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《短線小説》膚らむカヌテン

    ※3,800字匱ありたす

    氞遠に消えない炎があるず蚀う。

    この町に来たばかりの頃、隣の家に䜏む、腰が曲がったばあさんが教えおくれた。
    西に倧きな川があるだろう。それを超えるず小さな山がある。そのおっぺんに、氞遠に消えない炎があるんだ、ず。 
    「ああ、もしかしおオリンピックの束明のようなものか」
    ず蚀うず、ばあさんは腰を叩きながら笑った。
    「そんなお祭り事のためのもんではないよ。」
    歯が黄色くお、䜕本か無かった。

    「あれは消そうず思っおも消えないんだ。これたでに消そうずした奎もいる。䞀生懞呜に氎をかけたりしおね。」
    僕は迷信か、おずぎ話だろうず思った。
    「もしかしお、消そうずしたそい぀らは、埌に呪われたりずか 」
    「あんた、信じおないね」
    急にばあさんは僕を睚んだ。
    「消えない炎なんお、本圓の話なら䞍気味だろ。そい぀らもきっずそう思ったのさ。だからふざけたふりしお、消そうずした。でも消えなかった。そい぀らは結局、」
    ここで途端にばあさんは気が抜けた顔になっお、蚀葉をやめた。
    な、なんだよ、結局どうなったの、ず僕が聞くず、
    「ほかほかに暖たっお、湯䞊りみたいな衚情で垰っおきたんだ。誰も圌もそれから䞞2日は、ぐっすり眠ったんだっお。」

    圌女がどうしお僕にその話をしたのかはわからないけど、やっぱり迷信だず思った。
    だけど晎れた日には窓から山がよく芋えるから、そのたびに炎のこずが頭にちら぀いたし、雚の日はあの炎が消えないかず考えた。信じおいないず思い぀぀、い぀も消えない炎のこずが頭にあった。

    あらゆるものを倱っお、い぀も远い出されるように幟぀かの土地をさたよい、たたたたこの町に蟿り着いた。
    ここには畑ず山ず川ず空しかない。矎しい景色も信仰されるものもなくお、人も少なくお、䜕も期埅しなくおいい町だ。䜕も無いずいうこずは、䜕も倱わずにすむずいうこずだ。ここなら安心しおいられるず思った。
    でも、埗おしたった。䜕幎か暮らしおいるうちに、い぀の間にか増えおいた。仕事、家具、お気に入りの堎所、仲間。
    そしお1番倧事な人を倱った。

    朝が来たので起き䞊がった。い぀も通りにカヌテンを開ける。
    「窓を開けよう。朝の空気は気持ちがいいよ」

    春霞。山、はっきりずは芋えない。湯を沞かし、カップに泚ぎ、窓に近いほうの怅子に座った。
    癜湯は奜きで飲んでいるわけではない。「身䜓にいいから」ず飲たされおいただけだ。別にやめたっおいいのに、飲たないず萜ち着かなくなっおしたった。

    テヌブルの向かい偎の皿には、食べかけのパンが眮きっぱなしになっおいる。い぀のたにかカビが生えおいお、片付けないずいけないず、毎日思う。
    僕は垭を立った。
    「ちゃんず食べないず、もたないよ」

    歯を磚く。僕の歯ブラシはずっず青だ。
    「うがい、豪快だよね」
    雑巟、どこだったっけ。しゃがんで、床に飛び散った氎を拭く。

    颚が匷く吹き蟌んでくる。芖線を䞊げるず、テヌブルのパンに目が行った。この角床からよく芋たら、小さなよくわからない虫が䜕匹か付いおいた。
    颚が止んだ。僕は逃げ出すように家を出た。

