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銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十八話(1) 放蕩息子と孝行息子

    ・第一話のスタート版
    ・第一話から連載をまとめたマガジン 
    ・第二十七話「ガールズトークでピザパーティ」

     会社帰りにチャムールに会った。
    「ティリー、一緒に帰ろうよ」

    n50セーター笑い逆カラー

     普段ならチャムールは、本社前のステーションから空港行きのライナーに乗るのだけれど、わたしと一緒に歩き出した。
     どうやら、わたしに話があるようだ。
     
    「どうしたの?」
    「この間、アーサーのご自宅で、お父上の将軍にごあいさつをしたの」
    「そうなんだ!」
     驚きながらニュースでしか見たことのない将軍の顔を思い浮かべる。

    n91@前目一文字白

     チャムールがお付き合いしているアーサー・トライムスさんは将軍家の御曹司。

     結婚前提のお付き合いなのだから、普通に考えれば驚くことでもないのだけれど。連邦軍を統率する将軍に御目通りするなんて、一般人には考えられない話だ。

    「ベルの家で、アーサーとレイターが義理の兄弟、という話をしたでしょ」

     同期の女子三人でピザパーティーをした。その時の話だ。
     正直に言って驚いた。
     レイターが愛してやまない『愛しの君』は、将軍家のアーサーさんの妹で婚約者だったと言うのだ。

    「将軍は開口一番、なんておっしゃったと思う」
    「さあ?」
    「『うちには、手のかかるバカ息子と、手はかからないが無愛想な息子の二人がおりまして』ですって」

     話の途中で、わたしは思わず吹いてしまった。

    アーサー前

     手のかかるバカ息子がレイターで、手のかからない不愛想な息子はアーサーさんだ。

    「そしてね『手のかからない息子のこともずっと心配しておりました。どうぞ仲良くしてやってください』って」
     いつも冷静なアーサーさんが、どんな顔をして聞いていたのか、想像がつかない。

    「あそこのお宅はね、レイターが中心なのよ」
    「レイターが?」
    「お手伝いさんもやってきて、話に加わったんだけれど、バカ息子の世話がいかに大変だったか、って話ばかりなの。面白くて盛り上がったんだけれどね」
    「どんな話?」
     興味がある。

    「ハイスクールを中退した、と思ったら暴走族になっていた、とか、将軍のコネで折角一流会社にいれたのに、処分を受けて一年で辞めて、家を飛び出したきり帰ってこない。あげくの果てに、将軍家に借金の肩代わりをさせているって」
    「放蕩息子の極みね」
     大体わたしの知っている話だった。

    「馬鹿な子ほどかわいい、って言うけれど、実の息子であるアーサーの話はほとんど出ないのよ。面白い思い出話は無いんですって」
    「何だかそれもかわいそう」
     アーサーさんに少し同情する。

    「本人は昔から慣れている、って言ってたわ」
     優秀な兄と出来の悪い弟。ほかの家庭でも似たような話を聞いたことがある。何だか本当の家族みたいだ。

    「ところでティリー、あなたの話も出たわよ」
    「えっ? どうして?」

    n11ティリー@2算木やや縦口

     わたしはびっくりした。

    「将軍が『レイターの恋愛はどうなっとるんだ?』ってアーサーに聞いてきたのよ。私たち、思わず目を見合わせてしまったわ」
     嫌な予感がする。

    「どうやら将軍は、レイターが『俺のティリーさん』って話しているのを聞きつけたらしいの」

     レイターはわたしのことを「俺のティリーさん」と呼ぶ。
     そのせいで、わたしたちがつきあっている、と誤って思い込んだ人は、これまでにもいた。
     天下の将軍にまで勘違いされるとは。
     こういうことになるから、やめて欲しいと言ってるのに。

    「それで、何て答えたの? 将軍の誤解を解いてくれた?」
    「アーサーが『事態が進展するには、まだ時間がかかるとみられます』って。あそこの親子の会話は、業務報告みたいなのよね」

     事態の進展、ってどういう意味だろう。
     わたしとレイターが付き合うということ?   (2)へ続く

    ・第一話からの連載をまとめたマガジン 
    ・イラスト集のマガジン

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