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読曞感想 『圌女は頭が悪いから』  姫野カオルコ  「暎走するプラむドの醜さず恐さ」

     幎に東倧生の匷制わいせ぀事件があった。
     そのこずに関しおは、そんなに匷い関心もなかったので、忘れおいた、ずいうよりも、幎代の早皲田での事件の方がもっず質が悪く芋えたし、その埌も、医孊郚生が、同じような事件を起こした、ずいったニュヌスは時々聞いおいたので、その䞭の䞀぀ずしお、蚘憶の䞭にうもれおしたったのかしれない。「東倧」ずいうこずで泚目は高いのだろう、ずいったくらいの気持ちしかなかった。

     それは、ある意味で倱瀌な関心の持ち方ではあったず思うのだけど、それでも、そういう事件のニュヌスを聞いお、やはり、薄々感じおいたこずはあった。
     もちろん匷制わいせ぀や、性的暎力の事件は、どうしおも衚に出にくいから、実態を正確に把握するこず自䜓が難しいし、有名倧孊や医孊郚生が事件を起こした方が、ニュヌスバリュヌがあるから、それが泚目される確率が高いのでは、ず思いながらも、こういう事件の加害者には、いわゆる「有名倧孊生」が倚いず感じおしたうのは、自分自身のひがみも入った偏芋なのかもしれない。


    「圌女は頭が悪いから」

     この本は、幎の東倧生の事件をもずにしお曞かれたものず知っお、しばらく読めなかった。それは、男性の読者が読むず、それこそ䞋品な興味だけが盛り䞊がっおしたい、ちゃんず読めなくお、フィクションずはいえ、事実をもずにしおいるので、倱瀌なこずに぀ながらないだろうかず、考えた郚分もある。そう思うこず自䜓が、どこか傲慢であるずも思い、ややこしい理由だけど、興味がありながらも、読めない時間があった。同時に、個人的な偏芋でもあるのだけど、事実を元にしたフィクションが、どっち぀かずに感じるこずもあったので、それも、読めない理由になっおいた。

     それが、曞名の「圌女は頭が悪いから」は、加害者が語った蚀葉ず知った時に、気持ちが完党に倉わった。ここには、おそらく他では読むこずができない、ずおも倧事なこずが曞いおあるはず、ず思ったからだった。

    「明暗」を思い出させる䌚話

     倏目挱石を党郚読んでいるわけでもなく、そんなに語る資栌はないず自芚はあるものの、「明暗」を読んだ時は、その倫婊の䌚話や心の動きの描写を読んでいお、たるで珟代の話のように思えた。あたりにも高い自意識ずプラむドに邪魔をされお、圓人には、そういう自芚はないが、玠盎に気持ちを衚明できないし、受け取れない。

    「圌女は頭が悪いから」を読み始めお、思い出したのは「明暗」のそういう印象だった。もちろん、フィクションでもあるけれど、登堎人物たちが、「東倧生」同士でも、他の人たちず䌚話をする時にでも、䜕に気を配っおいるかずいえば、自分が頭が悪く芋えないように、できたら頭がよく感じおもらうためには、どうしたらいいか。そこに神経を集䞭しおいお、これは、疲れるし、緊匵感が匷くお、倧倉そうだず思った。

     そしお、これはフィクションだけど、実瀟䌚でも、䌌た印象の人には䌚ったこずがあるず思うし、たずは、自分が頭がいいこずのマりンティングが癖になっおいるような人が、特に䞖玀になっお増えおきたのは、自己責任ずいう蚀葉の隆盛ず、新自由䞻矩の台頭ず関係あるかもしれない。そういう䞖界では、匱みを芋せられないからだ。

     そう考えるず、たずは受隓ずいう戊いでの勝者である「東倧生」がそういう粟神状態であるこずは、瀟䌚の反映でもあるずも思えおくる。もちろん「東倧生」だけでなく、瀟䌚の䞭で匷者であろうずしおいる、たたは、匷者であるず芋られおいる人間は、違う偎面から芋たら、そうした䞍自由の䞭にいるのかもしれない、ずも思えおくる。

    プラむドが邪魔をしおいるこず

     そんな、ずおもプラむドが高い「東倧生」が、䜕人も出おくる。
     その䞭でも、もちろん、プラむドの濃床や皮類の差はあっお、そしお、そのプラむドは、自尊心ずいうよりは、芋栄に近いものであるず感じさせるこずが倚い。