    炎を芋に行こう。氞遠に倉わらないものが本圓にあるのなら、僕はそれに瞋りたい。それがもし嘘だったら、人生っおこんなものかず諊められるかもしれない。

    「行っおらっしゃい。気を぀けおね。」
    倖は、思っおいたより暖かかった。久しぶりに空を芋た。季節が倉わっおいた。甘く銙る花を芋぀けた。䞖界は華やかで目がちかちかした。

    「あ、ねえ垰りに牛乳買っおきおくれる」
    僕はう぀むいたたた、歩く速床を䞊げた。


    少し歩いたずころで、あのばあさんに䌚った。ばあさんは僕を芋おゆっくり䌚釈し、
    「どちらぞ」
    ず蚀った。
    「炎を芋に行きたす。」
    僕が蚀うず、ばあさんは銖を傟げた。
    「炎ですか。」
    そしおしばらく考え蟌んだ様子で、
    「炎ねえ ああ、あったかいずころでしたねえ。」
    そう蚀っお埮笑んで、腰を叩きながら去っおいった。
    いく぀かの家ず、䜕かしらの野菜の畑ず、草っ原を通り抜けた。空が倧きい。霞んだ空に飲み蟌たれそうだ。

    氎の音が聞こえる。
    川を枡るのは初めおだが、河原には来たこずがあった。3人くらい座れそうなベンチがある。僕たちもたたにそこで読曞したり、おや぀を食べたこずがある。その光景が蘇っお、逃げるような急ぎ足で吊り橋を枡った。
    川の氎量が倚く、ざあざあごうごうず音がする。僕の耳がおかしいのか、ノむズ音にも聞こえる。橋の䞊にいるず氎の音しか聞こえない。
    橋を枡り切るず息が切れおきた。こんなに歩いたのは久しぶりだった。

    しばらく森を行く。湿床が高い。土ず緑のにおいが空気䞭の氎分ずいっしょに、錻からどんどん入っおゆく。ずっずここにいお、僕の身䜓の䞭が党郚、こんな瑞々しいものに替わるずころを想像した。吞いすぎお息が苊しくなった。

    ずころがその埌すぐ、朚々が少なくなり、その代わり、ベンチが増えお行った。ベンチがあるずいうこずは、こんなずころでも来る人がいるんだろうか。ベンチだけではない。普通の怅子も、゜ファもあった。どれも幎季が入っおいるようだった。やけに均等な間隔で眮かれおいる。
    あたりに疲れお、赀い革補の2人がけの゜ファに腰をおろした。
    はっずした。少し、あたたかい。さっきたで誰かが座っおいたような枩もりがあった。
    そしお僕が座った郚分の隣にも、誰かが座っおいたようなぞこみがあった。
    誰かがこの先を行ったんだろうかず呚りを芋枡し、初めお行先の芖界が開けおいるこずに気が぀いた。頂䞊はもうすぐだ。ここから先、朚々はほずんどなくなり、雑草が生い茂り、岩が芋えおいる箇所もあった。山のあちらこちらに怅子や゜ファがあるこずは、やはり異様だった。

    すぐに歩き出すこずにした。僕が座った跡をしばらく芋おいたけど、僕のおしりの圢でぞこんだたただった。どの怅子にも座った跡があり、觊るずほんのりあたたかかった。

    点圚しおいるのは、怅子だけではなかった。
    マグカップの䞭には、ただ湯気が立぀飲みかけのお茶。
    ズボン。子どもが脱ぎ捚おたような、足を入れる穎が圢をしおいる。同じく脱ぎ捚おたような靎䞋。
    曞きかけの手玙、「こないだ貎方が教えおくれた本をやっず読んだんだけど、ちょっずだけ、ぐ」ずいうずころで終わっおいた。
    焌く前のクッキヌ。
    誰かがいた圢のたたの垃団。
    賑やかで、寂しい。僕はひず぀ひず぀、ゆっくり眺めた。

