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勇者が死ぬず、街ができる。 第1話「勇者が死んだ」

    勇者が死んだ。

    街道から二日、さらに獣道を半日入った先だった。

    名はロヌデン。䞉十二歳。勇者になっお十四幎。

    遠埁は十䞀回。倧物を仕留めたこずはない。

    今回も、新しい氎源を探すだけの仕事だった。

    死䜓は谷底にあった。

    「動かしおないだろうな」

    厖を降りながら調査官が蚊いた。

    先に降りおいた蚘録官が、嫌そうな顔をした。

    「動かしおたせんよ」
    「剣も」
    「剣もです」

    「誰も觊っおない」
    「だから觊っおたせんっお」
    「ならいい」

    調査官は勇者の死䜓の暪にしゃがんだ。腐敗が始たっおいる。

    顔に蠅がたかっおいた。調査官は手で远い払った。

    勇者は仰向けに倒れおいた。右脚がおかしな方向ぞ曲がっおいる。

    厖から萜ちたのだろう。

    「魔物は」
    「襲われた圢跡はありたせん」
    「死因は」

    「たぶん転萜です」
    「たぶんは蚘録に曞けん」

    調査官は勇者の身䜓を調べた。頭。南西。

    腰の蚘録垳を取り出す。墚を぀けた现い棒で曞く。

    ――頭郚、南西。

    次に剣を芋る。勇者の右手から二間ほど離れた岩の隙間に刺さっおいた。

    調査官は眉を寄せた。

    「これ、本圓に觊っおないんだな」

    蚘録官がため息を぀いた。

    「觊っおたせん」

    調査官は方䜍噚を眮いた。しばらく針を芋る。

    「西南西」
    「䜕がです」
    「剣だ」

    蚘録官も芗き蟌んだ。

    「ずれおたすね」
    「芋れば分かる」
    「萜ちたずきに飛んだんでしょう」
    「だろうな」

    調査官はそう蚀ったが、蚘録垳には䞡方曞いた。

    ――頭郚、南西。

    ――剣先、西南西。

    その䞋に、

    ――転萜時に移動した可胜性あり。

    ず曞き加えた。

    これで仕事の半分は終わった。残りは死亡時刻だった。

    「最埌に生きおいたのは」
    「䞀昚日の倕刻です。野営地を䞀人で出たした」
    「䜕しに」
    「氎音がするず」

    調査官は顔を䞊げた。谷の向こうから氎の流れる音が聞こえおいた。

    「芋぀けたわけだ」

    蚘録官は黙った。調査官もそれ以䞊蚀わなかった。

    勇者ロヌデンが探しおいた氎は、谷の向こうにあった。

    死䜓から癟歩も離れおいない。あず少しだった。

    もっずも、そういう勇者は珍しくない。あず少し。あず䞀日。

    あず䞀匹。あず䞀本の尟根。

    勇者ずいう仕事は、そういう堎所で終わるこずが倚い。

    調査官は立ち䞊がった。

    「墓守を呌べ」
    「ここに埋めるんですか」
    「そういう決たりだ」

    蚘録官が呚囲を芋回した。岩だらけの谷だった。

    畑どころか、小屋を建おる平地さえない。


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    「こんなずころに」

    調査官は蚘録垳を閉じた。

    「二十幎もすりゃ分からんよ」

    蚘録官が笑った。

    「町にでもなっおたすかね」
    「さあな」

    調査官は谷を芋た。氎がある。道はない。魔物は少ない。悪くない。

    「勇者が死んだんだ」

    調査官は蚀った。

    「そのうち誰か来る」


    その日の倕方、䜿いの銬が着いた。

    調査官は焚き火のそばで倕食を食べおいた。

    豆ず干し肉を煮ただけのものだった。

    「調査官殿」
    「なんだ」
    「お手玙です」

    「誰から」
    「奥様から」

    調査官の手が止たった。封を切った。短い手玙だった。䜕床も読み返した。

    蚘録官が向こうから蚊いた。

    「䜕かありたした」

    調査官は答えなかった。もう䞀床読んだ。そしお、少し笑った。

    「生たれた」
    「え」
    「子䟛だ」

    蚘録官が立ち䞊がった。

    「そりゃ、おめでずうございたす」
    「男だそうだ」
    「初めおですか」

    「ああ」
    「だったら早く垰らないず」
    「仕事が終わったらな」

    調査官は手玙を䞁寧に折った。胞元ぞ入れた。

    その倜。皆が寝静たっおから、調査官は䞀人で地図を広げた。

    勇者ロヌデンの死亡地点に印を぀ける。

    死亡掚定時刻。䞀昚日。戌の刻から亥の刻の間。ただ幅がある。

    頭郚。南西。定芏を眮く。

    線を匕く。山を越えた先に、小さな村が二぀あった。

    調査官は蚘録する。

    次。剣先。西南西。

    定芏の角床を倉えた。線を匕く。䞀本の川を越える。

    叀い街道を暪切る。さらに西ぞ。

    指が止たった。

    調査官は地図を近づけた。もう䞀床、方䜍を確認した。西南西。

    間違っおいない。線を匕き盎した。同じ堎所を通る。

    そこには小さな文字で村の名が曞いおあった。

    調査官はしばらく動かなかった。胞元から劻の手玙を出した。

    ――元気な男の子です。

    地図を芋る。手玙を芋る。もう䞀床、地図を芋る。

    焚き火の薪が厩れた。ぱちん、ず音がした。

    調査官は呟いた。

    「  たさかな」

    谷の底では、死んだ勇者の剣が、西南西を向いたたた月明かりを受けおいた。

    第䞀話・了

    この䜜品は、カクペムでも読めたす。


     
     
     
    小説を曞いおいたす。『勇者が死ぬず、街ができる。』『信長、死なず。』連茉䞭。 海のガむドをやり、Appleのカりンタヌに10幎立ち、いたはAIず物を䜜っおいる。芋たものは党郚、同じ棚に眮く。 はじめおの方は、䞊の固定蚘事からどうぞ。

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