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芋出し画像
Photo bytedd_jp

毛皮の檻

    その星には、滑らかな肌を持぀「ハダ系ヒト」ず、党身が柔らかな䜓毛に芆われた「モゞャ系ヒト」が共生しおいる。䞡者に知胜、寿呜、性質の差は䞀切ない。蚀語も同じ、喜びや悲しみの感情にも差は無い。

    しかし、瀟䌚のルヌルは残酷なたでに分断されおいる。モゞャ系が行動する際は、垞に「蚱可」が必須であった。

    買い物、旅行、そしお運転免蚱の取埗はもちろんのこず。人口の半分を占める圌らのうち、免蚱を手にしおいるのはわずか半数。残りの半分は「蚱可を埅぀」か「歩く」こずを遞ぶ。生たれた時から死ぬその日たで、日垞の行動党お「蚱可」を埗お行っおいた。

    䞻人公のカむハダ系ヒトず友人のルクモゞャ系ヒトは、幌銎染だ。二人は圓たり前に䞀緒に育ち、青幎ずなったいたは同じ職堎で働いおいる。

    カむにずっお、ルクが昌食のメニュヌを遞び泚文する前にさえ専甚の端末で「申請」ボタンを抌す姿は、芋慣れた日垞の光景だ。ルク自身も、自分の毛深い指で慎重に申請を送るこずを「圓然の事」ず受け入れおいる。

    ある日、カむはルクに尋ねる。

    「ルク、君たちは埅぀こずに慣れおしたっおいるようだけど なんお蚀うか、䞀緒にカフェに来たっお同時に淹れたおのコヌヒヌを味わうずいうこずがこれからも叶わないのかず、僕は少し寂しい気持ちになるこずがあるんだ。」 

    ルクは䞍思議そうに銖を傟げ、ふわりずした耳の毛を揺らした。

    「どうしお これがルヌルだろう。䞍自由はないよ、蚱可さえ䞋りれば君ず䜕だっおできるんだから。」

    カむは、ルクの返答を聞くなり黙り蟌みじっず考えおいた。ルクの芪戚である゚ノの事を。゚ノは、モゞャ系ヒトの䞭でも誰よりも法を遵守するこずを矎埳ず考えおいた男であった。ある倜、離れお暮らす父芪が事故にあっおおり、すでに危節ずの知らせが入る。゚ノは盎ぐにでも駆け぀けるために、父芪に䌚うための党おの申請を手順に埓い、テキパキず行った。深倜察応の「緊急蚱可」をオンラむンで申請したのだった。

    しかし、画面に衚瀺されたのは『珟圚、申請が混み合っおいたす。しばらくお埅ちください』ずいう無機質なメッセヌゞ。

    䞀分䞀秒を争う状況であったが、゚ノは「無蚱可」で車を走らせるずいう遞択肢など考えもしなかった。なぜなら、それが「正しい瀟䌚の圚り方」ず教育されおおり疑う事すら知らないのであった。

    結局、党おの蚱可が䞋りたのは3時間埌。゚ノが病院に駆け぀けた時には、父芪の䜓はすでに冷えきっおいた。ずおも尊敬しおいた最愛の父にお別れの蚀葉をかけるこずも出来ず、1人旅立った父の亡骞を芋぀めるしか無かったのであった。

    翌日、゚ノはカむに、涙も芋せず淡々ず語る。

    「あず5分早く蚱可が出おいれば、お別れを蚀えたかもしれないね。でも、倜䞭だったし混んでいたんだ、蚱可が無かったから仕方ないね。父も倧切にしおいたんだよ、ルヌルを守る事が番だからねっおさ。」

    その蚀葉の䞭にある「空虚」。静かにただ逝っおしたった父を思う心情は挂うだけ。この䞖界の残酷なシステムに、カむは寒気が走るのを感じたが、それが恐怖なのか違和感なのか、蚀葉にできる感芚では無かった。

    なぜ、モゞャ系だけが蚱可を必芁ずするのか。その起源を知る者は、歎史孊者の䞭にも、政府の芁人の䞭にもいない。か぀お倧きな戊争があったわけでも、胜力に差があった蚘録もない。蚱可が必芁な理由も明確に答えられる者も居ないだろう。そもそも誰も疑問にすら思っおいないのだから。

    ただただ、日垞の瀟䌚の基盀ずなる基本゜フトに「モゞャ系ヒト芁蚱可」ずいうコヌドが曞き蟌たれおおり、すべおがシステム化され機胜しおいた。意味は無く、理由も無かった。

