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場面緘黙とは

    RILL

    No.36

    家では家族とおしゃべりできるのに、学校や幼稚園などでは全く話せない……。もしかすると「場面緘黙」かもしれません。

    今回は、場面緘黙症について理解を深めたいと思います。

    記事を転載します。


    場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)とは


    場面:特定の場所や状況

    緘黙(かんもく):口を閉じて何も言わないこと、押し黙ること

    「特定の場面において、話すことができなくなる」という意味です。

    家庭などリラックスできる環境では問題なく話せるのに、

    学校や知らない人がいる場所など、

    特定の社会的状況になると声が出せなくなってしまう。

    本人の意思で「話さない」ことを選んでいるわけではなく、

    「話したいのに話せない」という、強い不安や緊張に起因する状態です。

     場面緘黙症の最も特徴的な点は、

    話せる能力自体には問題がないことです。

    家では家族と冗談を言ったり、歌を歌ったりできるのに、

    特定の場所や人などに直面すると、まるでスイッチが切れたかのように話せなくなります。

    この状態は、本人の努力や気合いで乗り越えられるものではありません。

    かつては「選択性緘黙」と呼ばれていましたが、

    「本人が意図的に黙ることを選択している」という誤解を招きやすいため、

    現在では「場面緘黙症」という呼称が一般的に使われています。



    数百人に1人の割合で発症

    3〜8歳頃の幼児期から小学校低学年にかけて発症します。

    学校生活や社会的な関わりが広がる時期に顕在化することが多く、

    思春期以降に自然に治るケースもありますが、

    大人になっても症状が続く人も少なくありません。


    発症率は、0.08%~2.2%とする海外の研究や0.15%程度とする学校の調査がありますが、おしなべて1%未満、数百人に1人の割合と考えられています。

    男子より女子にやや多い傾向があり、

    日本の報告では男子1人に対し女子は1.8人程度となっています。



    原因


    場面緘黙の明確な発症メカニズムは解明されていません。

    一方で、場面緘黙は生まれつきの本人の性質と環境的な要因が複雑に関与し合うことで発症すると考えられています。

    先生に名前を呼ばれても返事ができない

    授業中に発表や音読ができない 友達の輪に入れず、一人でいることが多い

    「おはよう」「さようなら」などの挨拶ができない

    「トイレに行きたい」「気分が悪い」といったことを伝えられない 給食のおかわりが頼めない

    これらの状況は、本人にとって非常につらく、学校が安心できない場所になってしまう原因となります。

    「なぜ、うちの子が?」と原因を知りたいと思うのは自然なことです。

    しかし、場面緘黙症の原因は一つに特定できるものではなく、複数の要因が影響し合っていると考えられています。

    親の育て方やしつけが直接的な原因ではありません。 ご自身を責める必要は全くありません。


    本人の性質・症状


    生まれつき不安や緊張を感じやすい性質があると、場面緘黙を発症するリスクが高いと考えられています。

    特に、新しい環境や特定の場面に対して警戒心が強く、

    その場面を回避しようとする傾向がある場合に発症しやすいとの報告があります。

    単なる人見知りや恥ずかしがり屋とは異なり、環境に慣れても改善されにくいという特徴があります。

    身体的な症状もよく見られます。

    人前に出ると動悸や発汗、顔の赤み、手の震えなどの自律神経症状が現れることがあります。

