
【人生初】新宿駅でインド人と野宿した件~かつらを添えて~
【人生初】というのはインド人と肩を並べたことだけではない。野宿自体も含まれる。そもそも東京にいたのは幕張メッセで開催された「FGOフェス」というゲームイベントに参加するためだ。
それがなぜ、新宿駅の蒸し暑いタイルの上で異国の男たちと夜を明かす羽目になったのか。思い返せば「せっかく東京に来たのだから、良い映画館でスパイダーマンを見てぇよなぁ~」と思ったことが、たったそれだけのことがすべての始まりだった。
インド人と野宿エピソード0
走る、歩く。走る、歩く。
幕張の花火大会を背に私はひたすら徒歩で移動していた。多くの人が花火を近くで見ようと自分とは真逆の方向に進んでいく。そんな中を私はまるで川の流れに逆らう鮭のように、必死に進んでいた。

この日の海浜幕張駅は地獄と化していた。FGOフェスの参加者、GLAYのライブの参加者、そして花火大会の参加者。まさに混沌を極めていた…というやつだ。この状況では電車に乗れず映画に間に合わないと予想し、京成幕張駅まで移動することを事前に決めていた。道中でホテルにも寄り、大量のグッズや不要なものを置いていくという目的もあった。
目指すは新宿の「109シネマズプレミアム新宿」
京葉線の混雑を回避して、歌舞伎町の文字通りプレミアムな映画館に行くだけのはずが、地獄へ自ら足を踏み入れているとはこの時の自分は予想だにしなかった。
泣きっ面に蜂、踏んだり蹴ったりとはまさにこのことよ
自分のミスもある。それは認めよう。でも大半はイベントごとの煽りを受けたことが原因だ。何が起きたのかサクッと説明しよう。
この日はどうやら幕張のみならず、各地で花火大会などのイベントが開かれていたらしい。そのせいで本来降りようと思っていた駅をすっ飛ばすという前代未聞のアナウンスが電車内に流れた。そんなの僕のデータにはないぞ!
いや本当に聞いたことがない。駅そのものを飛ばすとかありかよ…これが誤算1つ目。これのせいでホテルに寄る時間は完全に無くなった。おまけに次の列車に乗ってからも、焦って本来降りるべき駅の1つ前で降りてしまうというミスをやらかすのだった…
駅員さんに聞き、次の列車を待っている途中。ホテルに寄る時間が無いことに気づいた。それどころか映画の上映時間をどうやっても少し過ぎることも判明した。これはまずいと思い、急いで新宿駅直行ルートを検索。
どうやら近くのJR市川駅まで歩く必要があるらしい。これが誤算2つ目。
人によっては市川駅というワードにピンときたのではないだろうか。
駅に到着するやいなや私は絶望した。眼前には膨大な数の人間が警察官の誘導に従って、ロータリーをぐるっと大回りし駅に進む光景が広がっていた。入場規制、というやつだ。この日市川という土地でも花火大会が行われていた。そしてちょうどその帰宅者が駅にごった返していた。
ただでさえ時間がない中で私はもみくちゃにされ、汗ばんだ体を拭く余裕もなく、眼前でカップル達のいちゃつきを見せられ、ストレスは限界に達していた。別のルートを検索しようにもネットが繋がらず、身動きすら取れない状況の中にいた。内なるハルクが目覚めるところだったが、結論としては10分ほどで電車に乗ることはできた。
「どうにか危機を脱したんだね!じゃあ後は新宿駅まで行くじゃん☺️」
そう思うのが普通だ。それでも私は焦り不安を抱えていた。映画により遅れることになったから?それもある。でももはやそれは大した問題ではない。実際これ以上のトラブルは起きなかった。ただ、すでに重大な問題に直面していただけなのだ。
スマホが逝くか、先に着くか
FGOフェスで写真や動画を撮りまくり、待ち時間に色々ゲームや作業をしていればバッテリーの消耗が激しいことは予想がつく。当然モバイルバッテリーは持っていた。誰だってそれくらいの対策はしているだろう?ただ致命的なことにケーブルを間違えていた。たったそれだけのことだが、事態は非常に深刻だった。
市川駅を出発した時点でバッテリー残量はすでに10%。仮に映画館までバッテリーが持ったとしても、ホテルに着くまでは絶対持たない。なにより、画面のQRコードを読み込ませる電子チケットだったので、そもそも映画を見れないのではないか。そのような不安が頭を埋め尽くしていた。
なんとか新宿の109シネマズまでたどり着いたころにはバッテリーは残り3%。分かっていたことだが、ホテルまでは無理。少しでもバッテリーを温存するために電源を完全に切り、一旦忘れて映画を楽しむことにした。すでに15分以上映画は上映されてしまっているのだからせめて、残っている時間は最高の映画体験をしてやる!という気持ち。
知らない人のために説明すると、この109シネマズプレミアム新宿は1番安くても4500円のチケット代がかかる。それだけ高い金を払っているからこそ遅れることに焦りを感じていた。MCUが好きなこともあり、映画自体も本当に楽しみにしていたのでなおさら最高の映画体験をという気持ちにもなるってわけ。
映画と劇場のレビューはまた別の機会に。

終電よさらば!
