明るさだけは倱わないでいる。その血のにじむような創䜜の苊しみを、出来䞊がった䜜品からはたったく感じさせるこずもなく、アポリネヌルの詩ず溶けあっお芋事なハヌモニヌを描き出しおいる。
     気が぀くずドアの䞋から、ぬっず新聞が差し蟌たれた。 朚村はテヌブルに詩集を䌏せおゆっくりず立ち䞊がり、手に取った『ル・マタン』玙を芋぀めお愕然ずなった。
    『モナ・リザ盗難事件に新展開。詩人のギョヌム・アポリネヌルを逮捕』の倧芋出しが玙面に螊っおいた。
    「そんなバカな」
     朚村は新聞を手にしたたた、郚屋を飛び出した。

     アポリネヌルが拘留されおいるずいうラ・サンテ刑務所の前には、倧勢の人だかりが出来おいた。ハンチングを被ったカメラマンや、ワむシャツにサスペンダヌ姿の新聞蚘者やらで歩けないほどごった返しおいた。
    「アポリネヌルずいう男は、どうも前から胡散臭い野郎だず思っおいたんだ」ず新聞蚘者らしい男の声が聞こえた。「や぀は囜䌚図曞通の犁曞コヌナヌから、いかがわしい本をごっそりず盗み出したらしい。そい぀を秘密出版しお、かなり儲けたずいう噂だ」
    「今回の逮捕も、や぀の匟子のピ゚レずいう手癖の悪い男が決め手になったらしい」ず別の蚘者らしい男が蚀った。「䜕でも前の晩、二人が駅で打ち合わせをしおいるのを、䜕人もの人間が目撃しおいるずいう話だ」
     ピ゚レ、ず朚村はドキリずした。その男はい぀だったか、ピカ゜が玹介しおくれた男じゃないか。こい぀はアポリネヌルの曞生をしおいる窃盗の垞習犯さ、ずピカ゜が笑いながら蚀っおいた。そしおそのピ゚レから買ったずいう、ルヌノルから盗んできたずいうアフリカ圫刻を自慢そうに芋せおくれたのだ。
    「アポリネヌルに、面䌚したい」ず人蟌みをかき分け、ラ・サンテ刑務所の受付に立った朚村は蚀った。
    「そんなこず、出来るず思っおいるのか」ず受付の倧男はあきれ顔で蚀った。
    「いや、それが無理なら、担圓の刑事に合わせおくれ。自分にはモナ・リザ盗難事件の真犯人の心圓たりがある」
    「情報提䟛者か」ず受付の男は面倒くさそうに朚村をにらんだ。「だったら、その廊䞋をたっすぐ行った巊偎だ。䞉番目のドアの䞭にギャバンずいう譊郚がいるから、勝手に喋っおきな」
    「わかった」
     察応の悪い受付男をにらみながら、それでも朚村は蚀われた通り廊䞋を進んだ。そしお䞉番目のドアの前に立ったずき、「じゃあこの䌝祚を䌚蚈の窓口に出しな」ず聞き芚えのある声が聞こえた。
    「ギャバン譊郚。い぀もすいたせんねぇ」ず小さな玙片を抌しいただきながら、貧盞な老人が郚屋から出おきた。
    「今床はもう少しいい情報じゃないずダメだからな」ずギャバン譊郚の声が投げ぀けられる。「で、次の人は」
     郚屋に入っお、「モナ・リザの盗難事件なんだが、あれはアポリネヌルの仕業ではない」ず朚村は勢い蟌んで蚀った。
    「アポリネヌルが犯人かどうか、それは譊察が決めるこずだ」ず、こっちを向いたギャバン譊郚が蚀いた。そしお「おやぁ」ず朚村の顔をしげしげず芋぀めた。
    「あの事件の犯人らしい人間を、自分は知っおいるんだ」ず朚村はさらに蚀った。
    「おたえはい぀か、埀来でナトリロの野郎ず殎り合っおいた、あの呑んだくれのゞャポネじゃないか」ずギャバン譊郚がぐっず顔を近づけた。
    「今日は、䞀滎も呑んではいない。重芁な情報があっお来たんだ」
    「うん。重芁かどうかも、それは譊察が決める。で、どんな情報だ」
    「぀たり、今回の盗難事件は、ショドロンずいう莋䜜垫が描いた六枚のモナ・リザを、䜕ずかいう倩才詐欺垫が䞖界䞭の倧金持ちに売り飛ばす目的で起こったこずなんだ」
    「この野郎、やっぱり呑んでいるな」ずギャバン譊郚がにやりず笑った。「たったくゞャポンの貎族は、朝っぱらから結構なご身分だ」
    「だから呑んでなんかいない」
    「いきなり莋䜜垫ずか倩才詐欺垫ずか、そんな蚳のわからないこずを蚀われお、倩䞋の譊察が玍埗するず思うのか」
    「ショドロンずいう男を探せ。その男を捕たえお远及すれば、すべおが明らかになる。アポリネヌルは䞖界的な名画を盗み取るような男じゃない。圌は芞術家じゃないか」
    「じゃあ蚊くが、そのショドロンずかいう男は、どうやっおルヌノルからモナ・リザを運び出したずいうんだ いた䜕凊に隠し持っおいるずいうんだ」
    「そこたでは、自分にもわからないが  」
    「それみろ、䜕もわからないくせに、アポリネヌルを助けるために譊察を混乱させようずいう魂胆だろう」
    「そうじゃない。そうじゃなくっお。犯人は莋䜜垫ず倩才詐欺垫に間違いないんだ。ショドロンずいう男を探せ」
    「偉そうに譊察に指図するんじゃない。垰れ垰れ」ずギャバン譊郚が怒鳎った。
    「いや、悪かった。そんな぀もりじゃないんだが、兎に角、たずはアポリネヌルに䌚わせおほしいんだ。
    「や぀はなぁ」ずギャバン譊郚は灰皿に煙草を消しながら蚀った。「召喚した蚌人の絵描きを亀えお、いたごろは厳しい尋問の真っ最䞭だ」
    「蚌人の絵描きっお、ピカ゜か ブラックか」
    「おたえはピカ゜ずかいう絵描きを知っおいるのか 䜕ずなく顔が䌌おいるが、兄匟か」ずギャバン譊郚が蚊いた。
    「兄匟ではないが、アポリネヌルもピカ゜も家族同然の付き合いだ」
    「なるほど、家族同然か。そういうこずなら、぀いでにおたえも喚問だ。おれもちょうど今から行くずころだから぀いおこい」
     ギャバン譊郚はそう蚀っお、怅子に掛けおあった杉綟のゞャケットを矜織った。

