
二階の男 (後編)
二階の男 後編
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⑨ コンビニで
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仕事帰り
えりこ は いつものように
ローソン に 寄った
家 の 近くにある
帰り道 の コンビニ だった
するとそこに
見慣れた顔 が あった
木村さん だった
「あれ 石田さん?」
何食わぬ顔で
声 を かけてきた
えりこ は
びっくりしながらも
嬉しかった
その後も
何度も 何度も
同じ ローソン で 会った
タイミング が
よすぎるくらい よかった
その頃の えりこ は
本当に 偶然だなあ と
思っていた
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⑩ 送ってくれた人
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ある日
木村さん が 言った
「送ってこっか」
えりこ は
乗っていいよ と言われた時に
「後ろに乗ります」
と言った
すると 木村さん が
少し 不思議そうな顔 を した
「奥さん 助手席に座られますよね?」
えりこ は
はっきり そう言った
「嫁さんは
いつも後ろに乗るで 子供おるでさ」
えりこ は
何も 言えなかった
どうして
後ろに 乗るんだろう と
思っていた
木村さん は
よく 送ってくれた
私が 持病 が あったから
かもしれない
車 の 中 は
いつも 煙草 の 臭い が しなかった
木村さん が
気 を 使ってくれていたのだと
あとで 気 が ついた
ある日
いつもと 違った
車 の 中 に
煙草 の 臭い が した
マルボロメンソールを吸っている
なんで
今日 は 吸っているんだろう
何 が あったのかな
私には
わからなかった
今でも
わからない
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⑪ つけ麺とカラオケ
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木村さん は
ラーメン が 好きで 会社では
ラーメン同好会に入っていた。
一緒に食べに行くわけではなく
美味しかった お店 を
共有し合う 同好会 だったそうだ
えりこ と 木村さん が
ラーメン の話 をしたことがあった
すると
「一宮に 美味しいところがあるよ」
と言ってくれた
少し 遠いところだった
つけ麺 が
まだ あまり知られていない頃だった
連れて行ってもらった お店 は
つけ麺屋さん だった
麺 が 綺麗で
もちもちしていた
四国の 香川 の うどん かと
思うくらいだった
麺 は とても美味しかった
でも
つけ汁 が
すっぱかった
でも 我慢した
木村さん に
連れてきてもらった お店 だから
ある日
えりこ が 珍しく ワガママ を 言った
「カラオケに行きたい」
木村さん の 歌 が 上手いと
噂 で 聞いていたから
木村さん は
えりこ の ワガママ を
聞いてくれた
カラオケ に 連れて行ってもらった
木村さん の 声 は
草彅剛さん に 似ていた
歌は上手いと思いました。
何曲か 交代で 歌っていた
昔 地元で
ヴィジュアル系バンド を
組んでいたそうだ
そういえば
なんとなく わかる気 が した
星野源さん に とても似た顔で
草彅剛さん に とても似た声。
ふと
急に 椅子 の 背もたれ を
ガン っと 蹴ってきた
びっくりした
少し 怖かった
なんで そんなことを されたのか
今でも わからない
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⑫ バレンタイン
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バレンタイン が 近づいてきた
仲良しの子 と
チョコレート を 見に行った
仲良しの子 は
彼氏 に あげる
高めの チョコ を 買っていた
えりこ は
悩んでいた
義理チョコ だし
奥さん の こと も 気になる
色々 考えた末に
高めの に した
シルバーの ミニカー が
ついている チョコレート だった
子供さん が いると 言っていたから
遊んでもらえたら いいな と思って
そのチョコ を 選んだ
渡した時
木村さん は
「ありがとう」
と 言った
普通だった
あんなに 悩んで
選んだのに
でも
それで よかった と思った
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⑬ 噂は本当だった
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だいぶ 経ってから
お風呂場 で
噂 を 聞いた
木村さん と 中島さん が
長く 付き合っている と
えりこ は
その時まで
木村さん が 独身だと
思っていた
かなり ショックだった
中島さん の ことは
知っていた
でも
まさか と思っていた
噂 だろう と
思いたかった
正直
信じたくなかった
会社 を 辞める
少し前 の ことだった
帰る前に
下駄箱 の ところ で
入れ違いに なった
木村さん は
えりこ に 気 が つかずに
行ってしまった
えりこ は
その時 見てしまった
誰か の 靴箱 の
靴 の 奥 に
鍵 を 入れるのを
そのすぐ後に
階段 を 少し 急ぎ足 で
降りてきた 人 が いた
中島さん だった
鍵 を 取り出した
えりこ は
その場 に 立ちつくした
噂 は
本当 だったんだ
辞める前の日に
見てしまった
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⑭ 別れと再会
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えりこ は
会社 を 辞めた
仲良しの子 も
同じ 頃 に 辞めた
東京 の バンドマン の 彼氏 と
遠距離恋愛 を していた 子 で
上京 する ことになったのだ
仲良しの子 が いなくなるなら
居たくない と思った
元々
転職 を 考えていた
辞める前に
木村さん が 言っていた
「一緒 の 会社 で 働かない?」
その言葉 が
嬉しかった
だから
辞めてしまった
その後
えりこ は 2度 転職 した
そして
木村さん から 連絡 が 来た
「一緒 に 働かない?」
地元 では 大きな 会社 だった
木村さん は
引き抜き で
上 の 立場 として
働くそうだった
えりこ は
その誘い を 受けた
新しい 会社 で 働く前に
木村さん が 連れて行ってくれた
地元 の 高級焼肉 だった
えりこ は
その頃 ダイエット を 頑張っていた
173cm で 59kg まで
絞っていた
せっかくの 高級焼肉 なのに
ご飯 が 入らなかった
喉 を 通らない
木村さん は
そのお店 の
常連 だったそうだ
えりこ は
ただ 座っていた
食べられなくて
もったいないな と
思いながら
それでも
木村さん と 二人 で
同じ 時間 を 過ごせるのが
嬉しかった
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⑮ 全部、計算だったのかな
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会社 を 辞めて
しばらく 経った 頃
えりこ は
ふと 思い出した
木村さん と の こと を
コンビニ で
何度も 何度も 会ったこと
タイミング が
よすぎるくらい よかったこと
その頃 の えりこ は
本当に 偶然だなあ と
思っていた
でも
よく よく
考えてみた
帰り道 の コンビニ
いつも 同じ 時間帯
待っていたのかもしれない
そう 思うようになった
全部 計算だったのかな
と
優しく 声をかけてくれたのも
毎晩 電話 を してくれたのも
送ってくれたのも
全部
仕組まれていたのかもしれない
と えりこ は 思った
答え は
もう 出ていた
でも
頭 を ポンポン と してくれた あの手 は
カルテ を 前に
椅子 を くっつけて座った あの距離 は
シーツ交換 の 時間の
たわいのない会話 は
本物だったのかな
と
今でも
少しだけ
思っている