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Photo bywatashi_dojokobo

大人になるってどういうこと?|哲学対話書簡


    おはぎさんとけいこさんの哲学対話書簡。
    毎回とても楽しく参加しています。
    今回のテーマは「大人になるってどういうこと」です。

    第5弾です


    大人なんだとは思う。

    もうずいぶんと前から、年齢的には大人だもの。
    でもこれが本当に大人なのかと聞かれると、
    「たぶん」としか言いようがない。
    そもそも大人がどういうものなのか、よくわからないからだ。


    「大人になったら親に頼らずに、ひとりで自立して生活をしなさい」
    と、小さい頃から言われて育った。
    だから、ひとりで暮らすのが大人なんだろうと思っていた。

    ひとり暮らしを始めるとき、荷物はすべて持って出るように言われた。
    まるで「もうここに居場所はない」と言われたような気持ちになり、
    ほんとうにひとりになるんだと、少し心細くなった。
    引っ越し先の部屋は、収納が少ない。
    だから、子どもの頃遊んでいたおもちゃはすべて処分した。
    漫画本もどうしても持っていきたいものだけに減らして、子どもの頃の写真はとりあえず持って出たものの、まもなくアルバム2冊分に減らした。
    今暮らすために必要なものを置く場所のほうが、必要だった。

    ご飯を作るのも、買い物に行くのも、洗濯をするのも、自分。
    お給料の使い道も、すべて自分次第。
    誰にも相談したり、遠慮したり、気を遣ったりしなくても決めていい。
    自分で自分の人生の舵をとっている気持ちに、ようやくなった。
    思ったよりもひとりの生活は快適で、晴れた空の下大海原に漕ぎ出すような気持ちになる。でもときどき、

    もしかしたら、一生ひとりぼっちかもしれない。

    広い海にぽつんと取り残されたような不安の中を、漂う夜もあった。
    そういうときは布団の暗闇に入り、星空を見上げるような気持ちでめそめそしながら、朝が来るのを待っていた。


    自分の中にある昼と夜のご機嫌と暮らすのにも慣れた頃、自分の生活ぶりを見て、ふと思った。
    ……これって大人なの?子どもの頃のほうが、マシだったんじゃない?

    当時の私は、必要なことをする時間をどこまで削れるかを探ることに、夢中だった。
    朝は、朝食と化粧と身支度を削ればバスの15分前まで寝れるとか、
    洗濯は、履くパンツがなくなったらとか、
    カレーを作れば朝昼晩3日間食べられるとか。そんなことだ。

    友だちからは、
    部屋を見て「泥棒が入った?」と聞かれ、
    服装を「パジャマみたい」と指摘され、
    「代わりに貯金してあげようか?」とも言われた。
    チャーハンとカレーライスくらいしか、料理のレパートリーもなかった。

    大人って、もっと素敵なものだと思っていたんだけどな。
    やりたいようにだけしていたら、ちゃんとした大人になれないんだ。
    今のままじゃ自由を満喫している、ただの大きな子どもだ。

    25歳になった頃からようやく、
    自立して生活するための活動を開始した。

    出したものはもとに戻して。
    食事は偏らないようにバランスよく。
    欲しいものは少しだけにして、まず必要なもの。

    よく考えたら、全部親が昔から言っていたことだ。
    親は私が自立した生活をするために必要なことを、ちゃんと教えてくれていたのだった。

    ずいぶん後になって、母が病気になったとき
    「ほんとうは、子どもが家を出たときとても寂しかった。でも『自立させないと』と思って我慢した」と言われた。
    あのとき、大海原に取り残されたような気持ちになっていたのは、私だけじゃなかったのだ。


    今では私も自分の子どもがいて、親の顔をして暮らしている。

    出したものは、同じ場所に戻すと散らからないよ。
    野菜も肉もバランスよく食べたほうが体にいいよ。
    今失敗してもいいから、お金と上手につき合う方法を考えようね。


    大人になれたのでしょうか。
    それは今もわからない。
    なんでも知ってるわけじゃないし、相変わらずレシピを見ないと作れる料理も少ない。
    でもいつか子どもも大人になる。彼らが大海原に旅立つとき、私が楽しそうに舟をこぐ姿を思い出してもらえたら。

    そこに、どんな私が映るんだろうな。


    #哲学対話書簡


     
     
     
    小さな病院の外来看護師 毎日を楽しく過ごすために、noteに書いて残しています。 ※このくいたろうの、 X、インスタのアカウントはありませんよ。 最近は#夏休みの小さなおとぎ話を作っています

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