フォルダからみつけた10秒
ある日の晩。夕飯を食べ、寝るまでのうだうだとした時間に、どちらかともなくお互いのスマホを交換し、写真フォルダを見ていた。
「見られても困ることなんにもないからいいよ~」と快く渡してくれたそれを、恋人が眠りについた後も、ネトストする厄介女のように見ていた。
かといって、過去の相手の証跡を見つけてやろう、というような意思はなく。
常日頃から、カメラを起動させる恋人のフォルダに残された膨大な数字が、これまでどういう人生を歩んできたかがわかるようで、純粋に、興味があったのだ。
ふと、スクロールしていた手が止まる。
これまで、友人、家族、たくさんの人との繋がりがある動画をみては、ふふっと思わず笑みがこぼれていた表情が、急速に冷えるのが自分でもわかった。
たったひとつ。
たった十数秒。音声もない。ただそれだけの動画なのに、これまで眺めていたどれよりも鮮明に脳内にこびりついて、はなれなくなった。
名前も顔も知らないひとが、あなたの手を握りながら、あなたの太腿で眠っているだけ。
あなたの顔は1秒たりとも映ることはないその映像からは、画面の奥で幸せそうに眠るその人を、どれだけ愛おしく思っていたかなんて明白で。
私を悲しませまいと、過去の話を詳しく話さず、うまくいかなかったと言ってくれていたあなたのやさしさを、こんな形で知りたくなかった。
あなたと出会って、半年が経とうとしている。
けど、まだ半年なのだ。
あなたのアルバムを指で辿るたび、まだ一緒に過ごしたことのない季節がいくつも出てくる。
過去の相手と、どんな旅をしようが、どんなイベントを過ごそうが、どんなお祝いごとをしていようが、平気だったのに。
だけど、昔好きだった相手にも、思わずレンズを向けてしまうような、日常を愛おしく思えるような、そんな一コマを残しておきたいと願ったあなたが、憎くて、愛おしくて、引き裂かれてしまいそう。
早く忘れてしまいたいのに、あなたが寝静まった暗闇の中で、ふと脳裏にその十数秒が蘇っては、感情を揺さぶってくる。
今は、「かわいいね、すきだよ」と言ってくれるその口も、いつかは別の誰かに「うまくいかなかった」と話すようになるのだろうか。
はじめて湧き上がる、そんな漠然とした不安を、布団まるごと抱えて、今日もあなたの背中に抱きついて眠る。