途中でズカズカと前を横切った人達への申し訳なさはあったけども、映画は本当に面白かったし楽しかった。本当はラウンジでくつろぎたかったし、新宿の夜景も写真に収めたかったけど終電ギリギリなのはリサーチ済みだ。
充電は残り3%しかない。なるべく頭にホテルまでのルートを叩き込もうとしたところだった。
次の電車の時間が4時30分を過ぎていた。おかしい。そんなはずはない。映画が終わって、急いで駅に向かえばギリギリ乗れる電車があるはずなのに。はっきりとした理由はわからない。エンドロールを最後まで見たからか、スマホの電源が入るのに時間を要したからか。何はともあれこの時初めて終電を逃したという現実を突きつけられたのだった。
n回目の不幸中の幸い
自覚はしているが、自分は土壇場での運が良いらしい。いかにもお金を持っていそうな人や、それこそ歌舞伎町の住人といった格好の人で賑わっているラウンジを呆然と歩いている私は見つけたのだ。机にコンセントがあることを…!
一瞬葛藤した。これは使っていいやつなのか?盗電にならないよな?壁の端にある小さなスタンディングデスクのようなものにコンセントは付いていた。怒られたら素直に謝ろうという気持ちでありがたく使わせてもらった。金持ち達に囲まれて自分だけ大荷物で、机の横に立ってスマホの充電をしているというのは本当に恥ずかしく惨めだった。彼らなら終電を逃してタクシーを呼んでそのまま帰宅できるだろうが、自分にはそんな余裕がない。そういった悔しさに耐えながら、30%までバッテリーが回復したことを確認して映画館を後にした。(急速充電に感謝)
終電を逃した愚か者には3つの選択肢があった。
ネカフェで始発まで寝る
喫茶店やファミレスで時間を潰す
徒歩でホテルまで帰る
まず3は論外だ。なぜなら映画館で2時間ほど座席で座ったと言えど、足腰の疲労は限界だった。足が棒になるという感覚を久しぶりに味わった気がする。そんな状況で大荷物を背負ってホテルまで行く気力はなかった。始発との時間差も1時間ほどしか無く、割に合わない。
続いて1だが、今までネカフェに行ったことがなく勝手が分からないことや、意外とお値段がすると思い断念。消去法で2の喫茶店で時間を潰すに切り替えることにした。
セーブポイント
心身共に限界だった私が目指したのは珈琲貴族エジンバラという喫茶店。なんとこの店は24時間営業という世にも珍しい喫茶店。
おまけに無料のWi-Fiや電源コンセントが完備されているというこの時の自分特攻すぎる設備の充実具合…!空調が効いているだけでも大助かりだが、特にコンセントがあるのは本当にありがたかった。
昼ごはんを食べてから映画館でポップコーンとチョコしか食べておらず、まともな食事を取っていない自分は本当にお腹が空いていた。
欲を言えばガッツリ食べたかった。だが、ギリギリの予算で東京遠征していた自分にそんな余裕はない。さすが新宿の24時間喫茶。地方のカフェと比べると、やはり物価の違いを感じずにはいられない値段。
迷って結局ピザトーストとジンジャエールを注文。本当はパフェとかポテトグラタンも頼みたかったけど、それはまた金持ちになってからリベンジするとしよう。そう思った矢先だった。
「3時間毎にワンオーダーいただいております」
ちょっと待て。3時間ごとにワンオーダーってことは、3時間は居座っていいのかよ!聞こえ間違いかも知れないと思い調べてみたが本当だった。確かに周りを見てみると、PCで作業をする人や勉強している学生、グループで会話を楽しむ人などが深夜にも関わらず大勢いた。
3時間時間を潰せると考えるとむしろ安くないか?という気持ちになってきた。冷えたジンジャエールに今までで1番美味しい(誇張抜きで)ピザトーストが体に染み渡る感覚を堪能した。ジンジャエールは生姜が強めで、自分は好みのタイプだった。ピザトーストは大ぶりでサクサク。チーズもとろけて、自分じゃこの味はとてもだせないと思わずにはいられなかった。