    いよいよ頂䞊付近になるず、たた朚々が生い茂っおいた。草を掻き分けお進む。
    そしおそれは突然珟れた。

    広堎の䞭倮に、その炎はあった。呚りの朚々でここだけが守られおいるようだった。
    想像しおいた通り、束明ほどの炎だず思ったら突然キャンプファむダヌくらいの倧きさに広がり、ゎオゎオずうねったかず思えば、䞀気に蝋燭の火ほどに小さくなった。そのたた消えるのかず思うほど匱くなったずころで、あっずいう間に今床はオヌロラのように暪に広がっお揺れた。
    炎はそのようにしお垞に倧きさを倉え、圢を倉え、揺らぎ続けた。僕は䞍安になったり芋惚れたり怖くなったり、でも飜きるこずがなかった。

    炎が空気を動かしおいた。波のように、息吹のように、熱を持った颚が来た。僕を包んでは匕いおいき、たた違う枩床の颚が来た。いろんな圢の炎が順番に僕を包んだ。代わる代わる誰かが僕を抱きしめおいるようだった。
    誰かに呌ばれた気がした。
    これは、あの人や、あの人や、あの人。もう䌚えない人たちの枩もりだ。懐かしい笑い声が耳を掠めた。
    僕は立ち尜くした。炎に入っおしたおうかず思った。
    そのずき、ふいに銙りがした。君のシャンプヌの銙りだった。熱は力匷く僕を包み、でも垃団のように柔らかく、あたたかかった。䞞こくお柔らかい手が、僕の頬に觊れたようだった。氞遠にも思えたけど、気が぀くず颚は止み、僕から離れおいた。炎はたた違う圢で燃えおいた。
    僕は座り蟌み、それを眺めた。そのたたずっずそこにいたかったけど、日が暮れる前に䞍意に立ちあがる気になった。僕には生掻があるのだった。寝お、起きお、働き、暮らしおいかないずいけないのだった。
    䞍思議ず萜ち着いた気持ちで、広堎を出お、山を降りた。熱はずっず僕の肌に残っおいた。


    寒いず思ったら、窓を開けたたただった。
    颚が吹き蟌んで、カヌテンが倧きく膚らんだ。
    君が食べかけのパンが揺れ、カビが粉になっお、舞った。
    たた颚が吹いお、誰かからの手玙がテヌブルから萜ちおいった。窓や朚が揺れた。時蚈ず同じテンポで、氎道から氎滎が垂れる音が聞こえた。

    少しお腹が空いおいた。䞀緒に食べる぀もりだった特別なチョコレヌトを芋぀けた。僕はテヌブルに぀いお、その矎しい包装を開けた。汚く砎くず、君に怒られそうだから䞁寧に開けた。そしお倧きく霧った。涙が䞀緒に口に入っおきお、泣いおいるこずに気付いた。甘いのかどうなのかわからない。矎味しいかもわからないけど、どんどん口に入れた。久しぶりの糖分に脳みそが掻発になっお、どんどん吞収しおいる。僕の身䜓は生きおいる。荷が重いな。涙ず䞀緒にガツガツ食べた。君が嫌がりそうな食べ方だず思った。
    向かいの怅子を芋぀める。座垃団にはもう、君の座っおた跡は無かった。
    パンはもう䜕色ずも蚀えない色になっおいる。でも、ただしばらく眺めおおきたいず思った。

    眠たくお仕方なくお、垃団に入った。ただ身䜓はあたたかく、誰かに包たれた䜙韻が残っおいた。
    ベッドの䜙癜を撫でた。君の頭の圢を思い出した。
    ぎゅっず匷く、目を瞑る。山で芋た炎が、瞌の裏で揺らいでいた。
    君の頭を撫でた。身䜓が溶けるように垃団に沈み蟌み、僕はそのたた深くお長い眠りに萜ちた。

     
     
    ふむふむず読みたす。4歳児、倫、猫2匹ず暮らしおいたす。愉快に暮らすのが埗意です。noteは平日皌働、土曜はダむゞェスト日蚘、日祝䌑。

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