    これらは強い不安や恐怖による身体反応であり、本人にとっては「声を出したくても体が反応してしまう」という苦しい状況です。


    ●しゃべりたくてもしゃべれない

    「自分の意思でしゃべらない」と思われることがありますが、これは誤りです。

    本人は話す意思があるにもかかわらず、強い緊張や不安によって声を発することができません。

    人との距離感をうまくはかることができず、コミュニケーションをとることに強い不安を感じたり、

    パニック気味になったりしてしまうため、話したくても話せないのです。

    「意地っ張り」「頑固」「反抗的」といった性格の問題として片付けてしまうと、本人はさらに傷つき、孤立を深めてしまいます。

     ●困りごとは「しゃべれないこと」だけではない

    不安な心理が前面に出ていて友だちになじめない
    学校ではいつも緊張しているといった悩みを抱えがちです。

    ●しゃべらないことで自分の身を守っているケースも

    学校でしゃべらないことで「話すこと」へのストレスを避け、心の平穏を保っているケースもあります。

    ●「大人になったら自然に治る」は間違い

    適切な治療・支援を受けないと、コミュニケーションに自信が持てず劣等感が増し、うつ状態などの二次障害につながるリスクが高まります。


     場面緘黙の症状には個人差があり、家庭内の状況と家庭外(学校など)の状況によって大きく三つに分けられます。

    軽症型

    ・家庭内:ほぼ問題なくしゃべることができる。

    ・家庭外:発話はできないが、筆談やスポーツなどで周囲とコミュニケーションを取ることができる。

    不安症状はほとんどなく、活力や明瞭さがある。

    中間型

    ・家庭内:ほぼ問題なくしゃべることができる。

    ・家庭外:発話ができないのに加え、周囲とのコミュニケーションも拒否する。

    不安症状がある。

    ・重症型

    ・家庭内:父親とだけ話せないなど、家族内でも発話できない場面がある。

    ・家庭外:発話ができないのに加え、身振り手振りを含めた他人とのコミュニケーションも拒否する。

    不安やパニック症状が強く、さらに身体が思うように動かせず固まってしまう。

    症状の重さに違いはありますが、場面緘黙に共通しているのは

    ・話せる場面とそうでない場面の区別がはっきりしている

    ・話せない状態が月単位、年単位で長く続く

    ・その場所ではリラックスできる状態にあっても話すことができない 


    場面緘黙症と人見知り・引っ込み思案の違い

    場面緘黙症は「人見知り」や「内気な性格」と混同されがちですが、明確に異なります。

    人見知りや引っ込み思案の子どもは、初めは緊張しても時間が経つと少しずつ話せるようになるのが一般的です。

    しかし場面緘黙症の場合は、安心できる場所以外では声が全く出ず、無理に話そうとすると強い不安や身体症状(動悸・震え)が出てしまうのが特徴です。


    適切な支援がないまま放置されると、

    うつ病や不登校、

    引きこもりなど二次的な問題につながるリスクもあります。

    そのため、単なる内気な性格と片づけず、不安障害として理解することが大切です。


    環境的要因


    場面緘黙は、言葉を発することがストレスになりやすい環境にあると発症リスクが高いことがさまざまな研究から明らかになっています。

    具体的には、言語や文化が異なる地域へ移住するなど、言語習得の困難さとストレスにさらされた子どもは場面緘黙になりやすいとの報告があります



    症状や日常生活への支障の評価


    診断には、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5-TR)やWHOの診断基準(ICD-11)が用いられます。