さて、疲れ果てていた人間がお腹を満たした後どうなるか。容易に想像がつくだろう。ここで私は眠気という魔物に襲われた。前日からの睡眠不足、一日中歩き回った疲れは、この魔物に大量のバフをかけていた。
前述した通り一度注文すれば3時間は滞在できる。ただ、懐の広いエジンバラにもたった1つだけ許されないことがある。それは寝ること。Googleマップや食べログ、果てはネットの記事まで。寝ると店員さんに注意されると様々な媒体に書かれているのだ。
ここで私は選択を迫られる。
始発まで眠気と戦うか、潔くネカフェで寝るかという2択を。これ以上お金は使いたくない。数時間後に行くFGO展に温存したい…でもパトラッシュ。こちとらガチで眠いし疲れてるんだ。
そうして1時間半ほど滞在した私は、ネカフェに行くことを選んだ。こうしてボス戦前のオアシスのような環境を自ら去ったのだった。
ネカフェ初心者へ 予約したほうがいいぞ
結論から言わせてもらうと、ネカフェには入れなかった。どこも空きがなかったのだ。快活クラブはおろか、なぜかAVが置いてあるよくわからん所ですらいっぱいだった。AVの店に関しては店員と会話しているときに二人ほどスーツケースを持った人が店に入ってきて、同じようにいっぱいだと言われて肩を落として入口からでてきた所を見た。彼らもネカフェがまさかどこもいっぱいで泊まれないなんて知らなかったのだろう。こうしてやりたいことリストの1つ、ネカフェで一夜を過ごすという項目はすんでのところで達成されなかった。
正直快活クラブに関しては、その場で会員登録もしたのにあの仕打ちというのはかなり根に持っている。登録する前に予約してないと入れないことを教えてくれやと。意識が朦朧としていたのに、怒りでかえって目が覚めた。
くお~!!インド人が右に!
怒りのパワーも眠気にはあっけなくやられてしまい、放浪していた私はいよいよ力尽きるというところだった。そのとき、ある光景が目に入ってきた。新宿駅東口、ライオン像の近くで何人もの集団が横たわっていた。日本人はおらず、見るからに治安の悪そうな感じ。自分と同じく彼らも終電を逃し、行き場を失っているのだろう。もちろん抵抗はあった。
普段の自分なら仮に集団で襲われたとしても、そう簡単にやられてたまるものか!そいつらのバナナを揉んでやるという気概は持っている。だが、そこにいたのは普段の自分ではなく大量のグッズを背負い、心も体も限界の自分。間違いなく負ける。その時試合終了のゴングが鳴り響く。睡魔が理性を打倒した。いやこの表現は正確ではない。睡魔が理性を説得したのだ。
この状況で理性が首を縦に振った理由は2つ。
1つは深夜にも関わらず、ある程度人通りがあったこと。
もう1つは眼の前に交番があったこと。
もし襲われたとしても交番の目の前ならすぐ警察が止めに来るはずだ。こうして私はまだスペースのあったライオン像の真横に吸い寄せられるように移動した。
ライオン像にはすでに1人の男がいた。そう彼こそが、インド人Aだ。実はインド人というのは私が勝手に呼んでいるだけで、本当のところはネパール人かも知れないしパキスタン人かもしれない。要は南アジア系の顔だちということ。差別はしたくないが、やはり移民問題などはニュースでよく報道されており警戒感はあった。空いていた彼の左側でしばらく座っていると、彼の友人らしい男(インド人Bと呼ばせてもらおう)が私と彼の間に横たわった。その姿を見て我慢していた私もとうとう横になった。
本当の本当に限界だった。それでも理性は最後の力を振り絞り、リュックを取られないよう手に肩紐を巻き付け、睡魔は蒸し暑く寝苦しい夜を少しでも快適になるようタオルで簡易的な枕を作った。本当に惨めだった。死ぬ気で働いてどうにかお金を工面して、東京に来たはずなのに今の自分は外国人の集団と野宿している。色んな角度から自分との格差を見せつけられ、深夜2時を過ぎても明るい新宿とは対象的に、陰惨な思考がぐるぐると駆け巡っていた。
