埋葬
眩いほどに晴天の青空、交差点、人混みのなか、わたしは宙に掌をかざした。
わたしは、向日葵だと思う。
皆はうつむいた枯れ草で、わたしだけが太陽に応える存在なんだと思う。太陽は、わたしのことを見つめている。わたしだけを見つめているに違いない、だってわたしが間違っているはずがない。
向日葵は、わたしだ。
あのね。
種をひとつこぼす。葉は朽ちていく。わたしは私に蝕まれる。太陽は助けてはくれない。きみは、わたしを助けてくれない。
聞いて。
わたしさ、私ね、生きててよかったなって、本気で思ってるよ。
あなたは、わたしをいつも見つめていたね。楽しかった?
ぐちゃぐちゃになる。
わたしは、皆になる。たすけて、助けて助けて助けて助けて!
飲み込まれる。助けてください。わたしは、誰も見ていない地を這う。もうわたしはいない。わたしって、なんだろう。
あのね。わたし、転生したら、犬になりたいの。
自他ともに認める、愛らしくてあたたかな可愛いものになって、可愛がられたいなって。
あとは、木になりたい。
二酸化炭素を酸素に変えられるなんて、すばらしい存在だと思う。でも、割り箸になるのはいやかな。
花粉を撒く木にも、なりたくないな。
ねえ、花が咲いてるよ。
花なんてないけど。
何が見えてるの、何が見えちゃってるんだろう、何がおかしいんだろう。見えないのに、見えないのに、見えないのに、見えないのに、見えないのに、見えないのに。ここで終わりにしようよ。見えないってことは、もう何もないんだよ。
エンドロールは既に流されたあとで、わたしは今、暗転した画面でフリーズしている。なにかおかしなバグが発生しているのかな。はやくタイトル画面に戻らないといけない。待ってる。はやくして。はやくして。はやくして。はやくして。はやくして。はやくして。はやくして。はやくして。はやくして。はやくして。わかったって。そう急かさないで?
思うことがあって。
舞台が終演を迎えたとして、役者は人に戻るかもしれないよね。でもさ、演じられていた登場人物って、まだ舞台にいると思うんだよ。
キャラクターって、生きてると思う。本の中で、舞台の上で、画面の中で、紙の上で、すがたは止まったまま、魂だけが生きてる。
皆がわたしを見て、笑ってる。泣いてる。怒ってる。どうして私を産んでしまったの。
こんなことなら、わたしごと居なくなってしまえ。
アパートの中。忽然とした部屋。荒れてしまった宝物に囲まれて。
この場所も、もうおしまいにするべきだ。
あたしは、ここにいるよ。