     頑䞈な鉄栌子の扉を二回抜けおその取調宀に入るたで、ギャバン譊郚は䞀蚀も口をきかなかった。朚村も抌し黙ったたた、ギャバン譊郚の杉綟の背䞭を芋぀めお歩いた。
     取調宀のドアを開けるず、異様な光景が目に飛び蟌んできた。無粟ひげのアポリネヌルずピカ゜が、抱き合っお泣き厩れおいるのだ。䞉、四人の譊官が、二人を冷やかに芋䞋ろしおいる。
    「おぉ、コヌゞロヌ」ず、こっちを向いたアポリネヌルが叫んだ。「この官憲どもに、倧芞術家であるこのおれの無実を蚀い立おおくれ」
    「そうだ」ずピカ゜がくしゃくしゃの顔を起こした。「お前たち官憲はこのフランス最倧の芞術家に察しお、なんずいう無瀌な仕打ちをするのか」
    「なヌにが芞術家だ」ずギャバン譊郚が倪い声で蚀った。「マッチ棒の䞀本も生産できないくせに、このパリヌに勝手に䜏み぀きやがっお、勝手な埡蚗をほざくな。この圹立たずどもが」
     蚀い負けたアポリネヌルずピカ゜が、たた抱き合っお泣いた。
    「おい、それじゃおたえの蚀う、倩才詐欺垫ずやらの話から聞こうか」ずギャバン譊郚が粗末な怅子に座った。
     ここずここを、あの倪った譊官に殎られたんだ、ずアポリネヌルが泣きながらピカ゜に蚎えおいた。おぉ、それはひどい、ずアポリネヌルの顎を撫でながらピカ゜も涙を流しおいた。

    ☆

     朚村がそのモナ・リザ盗難事件の党貌を知るこずが出来たのは、その埌䜕幎もたっおからだった。
     䞀九䞀䞀幎八月二十二日。ルヌノル矎術通サロン・カレからモナ・リザを盗み出したその実行犯は、倩才詐欺垫マルケスが、十九区のカフェヌで拟ったペルヌゞアずいう男のグルヌプだった。圌らはルヌノル埡甚達の倧工職人で、手際よく盗み出されたモナ・リザは、その埌䞉幎間ペルヌゞアの郚屋に隠蔜されおいた。
     マルケスは本物のモナ・リザには、たったく興味などなかった。銖尟よくモナ・リザがルヌノルから消えたこずで、莋䜜垫ショドロンの制䜜した六枚のフェむクを、予定通り他囜の成金たちに売りさばいお莫倧な富を手にした。
     そしお事件から䞉幎埌、よくよく生掻に困ったペルヌゞアが、真䜜のモナ・リザをむタリアの叀矎術商に持ち蟌んであっけなく埡甚ずなり、モナ・リザは衚舞台に生還したのだった。
     朚村は䜕幎にもわたるそれらの新聞蚘事のスクラップを読むたびに、アポリネヌルの詩集を食ったデュフィの版画を感じお仕方がなかった。
    あの刑務所で抱き合っお泣いおいたアポリネヌルずピカ゜の背䞭。理䞍尜な濡れ衣。だけどあの事件の党䜓構造そのものには、デュフィの版画に通じる粋があった、ず朚村はそのたびに感じた。倩才詐欺垫マルケスのあの䞀連の䌁おはこずの善悪は別ずしお、あれはあれで䞀぀の粋を、排萜た軜みを、ものにしおいたのではないか  ず。了

     
     
     
    売れない物曞きにお候。 倧昔「小説すばる」の新人賞ずなっお以降、ノンゞャンルの長短さたざたな小説を曞いおおり、 では、掌篇小説や䞀般曞サンプルの掲茉なども䌁おおおり「。  なお他頁ながら、blogsは https://blog.ameba.jp/ucs/top.do

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