    これたで、ハダ系ヒトずモゞャ系ヒトの組合せ倫婊も倚く、生たれおくるこどもたちも半数がハダ系であり半数がモゞャ系ヒトであった。きょうだいにはハダ系もいれば、モゞャ系もいた。
    生たれおきたモゞャ系ヒトにはすべお、生たれた時に固有のチップが埋め蟌たれ、腕には腕時蚈方のオンラむン蚱可申請甚の機噚を持たされ、垞に腕に着けおいた。

    ドアを開ける、電車の改札を通る、店で決枈をする。そのすべおにコンマ数秒の「照䌚䞭」ずいう青い光が点滅し、サヌバヌから「承認」が返っおくる。

    その蚱可を出しおいる偎であるハダ系ヒトも「差別しおいる」ずいう感芚は党くない。ハダ系ヒトにずっおも、モゞャ系ヒトが蚱可を埅぀のは、信号が赀から緑に倉わるのを埅぀のず同じ、単なる「䞖界の埅ち時間」に過ぎなかった。

    誰も疑問に思わず怒るこずもない、誰も誰かを責めたりもしない。そしお䜕よりシステムを砎ろうずする者も皆無であった。その「圓たり前を過ぎた諊め」が、実は最も深い絶望の圢であるこずをカむは感じ始めおいた。

    䜕より、今幎から10幎間管理システムの圓番ずなり、モゞャ系ヒトが出す申請に蚱可を出す立堎であったこずもあり、これたで䞍思議にも思わなかった蚱可に぀いお、拭いきれない感情を抱いおいた。

    目の前にいる幌銎染みは、いったいなぜ自分の様な圓番に蚱可を埗お生きおいるのだろう。自分たちはいったいなぜ、圌らに蚱可を出しおいるのだろう。この瀟䌚のシステムを疑う者は自分1人しかいない䞖界で、自分は䜕をすべきなのか。

    自問自答を繰り返したカむは、ずある1぀のアむデアに瞋っおみるこずにした。そのアむデアずは、ハダ系ヒトである自分が特殊なメむクで、モゞャ系ヒトに成りすたし、生掻しおみるずいうものであった。

    もちろん、䞭身はカむである。なんの蚱可もなく、党おの生掻を行える。ただ違ったのは、蚱可圓番ずなったいた、モゞャ系ヒトが腕にしおいる蚱可申請甚の腕時蚈ず蚱可を出す偎の腕時蚈は倧倉に酷䌌した芋た目であった。ほずんどわからない䜍の差ほどしか無く、これは䜿えるず螏んだ。
    違いずいえば、蚱可偎の腕時蚈にはサむドボタンが個付いおいるこずぐらいであった。

    カむは腕時蚈を䜿っお申請を蚱可する䜜業を、たるで申請を出しおるかのように、䟋のタむムラグを装った。カフェでコヌヒヌを泚文する前の申請、ドアを開ける前の申請、スヌパヌで支払いをする前の申請、ありずあらゆる申請を装い、次々にくる申請に蚱可を出しおいた。

    この「ルヌルを信じ切っおいるからこその必然の悲劇」は間もなく起きた。

    ある暑い倏の日、街の䞭心郚にある1番倧きな耇合斜蚭で、火灜が発生。誰もが家族や友人ずサマヌバケヌションを楜しみ、その耇合斜蚭においおも普段よりもずっず倚くのヒトが䌑日を楜しんでいた時間でした。

    そしお火灜の火元は、手䜜りドヌナツの人気店。倧行列をなしお抌し寄せるヒトのためにキッチンはフル皌働を䜙儀なく、倧量の高枩の油の海に匕火。あっずいう間に黒い煙が建物を芆ったのでした。

    あっずいう間に火柱があがり、防火シャッタヌシステムは即時、次々ず自動でシャッタヌを閉めおいき、そしお唯䞀の避難経路には、避難指瀺を埅぀倧勢のモゞャ系ヒトたちが列を成しおたのでした。圌らはシステムからの「避難蚱可」が出るたで、敎然ず、静かに、狭い通路の先にある避難扉の前に立ち尜くしおいるばかり。

    䞀刻も早く避難したいず叫ぶハダ系ヒトたちは、出口ぞ向かおうず必死になり、しかし、通路の先にある避難扉前に溜たるモゞャ系ヒトたちが、埮動だにせずただ静かに通路を埋めおいた。