    学校や職場など特定の状況での一貫した発話困難。学業や対人コミュニケーションへの支障、1か月以上の症状持続などが主な判断基準となります。

    言語能力の不足の有無、ほかの精神疾患では説明できない症状の有無も確認されます。

    診断過程では、“場面緘黙質問票(SMQ-R)”や“子どもの行動チェックリスト(CBCL)”などを用いて、発話状況や不安の程度を評価します。

    場面緘黙は不安症や自閉スペクトラム症との合併が多いため、これらの確認や、そのほかの病気などの可能性を調べるために、発達検査や心理検査が行われることもあります。



    治療


    場面緘黙の治療では、社会的な環境において本人が感じる不安を軽減していくことが重要です。


    症状の程度や個々の状況に応じて、以下のような治療が行われます。


    【行動療法】

    行動療法とは、行動の変化を通して症状の緩和を目指す治療法です。

    円滑な発話やコミュニケーションができる場所・状況を段階的に広げていき、成功体験の積み重ねを目指します。

    治療の効果を高めるためには、医療機関での治療に加え、学校などの関係者と協力しながら進めることも重要です。


    少しずつ話せる範囲を広げていく

    「行動療法的アプローチ」と、不安症状を軽減させる「薬物療法」を行ないます。

    できる範囲を広げていく行動療法

    行動療法的アプローチでは、

    家庭内でできているコミュニケーションを徐々に家庭外にも広げていきます。

    「できることを少しずつ広げること」

    「成功体験を積ませてあげること」


    併存する症状を緩和させる薬物療法


    残念ながら、緘黙の症状そのものを改善する薬はありません。

    しかし、併存している発達障害(自閉スペクトラム症など)による症状や不安感を軽減させることはできます。

    「話す能力はあるから学校でも話せるだろう」などと無理にしゃべらせようとしたり、しゃべれないことへの劣等感を抱かせたりしてしまうと、この不安はさらに大きくなってしまいます。

    「安心できる居場所があると知ってもらうこと」が大切であり、自分の居場所があると感じることができ、自信にもつながります。

    少しずつ自信を回復し、社会に適応しやすくなることが、一番理想的な治療となります。

    そのためには根気強く通院し続けること、家庭や学校など周囲の大人の協力が必要不可欠です。

    場面緘黙は決して珍しい症状ではなく、児童期であれば誰にでも起こり得ます。


    診断名と定義

    * 他の状況では話すことができるにもかかわらず、話すことが期待されている特定の社会的状況(例:学校)で、話すことが一貫してできない。
    * その障害が、学業上、職業上の成績、または対人コミュニケーションを妨げている。
    * その障害の持続期間は、少なくとも1ヶ月(学校の最初の1ヶ月間に限定されない)である。
    * 話すことができないのは、その社会的状況で要求される話し言葉の知識が不足している、または、その言葉に自信がない、という理由によるものではない。
    * その障害は、コミュニケーション症(例:小児期発症流暢症)ではうまく説明されず、また、自閉スペクトラム症、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではない。

