
教材「足袋の季節」の授業づくり解説
本稿では、教材、価値、思考活動、授業類型、発問、活動をつなぎ、実際の授業構想へと進んでいく様子を、中学生向けの道徳教材「足袋の季節」を例に、具体的に考えていきます。
(1)教材から授業づくりの出発点を捉える
教材「足袋の季節」は、お釣りをごまかした主人公が後悔の中で暮らし、後に返済に向かうが、相手は既に他界していて返せなかったという後悔を背負って生きる話です。教材を読むと、主人公の生活の苦しさと誠実さが痛いほど伝わってきます。
教材文は大きく三つの部分に分かれています。
(2)「何を考えさせたいか」から授業類型を決める
こうした内容からは、つり銭をごまかしてしまう心の弱さや、その後に後悔を抱えながら生きる主人公の姿など、生き方に関わる内容を考えることができます。
そのため、何に着目して考えさせるのかによって、いくつかの授業構想が考えられます。
① 主人公の心の弱さを考えさせたい場合
この教材では、つり銭をごまかす、老婆に会うのを避けるなど、主人公の「心の弱さ」を表す記述が数多く描かれています。このことからは、主人公の心の弱さに着目して価値に迫ることが考えられます。その場合には、「類型11 心の弱さを考える展開」を用いることができます。
では、本教材で類型11を用いた授業は成立するのでしょうか?
「足袋の季節」では、つり銭をごまかすこと、お婆さんを避けること、お婆さんは自分にお金をくれたと都合よく考えること、つり銭を「老婆の心」と考えることなどを、主人公の心の弱さとして捉えることができます。
しかし、ここから心の弱さに焦点を当てて考えると、生活の苦しさからごまかしてしまったことへの同情に考察が傾き、「仕方がなかった」という見方につながる可能性があります。
また、「老婆の心」と考えたことを自分に都合よく解釈したものと捉えると、主人公のその後の生き方を考えることにつながりにくくなります。
このように考えると、類型11による思考活動を成立させることはできますが、この教材で心の弱さに焦点を当てて考えることが、よりよい生き方について考えること、つまりねらいとする価値につながるかという点では、課題があると考えられます。