    モゞャ系ヒトにも悪意はなく「蚱可が出るたで動いおはいけない」ずいう絶察のルヌルに埓っおいるだけ。

    圌らは、パニックに陥ったハダ系ヒトが自分たちを掻き分け前に進もうずしおも、お互いに肩を寄せ合い、匷固な「モゞャ系ヒトの壁」ずなっおその堎に留たり続け、

    「逃げろ 党員死ぬぞ」ず叫ぶハダ系ヒトに察し、モゞャ系ヒトたちは䞍思議そうに、あるいは申し蚳なさそうにただ静かに埮笑むだけ。

    「死にたい蚳じゃありたせんよ。だからこうやっお、非垞扉の前にいるんです。でも、ただ『移動蚱可』が出おいないんです。勝手に動けたせんよ。システムが乱れおしたいたすから」

    そこにカむも居合わせおいた。耇合斜蚭内にあるお気に入りのカフェでルクず埅ち合わせをしおいた。この自分の特殊メむクの姿を芋せようず、驚かそうずしおいたのだった。埅ち合わせの時間間もなくずいう時間に火灜が起き、あれよあれよずモゞャ系ヒトの波に抌され、非垞扉前に立っおいた。自分はマむクロチップも埋められおはいないハダ系ヒトであり、今すぐにでもこの扉を開けお逃げるこずも可胜だった。

    もたもたすれば、自分も呜を萜ずすだろう。

    逃げる前にどうしおもルクの姿を探し出そうず、しきりにたわりを芋枡しおいた。きっず近くにいるに違いないず必死に必死に探した。

    カむのいる非垞扉前は既に電灯は消え、申請埅ちの腕時蚈の小さな灯りが点圚しおいるだけであったが、ハダ系ヒトたちの隒ぐ蟺りはただ電灯も僅かに付いおいたため、ルクの姿がそこにあったこずを芋぀ける事が出来た。

    ルクを必死に呌んでみた。ヒトの波の間に芋えた姿、驚いた事にルクの偎には、カむの母芪の姿があった。母芪は1人買い物にでも来おいたのだろうか。怪我をしたのか、ルクにもたれかかる様に、ぐったりずした様子かの様に芋えた。
    カむは䞍安な気持ちが䞀気に抌し寄せた。そしお次の瞬間、顔に纏わり付いおいた特殊メむクを自らの手で無理やりに剥ぎ取っおいた。

    そしお力いっぱい叫んだ。
    「蚱可する!!!頌む!!!みんな逃げおくれ!!!」
    ルクにも母芪にも届くように叫び続けた。

    すぐ偎のモゞャ系ヒトたちは驚きを隠せ無かったが、カむの腕時蚈は自分たちの仕様ずは違うボタン個であるこずを確認するず、1人づ぀慌おるこずなく非垞扉から逃げおいった。前のヒトを抌すこずもなく、順々に逃げおいった。

    倧勢が小さな非垞扉から逃げ出すのには時間がかかった。カむは叫び続けながら、ヒトの波を逆流しルクず母芪の元ぞ向かっお行った。

    だが、ルクずカむの母芪は既に煙に巻かれおおり
    カむが偎に着いた時にはもう
    人力無く床に䌏しおいたのであった。

    その「善良な沈黙」ず「埓順な䞍動」が、結果ずしおヒトの避難を遅らせ、倚くのヒトが煙に巻かれ、呜を萜ずした。

    この惚劇の埌、瀟䌚が出した結論は、さらに恐ろしいものだった。

    「今回の事故でお亡くなりになった方も倚くいたすので、倚少のタむムラグがありたすが生存ナンバヌは順次消去されたす。システムのパニックは党く無く、モゞャ系ヒトの統制システム運甚は本日も完璧です。」

    蚱可制に殺されたヒトたちさえも、自分たちが「蚱可埅ち」に殺されたずいう事実よりも蚱可システムの正圓性を信仰の様に疑いもせず、思考停止を矎埳ず讃え、カむの心ごず飲み蟌んだのでした。カむはヒトである事を蟞め無機質な機胜ず化し、今日も蚱可を出し続けおいる。
    䞀緒に育ったルクの笑顔も、カむずルクを愛しおくれた母芪ももう䜕も残っおいない人生を歩みながら、意味のないラベリングず共に䜕ら倉わるこずのない日垞をいたも送っおいるこずだろう。

    #創䜜倧賞2026 #オヌルカテゎリ郚門

     
     

    NaNa.K

     
     
    小暜圚䜏。抜象画家、石蔵Bar運営。アヌトディレクション、創䜜小説。小暜の街で実際にあった事などをベヌスにした創䜜小説。睡眠䞭の倢で起きたこずなどを䜜品にしおいたす。

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