    出典:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)を参考に要約

    緘黙症の方との接し方のポイント


     話すことを強要しない

    緘黙症の方と話すときは、喋ることや意思表示を強要しないよう注意します。

    本人は話したくても話せない状況であるため、無理に話すことを求めると不安を煽り、余計に会話しにくくなる恐れがあります。

    時間はかかりますが自分のペースで会話するよう促し、ゆっくりとコミュニケーションをとることが大切です。


    「話せたこと」よりも「その場にいられたこと」

    「挑戦しようとした気持ち」を認めてあげると、子どもの自己肯定感を自然に育てられます。

    場面緘黙症への接し方の基本は、

    話すことへの期待をかけすぎず、

    子どもが安心して過ごせる雰囲気を守ること。

    小さな一歩を、静かに温かく見守る姿勢が何より大切です。


    家庭では、「話さなくても受け入れられている」という安心感を伝えることが何より大切です。

    過度に注意したり叱ったりせず、子どもの小さな変化を見守る姿勢が回復につながります。

    安心できる居場所があることが、外の世界への一歩を後押しします。


    クローズドクエスチョンを心掛ける

    クローズドクエスチョンを心掛けることで、言葉を発せなくともコミュニケーション取りやすくなります。

     YESかNOで返答できるクローズドクエスチョンを心がければ、

    うなずきや首振りなどでやり取りでき、スムーズな意思疎通が可能となります。

    やさしい態度や言葉遣いにより、不安やストレスを感じさせないようにすることも大切です。

    テンポの速い会話や責め立てるような口調では、ストレスや不安を感じ、言葉を詰まらせてしまう可能性があります。

    柔らかい表情や言葉遣いを意識して、安心感を与えるようします。


    善意からであっても避けたい声かけの仕方

     ●「挨拶だけでいいから」

    ●「一言でいいから話してみよう」

    ●「どうして話さないの?」

    ●「もう大きいんだから」

    本人は話したくないわけではなく、強い不安で声が出ない状態です。

    無理に話させようとすると、不安がさらに強まり、症状が固定化する恐れがあります。

    話せない状態を否定する言動 は子どもに自責感や恥ずかしさを与えてしまいます。 

    場面緘黙症は本人の努力不足ではありません。

    責めることで安心感が失われ、ますます話せなくなる悪循環に陥ることがあります。

    子どものペースを尊重しながら、段階的に不安を和らげていくことが大切です。

    少しずつ環境に慣れていく支援方法 いきなり集団の中で話すことを目指すのではなく、

    安心できる少人数や慣れた相手とのやりとりから始めます。

    成功体験を積み重ねることで、「話しても大丈夫」という感覚を少しずつ育てていきます。

    考え方と行動を整理する心理的アプローチ 認知行動療法では、

    「話したら失敗するかもしれない」といった不安な考え方に向き合い、

    現実的な受け止め方を身につけていきます。

    行動面の練習と組み合わせることで、不安への対処力を高める効果が期待されます。


     家庭では、「話さなくても受け入れられている」という安心感を伝えることが何より大切です。

    過度に注意したり叱ったりせず、子どもの小さな変化を見守る姿勢が回復につながります。


    当事者の声


    かんもくの声

    入江紗代/学苑社

    かんもくの声

    “あいさつ、返事、世間話。

    尋ねる。

    質問する。

    電話を受ける・電話をかける。

    説明する。

    受け答えする。

    確認する。

    どうぞ。すみません。

    失礼します。

    ありがとうございます。

    飲食店などでの注文。

    美容院、病院、役所でのやり取り。

    自己紹介。

    名前を呼ぶこと。

    場面緘黙でない人にとっては、ほんの些細なことかもしれない。

    でも、私にとってはどれも大変なこと”


    当事者活動・セルフヘルプ活動事例集
    セルフヘルプという力
    みんなでつくる
    セルフヘルプグループ
    〜はじまり物語〜

    東京ボランティア・市民活動センター

    苦しんでいたのは自分一人ではなかった!

    私の場合は、幼稚園から大学4年生になるまで、学校でしゃべることができませんでした。


    家ではむしろおしゃべりなぐらいでしたが、学校では授業中の受け答えはできても、なぜか休み時間になるとクラスメイトとのフリーな会話が全くできないのです。


    自分でもわけが分からず、こんな風になるのは自分一人だけだと思っていました。


    高校生ぐらいからは本気で何とかしないとまずいと焦っていましたが、どうすることもできないままでした。


    ところが、理系の大学に進学し、4年生になった時、自分の周りの環境が変わったことをきっかけに症状が少しずつ改善していったのです。


    研究室には決められた自分の席があり、同期の学生も10名以下と少人数でした。


    研究テーマが設定されているおかげで、フリーにみえる会話にも、いろいろな前提や枠組みが存在していたわけです。


    話せない自分を責める人もいませんでした。


    振り返ってみるとそうしたことがしゃべる自信につながっていったのだと思います。


    2007年のある日「学校でしゃべれない」をキーワードにネットで検索したところ、場面緘黙の情報があるページにたどり着き、

    「自分はこれだ!名前がついているものだったのか」と驚きました。


    27歳の時でした。


    初めて自分の症状が緘黙に当てはまることを知りました。

    「わがままはやめろ」!?