気持ち的にも環境的にも寝苦しくふと寝返りを打ったときだった。隣のインド人Bの体に触れてしまった。まずい、何か文句を言われるのではないかと一瞬の緊張が走るのもつかの間、彼は無言のまま、体を少し横にスライドさせただけだった。端っこで狭そうにしていた私を見て気を使ってくれたのか、自分に触れられるのが嫌なだけだったのか。彼らと直接話したわけではない。ただ目があっただけ。それでもそこには同じ場所を共にする者同士の何かがあった。
あの場においての1番の異物は自分だ。唯一日本人で、大荷物を抱えて、おそらく1番年少で。そんな異物に、彼は文句1つ言わずスペースを少し分けてくれた。疲れ果てて文句を言う気力がなかっただけかも知れない。しかし、その何かが私の心を少しだけ軽くしてくれたのは確かなのだ。そうしてうとうとしながら1時間ほど経過した時、事件は起きる。
◎△$♪×¥●&%#?!
見たことある人は想像がつくと思うが、ライオン像から新宿駅に向かって花壇のようなものが伸びている。その花壇に大勢の外国人が横たわったり群がっていたわけだが、その中のボスのような男が歩いていた男と突然口論を始める。最初は周りも見守るだけだったが、次第にヒートアップ。最初は何を言っているかよくわからなかったが、明らかに口汚い言葉で罵っている。「FU◯K YOU💢」とかは流石に寝ぼけていても分かった。
周りも両者を止めに入るが、お互い引こうとしない。そしてこれはまずいと思ったのかついにある男が交番へ駆け込み警察2人が仲裁に入っていった。
完全に警察24時じゃねぇか!!!それを生でしかも至近距離で見られるとか東京面白すぎるだろ!!!と大歓喜。東京に行く度に面白い出来事に遭遇しているが、今回も今までとは全く別ベクトルのイベントに遭遇できた。
5分ほどして、歩いている男はどこかに行かされ、ボスは無闇に突っかからないよう注意を受けていた。ボスもなにか言い分があったようだが、詳しい理由は覚えていない。どこかエモい雰囲気に浸っていた私はこの一件で完全に吹っ切れた。この数時間の感情をグラフにしたらきっとめちゃくちゃなことになっているに違いない。一悶着あったが、特に危険な目に合うこともなく始発に乗ってホテルに帰ることができたのであった…
Baby’s Alright
今になって彼らに話しかけて見れば良かったと後悔している。当時の自分にはその元気も思考もなかったが、もし話しかけていたなら、それはそれで面白い経験ができただろう。
散々な目にあった。それは主観的に見ても客観的に見てもそう思う。でも多分人生で一度きりだ。他の人が体験することもまずない。だからまぁ、そこまで悪いことではなかった。
この経験を通して何を学んだかと聞かれたら、お金の力は偉大であり、それがあるかないかでまるで違う道を歩むことになるということだ。もし自分が金持ちなら野宿なんてしていない。タクシーでホテルまで帰っていた。もっと言えば僻地の安い宿も取らずにすんでいた。でもお金がなかったからこそこんな面白い体験ができたとも言える。
これだけだとなんだか嫌な人間に見えるので、出来事をどう捉えるかが重要だということも付け加えたい。金の有無で人生におけるイベントは左右されても、そこから何を感じてどう意味づけするかは個人に委ねられる。昔からポジティブに物事を捉えようとしてきた習慣に今回も助けられたらしい。
いつか必ず大成して豪遊してやるからな!今に見てろよ!
そう世界に宣言して、今日もこの逆転成り上がり人生を謳歌してやろうと始発列車に乗り込んだ。
おまけ
ライオン像の横で座っていたら知らぬ間に現れたかつら。マジで誰が落としていったのかわからなさすぎて面白かったので、思わず写真を撮ってしまった。やっぱ東京おもしれぇ~~~~~😆
