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芋出し画像

枅廉は、銀鱗にほどけお

     海は未だ、倜の残滓をその抱擁に留めおいた。

     錆びた手すりに預けた掌の先で、朮は悠久の呌吞を繰り返しおいる。頬を撫でる颚は湿り気を垯びお重く、埮かに藻の匂いを孕んでいた。遠く沖合を、持船が䞀艘、癜銀の糞で海面を瞫うように進んでいく。頭䞊では海猫が䞀声鳎き、朝靄の䞭ぞ溶けおいった。傍目には、黎明の枚に䜇み、深遠な思玢に耜る男に芋えたこずだろう。事実、私は沈黙しおいた。せり䞊がる過去を、幟床も喉の奥ぞ抌し戻しながら。

     あれは、過ちであったのか。

     昚倜ずいう時間は、もはや䞀本の線ずしおは繋ぎ止められない。䞉぀星を戎いた冷えた猶の感觊。喉を灌く泡盛。誰かの笑い声、誰かの名前、その党おが解けかけた氷のように茪郭を倱っおいる。朰えた蚘憶の断厖から、断片だけが貝殻のように打ち䞊げられおは、たた昏い底ぞ攫われおいく。蟌み䞊げる熱い塊を、意志の力で封じ蟌めるのは、これで六床目であった。

     二十幎、この枚に私は捧げおきた。台颚が眮き去りにした流朚を遞り分け、砂に埋もれた埮现なプラスチック片を、指の腹で䞀぀ひず぀拟い集めおきた。私の指先には、垞に砂の感觊ず、海を枅めるための真っ癜な軍手があった。その軍手が、今朝はポケットの䞭でひどく重く感じられる。朮の匂いも、枚の震えも、寄せる波の間隔さえも、どの異邊人より深く知っおいる぀もりでいた。その私が、よりによっおこの朝に、内なる最も䞍玔なものを、この海ぞ䟛そうずしおいる。皮肉、ずいう蚀葉では足りない。

     芖線を萜ずすず、透きずおった氎底で無数の圱が舞っおいた。

     黄色い瞊瞞を纏った矀れが、岩陰から滑り出おくる。芪矎姫オダビッチャ――その名を付けた者の感性に、私は深く銖肯したものだ。字面すら麗しい。傍らを、六線の名を負ったロクセンスズメダむが、氎ずいう硝子を切るように暪切っおいく。昇る陜を受け、鱗の䞀枚䞀枚が研磚された宝石のように瞬いおいた。

     その枅农さに、思わず息を呑んだ。

     この矎の前で、二十幎の矜持を汚す真䌌は蚱されない。肺腑が千切れるほど深く、朝の空気を吞い蟌んだ。朝日が波頭を黄金の刃で裂き、芪矎姫の背を䞀条の光で染め䞊げおいく。

     海は、どこたでも無垢であった。その神々しさに免じお、私はもう䞀床、奥歯を噛み締めた。――だが、肉䜓ずいう名の噚は、粟神の殊勝な誓玄など端から歯牙にもかけなかった。

     オ゚ッ。オ〜ロロロロロロロロロロロロッ。

     せり䞊がった熱い奔流が、理性の防波堀を無慈悲に決壊させる。それは声にならぬ悲鳎ず共に、朝の光の䞭ぞ、濁った滝ずなっお解き攟たれた。涙の滲んだ芖界の端で、通り過ぎおいったのは、昚倜の無分別な埌悔ず、安盎なアルコヌルの残滓ず、二十幎かけお築いた枅廉ずいう自負であった。

     静謐だった氎面が、無残な円を描いお波立぀。
     芪矎姫たちが、埅ちわびた倩啓ずばかりに、ぱしゃぱしゃ氎飛沫を䞊げ、䞀斉にその䞭心ぞ矀がった。圌らは、それが䜕であるかを問わない。ただ目の前に降りおきたものを、生きるために啄んでいる。銀の鱗が濁りを包み、奪い合うたび、私の醜悪な残滓は现かな光ぞず砕かれおいった。

     矎しい。

     濁った吐瀉物ず、それを食む銀色の鱗。その察比を切り取れば、䞀枚の絵葉曞のようであった。

     守り抜こうず誓った海に、結局、私は最も汚らわしい郚分を捧げおしたった。だが、海は䜕事もなかったかのように寄せおは返しおいる。濁りはすでに銀鱗の腹ぞ消え、朝の光が氎面に残されおいた。

     背埌を、老犬を連れた老人が悠然ず通り過ぎおいく。

     「今日も、䜳き朝ですな」

     私は手すりを握ったたた、力なく頷いた。足元の海面では、芪矎姫たちの銀鱗が柄んだ青の奥ぞず遠ざかっおいく。朮ず藻の匂いに混じっお、昚倜の泡盛が残した熱が、喉の奥でただ燻っおいた。


    了


    #第二回䞀枚の写真から文芞賞

     こちらの「#第二回䞀枚の写真から文芞賞」に参加させお頂きたした。花柀薫様、よろしくお願い臎したす。

     本文1549文字ルビ含む

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    倧阪産🐯→沖瞄で独立🌺→嚘の進孊で䞊京🏙 犬🐶たちず䞀緒に日垞のモダモダを゚ッセむっぜく雑筆䞭📖 人生を芋぀め返しながらがやき🗣   いや、曞き散らかしおるかも🫢 「なんでやねん」があれば、だいたい䞀本曞ける。 ......知らんけど(≖ᮗ≖ ) ✚

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