    「わがままはやめろよ」。


    高校でクラスメイトに言われたこの一言が今でも忘れられません。


    文化祭の準備で担当の係を決める際に、どの係をやりたいか聞かれた私は、当然答えることができませんでした。


    そこで言われたのがこの言葉です。


    授業中は先生の問いに答えることができていた私は、しゃべれるのに、わがままで答えないのだと思われたのでした。


    「わがままだから」、

    「頑固だから」

    しゃべらないのだろうという誤解や偏見が多いのです。


    何故緘黙になったのか、その理由は自分でもわかりません。


    医学的にも原因は解明されておらず、症状は人によって千差万別です。


    「喉に言葉がつかえてでにくい」と感じている人もいれば、

    非常に小さな声でならしゃべれる人もいます。


    私の場合は「頭で考えていることが言葉にならない。思考を言語化できない」という感覚です。


    また私とは逆に、家ではしゃべれないのに学校ではしゃべれる人もいます。


    緘黙の症状に苦しんでいる人は、みなさんが想像されるより沢山いるのではないでしょうか。


    200人から500人に1人と言われていますが、今にして思えば、小学校にも中学校にも私と同じように話せない子がいました。


    個人的な感覚ではもっと多いのではないかと思っています。

    環境の変化とスモールステップで症状が改善


    大学4年以降は、博士課程まで含めて、およそ5年間、不安や負荷の少ない環境で過ごすことができました。


    そうした意味では、ほぼ家にいるような感覚だったと思います。


    私は徐々に話せるようになり、人前で研究発表などもできるようになっていきました。


    結果的にちょっとずつちょっとずつ、できる範囲を広げていく、

    いわゆる“スモールステップ”を踏んでいけたのが良かったのでしょう。


    このように本人や、親、教員などにより、できることとできないことを適切に見定めて、そのうちのできることをちょっとずつ、広げていくことが症状の改善につながると言えます。


    不安感のない状態から、少しだけ不安のある状態をつくり、それに慣れていき、ステップアップしていくイメージです。


    引っ越しや転校などで身の回りの環境が変わり、突然緘黙になる人もいますが、

    逆に緘黙が治る人もいます。


    それまでの知り合いがいなくなることで気持ちが楽になるからです。


    「あいつはしゃべらない」と思われていると、改めてしゃべりだすには、すごくエネルギーがいります。


    しゃべりだすエネルギーが自分の中にたまっていると、環境が変わったのをきっかけに、再びしゃべれる様になるのかもしれません。

    緘黙の認知度が上がってほしい

    言の葉の会は、ライングループをきっかけに2018年に誕生しました。


    それ以前、当事者以外にも親や支援者が入ったグループはありましたが、当事者だけの緘黙の会ができたのは初めてのことです。


    緘黙の人にとってツイッター等SNSはありがたいツールであり、この10年で、緘黙に関する情報発信は飛躍的に増え、新たな当事者の参加の入り口にもなっています。


    当事者の居場所づくりとして、チャットなどにより悩みや経験を共有するネット上の交流の他、関東、中部、関西のそれぞれの地域で、2カ月に1回、実際に顔を合わせる交流会を開催しています。


    当事者だからこそできる、

    “安心できる”居場所づくりを心がけています。

    最近は入会を希望する緘黙児童の保護者からの問い合わせもあります。


    ゆくゆくは、こうした情報がなく不安を抱えた保護者にもアプローチをしていければと思います。


    近日中に開催予定のセミナーは、あっという間に定員に達しました。


    関心を持っている人はたくさんいると思いますが、まだまだ知らない人、誤解している人が多い中で、緘黙の認知度が上がり、話そうとしても話せなかった当事者の苦しみや辛さを知ってほしいと願っています。