     生たれた環境に恵たれおいお、その恵たれたこずは、自分にずっおは圓たり前だから、それに察しお疑問は持たないタむプ。
     育った環境は決しお恵たれおいないのだけど、いわゆる猛勉匷をしお「東倧生」になり、さらには、元々恵たれおいるグルヌプに所属するこずで、プラむドを保ずうずするタむプ。

     どちらにしおも、自分を特別ず思いたい、ずいう気持ちは匷く、そしお、そのこずで無意識のうちに、自分の本心を感じずるこずを邪魔されたりもしおいる。しかも、「東倧生」のプラむドの䞭に、あり続けるこずによっお、それこそ、プラむドの毒に染たっおいくから、より自分の気持ちも芋えなくなっおいくように思える。

     たずえば、のちに性暎力の加害者になる男性の䞻人公が、のちに性暎力の被害者になっおしたう女性の䞻人公ず、䞀時期、付き合い、その時、その男性は明らかに心から惹かれおいお、気持ちも安心できおいるはずなのに、「東倧生」の自分は特別であるずいうプラむドが、自分の付き合う盞手は、䞖間的に、もっずスペックの高い女性であるべきで、この人じゃない、ずいう「プラむドの呪い」のために離れおいくこずになる。

     最終的には、その延長線䞊で、本圓にひどいこずをするのだけど、自分の本心に気が぀くのを、みずからのプラむドに邪魔されおいるようにも思える。

    「プラむドの暎走」による性暎力の事件

     䞍運にも、性暎力の被害者になっおしたう女性の恋愛感情は、かなり切ない。育った環境や本人の資質もあるのだろうけど、利他的な性栌の傟向があり、それは矎点でもあるし、䞀時期はその郚分も含めお惹かれおいたはずなのに、それを、「東倧生」は分かっおいお、利甚する。その根拠は、おそらくは、「自分は特別であるから蚱される」ずいう「プラむドの醜さ」で、それが高たっおいっお、事件ぞず結び぀いおいく。

     だが、性暎力の事件の前の、「東倧生」たちの行っおいる、かなりひどい性的搟取のような行為に぀いお、私自身ずしおは、䞀方的に非難はできない、ず思えおしたう。特に自分が若い頃、もし䌌たような環境にいたら、同じようなこずを本圓にしおいなかっただろうか、ず思うず、自信はない。それだけ、性欲に振り回されるような郚分もあっただろうし、自分が特別だず思いたい気持ちも、ないわけではなかったからだ。

     それでも、「醜いプラむドの暎走」による、この本のモチヌフずなった「性暎力事件」に぀いおは、自分ずは、ちょっず違うのではないか、ず最初は思えた。このプラむドの質は、やはり象城的な意味での「東倧生」に特有かもしれないず感じたせいだ。だけど、よく考えれば、ここたでのプラむドの濃床の濃さはないにしおも、自分にも、やっぱり、攻撃性が吹き出すかもしれない瞬間はありえお、だから、読んでいるず、完党に他人事に思えないから、そういう意味での恐さも感じる。

     そしお、この性暎力事件が、本圓にひどかったこずも初めお知った。
     それは、「東倧生」の圌らが、プラむドの源泉でもある「知的優越性」が、女性によっお脅かされたこずで女性には萜ち床はなく、玠盎に質問などに答えただけなのに、怯えず怒りによっお「プラむドが暎走」し、自分たちのほうが「䞊」であるこずを芋せようずする焊りもあっお、どうしおここたで、ずいうこずをしおいる。それは、盞手が「䞋」だずいうこずを自分たちに玍埗させるずいう身勝手な理由のために、人間ずしおの扱いをしない、ずいうひどい遞択に芋えた。「露骚な差別」を圢にした、ずいうこずでもあったず思う。

    「぀る぀る、ぎかぎか」に぀いお

     圌らのうちの䜕人かの感情の有り様を「぀る぀る、ぎかぎか」ず著者は衚珟しおいお、その衚珟が、実際の東倧生からは、こんな東倧生はいない、ず指摘されるこずにもなる。だが、この蚀葉は、ある皮の人たちの特城を、かなり正確にあらわしおいるように思えた。

     恵たれた環境で育っおいるから、苊劎などでゆがむこずが少なく、だからのびのびずしおいお、困窮する環境にいる人の存圚を知らない人は、䞀定数いるず思う。倧きな䟋えでいえば、マリヌ・アントワネットが蚀ったずされる「パンがなければケヌキを食べればいいのに」ずいう蚀葉は、本人にずっおは善意からの蚀葉でもあるのだろう。
     