    【体験談】場面緘黙

    ぴあっと発達情報サイト
    みかた
    この記事を書いた人 :けいこ

    声が出ない


    「あの子は泳げないだけだもんなぁ。

    私は自転車にも乗れないし、

    泳げないし、

    何より学校で友だちと話すこともできない…。」


    そんなことを思いながら、スイミングスクールで仲良くなった子が、自転車で帰っていく姿をぼんやり眺めていた小学3年生の夏。


    今でもよく覚えています。


    私は小学2年生の2学期から、学校で全く声が出せなくなりました。


    それまでも引っ込み思案ではありましたが、普通に授業に参加していましたし、学芸会でもセリフはありました。


    なぜ声が出せないのか、どうすれば話せるようになるのか、これは一体何なのか、独りでぐるぐる悩んでいました。


    声を出そうとしても、喉の奥がキュッとなって、どうしても声が出せないのです。


    親にも相談できませんでした。


    なので親は、担任の先生に私が学校で話していないと聞くまで、数ヶ月気付いていなかったようです

    防衛反応

    のちにこれが『場面緘黙(ばめんかんもく)』というものだと判明しますが、それはずっと後のこと。

    場面緘黙とは、ある特定の場面(学校など)で話せなくなる症状で、家では普通に話しているので家族は気付きにくいのです。


    小学校低学年までに発症することが多いようです。


    私の場合、家から一歩外に出るとそれが始まり、家に帰るまで続いていました。

    一日中緊張しっぱなしで黙っているので、帰宅すると一気に喋りまくります。


    厄介なことに、ただ話せないだけでなく、咳ができない、くしゃみができない、鼻をかめない(すすれない)など、とにかく自分の体から音を出すことができないのです。


    また、椅子を引く、何かを引きずるといった自分の行動によって音が出ることもダメでした。


    これは大人になってもダメで、例えば、スーツケースを引っぱる時のタイヤの音が無理で、大きな音が出てしまう舗装されていない道などは、持ち上げて歩いてしまいます。


    目覚まし時計の音、電子レンジの出来上がり音、機械のエラー音なども苦手です。


    とにかく注目を浴びることが怖いのと、大きい音を立てると周りに迷惑になるのではという想いが強いため、足音も立てず忍びのような生活をしています。


    喋らない、音を立てない、というのは「恐怖から自分を守る手段」なのだと思います。


    喋れない学校生活で感じたこと

    喋れないと不都合がたくさんあります。

    その中でもこれは困ったなぁ、という体験を一つご紹介します。


    私の通っていた小学校には『仲良し班』というものがありました。


    1年生から6年生までの縦割り班で、遠足へ行ったり色々な活動をするのです。


    自分のクラスにいる時は、先生もクラスメイトも、私が喋れない子だという認識があるので、比較的楽でした。

    (今思うと、こんな私にみんな優しかったなぁと改めて感じます。)


    しかし他学年が混在すると状況は一変!担当する先生も変わるため、私の事を知る人が少なく、とても不安で何かしら問題が起こりました。


    一番困ったのが、順番に話さなければいけないゲームをする時でした。 私が何も言わないので、うちの班だけ何度も最初の人からやり直しになりました。


    先生に「じゃあ、もう一回最初から!」と言われ続け、とうとう時間がきてしまいました。


    先生は何も言わない私を、不思議そうに見ていました。


    この経験から感じたことは、クラス内、学年内はもちろん、学校全体でも生徒の情報を共有(その子の得意不得意、絶対ダメなことなど)し、学校全体で生徒を見守っていけたらいいのになぁという事でした。


    そしてみんなが同じに何でもできる訳ではないということを知っていただき、できない子にも劣等感をいだかせないような工夫を、みんなで考えられる世の中になることを願っています。


    知ってほしい

    現在の私はというと、大人になってからも緊張しやすい性質は相変わらずで、つまずくことも多いですが、生活に支障のない程度には話すことができるようになりました。


    場面緘黙という言葉を知ったのは、成人してからです。


    親に聞いて知りましたが、正直もっと早く知りたかったです。


    早期に適切な治療を受ければ、症状が改善することがあります。


    しかし私のように、大人になるまで何か分からずに悩んで、症状がなかなか改善しない人も多いようです。


    発症率は、ざっくり言うと小学校に1、2人はいる計算になるそうです。


    そういえばクラスに全く話さない子がいたな~、という方もいるかと思います。


    その割には、場面緘黙は知名度がなく、その事が治療を遅らせてしまう原因となっています。


    話さないだけで授業の邪魔になるわけではないので、先生も「そのうち話すだろう」と放っておくケースもよく耳にします。


    本来発話ができる子が、2週間一言も言葉を発しなければ何かあるかもと思ってください。


    誰かが「あの子もしかして場面緘黙じゃない?」と気付けたら、たくさんの子が早期治療を受けられ、症状が改善するかもしれませんので、是非この機会に『場面緘黙』という言葉を、覚えていただけたら嬉しいです。



    安心できる居場所があることが、外の世界への一歩を後押しします🍀


    🍀gratias vobis agimus🍀

    🍀RILL🍀


     
     
     

    RILL

     
     
    難病、障がい、育児、くらし、日常について発信。 ささいな気づきを深堀りして考え、共に学んでいきます。 2020年指定難病222ネフローゼ症候群発症。支援者でありつつ利用者であるために🍀

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