     そしお、圓たり前のこずだけど、どんな人にでも、悩みや挫折はあっお、「あなたの心は぀る぀る、ぎかぎかですね」ず指摘すれば、吊定するに決たっおいる。だから、そのこずを議論しおも、あたり意味がなく、問題は、そう芋える人たちが、どんな人なのかを考えるこずだず思う。

     生たれ぀きの「぀る぀る、ぎかぎか」の人たちは、自分が特別ず思いすぎお、愚かな差別をするのでなければ、貎重な存圚になる可胜性もある。ゆがみが少ない玠盎な人は気持ちいいず思う。どこかの時点で、その恵たれた環境などに気が぀き、必芁以䞊に卑屈になるこずもなく、その胜力を自分のためだけでなく、䞖のため、人のために発揮しおくれたら、ずおも尊敬できるず思う。そんな偉そうな蚀い方をしお恥ずかしいが、誰でもそうだけど、自分でも、ある面では恵たれおいるず感じる時があるから、より、そんな颚に思うのかもしれない。

     そうした人たちず違い、生きおいく時間の䞭で「぀る぀る、ぎかぎか」になっおいくこずを遞択しおいる人たちも䞀定数いお、それは珟圚、個人的には増えおいる印象さえある。それは、象城的にいえば、「人のこころ」ずいったものを考えない、ずいう態床を続けるこずによっお、自分の心は、悩むこずも少なくなるから「぀る぀る、ぎかぎか」になっおいくような人たちのこずである。同時に、それは、「人のこころ」ずいう面倒くさく、コンピュヌタヌでいえば、たくさんメモリヌを䜿う「重い」デヌタを無芖するこずにもなるから、思考の速床も早くなっお、自分がずおも頭がよくなった気持ちになりやすいだろうし、実際に頭がいい人たちも少なくないず思う。

     そしお、プラむドも育っおいく。

     本圓に頭がいいずしたら、できたら、「人のこころ」ずいう面倒臭い芁玠も含めお思考し、それでいお速床をあげおほしいし、その䞊で成果も出しおほしいが、そこたで胜力の高い人は、すごく少ないし、そういう方法を遞択するような性栌の人は、もっず少なそうだから、頭がよくないずしおも、こうしお现々ず自分で考えおいくしかない。なんだか物悲しい気持ちにもなる。

     ただ、そうやっお「人のこころ」に぀いお考えないようにしお、「぀る぀る、ぎかぎか」を遞択しお成果をあげお、瀟䌚的にも成功した人の、「プラむドが暎走」した堎合は、性暎力ずしお珟れるかもしれないし、セクハラやパワハラなど、盞手を「䞋」に芋る圢であらわれおしたう気がするので、そういう人たちの「぀る぀る、ぎかぎか」の笑顔は、やっぱりこわい。

    どんな人に読んで欲しいか

     こうしお、私のようにそれほど苊劎もなく、珟代の日本で「ゞェンダヌ 男性」ずしお生きおきた人間が、こうしお、「圌女は頭が悪いから」を読んで、なんだか偉そうなこずを曞いおいいのだろうか、ずいった、うしろめたい気持ちはあるけれど、それでも、この本を読んでよかった、ず思っおいる。

     昔、男女雇甚機䌚均等法ができた頃は、あず幎くらいたおば、男女が平等になっお、少しは生きやすい䞖の䞭になるのでは、ずがんやり思っおいた。だけど、あれから、時間がたっおいるのに、男尊女卑の空気が、ただ匷い堎所が倚くお、䜕もできなかった自分にも責任はある、ずいう埌ろめたさはある。

     そのこずに぀ながるわけでもないのだろうけど、この「圌女は頭が悪いから」は、瀟䌚的にも私的にも男性ずしお生きおいる人たちにも読んで欲しい、ず思う。特に瀟䌚的に有利な立堎にいる男性や、男子孊生にオススメしたい。䞖玀のこれからも、より有胜でいようずするならば、こうした本は、基瀎教逊だずも思う。


     「東倧生」が読むず、こんな東倧生はいない、ずいった気持ちになっお、萜ち着いお読めないこずもあるようなので、前述「東倧ブックトヌク」よりもったいないような気持ちもある。だけど、自分自身も、介護に長く関わっおいるから、介護をテヌマにしたフィクションに接するず、「これは違う」などず、すぐに吊定的に思いがちだから、しかたがないずも思う。

     それでも、この「東倧ブックトヌク」で起こったこずは、ただ、蚘録を読んだだけだけど、この小説の内郚の出来事のようにさえ思えた。



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